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人気の無い食堂でサグレスとシナーラは食事をとっていた。
「……してるところ、見ないよね」
シナーラに話しかけられてサグレスは我に返った。どうやら、食べながら眠っていたらしい。慌てて頷くが、真向かいに座っているシナーラが気付かないはずが無い。バツの悪い空気が流れてしまった。コルミナ港を出港してからようやっと3日が過ぎた所だった。
単純に考えると今までと変わらず3交代なのだが、人数が少ないために風向きが変わる度に全員で帆の向きを変えるのだから、実際には殆ど寝る間も無い。しかし、実質2交代で動いているエスメラルダとイーグルに文句を言えるはずも無かった。そして食堂には常に食事が容易されているものの、シークラウドの姿を見る事も無い。
「何を見ないって?」
騒々しくデワルチとグァヤスが入って来た。
「お疲れー。エスメラルダが食事をしているところを見ないな、と思ってさ」
シナーラは席を空けながら答えた。グァヤスが自分の皿を手にシナーラの隣に座る。すぐさま食べ始めながらグァヤスが頭を傾げた。
「そういえば、どっか具合でも悪いんじゃないか?エスメラルダ。この前、粥の皿を持ってるの見たな」
「やっぱり、当直がキツイのかな?」
テーブルに着いた顔を見回しても、誰も彼も顔色が良くない。シナーラが自分の皿を片付けながらの呟きにデワルチが頷いた。
「そりゃそうだろ。もしかして全然寝てないんじゃないか」
「今、倒れられでもしたらマズいぞ」
グァヤスが冗談めかして言った時にイーグルが入って来た。
「交代はどうした!甲板に誰も居ないぞ」
「あ!」
グァヤスとデワルチが同時に叫んだ。
「悪い、忘れてた。2人共交代だ」
慌ててサグレスとシナーラは立ち上がった。




