表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/90

 よく晴れた空の下、ベリアの町並みを背景に港から突き出た桟橋の先に真っ赤な髪をなびかせて人影が立っていた。

「どれどれ……?」

 イーグルが手を翳しながら船べりから岸を見つめる。

「おや?俺達はついているな。女神様のお見送りに合うなんて……」

 その言葉にはっとエスメラルダが立ち上がり岸に向かって敬礼する。他の船員達も既に敬礼している。サグレス達も慌ててそれに習った。

 桟橋の人影は遠目で見ても少女である事が見て取れ、その身なりは大層立派な物の様だった。良く見ればその背後に少し離れて何人か付き従っている人々の姿も見られた。少女は<我が女神号>の船上を一心に見つめていたが、一瞬エスメラルダと目が合ったように思えると、つと身を翻して桟橋を戻って行った。

「誰?」

 サグレスが小声で隣のグァヤスに聞いた。

「……この国で赤い髪と言えば……」

「イングリア唯一の後継者、エディラ王女殿下であらせられます」

 言いよどむグァヤスをエスメラルダが後を引き取って説明した。

 島国であるイングリアはその昔、大陸に隷属していた時代に再生の女神、赤い髪のファンによって大陸からの独立を勝ち取ったと言われている。その物語は子供たちの寝物語に、人の集まる祭りの夜に良く語られるものでこの国で知らぬものも無い物語だった。そしてその結びは女神が立ち去る時に残していった一人の赤子の末裔がイングリア王国の王族であると結んでいる。その直系の印の様にその一族は真っ赤な髪をしているのだという。

「私たちが何物に代えてもお守りするべきお方です」

 エスメラルダはにっこり笑って士官候補生たちを見回した。

「船も無事出港しました。まずは各自の荷物を船倉に降ろしてから、全員で甲板掃除を始めてください。私とイーグルは交代で見張りの当直に当たっていますから、何か分からない事があれば聞いてください。それから食事は朝と夜に食堂でとるようにしてください。時間になればシークラウドが準備をしてくれているはずです。以上」

 エスメラルダはそう言うと、船倉に案内するために狭いはしごを降りていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ