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「動くな!」

 先に反応したのは、中の船員達だった。一人は既にサグレスの首筋にナイフを当てている。気でも失っているのか、サグレスの動きは無い。シークラウドの方は素早く中の状態を把握していた。いくつかの開けられた箱にはたいした物は入っていない。恐らく武器らしい物は手持ちのナイフぐらいのものだろう。しかし、サグレスの状態を考えると、そう楽観する事も出来ない。ここから窺う限りまだ生きてはいるようだが、この先の保証は無い。

「何が目的だ」

 シークラウドは時間稼ぎのつもりで相手から目を離さずに、聞いた。即座に相手はのってきた。

「こんな船もうあきあきなんだよ。悪いがオレらは降ろさせてもらうぜ」

「こんな海のど真ん中で何言ってんだ」

「ヘッ、わかってんだぜ。じき陸に上がんだろ」

「何?」

「このまま先へ行ける状況じゃあ、無いよな」

「……」

 シークラウドの無言に気を良くしたのか、船員は気安く続けた。

「ま、ちょっとタイミングは狂ったが、大方予定どおりってとこだ」

 そこで、はっとシークラウドの目の色が変わる。相手はその様子をニヤニヤしながら観察していた。

「そうよ。さっきの騒ぎはオレ達だ。積荷のはじの方をゆるめといたのさ。気がつかなかっただろう。ザマァミロ」

 シークラウドはこれを聞くと、怒りで全身が震え出した。これにはさすがにマズイ雰囲気を悟ったのか一気に緊迫感が増して行く。

「許せねぇ……」

 我慢の限界に達したシークラウドが身構えた瞬間。落雷の様な轟音が轟き、船体が大きく揺れた。予期せぬ揺れに、シークラウドの体は床に叩き付けられた。衝撃で視界が定まらない。その一瞬を2人の船員は見逃さなかった。2人はサグレスを捨てると脱兎のごとく逃げ出した。

「待て……」

 後を追おうとしてふらついたシークラウドを支えたのは、ただならぬ様子を見に来たシナーラとエスメラルダだった。

「あいつ等を追え」

 シークラウドの指示に慌てて、シナーラが後を追う。これに、途中から加わった他の船員も後に続く。シークラウドもエスメラルダに船室を示すと後を追った。残されたエスメラルダが船室を覗くと、サグレスが起き上がろうとしている所だった。首筋にくっきりと紅い手の跡がついている。

「大丈夫ですか?怪我は?」

 激しく咳き込むサグレスの体を支えながら、荒らされた船室を見てエスメラルダはおぼろげながら状況を把握していた。サグレスの方はと言うと他に大きな外傷は無いようだった。



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