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「いっ……っ」
サグレスは頭の痛みに気がついた。しかし、視界はぼやけたままで周りの状況を把握する事は出来なかった。手足にも力がはいらない。しかし、他に人がいるらしくやがて話し声が聞こえて来た。
「こいつはどうする?」
「こうなったら始末するしかないだろう」
「……てことは……」
「気がつかれる前に得物を持ってずらかるぜ。そっちは何か有ったか?」
「短剣ぐらいしかないな」
「ちきしょう、シークラウドだな。隠しやがって」
一人が更に辺りを掻き回している物音がした。しかし、もう一人はサグレスに近寄って来た。そして、ジロジロとサグレスを検分している。
「おい!何やってるんだ。急ぐぞ」
じれたように促す相棒を振り向きもせずに、男は舌なめずりをした。
「なぁ。どうせ殺しちまうなら先にやっちまってもいいだろ」
「何言ってるんだ!こんな事ばれたらこっちの命が危ねえってのによ」
「セドフは固いんだよ。ヴァーサは調子の良い事ばっかで、ちっとも良い目は見れないしよ」
「だからって」
「すぐだよ、すぐ。終わったら絞めちまうからいいだろ」
「どうなっても知らねぇぞ。俺は先に出るからな」
この時点で、状況がおぼろげながら掴めてきたサグレスは、慌てて起きあがった。頭が割れる様に痛む。声の人物はヴァーサの取り巻きだった。
「うわっ!こいつ逃げるぞ!殺っちまえ」
急に動き出したサグレスに2人は驚いたものの、すぐに出口への道を体で塞ぎ身構えた。
サグレスは立ちあがったものの頭がふらつき、もたついている間に二人がかりで引き倒されてしまった。すかさず強い力で首が締め上げられる。暴れようにも身動きがとれず、喉を絞められているために声も出せない。次第に視界が真っ赤に染まり、心臓の鼓動が頭蓋に響き始めた。




