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「相変わらず厳しいな。お館様は」

何時からいたのか、よく陽に焼けた少年が中庭のあずまやから声を掛けた。ソルランデットよりは幾分年長である。

「ミルチャー」

 ソルランデットはその姿を見つけると、すがる様にあずまやへ急いだ。

「年相応って事は考えないのかねぇ」

 ミルチャーと呼ばれた少年は、ソルランデットに聞こえないように小さく呟いた。そして近づいてくるソルランデットにはニコニコと笑いかけた。一方のソルランデットの方はこの年嵩の乳兄弟の傍に来る事でかなり安心したらしい。大きな瞳から大粒の涙がこぼれ出した。

「エディラ様がね……。それで、父様が……」

「分かったよ。俺がついてるから安心して、な」

 その言葉を聞くとソルランデットは安心したようにひとしきり涙をこぼしたが、落ち着くと鼻を啜り上げながら聞いた。

「でも、ミルチャーの仕事はいいの?」

「ま、母さんに言えば何とかなるだろ。大体お前がクビにでもなったら皆が困るんだから」

 口うるさい母親の顔を思い出しながら、説得する口実のあたりはすでにつけ始めている。大体、実の息子よりも大事にしているもう一人の息子の危機に反対するはずも無かった。当の母親は、乳母から現在は家事全般を任されるまでになっていた。後は、王宮に潜り込む口実だが、これもソルランデットの従者あたりで何とかなることだろう。

(これから大変だ)

 エディラ殿下の護衛と言えば聞こえは良いが、かなりのお転婆らしいとの噂なのでこれが事実なら大変な仕事になりそうだった。しかし、兄弟のように育ったソルランデットのためであり、乳兄弟という以上に目をかけてくれた当主への恩返しの思いもあった。

「さて、それならまず王宮に行かなきゃな」

「また行くの?」

「そうだよ。それがソルの勤めだろ」

 ミルチャーは諭すようにソルランデットに話すと、2人は仕度のために屋敷の中に連れだって入っていった。


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