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「人魚…?」

 イーグルはまじまじとサグレスの顔を見返した。さっと、サグレスを引き上げた辺りを見回すが、波打つ海面以外に見えるものも無い。サグレスはまだ海面を見つめていたが、もう飛び込もうとはしなかった。

「お前の周りには誰もいなかったぞ。息が足りなくて見間違ったか?それよりも、もう暗くなる。今日は引き上げる頃合だ」

 ぼんやりとしているサグレスに目立った怪我が無いのを確認して、イーグルは上着に腕を通し始めた。陽は傾き始め、海を渡る風もひんやりとし始めている。これ以上は下がる水温に体力の消耗が激しくなるだけだろう。

 その時、突然サグレスはイーグルの裾にすがりついた。その目は真剣そのものだった。

「船があったんだ!」

 その言葉にイーグルははっと顔を上げた。サグレスとがっちりと目が合う。イーグルは短く問うた。

「どこだ?」

「目印の岩から西の側の海藻の群生している下が大きな溝になっていて、その途中に引っ掛かっているのを人魚が教えてくれて……」

 サグレスの視線がまたも水面にさ迷いだすのをイーグルは押し止めた。

「人魚はもういい。行ってくる」

 言うが早いか、イーグルは着かけた上着を再び置いて海へ飛び込んだ。その海藻が群生している所は、2人で何度も確認した場所の一つだった。

(人魚だなんて……冗談じゃない)

 脳裏に寂しそうに笑うエスメラルダの顔が浮かんだ。そんな話を聞かせられる訳が無い。もうかかわりたくないというのがイーグルの本音だった。

 イーグルはその顔を振り払うように速度を上げて真直ぐ目的地に向かった。午後の陽は前ほど海中を照らしはせず、水温は思ったより早く冷え始めているようだった。目印の岩は早くも陰になり始めている。


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