やっと5歳
この世界に転生してきて、5年目となった。
真剣に訓練を始めてから2年近くも時間がすぎたとは早いものだ。
成長できたことも喜ばしいが、いろんな事実を知ることができた。
1つはブーストという身体能力向上技術があることで、デメリットが多すぎて使いどころが少ないが、自分の動きの目標として定められるので、そのときだけは使用している。
近接戦闘も、父さんから短剣の使い方と足運び。母さんからは、格闘を教わることができた。一日で教われる量は少なかったが時間はあったので、なかなか形にはなってきた。
そして、魔法の成長は家族みんなが少し驚くような成長を見せることになった。
母さんと同じ魔法は母さんに比べて倍以上の時間がかかるがものにすることができるようになった。
後から聞いたのだが、あの魔法は中級に近いらしくて、1属性だけ訓練しても5年近くかかるとのことだ。
あれ、けっこう僕頑張った?
しかし、何が直接の理由だったのかはわからないので、みんなに聞かれたものの答えようがなかった。
ただ、いろんなやり方を試しながら魔法の訓練をしていると、みんなが頭を悩ませるだけで答えはでなかった。
ちなみにすべての属性を訓練した結果、僕の得意魔力は水と風らしい。兄さんは1つだったので申し訳ないのだが、全く気にしていなかった。
それにしても、得意属性でないと、魔力に属性がかなり乗りづらい。まだまだ実践レベルになるまでは時間がかかるみたいだ。
そして今日は教会に行く日だ。
なんで教会に行くかというと、5歳になって祝福を受けることと、属性の確認、そして『ギフト』の有無とギフトネームの確認だ。
僕には必ずギフトが付いているはずなので、サポートぐらいにしかならないとしても、ものすごく気になる! うまく寝付けなかったくらい!
ということで今は父さんと二人で街に向かっている。
行商人の馬車に乗っていくのだが、父さんがかなり強いので全く問題がないらしい。
確かに父さんは強かった。だけど問題はそれだけではなかった。
一年前だ。一度だけ兄さんと僕のわがままで、父さんと母さんの模擬戦が実現したのだ。
それを見たときは心が躍ってしまった。
父さんは武器は通常の直剣で、母さんの武器は大剣だった。
母さんが大剣を持ってくる姿は似合いすぎていた。
やっぱり、母さんは魔法より、こっちのほうが輝いて見える。
父さんは、攻撃をいなしたり、はじいたりする技術が光って見えた。
母さんのほうは、豪快な大剣の攻撃にと、相手の攻撃に対する身のこなしが化け物じみていた。
大剣を振り切ってしまい、父さんの攻撃が体にあたりそうになった時それは起きた。
大剣から手を離し大剣は宙に浮く、攻撃をよける。すぐさま、大剣をつかみ、そのまま攻撃という人間離れした技を見せたのだ。
というか笑ってる。ハイテンションになってないか?
ちょっと意味がわからなかった。
模擬選後、父さんに聞いてみると。
「エミルいわく、感覚でどうにかなるらしい。意味がわからないがな。それにエミルは戦闘狂な一面があるぞ」
という返答が返ってきた。
よかった、同じ感想だった。
てか戦闘狂ってやばくないですか?
しかし、兄さんのほうは母さんのほうに行き、さっきの動作について、興奮しながら擬音語満載で会話していた。
まさか、兄さんって感覚派だったのか? 知らなかった。
「まさか、あの部分がカールに引き継がれるとは……」
父さんもあの光景をみて頭を抱えていた。
その夜は、模擬戦が力を抜いてしていたものだから、フラストレーションがたまってしまったのだろう。母さんの声がよく聞こえてしまった。
来年には弟か妹ができるかもしれない。
ということがあった。
そして、家族みんなで街に行くはずだったが、家族が一人増え、急きょ父さんと僕だけになってしまったのだ。
ちなみに、妹だった! ものすごく可愛らしい!
もしかしたら、妹のためにすべてを投げ出せるかもしれない!
父さんも妹が可愛すぎたせいか、にっこり笑っている場面を激写してしまった。
あっ、父さんと目があった。こっちに歩いてくる。げんこつ食らった! 理不尽だ!
妹の名前はクレアだ。なかなかいい名前だと思う。
で、クレアも一緒に行くわけにはいかないので母さんと兄さんが居残りでクレアと一緒にいることになった。
ともかく、そんなことがあったが、今は父さんと二人で街まで歩いている。
魔物や、もしかしたら盗賊も出るかもしれないので、僕も短剣と訓練時に使っていた装備を身にまとっている。
この2年間で何回かゴブリンを1対1で倒したこともあるし、ウルフが出てきたとしても1対3ぐらいなら時間稼ぎくらいはできるようになったので、そこまで父さんの足手まといにはならないのではないかと思っている。
何も問題が起こることもなく街に到着することができた。
ここが、ヴァイス辺境伯が治める街レイヴァンらしい。