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反省





 目が覚める。



 暗い。死んだのか? と思ったが、よく見るとここは自分の部屋だ。


 今日の出来事は夢だったのかと思ったのだが、腹に軽い鈍痛がある。だけど、あざとかはないみたいだ。もしかしたらこれが回復魔法の効果かもしれない。


 そのままベッドから降り、自分の部屋から出ることにする。するとリビングに明かりがともっているのが見える。



 リビングに入ろうと思ったら、いつの間にか母さんに抱きつかれていた。抱きつく力が強くてかなり痛い。


 リビングのほうを見てみろと、父さんに兄さんが怒られていたようだ。兄さんがしょんぼりしているのが見える。


 その光景、痛みと母さんの暖かさを感じたら涙がこみ上げてくる。生きて帰ってこれたんだ。



「アーサー無事でよかったよ。ほんとによかった……」

「あ、あ、ごめん、なさい……かあさん、とうさん……」


 母さんが声をかけてきてくれた。この居場所がすごく落ち着く。



 僕が泣き終わったの見計らい、父さんがぼくに話しかけてくる。


「落ち着いたか?」

「あ、はい。とうさん」

「じゃあ、アーサーも座れ。二人とも俺が見つけた時は気絶していたから、助かったことしかわからないだろ?」


 ん? じゃあ父さんが助けてくれた? じゃああの背中は父さんだったのか。


「お前たちが森に入っていくのを村の人が見たと俺に伝えてきてくれた。それでなんとか追いついたというわけだ」


「カールはあなたより早く目が覚めて、泣き終わって怒られていたところなのよ」

「か、母さん!」


「なんだい、アーサーにはばれたくなかったのかい?」


 母さんが楽しそうに兄さんのことをいじっている。そのせいで僕のことにらんできている。やめてよお母さん!

 

 と思ったら、僕のところまでくる。どうしたんだろうか。僕は怒られるようなことはやってないぞ!




 「すまなかった! 俺がバカだった!」


 兄さんが僕に謝ってきた? 珍しすぎる!

 

 さすがにやばかったことを親身に感じてくれたのかな? さすがにまたすぐ、森の中に連れて行かされたら帰ってこれる気がしないし。


「ううん、ぼくもあんなに、まものが、こわいの、わからなかった、から」


 そう、僕も本当に死ぬかもしれないとは思ってもみなかった。



「まぁ、もうそれは過ぎたことだ。今回のことで生半可なことではこっちが殺されてしまうことがわかっただろ。それに、魔物は1体だけとは限らない。群れを作っていれば、5体を相手にしなければならなくなる時も多い。」


 父さんの言葉が重くのしかかる。


「そしてだアーサー。お前は魔法に興味があるといって魔法を練習しているな?」

「はい、そうです」


 なんだろうか? 今魔法のことはなにも関係ないような気がするんだけどな。


 父さんがぼくの目をとらえて話し始める。



「魔法は生活の補助をしてくれる重要な存在だ。だが、本来の用途は何かを殺すための武器でもある。お前は興味があるというだけで魔法を覚えだしたが、それが悪いと言わない。だが今の機会に覚えておけ、魔法の基本は魔物、もしくは人間を殺すためのものだ。簡単に扱っていいものでは決してない。」


 

 言葉が出なかった。


 確かに自衛のために魔法を覚えようとしていた。だけど、魔法が覚えられると思うだけでわくわくしてしまい、ただ自分の欲のために魔法を覚えようとしていた。


「……ごめんなさい。いまのわすれません」

「そうか。ならカールもアーサーも夕食を食べたらすぐに眠りなさい。回復魔法は掛けたが二人とも重傷だったからな、体は本調子じゃないはずだ」


 兄さんと僕はその言葉にうなづく。やっぱり回復魔法で傷は治ったのか。さすがに回復魔法もそこまで万能なものではないようだ。


 


 夕食も食べ終わり兄さんと僕が自分たちの部屋に帰ろうとすると、母さんが兄さんと僕を二人一緒に抱きしめてくれた。


「あたしたちは、危ないことには首を突っ込むなとは言わない。だけど、あんたたちが死んでもしたら、あたしたちはすごく悲しい。本当に悲しむわ。」


 いつもよりもやさしい声で母さんが語りかけてくれた。すごく愛されているのがとてつもなくうれしく感じる。


 「じゃあ、カール、アーサー、おやすみ」

 「「おやすみなさい」」




 僕は部屋に戻った後、今日の反省をしていた。


 この世界は楽しいものだけなどと勘違いをしていた。それは間違いだった。ただ、強い両親に恵まれ魔物の恐怖も、人の恐怖も知らないで育っていただけに過ぎなかった。


 それに、自分の生き死にはすべて自分にゆだねられていて、今回の生還は運が良かっただけなのだと。



 それでだ、自分の身は自分で守らなければいけないことがわかった。

 そのためには、魔力と並行しつつ、近接戦闘もできるようにならなければならないし、重要なのは知識だ。

 


 知識については、魔物の生態、魔族の存在、もしこの村を出て行く時の重要な部分だろう。



 近接戦闘については、両親の教えを受けるしかないか。ちびっこであるのは間違いないのだから、今できるとすれば、格闘の基礎と短剣あたりしかないのか。

 

 それにあの神様のいうとおりだったら、小さい僕でも隠れステータスのようなものが向上していくはずで、近接戦闘の訓練も無駄にはならないはずだ。


 

 あとは、魔法の訓練の効率化が問題だ。両親は魔法士ではないから、効率の良い訓練とかは知らないみたいだったし。でもまだ詳しくは魔法の使い方を聞いてないから、聞いてみないと。




僕は、強くならなければと心に刻みながら、大まかな方針を定めていった。


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