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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第7章 ちび恐竜人たちの逆襲編3
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第91話

                4

「ええっ・・・、あ・・・あたしは・・・、殺されちゃう・・・の?」

 途端にチュロンビの顔が青ざめる。


「いや、君たちは我々の大切な捕虜だ。

 丁重に扱うことを約束する。


 どうやら君の場合は、狂神論者とも言えるお父さんに命令されてやっていたと言えるだろうしね。

 それに、お父さんであるチュロンボさんも殺しはしないよ。

 事が済むまでは暴れられたら困るから拘束はするけど、安全は保障する。」


 所長は、まずは捕虜の身の安全を繰り返し説明し、緊張感を解いてもらおうと必死な様子だ。

 勿論、情報を引き出してお役御免になったからと言って、如何こうするつもりは最初からないし、それは、ミライ達恐竜人も同じ意見だろう。


「そ・・そう、だったら何でも話しちゃうわ。

 まずは、小さな恐竜人様たちは意外と自由に、円盤間の移動をしていたようすよ・・・。」

 チュロンビは、知っていることを洗いざらい話しはじめた。


 それは、驚くべき事実だった。

 チビ恐竜人たちは、地球で捕捉されたと考えられていた当初から、太陽系外に居た自分たちの仲間の円盤と、自由に行き来できていたこと。


 それでも地球上での移動は出来ないから、銀河警察と名乗って地球へ飛来し、その後ステルス機能が付いた円盤で、チュロンボ一家が準備した地球上の基地へ、転送装置を備え付けて回ったことなど、チビ恐竜人たちを監視していたみんなの努力は、意味をなしていなかったことが、明らかになった。


 彼らは最初からイオンビームなど恐れてはいなかった。

 いや、直撃を食らえばひとたまりもない事は分っていたのだろうが、多くの住民が同居する巨大円盤を、簡単に攻撃することはないと踏んでいたし、何よりも危険が迫ればイオンビーム砲を破壊できる準備は、すぐに整えていたのだろう。


 それなのに、捕獲した円盤を外から見張るだけで、チビ恐竜人たちがおとなしく従っていると思い込み、平和が戻ったと勘違いして、田畑の耕作に励んでいたのである。

 これを機に世界中の環境を復興するのだとして、監視業務もおろそかにして、世界各地へ人や魔物たちを送り続けていたのである。


 奴らは、その間も一生懸命地球制服のための算段を色々と進めていたのだろうに・・・。

 平和ボケとも言える、自分たちの行動に、所長もミライも反省しきりであった。


「すると・・・、単にウチーデノコヅーチの存在が判明したから、手に入れようと地球に残った訳ではないと言う事か?」

 ミライが念を押すように、チュロンビに確認をする。


「そうね・・・、あたしたちは小さな恐竜人様たちからの指示が来る前から、黄泉の国を飛び出して準備していたけど、最初の指令は地上での拠点作りだったわ。


 その為に各地にあった巨石像基地の整備を始めていたのだけど、途中からは見つかった神器を回収する命令が加わったの。

 丁度巨石像があったから、それを動かせば人間たちも巨大化しようとして、神器を使い始めるだろうって弟が提案して認められたの。


 ところが、いつまで待っても神器が検知されなくって、さすがに小さな恐竜人様たちも、お怒りになられていたわ。」

 チュロンビが、時々目を閉じて、思い出すかのようなそぶりを見せる。


「ふう・・・、よかったわ、あたしが小槌を持っていたことがばれたから、一度は地球侵略をあきらめたチビ恐竜人たちが、やっぱり地球を手に入れようと考えたのかと思っていた。

 すっごく責任を感じていたのだけど、少しだけ安心したわ。」

 ナンバーファイブが、その巨大な胸をなでおろす。


「小槌があってもなくても、地球を侵略しようという考えは変わらなかったのだろうけど、小槌を与えることによって、チビ恐竜人たちもミライさんたち恐竜人に負けないくらいの大きさになれるようになったことは脅威だよ。


 なにせ小さいままなら、力から行くと吹けば飛ぶような存在だからね。」

 所長が、そんなナンバーファイブをたしなめる。


「そ・・そうでした、すみません・・・、反省いたします。」

 ナンバーファイブは、顔から湯気が出そうなくらい真っ赤に染めて、俯いた。


「まあ、済んだことは責めても仕方がない。

 俺だって、地球を離れると言っていた奴らを、無理やりこの大陸に着陸させて、地球に留まらせたのだからな。

 いわば、わざわざ危険な奴らを、懐に招き入れた格好だ。


 太陽系外まで追いやっておけば、おいそれと地球に近づくことは出来なかっただろうし、それこそイオンビームの餌食にしてやることだって出来たはずなんだ。

 最初から、大きな間違いをしていたという事だ。」

 ミライは、悔しそうに何度も何度も握りしめた拳を震わせた。


「いや、まあその場合でも、ステルス機能が付いた円盤だから、我々の探知網には引っかからずに、地球上に飛来して来ることは、十分に予想できる。

 見えるところに置いておこうとした判断は、間違ってはいなかったと思いたいね。」

 所長も、ため息交じりに漏らす。


「ああっ、でもまだ魔封じの紐と魔封じのペンダントがありますよ。

 強度は強いし、伸びたりすることはありえないから、チビ恐竜人たちはウチーデノコヅーチを使って、巨大化することは出来ませんよ。


 首が絞まってしまいますから。」

 ハルが、突然思い出したかのように、大声で発言をする。


「そ・・・そうだったね・・・、魔封じのペンダントは特殊な工具がないと外せないし、魔封じの紐に至っては製作者以外が外そうとしても、自動的に元の形状に戻るから、いつまでやっても外すことは出来ない。

 それらが首に巻かれている限り、彼らは大きくなることは出来ないという訳か。


 と言っても、ほんの一部のチビ恐竜人たち・・・、元老院とか言っていた者達だけが対象だけどね。」

 所長も、希望に満ちた目で大きく頷く。


「そうか、まだ希望は残っているという訳だな。

 それをネタに、奴らと交渉するのもありかも知れない。


 太陽系を離れるのであれば、魔封じのペンダントと魔封じの紐を外してやると言ってな。」

 ミライも随分と乗り気になって来た。


「まあ、外してやらなくっても、地球上の至る所で魔力を振るえば、彼らだって突然首が絞まるなんてことは避けたい訳だ。

 自然と地球から離れて行こうとするかもしれん。


 巨大円盤に対して効果があるはずもないが、魔法攻撃をしばし行ってみると言うのも手かも知れん。

 漏れ伝わった魔力で魔封じの紐やペンダントが絞まり出したら、慌てるぞ・・・。」

 所長の目がきらりと光る。


「じゃあ、やってみましょう。」


「そうね、あいつらを追い払えるのなら、なんだってやるわ。」

 ハルもナンバーファイブもすぐに立ち上がった。


「ハル君は病み上がりだから、魔力はセーブするようにね。

 他のメンバーは、手首に巻いた魔封じの紐を外して、全力の魔法攻撃を仕掛けましょう。

 そうすれば、円盤の内部にだって、多少の影響は及ぶでしょう。」

 ミッテランも続いて立ち上がる。


「よし、行こう。

 我々も、全員集合させる。」

 ミライはすぐにタイガ中隊長や、バーム小隊長らに指示を出した。


 そうして、総勢1000人近い軍隊が、巨大な円盤の真下にやって来た。


「行くわよ、魔砲弾(ダークキャノン)!!!」

 上空を仰ぎながらナンバーファイブが唱えると、煮えたぎるような真っ赤に焼けた高温の巨大な玉が、上空の円盤に向けて発射される。


『バスッ』しかし、鈍い音を立てて、高温の玉は障壁に守られて円盤までは達しない。


「・・・・斬首刀(ギロチン)!!!」

 一瞬空気が引き裂かれたかのように、上空の円盤の形が上下にずれる。


『キュイン』甲高い金属音が響き渡るが、何事もなかったかのように、円盤には傷一つついてはいない様子だ。


「竜砲弾!!!」

 ミライも渾身の魔法を上空に向けて放つ。

 しかし、やはり高温の玉は障壁に遮られて、円盤までは達しない。


「父さん、母さん、そしておじいさん、僕に力を貸してください・・・。

 灼熱の炎、灰と化せ!!!」


 ハルは、魔封じの紐をつけたままで、セーブしながら、それでも巨大な白熱化した玉をぶつける。

 ところがその攻撃もむなしく、障壁に阻まれてしまう。


「竜砲弾!!!」「竜砲弾!!!」「竜弾!!!」「竜砲弾!!!」

 至る所から、恐竜人兵士たちによる魔法が唱えられ、上空に向けて発射される。


 春先の涼しい気候だったのが、すぐに魔法の熱波により、じっとしていても汗がしたたり落ちる暑さに変わった。

 精神を集中して、渾身の力を込めて魔法を発している彼らは、堪らないほどの暑さだろう。

 それでも、誰も休もうともせず、魔法攻撃を続ける。


 すると、空のスクリーンに見慣れたチビ恐竜人の顔が映し出された。


「ミライよ、大挙して訪れたので、降伏して命乞いでもするのかと見ていたら、全員で魔法攻撃か。

 これは、宣戦布告として受け取ってもいいのだな?」


 ライゼルが、厳しい表情でマイクに向かっている姿が映し出される。

 それによって、魔法攻撃はいったん中断された。


「ふん、誰がお前たちになど降伏をするものか。

 元からだまし討ちのような、小細工しか出来ないお前たちなど、恐れてはいないわ。」

 ミライが、インカムに向かって答える。


「おやおや・・・、折角生き延びるチャンスを与えてやったというのに・・・、残念なことだよ。

 実をいうと、我々はお前たちを必要としているのだ。


 降伏して、我らが為に働く意思がないのであれば、滅ぼしてしまうと言ってはみたものの、新たな種が育って使えるようになるまでに、自然に任せておけば数万年から数十万年はかかるだろう。

 我らが科学力を使えば、ある程度は加速ができるが、それでも数千年はかかってしまうと予想される。


 そうなると、我らの代で地上を闊歩すると言う夢が断たれてしまう事になる。

 もう一度、深層次元で時を待ってもいいのだが、一度出てきて地上の空気を味わってしまうと、そんな生活を続けることが嫌になって来てしまった。


 だから、お前たちが降伏して素直に従ってさえくれれば、悪い事はしない。

 人間たちは食肉だと言ったのは訂正する。

 人間たちも含めて労働力として評価しているから、安心して降伏してくれ。」

 ライゼルは、突然懐柔策を取って来た。


「そんなこと言ったって、降伏すれば、あたしたちは奴隷として扱われるわけでしょ。

 あたしはメイドとして人のお役に立つことを喜びと考えているけど、それは強制されてやる事ではないわ。

 あくまでも、自分の意志で仕える人を選ぶし、それは、あなたたちチビ恐竜人なんかでは決してないわ。


 魔砲弾(ダークキャノン)!!!」

 先ほどより、尚いっそう巨大な玉が円盤を襲うが、障壁に弾かれてしまう。


「うーん、円盤の中までは、魔力は少しも届かないのかしら・・・。」

 ナンバーファイブが、悔しそうに舌打ちをする。


「いや、そんなことはない。

 今の攻撃で、ほんのわずかではあるが、奴の首に付けた魔封じの紐が縮むのが見えた。


 紐の外観を見ると、かなり縮れているから、恐らくとっくに首はしまっているくらいのはずだ。

 ライゼル、おまえの首に巻いた紐・・・」

 ミライが思わずマイクを通して、言葉を発する。


「うん?お前たちに頂いた、装飾品の事か?

 いやあ、地上に戻ってからは与えられた新鮮な食材を賞味することができて、少し太ってしまった様子でね。

 折角の装飾品も短くなってしまい、一旦外して延長させていただいたよ。


 金属製の方は、工具を使えば簡単に外せたが、結構厄介だったのはこの紐の方でね。

 色とりどりできれいなんだが、外すのは苦労した。

 生体ロボットを作成して、色々と試しながら調整したんだが、3種類の生体ロボットですべて外すことができると判明した。


 折角の贈り物だから、捨てるのもなんだし、間に伸びる素材を挟んで、今も付けさせてもらっているよ。

 ハッハッハッハッ・・・・。」

 そう言ってライゼルは高らかに笑った。


「この円盤の中にも、我らと共に縮小したお前たちの仲間たちが奴隷として働いているが、奴らだけではこの地上を快適な環境に作り替えるには、足りないんだ。

 繁殖させて数を増やすにも、長寿の恐竜人ではなかなか増やすことも出来やしない。


 その点、短命の人間は良いようだな。

 多数の労働力が必要な時は、一気に繁殖させる事が出来る。

 便利な種として評価しているぞ。


 だが、どうしても刃向うと言うのであれば、多少の不便はやむを得ない。

 覚悟しておけ。


 何時までもこのままにしてはいられないから、これから3日間だけ待ってやる。

 それまでに良い返事をすればよし、しなければ命はないぞ。」

 そう言い残して、空のスクリーン映像は消えた。


 同時に、ミライたちの顔から、血の気が引いた。


「魔封じの紐を使って、奴らを欺いたつもりが、逆にこちらが騙されていたという事のようだね。

 奴らの方が、役者が1枚も2枚も上手だったという事だ・・・。」

 所長が、茫然と上空を見つめたまま呟く。



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