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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第6章 ちび恐竜人たちの逆襲編2
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第83話

                        10

「こ・・・これはこれは・・・、恐竜人様たち・・・、いかが致しました?

 この黄泉の国の施設は、哺乳動物用に作られておりましてぇ、体の大きな恐竜人様たち向きではないと、先般お断り申し上げたはずですがねぇ・・・。」

 事務机の前に座って書類に目を通していたダロンボが、驚いたように顔をあげて振り返る。


「そんなことを願いに来た訳ではない。

 お前たちは、チビ恐竜人たちとは何の関係もないなどと言いながら、陰で連絡を取り合っておったな。

 そうして、ウチーデノコヅーチがまだあることを知り、それが出現するタイミングを今か今かと待ち望み、そうして一気に襲い掛かり奪い去った・・・。


 更には、か弱い女の子までさらっていくなどという暴挙・・・、断じて許せるものではない。

 彼女をすぐに開放すればよし。

 躊躇ったり抵抗したりすれば、お前たちばかりか、家族にまで被害が及ぶぞ。」

 ミライが、厳しい表情でダロンボを睨みつける。


「な・・・なんのことですかぃ・・・、わしらが恐竜人様のお子様に手を出す事なんて、あり得ねぇことですだ。

 それとウチーデノコヅーチは、わしら鬼にとっても神器でしたが、ミライ様のご命令により、各家庭の神棚に祭ってあったものまで全て供出して、破壊いたしました。


 もう黄泉の国の中には、ひとっつもございません。」

 ダロンボは、ミライの話す内容が全く理解できずに、首を大きく横に振る。


「嘘を言っても無駄だ、鬼が襲い掛かってきて、ウチーデノコヅーチを奪って行ったのは事実だ。

 お前が知らなくても、お前たちの仲間の一人が、加担しているのは間違いがない。

 そいつはどこに居る!」

 ミライは表情を変えずに、厳しい口調で尚も詰め寄る。


「そうよそうよ、鬼が突然現れて、そいつがミリンダちゃんをさらって行ったのよ。

 ミリンダちゃんを返して!」

 ミライの影から、ナンバーファイブも悲痛な表情で叫ぶ。


「ミリンダちゃんが・・・、恐竜人様のお子様ではなく、人間の女の子でしたか・・・。

 だとしてでも、わしらには何の覚えもございませんなぁ。」

 ダロンボは、自信満々に胸を張って答える。


「だったら、黄泉の国の中を隅々まで調べさせていただく。

 お前たちの家の中までも調べることになるが、文句はないな。」

 ミライが、ドスの利いた声でダロンボを睨みつける。


「ああ、構わねぇですだ。

 但し、わしらにも小さな子供がおりますから、その子が怖がらねぇ様に気づかってやってください。」

 ダロンボはそう言って軽く会釈する。


「ようし、第1班から第6班までは地獄ステージから各ダンジョンまで、捜索するように。

 第7班から第9班までは、鬼たちの家と寮を探ってくれ。

 鬼の子はやさしく扱うように注意しろ。


 第10班はここ、事務所を含めたこの空間の捜索だ。

 天国への階段も調べることを忘れるな、いけ!」


 ナンバーファイブに黄泉の国の構造を聞いたミライが、部下たちに指示を出す。

 部下たちは、事務所の前後の扉を使って、散って行った。


「おめえさんは、黄泉の国を無茶苦茶に改造した奴の仲間だった子だなぁ・・。

 だったら知っているだろ・・・?

 わしら鬼たちが、人間にひどい事をするはずはねぇってことを・・・。


 わしらは、この星に住む生き物たちの成長を見守って行く立場なんだぁ。

 誰かに加担して、この星での立場を有利にしてやるとか、あるいは誰かの持ち物を奪ったりするなんてことは、決してするはずがねぇんだ。」

 ダロンボが真面目な口調で告げる。


「そ・・・・それはそうだと思うけど・・・・。

 でも、鬼の男が襲ってきたのは間違いがないのよ。


 外観は人間と変わらなかったけど、大っきな体で、毛皮のパンツ一丁なんて、鬼以外の何物でもないわ。

 そいつは、こんな細長い筒のような銃を持っていて、引き金を引くとハル君の灼熱の玉が出て来たのよ。」

 ナンバーファイブが、それでも見たことを事実として、強く主張する。


「ふうん・・・、そいつは鬼でっぽうかもしんねぇな・・。

 魔力を込めると、その魔法が発射される鉄砲だ。

 わしらが使える魔法は、鬼の能力など魔法力をあんまり消費しねぇもの以外は、この黄泉の国の中だけに限られるから、そんなものを持ち出したのかもしんねぇ・・・。


 そうなると・・・、おい、宝物庫を調べて来い。」

 ダロンボが、近くに居た部下の鬼に何かを手渡しながら命じる。


「はい。」

 若い鬼はすぐに立ち上がり、事務所の奥の扉へ歩き出す。


「おおっと・・・、おとなしくしていてくれないか、我々の捜索を邪魔するようなことをすれば、命はないぞ。」

 ミライがレーザー光線銃の照準を立ち上がった男に向けて、冷酷に告げる。


「そんな事しても無駄よ、ここ黄泉の国の中では鬼たちは無敵だから、どんな攻撃も効かないわ。

 おとなしくいう事を聞いていてくれているのだから、あまり刺激しない方がいいわ。」

 ナンバーファイブが、左手でミライの銃口を下に下げさせながら、ダロンボに目線を置いたまま告げる。


「そう言うこった・・・、聞かせてもらった内容で、ちょっと心当たりがあるものだから、調べさせに行くだけだぁ。

 決して損はさせねぇです。」

 ダロンボが頭を低くして答える。


「わ・・・分った、いいだろう。」

 ミライも納得して緊張を解いた。


『ガチャ』「事務所含め、地獄ステージ以降の空間と、天国への階段の捜索を終えました。

 天国への階段は一方通行で、引き返すことができずやむを得ず現世への扉から出ましたが、出た先は我々が先ほど通った基地と黄泉の国を繋ぐ巨大な洞窟でした。


 どこにも、ウチーデノコヅーチはおろか、ミリンダちゃんの姿も見当たりませんでした。」

 丁度そこへ、第10班が捜索を終えて戻ってきた。


「そうか・・・、ご苦労だった。」

 ミライが、直立不動の姿勢で敬礼する部下をねぎらう。


「第9班です。独身寮の各部屋、100室の捜索を終えました。

 ウチーデノコヅーチもミリンダちゃんも見つかりませんでした。」


「第8班です。北側80軒の住宅の捜索を終えました。

 何も怪しい点はありませんでした。」


「第7班です。同じく南側・・・・。」

 続々と捜索を終えた恐竜人兵士たちが戻ってきた。


 1時間後には、ダンジョンを逆走して戻ってきた兵士たちが報告を行った。

 どこにも、小槌もミリンダの姿もなかったようだ。


「ふうむ・・・、ここではなかったという事か・・・。」

 ミライが顎に手をやりながら、考え込む。


「これでお判りでしょう。

 わしらが人様のものを取ったり、ましてや人をさらったりすることなど、あり得ねぇことですだ。」

 ダロンボが自信満々で胸を張る。


「ダロンボさん・・・。」

 丁度そこへ、先ほど席を立って鬼たちの居住区へ向かった、部下の鬼が戻ってきた。


「そ・・・そうか・・・、じゃあ・・・、チュロンボもチュロンバもチュロンビもチュロンベも一家全員がか・・・。」

 ダロンボが報告を聞いて、深刻な表情に変わる。


「あ・・・あー・・・、前言撤回しますだぁ・・・。

 どうやら今回の騒動は、わしら鬼の仲間が引き起こしたことのようですなぁ・・・。」

 ダロンボが、くるりと向きを変えて、ミライ達の方に向き直って頭を下げる。


「といっても・・・、元仲間と申し上げたほうが、いいかもしんねぇ・・・。」

 さすがに言いにくいのか、語尾がはっきりとしない。


「元仲間だあ・・・、何を訳の分からないことを・・・。」

 ミライが右手に握り拳を作って、今にも掴みかかりそうな勢いだ。


「まぁまぁ冷静に・・・、落ち着いてくだせぇ・・・、今ご説明いたしますだぁ。


 チビ恐竜人様たちからの監視から解放されたわしらは、ようやく黄泉の国へ戻って参りました。

 そうして、すぐに全員を集めて、これからはどちらかの民族に加担して働くなんてぇことは、決してしないと全員の前で宣言したんですわぁ。


 閻魔大王様から、地上の生物たちの成長を見守ると言う、大きな役目を授かって、先祖代々受け継がれてきた仕事ですからねぇ。

 今一度原点に帰って、例えそれが我々の創造主と名乗るお方であっても、決して味方することなく、状況をただ見守るだけに徹しようと。


 ところが、その後に1家族が行方知らずになっていたことが分ったんですわぁ。

 でも、ミニ円盤とミニ球体に常に監視されていて、下手な事をすればすぐに攻撃されてしまう状態が長かった事ですし、更に人間たちと恐竜人様たちとの戦闘もありましたから、そのうちのどこかに巻き込まれて死んじまったものと考えておりました。


 なにせ、開放の前後は結構バタバタとしておりましたから、全員の安否をいちいち確認している暇もございませんでした。

 一家がいなくなったのが分ったのは、わしらが黄泉の国へ戻って、元の生活ができるようになってから一週間ほどしてからの事でしたからねぇ。


 でも、鬼でっぽうの事を聞いて、怪しいと思って部下に宝物庫を調べさせましたところ、わしらの神器の一つである鬼でっぽうが無くなっていることが分りました。

 それも、30本全部紛失しておりました。


 さらに、地上を行き来する時に便利な神器である、キントーンも一緒に消えておりました。

 これは、音もなく空を駆ける乗り物です。


 チュロンボ一家は先祖代々、われら鬼一族の神器を守る役割をしておりました。

 宝物庫の鍵は、わしとチュロンボしか持ってはおりません。

 神器が無くなっているという事は、チュロンボが持ち出したと考えて間違いがないでしょう。」

 ダロンボが残念そうにうつむき加減に答える。


「ふうむ、そのチュロンボとかいうやつが、一家で黄泉の国から数々の宝物を持ち出したという事だな。

 その宝物の中には、こんな形をしたものが含まれてはいなかったか?

 こう・・・1mほどの四角な箱に・・・。」

 ミライが両手で空中に四角形を作って、その上から右手をアーチ状に動かす。


「吸収器の事ですかな?

 わしらの神器の一つですなぁ。


 でも、吸収っていったって、一体何を吸収するんだか・・・、使い方がわかんねぇものだから、一度も使われることもなく、宝物庫に眠ったままの神器ですだぁ。

 そいつが何か?」

 ダロンボがうんうんと頷きながら、ミライの顔を見上げる。


「それは精神感応吸収機だ。

 元は我々恐竜人が持っていた魔法力の源、精神感応力の素を吸い取って培養し、原始哺乳動物やチビ恐竜人たち、更にお前たち鬼の祖先にも移植したものだ。


 恐らく、そいつが持ち去ったのだろうね。」

 ミライも納得の表情だ。


「おい、もう一度見て来い。」

 ダロンボは再び部下の鬼に鍵を渡して、宝物庫を見に行かせた。


「宝物庫の奥に、何かがあった隙間はあるのですが・・・、そこに何があったのか、リストを調べても分りませんでした。」

 すぐに部下の鬼が戻ってきて報告する。


「どうやら間違いはなさそうね。」

 ナンバーファイブも大きく頷いた。



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