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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第6章 ちび恐竜人たちの逆襲編2
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第82話

                     9

「悪いね、小槌は頂くよ。

 地球上から消滅したと言っていたけど、やっぱりどこかに隠し持っていたようだね。

 よかった、これで創造主様もお喜びになられるよ。」

 そう言って、男は地面に落ちた古びた小槌を拾い上げた。


「モンブランタルトミルフィーユ・・・暴風(サンダ)雷撃(ストーム)!!!」

 暴風を伴った雷鳴が、男の頭上を襲う・・・しかし、雲が低く非常に小規模だ。

 それでも、舞い上がる土埃に男は目を背ける。


「今よ、逃げて!」

 ミリンダがナンバーファイブの背中を思い切りたたくと、ナンバーファイブは高速で駆け出した。

『ピカッ』『ジュワッ』続いて走り出そうとした、ミリンダの目の前の地面が一瞬で焼け焦げ、煙が立ち上る。


「こまるなあ・・・、君たちを逃がすわけにはいかないよ。

 まだ、こちらの正体を明かすわけにはいかないからねって・・・あれ?

 一人逃げたかな・・・?それとも灼熱の玉で、蒸発してしまったのか・・・。


 なにせ恐竜人たち用に、最強出力にしてあったからね、こんなに小さな体じゃあ、当たれば跡形もなく消し飛んでしまうよね。

 まあいいや、逃げられた訳はないだろうし、一人だけでも捕まえられれば・・・。

 おとなしくしろ。」


 自分の頭よりも大きな銃口を目の前にちらつかされ、ミリンダは観念して両手をあげた。

 そうして後ろ手に縛りつけられると、男は左手でミリンダの体をつまみ上げて、そのまま円盤とは逆方向へ歩き出した。


「はぁはぁはぁ・・・、ミリンダちゃん・・・???」

 後ろに付いてきているはずのミリンダに振り返ったが、後ろには誰もいない。

 ナンバーファイブは急いでUターンして、来た道を戻る。


「あなたは鬼ね、ダロンボさんの仲間でしょ。

 道理で・・・、黄泉の国を貸したがらないわけだわ・・・、最初から、あたしたちを捕まえようとしていたってわけね。


 どうしてこんなことするのよ、恐竜人が自分たちを創ったなんて認めないって言っていたけど、あれは恐竜人側が不利な状況だったから、嘘を言っていたって事なの?」

 ミリンダが上半身裸で、毛皮のパンツ一丁の男の手の中で、男を睨みつける。


「いや、僕はただの通りすがりの・・・、なんて言っても通用するはずもないか。

 この格好だと、バレバレだね。


 角を外したぐらいじゃだめなんだろうけど、かといって君たち人間のように、服なんか着ると暑苦しくって苦手なんだよね。

 その通り、僕は鬼だけど、ダロンボさんとは関係がないよ。


 あの人は生真面目に、誰かに加担することはないなんて言っているけど、小さな恐竜人様は僕たちの創造主だよ。

 いうなれば、神だ。

 その神の手助けをするのが、神の子としての務めと思うだろ?


 だから僕の家族は、恐竜人様の為に働こうとしない、黄泉の国を飛び出したのさ。

 そうして、世界各地に散っている、巨石像の元にある基地に潜んだ。

 あれは僕たちの先祖が、時々地上に顔を出して、その地の有力者に命じて作らせた像なのさ。

 と言ってもロボットでも何でもない、ただの石像・・・、動かしているのは、この円盤。」


 男がベルトのボタンに手を触れると、目の前の何もない空間が突然開いて、中に数々のメーター類や計器類がひしめき合う、部屋の様子がうかがえる。

 空間が四角く切り裂かれた様に、外の景色の中に一部分だけ部屋の中を覗きこめるのだ。


「ステルス機能という・・・、君たちもどうやっているのかは分らないが、同じ機能を持っているようだね。

 周りの景色と同化して、存在しているけど、見えなくしてしまうんだ。」


 男はそう言って中へ入ると扉を閉めると、外からは、その姿はどこにも見えなくなってしまった。

 そうして、音もなく飛び立った。


「た・・・大変・・・。」

 その様子を影から見ていたナンバーファイブは、急いで恐竜人基地の方向へ駆け出した。


「はぁはぁはぁはぁ・・・。」

 来た時は、猛スピードで駆ければ、さほどの時間もかからずに到達した距離だが、十分の一サイズに縮んだ身の上では、果てしなく遠い。


 更に、路傍の石ころですら、巨大な岩となって進路を阻み、生い茂った雑草が密林のように先の視界を悪くする。

 それでも何とか、恐竜人基地近くまで到着したようだ。

 延々と続く、小麦畑脇のあぜ道を必死で駆けて行き、恐竜人の姿を探す。


「あっ・・・タイガさーん!」

 ナンバーファイブがようやく見つけた、ごつい体つきをした恐竜人の足元から名前を叫ぶ。


「うん?誰か呼んだか?」

 カマを持って、麦を収穫していたタイガが、辺りをきょろきょろと見回す。


「ここよ・・・、下、足元!」

 ナンバーファイブは両手を口に当て、思いっきり叫ぶ。


「うん?あれ・・・?な・・・なんだあ・・・?

 チビ恐竜人・・・じゃない・・・、こ・・これは・・・。」

 そう言いながら屈みこむと、ナンバーファイブの体を、大きな手でつまみあげた。


「い・・・一体・・・、どうしたっていうんだい?」

 タイガは、ナンバーファイブの信じられない姿を見て、目を丸くした。


「じ・・実はミリンダちゃんと二人で・・・。」

 ナンバーファイブは、ミリンダと二人でチビ恐竜人たちの円盤に潜入しようとしたことをタイガに告げる。


「なんだってそんな無茶なことを・・・、一言相談してくれれば・・・。

 なんて、小言を言っている場合じゃないな・・・、すぐにミライの所へ行こう。」

 タイガはナンバーファイブを掌に載せたまま、駆け出した。



「小槌を取られた・・・?

 小槌というのは、我が恐竜民族の神器、ウチーデノコヅーチの事か?

 どうしてそれを君が持っていたんだ?


 そうして、一体誰にとられたというんだい?」

 タイガが連れてきたミニサイズのナンバーファイブの報告を聞いたミライは、今聞いたことが事実として飲み込めないようで、何度も念を押して確認しようとする。


「ごめんなさい・・・、前にミライさんに聞かれた時に嘘を言っていたの。

 あの小槌はずっと前に鬼の能力で出した物で、便利な機能だからそのまま持っていようとして・・・。


 でも、いつもはスーツケースに入れて、これまた鬼の能力で収納していたから、地球上には存在していないことになっていたのよ。

 たまに取り出して使う時だけ・・・、でも、どうやら、その使っている時を探知されて、取り上げられてしまったのね。


 あたしたちが小さくなってから襲われたから、とても敵わなかったわ。

 あいつは、角を取っていたけど鬼ね、間違いがないわ。

 裸で毛皮のパンツ一丁だったから、そんな奴は他にはいないわ。」

 ミニサイズのナンバーファイブが、タイガの手のひらの上で、ミライに目線を合わせる。


「鬼だって?

 黄泉の国を守っているという鬼の事か?

 やはり・・・、チビ恐竜人たちが創ったという鬼たちが絡んでいたという事か。


 しかし小槌がなければ、あいつらだって地球侵略はあきらめていたはずだ。

 その為に、神器であるウチーデノコヅーチですらも破壊したと言うのに・・・、どうして・・・。」

 ミライは、目に涙を溜めながら悔しがる。


「ご・・・ごめんなさい・・・。

 あたしだったら、どんな罰でも受けるわ・・・、だから、捕まったミリンダちゃんを助け出して、お願い。」

 そう言って、ナンバーファイブは両ひざをついたまま、詫びるように両手を合わせる。


「ミリンダちゃんが捕まったのか・・・、そいつは許せんな。

 黄泉の国を一斉攻撃だ。」

 ミライはすっくと立ち上がった。


「ようし、我がタイガ中隊全員に支度をさせよう。

 おいハラス、すぐに農場へ行って、全員を招集して来い。

 これから鬼退治だ。」

 タイガは、いつものようにハラス隊員に命じると、ハラス隊員はすぐに駆け出して行った。


「しかし、ウチーデノコヅーチを奪われてしまったとなると、ファイブちゃんは元の大きさには戻れないってことだな。

 こりゃ不便だ・・・。」

 ハラスを見送った後、タイガが会議室のテーブルの上に置いたナンバーファイブを、気の毒そうに見つめる。


「ああそうだ・・・、元の大きさに戻るのを忘れていたわ。

 はいこれ・・・。」

 ナンバーファイブは、すぐにスーツケースを出現させると、中をまさぐって小さな小さな小槌を取り出した。


「なにせ、自分で振っても自分には効果がないもので・・・。

 大きくなあれって願いながら振ってください。

 小さくて振りにくいかもしれませんが、自分のサイズでしかスーツケースを出せないので、小さい時に出すと小さくなってしまうのですよ。」


「大きくなあれ、大きくなあれ・・・。」

 ナンバーファイブに言われて、タイガが親指と人差し指の爪先で、小さな小槌をつまんで振る。

 すると、たちまちナンバーファイブが、テーブルの上で元の大きさに戻った。


「前にハル君たちと、竜神を助けに向かった時に、あの時は自分たちでお互いに小さくなりながら小槌を使ったから、その都度小槌も小さくしなければ振れないんで、それぞれのサイズで小槌を鬼の能力で複製したの。


 本来なら、途中経過の小槌はすべて廃棄してしまうんだけど、ハル君がもう小槌は地球上には存在しないって言っていたから、ああこれが最後の1個だと思って・・・、万一壊れちゃったら代替えが効かないから困るでしょ。

 だから、そのままとっておいたのよ。


 意外なところで役に立ったわね。」

 ナンバーファイブが、明るく笑う。


「だ・か・ら・・・・、こんなもの、残しておくから・・・、こんなことに・・・。」

 ミライが、そんなナンバーファイブの態度を見て、苦虫をかみつぶしたかのように、憎々しい表情に変わる。


「ごめんなさい、ごめんなさい・・・、決して、そう言った意味なんかじゃ・・・。

 あたしったら・・・、どうしましょ・・・。」

 自然と墓穴を掘ったナンバーファイブは、ミライの怒りを静めようと、右往左往する。


「まあいい、多少の事には目をつぶろう。

 悪いのは、ウチーデノコヅーチをつけ狙って、更にはミリンダちゃんをさらって行った、鬼たちの方だ。

 じゃあ行くぞ。」


 レーザー光線銃で武装した、タイガ中隊が揃ったことを確認して、ミライが全員に進撃を命じる。

 円盤発着場脇の会議室を出ると、通路を進み左に曲がって、監視部隊本部室の前を通り抜ける。

 すぐに左に曲がってそのまま進むと、突き当りが監視部屋だ。


 監視部屋を通り抜けて、長い長い通路を進み、突き当りのドアを開けると、目の前には広い空間が出現する。

 黄泉の国へと続く、洞窟だ。

 傍らにある金属製のレールを辿りながら進んで行くと、行き止まりとなるが、そこには一部分だけ、岩壁ではなく、木質の壁が存在する。


『ドッカーン』タイガ中隊長が、何のためらいもなく右足で頑丈な木の壁を蹴り破る。

 黄泉の国が、無事に鬼たちの手に戻った後で、ダロンボたちが恐竜人基地との決別の為に、とりわけ頑丈な扉を釘で打ち付けて隔てた壁だ。


 その先は、鬼たちの居留区となっていて、目の前には独身の鬼たちの寮であるビルが建っている。

 大きな音に驚いて、家の窓から鬼の妻たちが顔をのぞかせるが、見向きもせずにそのまま部隊は真っ直ぐに行進していく。

 そうして、ダロンボたちの事務所の裏口から事務所内へ入って行く。


『ダダダダダッ』「動くな!」

 ダロンボたちが事務仕事をしている事務所内に、一気に駆けいった恐竜人部隊は、レーザー光線銃を構えて威嚇する。



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