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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第6章 ちび恐竜人たちの逆襲編2
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第79話

                       6

「なんだったら、あたしがあいつらを捕まえて、どの装置が役に立つか、聞きだしてあげてもいいわよ。」

 ミリンダが、出て行ったばかりの台車を追いかけて行こうとする。


「おやめなさい、彼らだって自分たちの役割を果たそうとしているだけじゃない。

 すべてがこちらの思い通りにはならないこともあるのよ。

 その都度怒っていたら、対外関係はうまく成り立たないわよ。


 そんな事よりも、巨大石像に対抗する手段を考えたほうがいいわ。」

 ミリンダを押しとどめる声がかかる。


「ミッテランおばさん・・・。」

 ミリンダが振り返る。


「銀河警察が帰って行く訳だから、ミッテランおばさんも、釧路へ帰ってこられるのよね?」

 ミリンダの顔が急に明るくなる。


「そうね、とりあえず銀河警察が帰って行くのを見届けて、荷物を整理してから帰るから、今週末になるけど、帰るわよ。」

 ミッテランも笑顔を返す。


「ああっ・・・そういえば・・・、このところ、色々とあってすっかり忘れていたわ。

 ミライさーん、ちょっと。」

 ミリンダが、会議室を後にしようとするミライを呼び止める。


「なんだいミリンダちゃん?

 これから、銀河警察の見送りに行かなけりゃならないから、よほど急用でなければ、後にしてくれるかい?」

 ミライが、申し訳なさそうに両手を合わせながら告げる。


「そう・・・仕方がないわね、ミッテランおばさんも気になっている様子だから、まずはそっちが先ね。」

 ミリンダも一緒にミライ達と会議室を後にする。


 そうして円盤の発着場の開口部から、飛行能力で地上へ上がって行く。

 地上では既に、巨大な円盤がゆっくりと浮かび始めていた。


「全員が乗り込むところを確認したな?」

 ミライが、銀河警察官たちを引率していたバーム小隊長に念を押すように確認する。


「はい、一人も抜け出した者はおりません。

 彼らが円盤を下りる時点から今まで、ずっと監視用のミニ円盤とミニ球体をつけていましたので、間違いありません。」


 バームは自信を持って答える。

 円盤はその後音もなくゆっくりと上昇し、やがて小さな点になったかと思うと瞬時に消えて見えなくなった。


「瞬間的に月軌道にまで達し、1時間ほどで太陽系外周にまで到達し、その後は亜空間飛行に移ったようだ。

 こちらの観測限界をすぐに越えてしまった。」

 発着場の望遠鏡を操作して、円盤の行方を追っていたミライが振り返って告げる。


「そういえば、何か用事があったのじゃなかったのかい?ミリンダちゃん。」

 銀河警察の円盤が去り、緊張が解けたミライが、尋ねてきた。


「そ・・・そうよ・・、ミライさん、オーラを奪う装置に関して教えてちょうだい。

 あの時は米軍が襲われたという情報が入って来たからうやむやになってしまったけど、結局どうしてハルがオーラを失って倒れたのか未だに分ってはいないのよ。


 オーラを奪う装置っていうのは、大きいの?

 例えば、大きな箱というかビルみたいな建物にしか納められないようなくらいの大きさ?」

 ミリンダが、考えていた質問をぶつける。


「いや、1メートル角くらいの箱に、細長いチューブ状のものが取り付けられたような形をしている。

 それほど大きなものではないので、どこへでも持ち運べる程度のものだ。


「そう、だったら、粗末な掘っ立て小屋にだって入るわよね。」

 ミリンダが、思い当たる節があるような、自信を持った表情で確かめる。


「ああ、そうだが・・・、ハル君が精神感応力の素を失って倒れたことを、まだ調べているのかい?

 精神感応吸収装置は、そう言った装置の記録があったと言うだけで、装置自体の所在は分っていない。


 前に、元老院が精神感応力を持ってはいないと言っていたのが気になったので、いきさつを調べたら、そのような記録があったと言うだけだ。


 なにせ、最初に精神感応力の種を取得した後は、それを培養して配布して、その後は巨大化したチビ恐竜人の子孫にも精神感応力の素は引き継がれたという事だから、初期の頃に使っただけで、すぐにお蔵入りとなった技術のようだ。


 だから、遠い昔の技術といったところだし、その装置が未だに存在しているのかどうかは、記録上からは読み取れないんだ。

 恐らく、チビ恐竜人とは関係がないと思うぞ。


 それよりも、そう言った科学力が存在すると言う事は事実だ。

 広い宇宙の中には、チビ恐竜人たちと同じかそれ以上の科学力を持つ星人がいたって不思議ではないはずだ。

 そう言った存在がこの星にも飛来していて、巨大石像を動かしているのかも知れないだろう?」

 ミライがもっともらしい事を、頷きながら話す。


「まあ、そんな事ならかえってすっきりするわよ。

 ミライさんたち恐竜人が海底に潜んでいたように、巨石文明の古代人が、地下深くに潜んでいたとしたって不思議ではないものね。


 でも、そんなことって・・・、そうそう起こりえないでしょ?」

 ミリンダが、そう言って唇をかむ。


「まあ、そんなに気にすることでもないのではないか?

 ハル君は、もう元気になってきているのだろう?」

 ミライとしては、どうしてミリンダが、オーラを吸い取る技術の事を気にするのか、分らない様子だ。


「そうはいかないわよ。

 ハルが、いつも魔封じの紐を身に着けていたから、それがリミッターとなって、オーラを全部吸い取られずに済んだから良かったものの、下手をしたらそのまま死んでしまっていたかもしれないのよ。」

 ミリンダの表情は、真剣そのものだ。


「ああ、そうだったのか。

 道理でしつこく気にしていた訳だ。


 だったら、言ってくれればよかったのに・・・、何だったら、元老院の奴らを何人か連れてきて、装置の事を聞きだしてもいいが、どうする?」

 ミライは、どこまでも協力は惜しまないと言った態度だ。


「いえ、いいわよ、しらばっくられたらどうしようもないし、あいつらが犯人だったら、はいそうでしたなんて、絶対に言うはずがないもの。

 あたしが知りたかったのは、オーラを吸い取る装置が巨大な物かどうかって事だけよ。


 小さかったのなら、やっぱりチビ恐竜人たちの装置が使われた可能性は残るはずでしょ。

 アマンダ先生に聞いたけど、南米の魔術者がいたっていう掘っ立て小屋は、支柱に布を張ったような粗末な作りだったって言っていたから、大きな装置が近くにあれば、違和感があったはずだから、誰も近づかないでしょ。


 それを確かめたかったっていうだけ。

 一番怪しかった銀河警察が飛んで行ってしまったから、これで当分は平和でしょ。


 地球人の攻撃力を計っていたのか何か知らないけど、巨石像が動かなくなれば、あいつらの仕業だったってことが明白になるし、充分ではあるのよ。」

 ミリンダが笑顔で返す。


「まあ、そうだな。あいつらの仕業だったとしても、既に太陽系から離れてしまったはずだ。

 戻って来ても、下手な行動をすればイオンビームの餌食になるだけだし、近寄っては来ないだろう。

 過ぎたことだという訳だな。」

 ミライも笑顔を見せた。



 ところが、巨石像の攻撃は一向に収まることはなかった。


「地中海から突然巨大な石像が出現して、開拓中の農耕地が襲われました。

 S国軍が向かいましたが、古代の神像のような形をしていて、灼熱の玉を作りだし、炎の渦で攻撃してきます。

 戦闘機や戦闘ヘリ共に甚大な被害を受けています。


 パワードボディスーツで強化した兵士が到着して攻撃を開始し、右腕を破壊したところでようやく動きが止まりました。

 今では、地中海を望む高台に、そのまま彫像として立っております。」


 銀河警察の円盤が立ち去った翌日にも関わらず、スターツ王子が現場の惨憺たる映像を送って来た。

 さらに日本でも・・・。


「北の村が襲われているという連絡が入った。

 すぐにネスリー君には向かってもらったが、念のためにミリンダちゃんと一緒に行ってくれないか?ガガガ」


 2日後には所長からジミーに緊急無線が入って来た。

 すぐに、ジミーとミリンダが瞬間移動で、仙台市の北の村へ向かう。


『ガガガガガッ』『ズゴーンッ、ドッガーンッ』着いた傍から、銃撃音や爆音が聞こえてくる。

 2人は急いで、爆音のする方向へと駆け出す。

 そこでは、巨大な魔人像がこれまた巨大な亀を相手に戦っていた。


「やあ、よく来てくれた。

 巨大な像で力が強いのに加えて、灼熱の玉を作り出したり炎を吐き出したりする。

 どうにも厄介な相手だ。


 村の四分の一ほどが被害に遭った。

 召喚獣で何とか奴の動きを食い止めるのが、精一杯といったところだ。」


 巨大な亀はネスリーが召喚した玄武で、魔人像にぶつかって、進行を食い止めているようだ。

 更に、仙台市警察官がバズーカ砲や新型弾で攻撃しているが、渦巻く炎ではじかれ、有効な攻撃は出来ていない様子だ。


「モンブランタルトミルフィーユ・・・大爆発(エクスプロージョン)!!!」

 ミリンダが爆風を伴う、高温の玉を発射する。

 しかし、魔人像に当たる前に灼熱の玉と当たって相殺され、消えてしまった。


「仕方がないわね、天と地と水と炎に宿る神々と精霊たちよ、わが願いを聞き入れ、わが手足となりて役目を果たす、使途を授けよ。いでよ九尾の狐!!!」


 晴れた空に一瞬で雲が垂れ込め、一筋の光が差し込むと、その光を伝って1体の神獣が舞い降りてくる。

 9色の尻尾を持った狐だ。

 九尾の狐は、魔人像の背後から襲い掛かり、左肩口に直接噛みついた。

 不意を突かれた魔人像は、左腕を捨て飛びのくと、そのまま山の方向へ逃げ去った。


「追うのよ。」

 さすがに今度は、逃がさずに追い詰めて止めを刺すつもりのようだ。


 ミリンダもネスリーもジミーも魔人像を追いかけて高速で駆け出す。

 着いた先は、小高い丘の上で、魔人像はそこにたどり着くと、そのままそこに胡坐をかいたように座り込み動かなくなった。


「破壊しちゃいなさい。」

 ミリンダが、一緒に駆けてきた九尾の狐に、魔人像を破壊するように指示をする。


「いや、破壊しなくてもいいよ。

 恐らくただの石像だろう。

 いつまた動き出すかも判らないけど、破壊したところで一緒さ。


 ただの石像を動かせるなら、破壊して小さな石になっても動かして、雨のように降らせたりも出来るだろう。

 所長が、破壊されたモアイ像を分析してみたけど、動力のような装置は見つからなかったって言っていた。

 だから、これはこれとして残しておこう。

 塊にしておいた方が、動き出した時に見つけやすい。


 どうやら、この場所で土中に埋まっていたのだろう。

 見た目はただの小山だったのが、中に魔人像が眠っていたという訳だ。」

 ジミーが言うとおり、辺り一面土が掘り返された様に、赤土が露出して草や木が根ごと至る所に飛び散っている。



「いやあ参りましたね、世界中あちこちで、巨石像が暴れ出している。

 しかも1万年から数百年前の巨石像が、何の動力もなしに勝手に動き出して、しかも魔法まで使うんだから、信じられないですよね。」

 仙台市の研究所ビルにやってきたジミーが、所長に状況を報告する。


「ふうむ・・・、ネスリー君の召喚獣でも動きを止めるのがやっとだったという事だね。

 今の所、襲ってくる巨石像の数が少ないから何とか追い返せるが、大軍団でこられたらひとたまりもないね。

 もっと配備する人数を増やさなければいけないようだが、いかんせん魔術者の数が圧倒的に足りない。


 パワードボディスーツもそうだが、対応できる数にするには相当な年月が必要になりそうだね。

 恐竜人と戦った時は、敵が分散してくれたし、こちらから仕掛けることができたから、それほどの大群を必要としなかったが、この広い地球上の各所を守ろうとすると、かなりの人数が必要になるね。


 とりあえず無線連絡を密にして、襲われた場所に応援を向かわせることで対応するしかないだろうが、厳しい戦況が続くだろうね。

 なにせ、未だに敵の姿すら見えてこないのだから。」

 所長が難しい顔でうなる。


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