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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第6章 ちび恐竜人たちの逆襲編2
78/201

第78話

                      5

「スフィンクスといえば、年代測定するまでもなく、おおよそ5千年ほど前の古代エジプト文明の遺跡だ。

 そのような時代に、巨大ロボットを動かす技術や、破壊光線に加えて強力なバリアーなど、高度な科学力があったとは、到底信じられん。


 しかし、今見たことは、まぎれもない事実だ・・・、一体この星はどうなってしまったんだ?」

 所長は、先ほど見た光景を真実と認めることができず、考え込んでしまった。


「そうですね、恐竜人に続いて、今度は古代の巨石ロボットですか・・・、本当に何でもありですね。

 でもまあ、竜の使いから始まって、高みの存在である鬼や竜神様に加えて、黄泉の国には本物の鬼がいたし、それ以前に、我々の周りには魂の集合体である魔物だっていた訳ですし、何が起こっても不思議ではありませんよ。


 それよりも、そんな古代の文明のロボットが、どうして今頃になって暴れ出したかのほうが、不思議ですよね。

 もっと以前に暴れたほうが・・・、それこそ最終戦争以前の文明が発達した時の方が、人だって多かっただろうし、破壊しまくるにもやりがいがあったのではないですかね。」

 ジミーが、まじめな顔で答える。


「ふうむ・・・、そうかも知れんな、すると、征服とか、破壊活動が目的ではないのかも知れんという訳だね。

 確かに、近隣で警戒に当たっていた軍を片付けるだけで、援軍にはほとんど手を出さずに引き上げている。

 これは、中南米の時と同じ行動だ。


 裏にもっと違う意味があると言う事か・・・、それはいったい何なのか。

 相手の出方を探っているのか・・・、例えば援軍到着までの時間を計っているとか、あるいは兵力とか武器の破壊力などを調べていたのか・・・、それもあるのかも知れんな。


 今回は途中からバリアーで攻撃を弾いたという事は、大体の攻撃はバリアーで防げるという事が、判明したからとも言えるね。

 そうして、元あった場所へ戻って、活動を止めたという事は、我々には手が出せないと言う自信の表れだろうね。


 まあ、スフィンクスなんていうのは、人類最古の古代遺跡だから、襲い掛かってでも来なければ、おいそれと破壊することは出来ないし、動きの仕組みを探るために、分解しようにも現代の科学ではあの巨石を扱うのも大変な技術だ。


 確かに、何も手出しは出来ないね。

 なにせ、雨のようにミサイルや爆弾を討ち合った最終戦争ですら、エジプトのピラミッドやスフィンクスは破壊しなかったようだからね。


 日本の京都もそうだったが、新型爆弾で建物だけは残して人だけに被害が及ぶような爆弾が、ここでも使われたのかも知れないね。」

 所長は、苦笑いのような引きつった笑みを浮かべた。


「すると、今後も古代遺跡から巨大なロボットが飛び出してくるなんてことが、起きるのでしょうかね。

 ピラミッドに似た巨石文明は、南米にも多くあるようですが、そこから飛び出してきますかね?」

 ジミーが心配そうに漏らす。


「まあ、南米あたりであれば、生存者はごく少数のようだから、被害は小さくて済むだろうし、もしかすると以前から巨石ロボットたちが動いていたのかも知れない。

 それが、今回米軍がアメリカ大陸で本格的な活動を開始したがために、中南米で衝突したとも言える訳だ。


 北アフリカも同様で、ヨーロッパで展開している復興計画が進んで、アフリカ近傍にまで及んできたことにより、北アフリカで攻撃があったとも考えられるね。」

 所長が、様々な可能性を想定し、何とか筋道立てた解を得ようと必死な様子だ。


「でも、それだったら、昨日の九州を襲った巨大な顔はなんだったの?

 あれは、明らかに九州の町に襲いかかろうとしていたわよ。

 抵抗しようとしたら、こっちに攻撃を仕掛けて来たし、様子見とはとても思えなかったわ。」

 ミリンダが、大きく首を振る。


「そうだったね、あのモアイ像は、はるばる太洋をこえてやって来たようだったからね。

 かなりな被害を及ぼしたし・・・。」

 所長が腕を組んで考え込んでしまった。


「それに、南米で活動していたっていうのなら、昨年ハルが南米を歩いて南極まで行ったときだって、巨石ロボットに出くわしても良かったんじゃない?


 第一、そんな巨大ロボットが動き回っていれば、世界中を見張っていたっていう恐竜人たちにだって、気づかれていたはずだし、タイガさんはともかく、ミライさんが何も言わなかったという事は、巨大ロボットの事は知らなかったはずよ。


 第一、使っている魔法はハルの魔法でしょ?

 あれはきっと、南米でハルのオーラを吸い取った奴らとグルで、ハルの魔法を使って攻撃を仕掛けてきているのよ。


 一体どんな奴が・・・。」

 ミリンダが、いっそう厳しい目つきで首を振る。


「それもそうだね・・・、そうなると・・・ふうむ、全く分からない。

 なにか行動に意味があるのか・・・、円盤で盾になって攻撃を防いだ時には、それ以上仕掛けようとはせずに引き上げた。


 次にミリンダちゃんが魔法攻撃を仕掛けた時には、集団で向かってきた。

 更に、ハル君の灼熱の玉と炎の竜巻だ。

 その時に召喚獣を召喚し戦ったが、モアイ像たちは分が悪いとなるとすぐに逃げ出した。


 更に、今回もハル君の魔法を使っていたが、パワードボディスーツに身を包んだ超人軍団が援軍に行き、バリアーを切る攻撃のタイミングを計って攻撃を仕掛けると、やはり逃げ出した。


 こちらの出方と攻撃力を推し量っていることには間違いがないようなのだが、それにしてもなぜ・・・。

 古代文明を作った民族が、未だに存在しているのなら、なぜこのタイミングで出て来たのか・・・?

 さっぱりわからない。


 まあ、昨日持ち帰ったサンプルは分析に出したことだし、巨石文明の資料なども漁ってみることにするよ。

 意外と、古代文明人たちも、闇の王子を怖がっていたのかも知れないね。

 何かわかったら連絡する。」

 状況を確認した後、これと行った作戦指示も出せないため、ミリンダ達は再び釧路へと戻った。



「地球に住む、人間・魔物・恐竜人たちに、我らが種族の汚点とも言える犯罪者たちの身柄を、預けても良いかどうか、君たちの力を測定させてもらったが、その評価結果を用いて、母星とも相談した結果を告げる。


 君たち個々人の魔法力や打撃力など攻撃能力を測定させてもらったが、どれも取るに足らない数値だった。

 とても、彼らを拘束しうるに足る力とは評価できなかったが、それでも彼らの科学力の結晶とも言える様々な装置を所有しているという事が確認できた。


 彼らと同等の装置を所有していれば、彼らの科学力に負けずに対抗できると信じよう。

 その為、彼らの身柄は引き続き君たちに預けることとして、我々は母星へ引き上げることにした。

 今後とも、しっかりと警備してくれたまえ。」


 銀河警察官であるラティエが、演壇に立ち手持ちの小さなモニター画面を見ながら、結果を報告する。

 演壇といっても、恐竜人基地の中の会議室テーブルの上に置いた、焼き鳥の缶詰の上に乗っての演説である。


 ミライ中隊長が、余りにもうまいうまいというもので、所長が気を利かせて保存しておけるよう缶詰にしつらえて、今回も大量に土産として持ってきたものだ。


「チビ恐竜人たちの装置をぶんどったから、それで十分に対抗しうるっていうんでしょ?

 そんな事最初から分っていたのだから、あたしたちがあの変な風船ロボットに対して、攻撃力を試す必要性はなかったんじゃないの?」


 ミリンダが、そんなラティエの言葉が納得しかねるとでもいうように、列の後方で小声で呟く。

 釧路の警護を行う担当者なのだが、銀河警察の動向も気になるため、所長を連れてやって来たのだ。


 とりあえず、ハルが少しずつ回復してきたので、留守番をお願いした・・・というよりも、授業をさぼる絶好の言い訳を、ミリンダが無にするはずもないのである。


「まあ、そうだけど・・・、でも結局はチビ恐竜人たちを地球にそのまま置いていいと、認めてくれたわけだから、いいじゃないか。

 あまり深くは追及しない方がいいと思うよ。


 気が変わったりしたら、面倒だからね。」

 そんなミリンダを、所長が何とか押しとどめる。


「まあ、我々のセーブした力では、とてもチビ恐竜人たちを押さえつけることが出来るとは思えないが、それでも奴らを拘留したいと言う気持ちは認めてやろうと言う、暖かい判断だと信じよう。」

 所長たちの隣で演説を聞いているミライが、舌を出しながら小声で話す。


「では、我々はこれにてお暇する。

 犯罪者たちの処遇を含めて、銀河警察として協力は惜しまないつもりだ。

 どんな小さなことでも構わないから、相談してくれ。」

 そう言って、ラティエは演壇を下りようとする。


「じゃあ、厚かましい願いではありますが、一つだけ要望があります。」

 すると、参列者たちの後方から、声が掛けられた。


「なんですか?」

 ラティエが立ち止る。


「実は、あなたたちもご存じかも知れませんが、このところこの星の古代遺跡が突然動き出して、我々の軍隊を攻撃すると言う奇妙な現象が起こっています。


 その遺跡の一つは有名な5000年以上も昔の遺跡であり、もう一つは放射性同位体の分析で年代を割り出したところ、驚くことに、今から1万年も前に建造された石像であることが判明いたしました。

 更には、数百年前に建造されたと推定される巨石が、はるばる海を渡って襲ってきた事件も発生しております。


 どちらの石像も、現在は活動を停止しているのですが、我々が今持っている技術力では、石像を破壊せずに内部状況を分析する手だてがありません。

 なにせ、どの石像も巨大すぎて、分析装置に掛けられないのです。


 恐竜人たちの技術力であれば、そのような解析も可能であろうとは考えているのですが、地上へ復帰したばかりの恐竜人大陸では、その復興に全力を挙げておりまして、数ある装置リストの中から、分析装置などを見つけ出しているだけの余裕がございません。


 申し訳ありませんが、その遺跡の分析をお願いできないものかと・・・。

 その装置を持ち合わせていなくて分析が無理であるならば、せめてそう言った装置の名称や形状などをお伺いできないものかと・・・。


 元々は同じ文明を基とする技術、恐らく似通った装置が存在するでしょう。

 ある程度形だけでも判明すれば、検索も可能となると期待しているのですが・・・。


 ついでに言ってしまえば、あなたたちの技術力で可能な事と、その装置名称や操作方法など、リストにしていただければ、我々が今実施している、次元金庫内容物名称から、ある程度の効能を推察しては取り出して、確認している作業が簡便化されるのではないかと期待しております。


 なにせ、めったなことは出来ないので、慎重に慎重を期して装置の解析を行っているものでして、遅々として作業が進んで行きません。

 あなたたちが犯罪者として警戒している彼らの装置を、我々が存分に駆使することができれば、彼らを拘束し続けることがより確実となるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。」


 列の後方から人をかき分けて、白衣姿の初老の男性が一番前まで出てきた。

 所長だ、今も研究所と恐竜人基地を往復しながら、ミライと一緒に次元金庫に保管されているチビ恐竜人たちの装置リストから、有用な装置を見つけ出しては復興させているのだが、その作業を加速させようという狙いがあるのだろう。


「申し訳ないが、それは出来ない。

 我々は、紛争や戦争など、他星の騒動にはどちらにも加担してはいけないと、規定されている。

 今現在、この星で発生している騒動など、我々の干渉権限を越えている。


 君たちが取得した未知の技術を使用することに、協力することも禁じられている。

 なぜならば、度を越した技術力の介入は、その文明を破壊しかねないとも言われているからだ。

 君たちが、理解しえない技術で作られた装置は、使い方を誤ると君たちを自滅への道へ導きかねない。

 だから、未知の装置取得に協力することは、出来ないのだ。


 君たちが、勝手にその装置の仕組みを見つけ出して、有効に使うと言う事を、邪魔することはしないがね。」

 ラティエはそう言って演壇を下りると、他の銀河警察官たちと会場を後にした。(と行っても、バームたち恐竜人の世話係が、彼らをテーブルの上から降ろしでやり、その後発着場まで台車で運んであげたのだが・・・)


「なあにが、他星の騒動には手を貸せないよ。

 更には、度を越した技術力の介入は出来ません・・・?

 今さっき、チビ恐竜人たちの装置を持っているから、彼らを抑えることは出来ると判断したって言ったばかりじゃないのよ。


 その為に、今ある装置の使い方を教えてくれってお願いしているんでしょ?

 それをどうして断るのよ・・・。」


 バームたちに連れられて、会議室を出て行く姿を見送りながら、ミリンダが悔しそうに唇をかむ。

 今にも、上級魔法で攻撃しかねない程の鼻息の荒さだ。


「まあ、彼らの言っていることは、矛盾しているようだが、正しいことも言ってはいる。

 あまりにも急激な技術力の進歩は、文明を破壊しかねないと言う事は、まぎれもない事実だ。


 ダイナマイトなどの爆薬の発明に始まり、TNTなどの高性能爆薬や、ついには原子爆弾まで作り出してしまった人類は、一度は小規模な使用だけで思いとどまった訳だが、その後1時的平和が続いたことにより、過去の悲惨な歴史が風化すると、もう一度、禁断の力を使用してしまった。


 それが、最終戦争と言われる、先の世界大戦だが、ほぼ全世界規模に及んだ戦火は、世界中の人々の80%以上を犠牲にしたと言われている。


 更に、戦争が終わっても悲劇は続いた。

 核の冬と言われる、大気中に蔓延した細かな塵が太陽光線を遮り、地表は氷河期さながらとなり、生き残った人々を更に打ちのめした。


 そうして残った人類の更に90%が犠牲になったと言われている。

 つまり、実に98%の人々が最終戦争により、失われてしまったのだ。

 そう言った歴史を繰り返すべきではない。


 私は、チビ恐竜人の装置を調べて復興に役立てようとはしているが、あくまでもここ恐竜人大陸に限ろうと考えている。

 門外不出の技術として扱い、人類側は、今ある技術だけで復興を継続していくつもりだ。


 幸いにも、マイキーの国の魔術者たちによる、農作物の収穫を向上させる力もあるし、協力的な魔物達により、手は足りているのでね。

 まあしかし、せめて石像の分析ぐらいはお願いしたかったのだが、残念だったね。」

 そう言って所長は、ため息をついた。



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