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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第6章 ちび恐竜人たちの逆襲編2
74/201

第74話

                    1

「これはただの飴玉のようですね。

 でも、確かにあの時は・・・。」

 アマンダ先生は、どうしても納得ができない様子だ。


「恐らく、こうよ・・・。」

 ミリンダが睨むと、アマンダ先生の手のひらの中に、小さな炎が出現した。


「アマンダ先生が唱える魔法に合わせて、無詠唱で魔法を使ったんだと思うわ。

 初級魔法くらいなら、あたしだって無詠唱で出来るようになったのよ。」

 ミリンダが悔しそうに唇をかむ。


「そ・・・そんな・・・じゃあ、私は騙されて・・・。」

 アマンダ先生は、今にも泣きだしそうに目に涙をためている。


「でも、人の魔法力を吸いとるなんて事、出来るのかしらね。」

 ミリンダが首をかしげる。


「難しいわね、よほど高度な魔術を会得していないと。

 それに、ハル君は強大な魔法力を身に着けていたから、そのオーラは膨大だったはずよ。

 それをほとんど全部吸い取ってしまうなんて・・・、普通の人間にできる事とは思えないわね。


 第一、そんなすごい力を持っている魔術者が、人のオーラを欲しがるなんてことも、考えにくいわね。

 自分で精神修養をして、オーラを高めればいいだけだものね。

 その方が、よほど効率的だし、持続性もあるから、人のオーラを欲しがったりするはずもないわ。」

 モニターの向こう側で、ミッテランも首をかしげる。


「とりあえず、ハルをどうするかよね。

 また、ゴローに頼んで、オーラのギフトをしてもらう?」

 ミリンダが、ゴローに向き直る。


「ぼ・・・僕は別に構わないけど・・・。」

 ゴローは、すぐにハルの体にのしかかろうとする。


「待って、オーラが傷ついたわけでもないし、完全に枯渇した訳ではないのだろうから、前と同じように、治癒魔法を当ててあげて、そのあと安静にしていれば、数日で元に戻ると思うわ。


 ゴロー君のオーラのギフトなら、すぐに回復するのだろうけど、ゴロー君の体の事も心配だから、よほどの緊急事態でない限りは、使わない方が無難ね。


 とりあえず、今日の所は安静にしておきなさい。

 明日になれば、意識は戻るでしょう。」

 ミッテランがゴローを止める。


「そう・・・、だったらあたしも治癒魔法を少し当ててあげて・・・と。

 これから、ちょっとそっちへ行くわ。

 ナンバーファイブさん、付き合って、それとアマンダ先生もお願い。」


「い・・・いいけど・・・。」

「は・・・はい・・・。」

 2人とも目的は聞かないまま、ミリンダと待ち合わせの約束をした。



 30分後、ハルの事はゴランとネスリーとゴローに任せて、ミリンダはナンバーファイブとアマンダ先生を連れてグラウンドへ集合し、そのまま中空へと掻き消えた。


「おや、ミリンダちゃん、また戻って来たね。

 何か用事かな?」

 恐竜人大陸に到着すると、すぐにミライがその姿を見つけて寄って来た。


「あら、ミライさん、珍しいわね、外に居るなんて。

 冷凍睡眠から覚めた分隊の相手に忙しいのかと思っていたわ。」

 ミリンダは、ミライに挨拶をしながら、きょろきょろと周りを見回す。


「いやあ、やはり銀河警察の事が気になってね。

 監視の目を怠らないように、部隊にはっぱをかけていたところだ。

 君たちも奴らの事が気になって、様子を見に来たのかい?


 安心してくれ、一応銀河警察の安全を確保するためという名目で、1個中隊で監視業務に当たっている所だ。」

 ミライは、監視部隊の恐竜人兵士に、忙しく色々な指示を出しているようだ。


「いえ、今日は、タイガ中隊長に用があって来たのよ。

 どこに居るか分る?」

 ミリンダは尚も辺りを見回す。


「ああ、この先の畑を耕している所だ。

 この畔を辿って行くといい。」


 ミライが、左右を実った大麦に囲まれた畦道を指さす。

 先が見通せない程、たわわに実っているようだ。


「ありがとう。」

 ミリンダ達はミライに礼を言って、言われた道を真っ直ぐに歩いて行く。


「すごいわね、北海道の麦よりもはるかに背が高く実っているわ。

 これも、恐竜人たちの科学力のおかげかしらね。」

 ミリンダが、自分の背丈よりも実った大麦の穂を、ほれぼれするように眺める。


「土壌や肥料などの影響のあるでしょうが、恐らく気候のせいでしょう。

 こちらの方が、北海道よりはるかに温暖ですから。」

 アマンダ先生が、大麦の太い茎に触りながら教えてくれる。


「あっ・・・、タイガさーん!」

 ミリンダが、日焼けした恐竜人の姿を見つけて大きな声で叫ぶ。


「おお、また来たな?

 もう麦や玉ねぎなどは収穫できる様になったぞ。

 今度こそ、恐竜人大陸で採れた肉や野菜で作った現地料理だ。


 食べて行くか?」

 耕した畑に、種をまいているタイガ中隊長が、嬉しそうにはるか先まで続く豊かな実りを指さす。


「うーん、ありがたいお言葉だけど、ちょっと用事があるのよ。

 タイガ中隊長の所の部隊は、円盤操縦のベテランでしょ。

 悪いけど、南米まで連れて行ってほしいのよ。」

 ミリンダがそう言って両手を合わせる。


「うん?南・・・?

 よくわからんが、円盤に乗せて連れて行って欲しい場所があるという事か?

 他ならぬ、ミリンダちゃんの要請だ、聞かないわけにはいかないだろう。


 おい、ハラス、ついて来い。」

 そう言って、一人の恐竜人兵士を呼びつけた。

 それからミリンダ達を案内するように、基地の方へ歩き始めた。


「どう言った訳かな、君たちは、えーと・・・、そうだ瞬間移動という技が使えるだろ?

 それで、世界中どこへでも行けるのじゃなかったかね?」

 タイガが不思議そうに尋ねる。


「一度行ったことがある場所で、方角と距離をイメージできれば瞬間移動できるのだけど、一度も行ったことがない場所へは行けないのよ。

 以前は黄泉の穴が自由に使えたから、世界各地へも遠征できたけど、今は私的使用は禁止されているから駄目だし。


 だから、連れて行ってほしいの。

 実は・・・。」

 ミリンダが、正直に事のいきさつを説明する。


「ふうむ・・・、ハル君の精神感応力の元がねえ・・・、奪われたなんて、ショックだね。

 そう言えば、我が恐竜人というより、チビ恐竜人たちの技術で、精神感応力を吸い取る装置なんてのがあったような・・・。」

 タイガが、ふと思い出したように呟く。


「オーラを吸い取る装置ですって・・・、ちょっと、その話聞かせてくれる?」

 ミリンダが、タイガに掴みかかるようにして、厳しい目つきで問いかける。


「い・・・いやあ、俺はそれほど詳しくはないんだ。

 ミライのやつがそんなことを言っていただけだ・・・、だから、詳細は奴に聞いてくれ。」


「そ・・・そう・・。」

 ミリンダが、タイガの襟をつかんで締めている指の力を緩める。

「ウウ・・・ゴホッ・・・。ふう・・・。」


「わかったわ、それに関しては後で聞くとして、まずは南米まで連れて行って。」

 そう言って、ミリンダはタイガを連れて深い穴の中へと飛行能力で降りて行った。

 ナンバーファイブも、アマンダ先生とハラスを連れて下りてくる。


「じゃあ、ちょっと待っていてくれ。

 おい、地上攻略用の円盤を出せ。」

 タイガが、連れてきたハラスに命じる。


「はい。」

 ハラスは、発着場脇の操作盤を操作して、円盤を発着位置へ移動させた。


「じゃあ、乗ってくれ。」

 ステップの降りた乗降口から、ミリンダ達が円盤へ乗り込む。

 中は非常に広い空間で、広い通路と左右の壁には所々ドアがある。


「ここが操作室だ。」

 タイガに言われるがまま、案内された部屋へと入って行く。

 そこには、電光掲示板や、大小いくつものモニターがあり、様々な計器類が稼働しているようだ。


「じゃあ、出発させるから行きたい方角を言ってくれ。

 なにせ、南米だなんて言葉を聞いたところで、俺にはそれがどこにあるのか分からないからな。

 方角を言ってくれれば、好きな所へ連れて行くよ。」


 タイガが、部屋の中央にある席に着くと、おもむろにスイッチを押す。

 円盤はゆっくりと音もなく、上方へ浮かび始めた。

 モニターに映る、基地の景色が少しずつ下方へ移動して行く、そうして緑豊かな大地を経て上空へ舞い上がった。


「西へ行ってください、そして大陸に着いたら、そのまま南下をお願いします。」

 アマンダ先生が、大体の方角を指示する、・・・といっても恐竜人語は話せないので、ナンバーファイブがその言葉を通訳している。


「おおさ、行くぞ。」

 円盤はそのまま猛スピードで西へ飛びたった。



「もう少し南ですかね・・・、今度は西に。」


 ハルと行った魔術者の居た場所への地図を見ながら、アマンダ先生がハラスへ指示をするのだが、所詮は世界地図に印をしただけの簡易的な案内図。

 なかなか、イメージする場所が見つからない。


 なにせ、ハルが高速で密林の中を駆け巡りながら、ようやく探し当てた場所なのだ。

 それを、今度は遥か上空から見つけようとしている。

 それでも、高度を上げ下げして、同じところを何度もぐるぐると回り続け、ようやく大体の場所が分って来た。


「恐らく、この大きな川の上流でしょう。

 ハル君におぶさって川岸を走った記憶があります。」


 アマンダ先生の記憶を頼りに、円盤は川の上を低空飛行しながら遡上していく。

 円盤の推力によるものか、川面には激しい白波が発生しているようだ。


「あっ・・・そこです。」

 先生の指す場所は、川岸の密林が途絶えた、開けた空き地だった。

 制動の衝撃も感じさせずに円盤は、すぐに静止すると、空き地の真ん中にゆっくりと着陸した。


「こんな密林の奥に、こんなに広い空き地なんて、随分と怪しいわね。」

 円盤を下りて、ミリンダが周囲の様子をうかがう。


「でも・・・、何もないわね。」

 ナンバーファイブの言うとおり、そこはただの広い空き地だった。

 建物や遺跡の類は、見渡す限り見つからない。


「で・・・でも・・・、ここだったと思います。

 その川が大きく蛇行した後の、少し上流の位置でしたから、はっきりと覚えています。」

 アマンダ先生が、どうにも信じられないとばかりに、必死に周囲を見回す。


「どこまでも続く果てしないジャングルに、そこを流れる川でしょ?

 多分、別の場所と間違えているのよ。

 よく似た地形が、きっとほかにもあるのかも知れないわね・・・、あるいは川だって、別の似たような大きさの川なのかもしれないし・・・。


 もう少し別な場所を探しに行きましょう。」

 ミリンダがそう言って、円盤へ戻ろうとする。


「いや・・・、そうとも言えないぞ。

 この辺りに、穴を掘った形跡がある。

 うまい事周りの土で埋めて表面を乾かしているから、ぱっと見には判らないが、田畑の耕作歴300年の・・・といっても、恐竜人基地での睡眠学習時の課外授業のシミュレーション経験だがな。


 しかし、今は実際に鍬を持って土を耕しているが、その知見がずいぶんと役に立っている。

 その俺が言うんだから間違いがない。

 この辺りに穴を掘って・・・、恐らく建物の支柱の柱だな、柱を埋めたのだろう。


 えーと・・・、6本の柱を埋めているんだから、ちょっと大きめの掘っ立て小屋くらいは作れたんじゃないか。

 ここが入り口で・・・、こんな感じの大きさだな。」

 タイガが、落ちていた木の枝で、地面に四角い箱型を描く。


「ええ、そうです、丁度この辺りにありました。」

 アマンダ先生も、まじめな表情でこっくりと頷く。


「しかも、埋めてから1日も経ってはいないと見た。

 間違いない、ここにあったはずだ。」

 タイガが、土のサンプルを指先で擦りながら呟く。



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