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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第5章 ちび恐竜人たちの逆襲編1
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第71話

                        12

「でも、あんなに加減した力を見せただけで、銀河警察は納得してくれるかしら。

 あたしは、魔封じの紐を付けたままで試技をしたから、ちょっとは無理をしたけど、それでも1割をちょっと超えたくらいしか力を出さなかったわよ。


 こんな程度の力では、あの凶悪犯は任せられないなんて言われちゃうんじゃない?」

 ミリンダが心配そうに呟く。


 銀河警察に要求された試技が終わって、ミリンダ達が恐竜人基地の食堂でミライ達と昼食を共にしているようだ。

 食卓には、山盛りに盛られた肉料理と魚料理に加えて、これまた巨大なボールから溢れんばかりの野菜サラダが盛られている。


 旺盛な食欲の恐竜人たち用と見えて、どのテーブルにも山盛り料理が盛られている。

 あまりの料理の多さに、最初は呆気にとられたのだが、ハルやナンバーファイブは、自分が食べられる分だけ大きな皿に少しだけ取り分け食べ始めた。


 一人ミリンダだけは、なぜか対抗意識を燃やして、大皿に肉を山盛りに盛り付けている。


「ああ、俺も1割程度に加減をしておいた。

 だがまあ、大丈夫じゃないか。

 なにせ、チビ恐竜人たちが襲来したときも、イオンビーム一発放っただけで、ろくな戦闘もなかっただろ?


 魔封じの紐とネックレスを使って脅したおかげなのだが、実際に我々の剣技や君たちの魔法でチビ恐竜人たちを捕まえた訳でもないわけだ。

 だから、高度な剣技や魔法力などなかったとしても、恐らく捕えられただろうし、次も同じことをやれるさ。」

 ミライは平気な顔をして、山盛りの肉にがっつく。


「おお、俺様も十分に気を付けて、手加減したつもりだぞ。

 ミライからきつく言われてしまったからな、刀も一番軽いのにして、撫ぜる程度にしてやった。

 まあ、1割程度の力だな。」


 意外にも戦術など全く無視して、猪突猛進タイプと見えるタイガ中隊長も、力をセーブして試技を行った様子だ。


「あたしも魔封じの紐を付けていたし、痣になるのは嫌だから、加減したわね。

 大体5%くらいの力加減だったかしら。」

 ナンバーファイブも同様の様子だ。


「あっしも、ほんのちょっとの力にしておきました。

 巨大化して、10分の1くらいの力ですかね。」

 トン吉は、ミライに負けないくらい、大きな皿に肉や野菜をてんこ盛りにして、ぱくついていた。


「僕も、大体5%くらいの力にしておきました。

 あの機械で力を測定して、そのデータをどのように使われるのか、分らなかったから。


 でも、あんな頑丈なロボットがいるんじゃ、本気の力を出したところで通用するのか、ちょっと不安ですよね。

 銀河警察が、敵に回らないよう、祈るしかありませんね。」

 ハルは、未だに巨大ロボットの回復力を気にしていた。


 なにせ、ガスの力で膨らんで復元する、単純な仕掛けだったとしても、その本体被膜に傷一つ付かないから、ガスで膨らませられるのである。

 よほど強靭な被膜に覆われているようだ。


「そうだね、我々の科学力では、あんなに丈夫な被膜は、作り出せない。

 硬くて丈夫でしなやかで軽いと言った感じの夢の素材だ。

 やはり、科学力では格段の差がある様子だね。


 できれば敵ではなく、味方にしたい相手といえるだろう。」

 とっとと食事を終えて、既にデザートに移っている所長が、バナナの皮をむきながら呟く。


「そうですね、でもあのロボットが新型弾でどうなるのか試して見たかったですよね。

 バームさんがアーチェという飛び道具を使って試技をしたので、同じような火薬系は止めて置いたけど、ああやって数値で評価されるのも興味がありますよね。


 さすがに新型弾は、通常装備には含まれていないから手持ちがなくて・・・、やっぱりハル君に無理を言って取りにつれて行ってもらった方が、よかったかな?」

 それなりのボリュームを盛り付けて、肉を頬張っているジミーは、至極残念そうにしている。


「まあ、折角みんなも力をセーブして、手の内をさらさなかったんだ。

 新型弾も披露しないで正解だっただろう。


 仮に、銀河警察が本物だったとしても、現存する地球の兵器力を全てさらす必要性もないだろう。」

 そんなジミーを所長が慰める。


「そうですね、私も試技を見ていましたけど、魔法のレベルも剣技のレベルも、相当高いレベルであったと感じました。


 あのくらいで1割程度の力というのは、個々のレベルが非常に高いと言えますが、恐らくミリンダやハル君たちの魔力はともかく、恐竜人の魔力や剣技は、我々と戦った時よりも格段に向上しているはずです。

 そう考えると、今回くらいの力を見せておくだけでも、充分ではなかったでしょうか。」


 ミッテランが、おもむろに話し始めた。

 チビ恐竜人たちの監視業務を、マイキーの国の魔術者たちと交代で行っているため、恐竜人大陸に未だに常駐しているのだ。


 地上監視部隊の全中隊が冬眠から覚めるまでは、留まる事になっているのだが、日本へ帰る日もそう遠い先の事ではない。


「それはそうだろう、あの時の戦いに敗れたのが悔しくて、あれから毎日訓練を欠かしたことはないのだからな。

 残念なのは、実質的に訓練時間をゼロにできる訓練施設が、未だに回収できていないことだ。


 あれがあれば、今よりも数倍は強くなれるのだが・・・、黄泉の国を使わしてくれとお願いしたのだが、人間の修験者用の施設だからと断られてしまったし、仕方がないので、地上で毎日特訓だ。」

 ミライが未だに肉と格闘しながら、まじめな顔で話す。


「おおよ、体の小さな人間たちに、魔法だけではなく、剣技や格闘技でも負かされたのにはショックを受けた。

 だから、農作業の傍ら、全員で特訓をしている。

 農作業自体も、足腰を鍛えるのに役立つしな。


 いずれは、戦争などという物騒な戦いではなく、試合として人間たちとお手合わせ願いたいものだな。

 だから・・・・、黄泉の国が使えるよう、そちらからも頼んでくれねえかな・・・。」

 タイガも同じく、分厚いステーキ肉を頬張りながら両手を合わせて、拝むようにする。


「だめよ、黄泉の国はあたしたちだって、一般の修験者たちの邪魔になるからって、年末以外は使わせてもらえないってことになっているんだから。


 それに、体が大きくて力の強い恐竜人たちが特訓したら、黄泉の国が壊されちゃうかもしれないでしょ?

 頑丈に作られた、自分たち専用の特訓場でやってよね。」

 そんな彼らに、ミリンダは冷たく首を振る。


「今より、数倍ねえ・・・、そんなに強くなられた日には・・・」

 ミライやタイガの言葉に対して、ジミーや所長の気持ちは複雑だった。


 なにせ、体術で互角以上に渡りあったとはいえ、全てはパワードボディスーツのおかげなのだ。

 その発明がなければ、いくら魔法力で優勢に立てたとしても、人間が勝利することは簡単ではなかっただろう。

 魔法の間隙をついて急襲されるのを、ジミー達軍隊がガードしたために、効果的に魔法攻撃を放つことができたのである。


 魔法力で優位に立ち、体術で互角以上であったからこその勝利といえるのだ。

 恐竜人には、未だにパワードボディスーツの事は内緒にしてある。


 というより、余りにも体術に関して人間側を持ち上げるがために、言い出しにくくなってしまったのである。

 機械仕掛けによる強さであることを知らずに、純粋に訓練の積み重ねでそれを上回ろうとする、恐竜人たちに対して、ますます種明かしが出来なくなってきている状況だ。


「そう言えば、ミライさんは大阪で食事をした時も、肉や野菜を大量に皿に盛り付けて食事をしていましたけど、数千万年前と今では肉にしても野菜にしても今とは種類も違っていたのではないですか?


 恐竜人大陸での食事では、見たこともない肉や野菜が出て来るのかと思っていましたけど、今日の食事はブタや牛と鶏肉にキャベツやレタスにジャガイモなどのサラダなどの様です。

 これは、我々が来たので人間の食事に合わせていただいたのですか?


 それとも、これらは数千万年前から、恐竜人が食べていた肉や野菜を使った料理なのですか?」

 食後のお茶を飲みながら、ハルが食堂内に山盛りにされた、食べ物を眺めながら尋ねる。


 大阪での食事が大変気に入ったらしく、ここでもビュッフェ形式の大皿料理で提供することにしたらしく、また、食事をよりおいしくするために、みそスープとお茶を日本から提供してもらっているという事だ。


「ああ、我々の祖先が地上に君臨していた時と今では、随分と食事事情は異なるようだ。

 遥か昔では、哺乳類などはまだ数が少なく、我々の祖先はどうやら恐竜の肉や卵に加えて、翼竜や海竜を食料にしていたらしい。」

 ミライが、食後のお茶を長い口を器用にすぼませて、啜っている。


「恐竜を食べていた・・・ってことは、共食い?

 げげっ・・・、じゃあ、これも・・・。」

 ミリンダが、食事を終えた皿を恐ろしそうに眺める。


「共食いはひどいなあ・・・、君たち人間だって、同じ哺乳動物である牛や豚の肉を食べているだろ?

 魚や鳥に加えて、もっと他にもさまざまな動物の肉を食べている。


 それと同じで、我々も食肉に資源として、その時に最も地上に多く存在していた恐竜を食べていただけだ。

 家畜として飼いならしていた記録もある。


 しかし、今の時代に恐竜などいはしないから、これらは日本やS国などから援助された、家畜の肉や野菜類だ。

 恐竜人大陸で、栽培しているのも、現代の野菜であり、家畜に関しても牛豚鳥など、人間たちから提供していただいた種を育てている。


 本当のことを言うと、我々の祖先なのか、チビ恐竜人たちが考えたことかは不明だが、当時の恐竜や翼竜に海竜などのDNAサンプルに加えて、当時の植物の種なども次元金庫に保管されていることが分っている。

 しかし、所長さんとも話をして、それらの生物を現代社会に復活させることは、あきらめた。


 遥か太古の生物を復活させることで、現状の生態系が破壊される可能性もあるからね。

 それに、何世代も時を経た我々は、海底で目覚めていた時には、海底基地の周りに寄ってくる深海生物を捕獲して食べていた。


 古くは海竜などを食べていたようだが、我々の世代では深海ザメや巨大なイカやタコにエビや貝類が主だ。

 野菜としてはワカメや昆布などの海藻が主だったしね。

 だから、現代の肉や野菜が違和感なく食べられるのさ。


 今更、恐竜の肉を食いたいとは思わないね。」

 ミライは、飲み干した湯呑を置きながら答えた。


(へえ、恐竜のDNAサンプルや古代の植物の種・・・)ハルは、地上に原始植物がうっそうと茂る中を闊歩する巨大な恐竜の姿を想像してみた。

 恐竜人大陸に限っての事ならば、そんな場所があってもいいようにも思えてきた。


「じゃあ、とりあえず円盤騒動も、片がついたようだし、我々はこれでお暇するとしよう。

 銀河警察の件は、私の方からマイキーの国やS国及び米軍にも伝えておくことにする。

 その方が、仮に他の星との国交が始まる際にも、心の準備ができるだろう。


 まあ、彼らが、この地球という星を、仲間として認めてくれればの話だがね。」

 最後の最後まで大皿をむさぼっていた、ミライとタイガがようやく食事を終えたので、所長が別れを告げる。


「ああ、そうしてくれるとありがたい。

 チビ恐竜人がらみの事だから、本来ならこちらから連絡すべきことではあるが、やはり、恐竜人から他星からの訪問者の報告を受けるより、同じ人間である所長さんからを受けたほうが、驚きは少ないだろう。


 まだ、完全に信用した訳ではないから、監視の目を緩めるつもりはないし、何かおかしな真似をしたら容赦なく消滅させるべく、イオンビームのボタンを押すつもりだ。

 だから、安心していてくれ、君たちにまでは決して迷惑を掛けないようにする。」

 ミライが、力強く自分の胸を叩く。


「ミッテランおばさんは、冬眠中の監視分隊全軍が目覚めるまでは、ここへ残るのよね?

 でも、あともう少しで帰ってこられるのよね?」

 食堂をでた通路で、ミリンダが久しぶりに会うミッテランに尋ねる。


 前回訪れた時には、竜神の騒動の為時間がなく、チビ恐竜人たちの監視業務についているミッテランと会う事が出来なかったのだ。

 魔法学校に関しては、みんなの協力もあり、指導を続けて行く事は出来ているが、やはりたった3人だけの家族であり、離れていると寂しいのだろう。


「ああ、後2週間で最後の分隊が冬眠から目覚める。

 1週間のリハビリ期間が終わったら、人間側の魔術者たちによる監視業務は終了して、マイキーさんの国の魔術者たちともども帰国の予定で居たのだが、ちょっと怪しげな訪問者が現れてしまったからな。


 恐らく、彼らが引き上げると言う1ヶ月先まではここに残ることになるだろう。」

 ミッテランは、神妙な顔をして答える。



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