第70話
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「打撃力・・・1850PTです!」
タイガの究極奥義の打撃力を大幅に更新する、新記録が出た。
「おおー・・・」
『パチパチパチパチ・・・』どこからか拍手まで湧き起って来た。
「すごい・・・、さすがトン吉さんだ・・・。」
ハルも一緒に拍手をしている。
「ふん・・・、結構やるわね。
燃えて来たわ・・・。」
ミリンダが、なぜかやる気を見せている様子だ。
「では、続いて、人間にお願いする。
結構人数がいる様子だが、こちらも恐竜人と同じく代表して、3名ほどにお願いする。」
ラティエに促され、ハルとミリンダとナンバーファイブが代表して試技場へ向かう。
ジミーたちに体術の攻撃をさせてもいいのだが、タイガ中隊長ほどの威力は出せないだろうと言う事で、ハルたちの魔法攻撃力の評価で済ませることにしたものだ。
「じゃあ、まずはあたしから・・・
魔弾!!!」
ナンバーファイブの手から、細く眩い閃光が放たれ、巨大ロボットに達する。
「精神感応力 605PTです。」
「はい次。」
「魔砲弾!!!」
今度は真っ赤に燃えたぎる火の玉が発せられ、巨大ロボットに直撃する。
「精神感応力 1030PTです。」
ナンバーファイブは、試技場から笑顔で戻ってきた。
「ふうむ・・・、恐竜人と同じような特性の魔法攻撃のようだな。
しかし、体の小さな人間では威力が弱いのも仕方がないか。
では、次の人お願い。」
「じゃあ、あたしが行くわ。」
ミリンダが、駆け足で試技場に向かう。
「最初から飛ばすわよ。
モンブランタルトミルフィーユ・・・暴風雷撃!!!」
一瞬辺りが暗くなり、強風が吹き荒れる中、まばゆいばかりの稲光が巨大ロボットを襲う。
『ドッカーン、バリバリバリバリ』耳をつんざくような衝撃音が響き渡り、巨大ロボットがその場に倒れた。
「精神感応力 1360PTです。」
「おお・・・、すごい、あんな小さな体で・・・。」
ミリンダの魔法効果を見ている銀河警察官からも、感嘆のため息が漏れる。
「まだまだ行くわよ・・・。
モンブランタルトミルフィーユ・・・暴風雨波!!!」
竜巻を伴った強風が、体型が戻ったばかりの巨大ロボットを巻き上げ、上空高くまで舞い上がる。
『ドーンッ』恐竜人大陸全体が揺れたかと思われるくらいの強い振動を伴い、ロボットが地面に落下して、ぺちゃんこにつぶれた。
「精神感応力 1290PTです。」
「うーん・・・、中級魔法じゃ、余り威力に差はないわね。
じゃあ、とっておきのやつ・・・。
モンブランタルトミルフィーユ・・・大爆発!!!」
激しい爆風を伴う高温の巨大な玉が、巨大ロボットを包み込む。
巨大ロボットは、元の半分にも満たない大きさに融けて固まってしまった。
「精神感応力 1680PTです。」
驚異的な数字が読み上げられる。
「ふうっ・・・、ざっとこんなものよ。」
ミリンダが、額ににじむ汗を拭いながら帰ってくる。
「ほう・・・、彼女はすごいね。
魔法力であの体の大きな恐竜人をしのぐとは・・・。」
『パチパチパチパチ』巨大化したトン吉の数値には及ばなかったが、ミリンダの健闘をたたえて、そこかしこから拍手が巻き起こる。
「さっ、ハルも本気でやるのよ。」
ミリンダが真剣な表情でハルに告げる。
「ええっ・・・、でも・・・。」
ハルは戸惑い気味だ。
「でもも何もないの、やるのよ、いい?」
ミリンダに強く背中を押されて、ハルが試技場へ向かう。
「参ったなあ・・・。
まずは・・・、燃えろ!!!」
『ボワッ』巨大な火の玉が、まっすぐに巨大ロボットへ向かっていき、ロボットの体が一瞬で炎に包まれ、勢いよく燃え上がる。
「精神感応力 635PTです。」
「ほう・・・、単純な炎の魔法なのに、その割には威力が大きいね。」
ラティエが感心したように、ハルの魔法効果の高さを評価する。
「次は・・・、炎の竜巻、燃え尽きろ!!!」
ハルの体から発せられた無数の小さな炎は、渦を巻きながらハルの体の周りを回転し、やがて巨大ロボットに向かって、一気に襲い掛かる。
先ほどの炎がようやく鎮火したロボットは、再び炎に包まれた。
「精神感応力 803PTです。」
「ハル、駄目じゃない・・・、ちゃんと本気を出して!」
ミリンダが、大きな声を出してハルを叱咤する。
「ええー・・・、本当にやるの・・・?仕方がないなあ・・・。
父さん、母さん、そしておじいさん、僕に力を貸してください・・・。
灼熱の炎、灰と化せ!!!」
巨大な白熱化した炎の玉が、巨大ロボットを飲み込む。
ロボットは、今までで一番小さな塊になってしまった。
「精神感応力 1825PTです。」
「おおっ・・・、すごい。」
周りから、ため息交じりの声が漏れる。
「これで最後かな・・・、確かにすごい力だと思う。
凶悪犯たちを捕まえたというのも、頷けるほどだ。
だが、まだ結論を出すのはこれからだ。
君たちが発した力の分析をして、それが本当に凶悪犯たちを管理していくに値する力であれば、我々はおとなしく引きあげるとしよう。」
ラティエは、未だに慎重な態度だ。
「この星は、あたしたちの力で取り戻したのよ。
体が小さな人間だって、結構強い力を持っているでしょ。」
ミリンダが、自慢げに振る舞う。
恐らく、この星の主導権を握っているのは人間だと、銀河警察にアピールしたいのだろう。
その為に、恐竜人たちには魔法力で負けるわけにはいかなかったという訳だろうか。
「結構張り切って力を出したようだね。」
ミライが、皮肉交じりに告げる。
「あれでも1割も力を出してはいないわよ。」
ミリンダはそう言いながら、左手首を少し痛そうに擦る。
「そんなに力を込めたわけではありませんけど、攻撃を受けても平然としている、あのロボットが不気味ですね。」
「ああ、全ての攻撃を受けても、何のダメージも残さずに再生してしまった。
あれを破壊することができるのかどうか・・・、ちょっと恐ろしいな。」
ハルの言葉に、ミライもうなずく。
試技の際の標的となっていた巨大ロボットは、攻撃を受けるとそれなりに変形したのだが、その都度元の形に瞬時に再生を繰り返した。
ハルの攻撃を受けて小さく溶け落ちたようにも見えたが、やはり元の姿に復活した様子だ。
そうして、何事もなかったかのように、銀河警察の円盤の中に戻って行った。
「では、今回の結果を分析して、早急にレポートを作成する。
母星ともやり取りをして、今後の対処を決めなければならないから、結果が出るのは、おおよそ1ヶ月ほど先になる予定だ。」
ラティエが、グラフが出力されたモニターボードを持ちながら、やって来た。
「その間は、この星に滞在させていただくが、よろしいかね?」
「ああ、恐竜人大陸に滞在する分には構わない。
しかし、他へ移動することや、自由に行動することは控えていただく。
常に、我々メンバーと一緒に行動する以外は、発見と同時に拘束させていただくことになるから、注意してくれ。
地球という星は、チビ恐竜人たちを除いて、他の星からの訪問者の経験がないのだ。
だから、他の星の住民を名乗る者達をどうやって扱えばいいのか、知見がない。
他星との交流を続けて行く事により、慣れて行くのだろうが、暫くの間は不自由だろうが、勘弁していただきたい。
なにせ、お前たちが言う、凶悪犯とやらに一時は征服された星なのでね、慎重になる気持ちを分ってもらいたい。」
ミライが、ラティエの要望を承諾した。
円盤で地球の軌道上から離れてもらうよりも、近くに置いておいた方が、監視もしやすいと言う事だろうか。
相当に厳しい条件付きではあるのだが・・・。
「ああ、構わんよ。
我々は、別にこの星に観光に訪れたわけではない。
数千万年前からの指名手配犯を追ってきたのだ。
だから、歓迎セレモニーや観光案内などの、特段の配慮を頂く必要性はない。
食事だって、我々が所有している味気ない(・・・・)宇宙食で賄うから、心配は無用だ。」
ラティエは、拘束される犯罪者のような処遇ですらも、平然と了解した。
なんとか、信用を勝ち取ろうと言う気持ちの表れなのだろうか。
「なんだか、食べ物くらいは与えろみたいに、暗に要求しているわよ。」
ミリンダが、小声でミライに囁く。
「まあ、その様だな・・・」
ミライも、苦笑しながら頷く。
「はるばる何十光年も旅して、この星まで来ていただいたわけだ。
何のもてなしもせずに、過ごしていただくわけにもいかないだろう。
幸いにも、我が恐竜人大陸でも食料の自給自足体制が整いつつある。
新鮮な野菜や肉など、提供させていただく。
地球の食べ物はおいしいと、宇宙でも宣伝していただけるとありがたいね。」
ミライはそう笑顔で返す。
少し歩み寄った形だ。
「おお、ありがたい・・・、我々も長旅で毎日毎日同じメニューばかりで飽きてきたところだ。
新鮮な肉や野菜の提供は大変にありがたい。
感謝する。」
ずっと苦虫をかみつぶしたような表情で押し通していたラティエにも、笑みが見えた。
こうして、銀河警察の円盤は地球に滞在することになった。
円盤の周囲には、常に監視役の恐竜人部隊が貼りつき、高電磁波の檻こそないが、チビ恐竜人たちの円盤とさほど警戒の度合いに違いは感じられない程だ。
しいて違いを上げれば、毎日新鮮な食料を届けると言う約束を交わした程度か。




