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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第5章 ちび恐竜人たちの逆襲編1
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第69話

                   10

「オーライ、オーライ。」

 長い発光する棒を持った恐竜人兵士たちが、巨大な円盤を着陸地点へと誘導している。

 恐竜人大陸沿岸部の基地の隣に、銀河警察の巨大円盤を着陸させようとしているのだ。


 本来であれば、土星の輪の中にそのまま停めておくつもりだったのだが、銀河警察官の言葉を信用することとなり、更に、チビ恐竜人たちを逮捕監禁しておくことが可能かどうか、今度は逆に地球側の実力を試されることとなり、評価設備を取り出すために、彼らの円盤を地球に着陸させることになったのである。


 円盤からは、タイヤの付いた何台もの台車の上に積まれた装置類が、次々と降ろされてくる。

 しかし、どれもミニサイズであり、体の大きな恐竜人たちは、それらを踏みつぶさないように、避けて歩くのが面倒くさそうだった。


「さて、円盤を地球に着陸させることに関しては、お前たちを信用した手前許可したが、今でもイオンビーム砲は、お前たちの円盤に照準を合わせていることを忘れるな。


 しかもこの距離だから、外すことはありえんし、当たれば粉々どころか、瞬時に塵となって消滅するくらいの威力だぞ。

 くれぐれも、馬鹿な真似はするな。


 一応、お前たちを信用した証として、この星への訪問を許可した際の首飾りは外させていただく。

 我々側の装飾具など、他の星のものからしたら、ただの邪魔ものでしかないだろうからな。」


 円盤から次々と降ろされる装置のセッティングに取り掛かっている銀河警察の面々に対して、ミライがドスの利いた声で告げる。

 やはり、どこからどう見ても、チビ恐竜人たちと同じ型の円盤と同じ外観の銀河警察官たち。


 意識の中では信用せざるを得ないと分っていても、なかなか割り切れるものではないのだろう。

 異常なまでに警戒をしている様子だ。

 とりあえず、事故が発生しない様にとの配所で、魔封じの紐とネックレスは外すことにしたようだ。


 最後に出てきた、少し大きめの台車に積まれた箱を開けて、ボンベのような物を付けると、中の装置が風船のように膨らんで、巨大な人型を作った。

「これが、測定装置だ。」

 ラティエが、大きな人型ロボットの手のひらの上に乗りながら話す。



「竜弾!!!」

 ミライの両手から、太く眩い閃光が放たれ、目標の巨大ロボットに命中する。

 直撃を受けたロボットは、胴体に大きな凹みを作って、その場にひっくり返った。


「精神感応力820PTです。」

 ロボットの背後に控えていた銀河警察官が、手元のモニターの数字を読み上げる。


「よし、次はもっと強力な攻撃魔法を披露してくれ。」

 先程代表で受け答えをしていたラティエが、ミライに指示を出す。


 同時に先程倒された巨大ロボットは、何事もなかったかのように、元の形に戻って立ち上がった。

 しぼんだ風船に、再び空気を入れたような形の起き上がり方だ。


 ここは、恐竜人大陸沿岸の平坦な場所。

 開墾予定場所として、雑草など除去して整備を始めたところだったが、銀河警察の要望により、急遽試技場として使われることとなった。


 ターゲットは、銀河警察が持ち込んだ巨大なダミーロボット。

 魔法力や打撃力など、相手から発せられる攻撃のダメージを数値化できる装置という事だ。

 この装置で戦闘力を推し量り、凶悪犯人を管理できるかどうか判断すると言う事で、ミライ達恐竜人の力量含め地球側の武力を計ることになったものだ。


「竜砲弾!!!」

 今度は真っ赤に燃えたぎる炎の玉が発せられる。

 巨大ロボットは、一瞬で真っ赤な炎に包まれて赤熱化する。


「精神感応力1420PTです。」

 またまた背後に控えている恐竜人が数値を読み上げる。


「魔法力に関してはこんなものかね、じゃあ次は打撃による攻撃力を測定したい。

 武器を持っても構わないので、飛び道具の場合と手持ちの武器の場合でそれぞれ攻撃を仕掛けてもらいたい。」

 ラティエから、色々と指示が飛んでくる。


「分った、剣による攻撃であれば、俺より彼の方が、力が強いから適任だろう。」

 ミライは、そう言ってタイガ中隊長に、出て行くよう依頼した。


「剣術の腕ならミライの方が上だろうが、一撃の威力なら、俺に勝るものはいないさ。

 畑仕事で鍛えた農耕剣受けて見よ。」

 タイガはそう言いながら、大きく振りかぶってダミーロボットに切りかかる。


『ゴンッ』鈍い音がして、ロボットの左肩口に大きな凹みが生じる。

「打撃力、1230PTです。」

 その数値が読み上げられる。

 どうやら、魔法攻撃力も剣術による打撃力も、ダメージの大きさとしては同じような威力があるようだ。


「まだまだー・・・、究極奥義・・・・・

 頭蓋骨割りーっ・・・・」

 タイガは、剣を離した右腕をクルクルと振り回すと、左手だけで上段に構え、それに振り回して勢いを付けた右手を添え、一気に巨大ロボットの脳天目がけて振り下ろす。


『ドゴッ』大きな音がして、巨大ロボットは、そのまま土にめり込んだ。

「打撃力、1510PTです。」

 すると、今までの中で最高の数値が読み上げられる。


「へえ、すごいですねえ魔法攻撃より、剣の方が威力があるなんて・・・。」

 タイガの凄まじいまでの剣術の威力を見ていて、ハルが感心したように呟く。


「ああ、我ら恐竜人は魔法力もさることながら、力も強く技量もある。

 だから、剣を持たせれば魔法攻撃をしのぐ力を発揮することもできる。

 まあ、それには精神集中のための所作というか、おまじないのような決まった動きとかが必要なのだがね。」

 ミライが、タイガが放った究極奥義の解説をする。


「へえ・・・、それって、僕たちが中級以上の魔法を使う時に精神を集中させるために唱える、魔法の呪文と似ていますね。」

 ハルが、感心したように頷く。


「ほう・・・そうなのか。

 我々の魔法には、初級も中級もないのだが、威力的にもどこか中途半端な面がある。

 だからこそ、精神集中により打撃効果が上がる剣術を多く用いる訳だが、魔法でも同じことが言える訳か。


 すると・・・、我らの魔法も、うまくするともっと威力を伸ばせるかもしれんな。」

 ミライが顎に手を当てて考え込む。


「きっとそうだと思いますよ。

 ミッテランさんは、魔法学校の校長先生だから、彼女にもっと威力のある魔法を習えばいいんですよ。

 ああ・・・でも・・、特訓をさせられてしまうかな・・・。」

 ハルが意味深に微笑む。


「ほう・・・特訓とな・・・、剣術での特訓なら、相当な苦しい思いをして、成し遂げたものだがな。

 そうして究極奥義を身に着けるのだ。


 しかし、わざわざ究極奥義などと名乗ってから技を繰り出すのは、恐竜人の中でも恐らくタイガだけだ。

 繰り出す技が分ってしまうから、簡単に避けられてしまうからな。

 普通は、なるべく相手に悟られないように、普段の構えから何気ない動きに混ぜた所作で精神集中させて、一気に放つのさ。


 その方が、相手に悟られずに技を出せるからね。

 その技が分った時には、すでに相手はやられているという訳だ。

 だから、俺の究極奥義を見たものは何人かいるが、生きているものは1人もいない。」


「ええっ・・、それって・・・。」

 恐ろしい言葉を平然と告げるミライに対して、ハルは次の言葉が見つからないでいた。


「はっはっはっ・・・、いや、まあ軽い冗談だ。

 あいつらの事を完全に信用した訳ではないから、全ての力を披露するのを躊躇っただけだ。

 君らも気を付けろ。」


 途端にミライは明るく笑って、首を振る。

 うーん、どこまでが本当の事なのだろう・・・、ハルにはミライという人物の事が、さっぱり理解できないでいた。


「そういえば、ハル君はいつも剣を身に着けているが、剣術の腕はどうなのだ?

 基地での戦闘の時でも、ジミーさんと戦っただけで、君とは手合わせをしていないが、やはり、同じように強いのだろう?」

 ミライが、今日も背中に背負っているハルの鬼封じの剣を、しげしげと眺めながら尋ねてくる。


「いえ、これは・・・、鬼封じの剣って言って、剣で人を玉に封じ込める時に使うものです。

 すごく力の差があって、とても敵わないような相手でも、少しの隙をついて玉に封印することができます。

 ジミー先生は学校の先生ですけど、僕の剣の先生でもあります。


 この剣を使うようになってから、剣術を習っているのですけど、僕なんかまだまだです。

 でも、ある戦いで長いこと剣を背負っていたから、無くなると背中が寒くって・・・だから、今でも持ち歩いているのですよ。


 剣の使い手でもないのに、おかしいでしょうけどね。」

 ハルはそう言って、少し顔を赤く染めた。


「いや、そんなことはないさ。

 俺だって腰の剣を外すと、腰の辺りがスースーして、何ともバランスが悪くて歩きづらい。

 体が剣を持ち歩くことに慣れてしまったんだな。


 その気持ちはわかるさ・・・、何だったら恐竜人流の剣術を、俺が教えてやってもいい。

 色々な流儀を知ることは、上達の秘訣でもあるからな。」

 そう言ってミライは笑顔を見せた。


「へえ、ぜひお願いします。

 きっとジミー先生も一緒に教わりたいって言ってきますよ。


 そうなると、僕たち人間の魔法を恐竜人であるミライさんたちに教えて、恐竜人の剣技を教えてもらう・・・、あっ、ジミー先生から人間流の剣術も指南できますよ、うーん文化交流ですね。」

 ハルが、目を輝かせる。


「まず第1段階として、魔法力の向上に関しては、ミッテランさんに協力を仰ぐとして・・・。

 次はバームだ。

 奴は矢じりの後ろに火薬がついた武器を使う。」

 ミライに促され、バーム小隊長が巨大ロボットの前に対峙する。


「ほう・・・、ボウガンのような武器だね。」

 所長の言うとおり、バームが持っているのは、ショットガンの銃身に弓を付けたような形をしていた。


「アーチェという武器だ。

 お前たちが言う弓の形をしている弦から矢が放たれるのだが、矢には火薬が仕込んであり、爆発して威力が倍増する。

 我が種族に古くから伝わる武器だ。


 チビ恐竜人の科学力が浸透してからは、レーザーや電磁サーベルにとってかわられたが、我らの武術の基本は変わらず魔法と剣とアーチェだ。」

 ミライが自慢げに話す。


『シュッ』『ボワッ』バームが放つ矢が巨大ロボットに達し、破裂する。

「打撃力・・・315PTです。」


「しかし、やはり古代の武器では威力が劣るのが難点だな。」

 ミライはそう言いながら、小さく微笑んだ。


「次は、魔物を代表してトン吉さんだね。

 といっても、今の恐竜人大陸にはトン吉さんしか魔物はいないから、仕方がないのだけど・・・。

 どうやら、余り本気になってはいけないようだよ。」

 ハルが、試技場へと向かうトン吉の耳元でささやく。


「分りました、手加減しておきましょう。」

 トン吉はそう言うと、タイガの攻撃でしぼんでいたロボットが元に戻るのを待って、思い切り殴りつけた。


「打撃力 600PTです。」

 すぐに攻撃力が読み上げられる。


「うーん、こんなに弱い力なのかい?

 まあ、素手だからという事もあるのだろうけど、武器を持ってもらっても全然かまわないんだよ。

 もっと真剣にやって貰わなければ、君たちに犯罪者たちを預けることが不安になって来るよ。」


 銀河警察は、トン吉の結果を不満そうに眺めている。

 巨大ロボットはというと、ほとんどダメージがなさそうで、すぐに回復して元のサイズに戻っている。


「分りやした、では・・・。」

 トン吉はみるみるうちに巨大化し、ロボットと変わらぬ大きさになってから、こぶしを思い切り振り上げた。


『ドッゴーン』地響きのような振動と共に、巨大ロボットが一気に縮まった。

 トン吉の鉄拳で、土にのめり込むどころかロボットは、アコーディオンのように蛇腹に縮んでぺちゃんこになってしまったようだ。


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