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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第5章 ちび恐竜人たちの逆襲編1
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第67話

                      8

翌日、

『パタパタパタパタ・・・ガラガラガラガラッ』授業中の教室の扉が、勢いよく開けられる。


「はぁはぁはぁはぁ・・・ジミー先生、仙台市の所長さんから、緊急通信が入っています。」

 いつものように、アマンダ先生が息を切らせながら駆けこんできた。


「分った、すぐに行くよ・・・、みんなは、少しの間自習していてくれ。」

 ジミーはそう言い残して教室を後にする。


「はいジミーです、どうぞ。」


「おお、ジミーかガガガ・・・。

 実は、またまたS国の観測衛星が、土星の輪の中に円盤を発見した。

 すまないが、またまた恐竜人基地へ連れて行ってもらえるよう、ハル君たちに頼んではもらえないか?ガガガ」


「また円盤なの?今度は何人?」

 何時の間に来ていたのか、ミリンダが無線室へ入って来ていた。


「まあいいわ・・・、準備をして30分後に校庭に集合よ。

 ハルは、ゴランさんやネスリーを連れてきて、あたしは、いつものように神田達に魔法学校の面倒を見る様に言ってくるわ。」


 ミリンダは、無線室の外に立っていたハルに告げると、そのまま学校の外へ飛び出して行った。


「じゃあ、僕はゴランさんたちを連れてきます。」

 そう言ってハルも、階段を上がって大学の教室へと向かう。


「じゃあ、あたしたちは支度をしてから校庭へ向かうわね。」

 ナンバーファイブとゴローも、そう言ってから学校を後にした。



「恐竜人大陸の円盤が逃げ出したんじゃないの?」

 校庭へ戻ってきたミリンダが、疑わしそうな目つきでジミーの顔を見つめる。


「それは判らないけど、今の所円盤というと、チビ恐竜人たちの円盤しか思いつかないのは確かだね。

 まあ、行ってみれば分るだろう。」

 ジミーも、うなずきながら答える。


 全員、緊急持出し用のリュックを背負って集合だ。


「じゃあ、行くわよ。」

 全員が手を繋いで、中空へと掻き消えた。

 着いた先の仙台市近代科学研究所裏のグラウンドには、既に所長が大きな段ボール箱を抱えて待っていた。


「どうしたんですか?その荷物は。」

 ジミーが不思議そうに、段ボール箱の中を覗きこむ。


「いやあ、ミライさんが日本で食べた焼き鳥の味が忘れられないっていうものだから、大阪のロビン君に作り方を聞いて、急遽拵えて見たんだ。

 ミライさんや仲間の恐竜人たち用に、大量に作ってみた。


 なにせ焼き鳥だから、鶏肉を串に刺して炭さえ熾せば調理は早いし、土産としては丁度いいだろう。

 何度もうかがうのに、手ぶらというのもなんだから、ちょっと考えてみた。」

 いつも平然と行き来しているように感じていたが、所長は意外と、気を使う性格のようだ。


「分りました、じゃあ行きましょう。」

 ジミーも、傍らに置いてある段ボール箱を持ち上げて、全員で出発だ。


 段ボール箱は暖かくて、焼き鳥が出来立てというのが持つだけで分る。

 瞬間移動で着いた先は、遥か2万キロ近くはなれた恐竜人大陸だ。


「よう、ハル君たちか・・・、1週間ぶりだな。

 やはり、泣いてばかりいるような者は、チビ恐竜人たちの中にも居ないようだよ。

 何だったらこれから、直接あいつらと無線でやり取りをしてみるかい?」


 大陸沿岸部に到着すると、広大な畑をこれまた巨大なトラクターのような機械で耕している傍らに、ミライの姿があった。

 どうやら、トラクターの様な機械は無人で、土をおこして種をまき、水やりまで自動で動いている様子だ。


「いえ、泣いている竜の正体は判りました。

 僕たちの知り合いの竜神様だったようです。

 夢の中のような出来事でしたけど、ようやく再会できました。

 ご心配をおかけしました。


 それはそうと、ミニ球体やミニ円盤が飛び交っていますね。」

 ハルの言葉通り、鬼たちの行動を監視していた、恐怖のミニ円盤とミニ球体が、付近を飛び回っているのだ。

 自分たちにまとわりつかれたらと思うと、気が気ではない様子だ。


「そうか、そっちの知り合いの竜の事だったか・・・まあ、よかったな。


 ミニ円盤とミニ球体の事だが、本来は耕作地の虫よけの機械だと言う事が分った。

 虫と言っても、数千万年前の事だから、今の鳥ぐらい巨大な虫だったようなんだが、畑中を飛び回り、虫を感知すると円盤に指示を出してレーザーで焼き殺す。


 それに精神感応を検知するセンサーを搭載して、鬼たちの周りを飛ばせていたという訳だな。

 俺たちは、チビ恐竜人からの指示通りセッティングして使っていただけなので、仕様に関しては無知だったという訳だな。


 今の小さな虫に対しても有効と分ったので、次元金庫に保管されていた分は、元の役割に戻したから、供給されていた害虫駆除のための農薬という薬品は、使わなくてもよさそうだ。」


 ミライは、耕作機械を手持ちのタブレットのようなボードで操作している恐竜人兵士たちに、色々と指示を与えていた様子だ。


「ほうそうなのか・・・、そのセンサーの切り替えというのは簡単にできるのかね?


 仙台市の研究所には、先般回収したミニ円盤とミニ球体が大量に保管されてある。

 あまりにも小さすぎて、分析が進まなくて手を焼いていたのだが、平和的な利用法があるのであれば、ばらしてしまうよりよほどいい。


 無農薬で野菜が作れるのなら、夢のような事だ。」

 そんなミライの言葉に、所長がすぐに反応を示した。


「ああ、この操作ボードで簡単に切り替えられるし、交換部品も揃っている。

 何台もあるから、少し持ち帰ってはどうかな?」

 ミライは、傍らの恐竜人兵士から操作ボードを受け取り、所長に披露してみせた。


「それはありがたい、是非ともお願いしたい。

 まあ、お礼という訳でもないのだけれど、つまらないものですが・・・。」

 所長が、持ってきた段ボール箱をジミーと共にミライに手渡す。


「おお、いい匂いがしますね・・・、これはあの時に食べた焼き鳥という食べ物だ。

 おおい、みんな、ちょっと手を休めてこっちへ来い。

 おいしい食べ物を差し入れて下さったぞ。」


 ミライの呼びかけで、畑の耕作に当たっていた恐竜人兵士たちが集まってきて、焼き鳥の包みを一人ずつ受け取っては頬張り始めた。

 兵士たちにも、焼き鳥の味は好評の様子だ。



「ようやく塩水に浸かっていた土地の土壌改良が終了して、今週の初めから一般作物の栽培を始めたところだ。

 もう、塩分に強い作物だけといったような事はしなくても良くなった。


 ヨーロッパや日本から食料を供給してもらっていたが、もうすぐ自給も可能になり、いずれはこちらから供給することができるようにもなるだろう。

 そうなれば、世界の一部地域に点在している生存者への支援にも、協力できるようになる。


 これだけ早く復興できたのも、チビ恐竜人たちの科学力のおかげというのは、随分と皮肉ではあるが、まあ我々が数千万年間もの長きにわたってしいたげられた歴史への代償だと思えば、当然の権利とも言えるだろうね。

 ありがたく、使わせていただくつもりだ。」


 ミライは手土産の焼き鳥を頬張りながら、延々と広がる耕作地を見渡すようにして、大陸の復興状況を説明してくれた。


「それはそうと、本日はどういったご用向きかね?

 差し入れをするのが目的という訳ではないのでしょう?」

 あっという間に売り切れてしまい、空になった段ボール箱を名残惜しそうに見つめながら、ミライが所長に尋ねる。


「ああ、そうだったね・・・。

 実はまた円盤が太陽系内に飛来してきたことが分って、今度は土星の輪の中に潜んでいるようだ。


 何時からそこに居たのかは不明だが、観察しにくい輪の中に潜んでいることからも、平和的使者というのは考えにくいので・・・、それでまた、こちらの観測所を使わせてもらえないものかと・・・。」

 所長が聞かれて思い出したように、訪問の目的を告げる。


「そうか・・・、また円盤がね。

 分った、観測所へ向かうとしよう。」

 すぐに、ハルたちの飛行能力で円盤の発着場まで降りて行く。


 通常は巨大なリフトで、百メートルほど下の発着場から地上まで昇り降りしているのだが、やはりハルたちの飛行能力の方が早いようだ。


 ミライは発着場の操作盤を操作して、巨大な望遠鏡を出すと、観察する座標を入力した。

 暫くすると、モニター画面に土星の輪の映像が映し出され、更にズームアップされていく。


「ああっ・・・、この間と同じ円盤だ。」

 ハルがその映像を見て叫ぶ。

 確かに、前回木星の軌道上で観察された、チビ恐竜人の円盤と酷似している。


「やっぱり・・・、チビ恐竜人たち、逃げ出したのね。」

 ミリンダが、腕を組みながら納得の表情だ。


「いや・・・、そんなはずはない。

 緊急通信、緊急通信、こちら発着場のミライだ。

 円盤監視班、聞こえるか?」

 ミライはそう言うと、操作盤脇にあったマイクを掴み、それに向けて話し始めた。


「はい、こちら大陸中央の円盤監視部隊、バームです。

 どうしました?」

 すぐに返事の無線が入る。


「ああ、バームか・・・、チビ恐竜人たちの円盤は、今でもその場所に捕獲されているか?」


「はい・・・それはそうですよ・・・、強電磁波の檻からは、いかなやつらでも逃げ出すことは出来ませんよ。」

 ミライからの問いかけに、多少戸惑いながらも円盤の状況が告げられる。

 どうやら、前回捕獲した円盤は、そのままいる様子だ。


「ふうむ・・・となると、新たな円盤という訳か。

 いや・・・、新たなといえるかどうか・・・、ようし、少し脅かして見るか・・・。」

 ミライは、慎重に照準を合わせると、操作盤にある赤いボタンを押した。


 すると、発着場上方の外が一瞬眩く光ったかと思うと、それから数分後にモニターに映し出されている円盤をかすめる様に、細い光線が飛んで行った。


「はっはっはっ・・・、イオンビームの出力を絞って、円盤すれすれにかすめるようにして発射してやった。

 今頃、中の奴らは大慌てだろう。さて・・・。


 こちらは、地球のミライだ。

 土星の輪の中に隠れたつもりだろうが、とっくに見つかり、今はイオンビームの照準を合わせたところだ。

 逃げようとしたり、反撃しようとしたり、少しでも変な動きを見せたら容赦しないぞ。

 すぐに粉々に破壊してやる。


 お前たちは何者だ?

 仮にも知的生命体の存在する星系へ飛来したのだ、こそこそ隠れておらずに、堂々と接触して来い。

 なにか、悪い事でも企んでいるのであれば別だがな。」

 ミライが淡々とした低い声で、無線機のマイクに向かって告げる。


「わ・・・我々は、銀河警察だ。

 わ・・・我が惑星の、し・・・指名手配犯たちを追跡してきたところだ。

 どっ・・・どうやら、地球に逃げ込んだ様子だが、知らないか?


 文明レベルの低い星に入り込んでは、科学力で思い通りに支配していくと言う、悪党どもだ。

 できれば、我が母星まで連行して行きたいので、知っていたら引き渡していただきたい。」

 すぐに、モニター画面にチビ恐竜人たちと思われる恐竜人の映像が映し出され、同時に慌てているような無線が入ってきた。


「銀河警察・・・?

 あいつらが、指名手配の犯罪者・・だと?」


「我々は、銀河警察。

 あなたたちの星の時間で計算すると、実に8千万年前に我が星系から逃げ出した凶悪犯を追っている。


 近くの星系まで追って来ていたのだが、足取りが途絶えたためチェイサーを設置して母星へ引き上げていたのだが、数千万年後のつい先日、チェイサーが対象を検知したため、急遽出動してきた。


 奴らはあなたたちの星に、迷惑をおかけしてはいないか?

 もし、科学力により支配しようとしているのであれば、我らが手助けしてあなたたちを解放してあげよう。」

 無線の内容は、思いがけないものであった。



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