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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第4章 恐竜人編4
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第59話

                     14

「ま・・・まて、早まるな・・・、だから、我々はこの星はあきらめると言ったはずだ・・。」

 恐竜人たちの列の中央に陣取る長老と見える恐竜人が、何とかミライをなだめようとする。

 自分の隣の恐竜人の首が飛んだものは、凍りついたように身動きもとれずに、震えているだけだ。


「だから、そんな他の星に迷惑をかけるようなことは出来ない。

 お前たちは、この星で隔離された中で生活してもらう。

 まずは、次元通路奥の強電磁波を止めろ。


 そうすれば、次元金庫の操作も、こちら側に切り替えることができる。

 別にお前たちの手を借りなくても、好きな時に好きなだけ、金庫から施設や武器を取り出せるという訳だ。

 さあ、早くやれ。」


 ミライはそう言いながら、無線機のマイクをテーブルの上の恐竜人たちの前に置いた。

 有無を言わせぬ決意がその瞳から感じられる。


「こ・・・こちらは、地上との交渉部隊代表のライゼルだ。

 す・・・すぐに、次元通路奥の強電磁波を切れ。」


「はあ?そんなことをしたら、次元操作全てを基地に切り替えられてしまい、次元金庫も何もかも牛耳られてしまいますよ。」

 すぐに、向こうから怪訝そうな声で返事が返ってきた。


「い・・・いいから、すぐに切るんだ。

 そ・・・そう・・・、交渉がうまく行ったんだ。

 強電磁波さえ切れば、我々はこの地で自由に暮らせる。


 だから、は・・・早く、相手の気が変わらないうちに・・・。」

 ライゼルと名乗る元老院代表は、額に汗をにじませながら、何とか相手に言う事を聞かせる様に言葉を取り繕う。


「はあ・・・、まあ、分りましたけど・・・。

 あとで、怒らないで下さいよ。」

 不服そうな声色の後に、ドアが開いてバタンと閉じる音が聞こえて来た。


「ミライ中隊長、やりました、強電磁波が解除されました。」

 そのすぐ後に、今度はミライが持つ管内通信機に次元通路から報告が入って来た。


「よし、まずは強電磁波の操作優先権を、基地側に切り替えるんだ。

 そうすれば、もう危険は無くなる。

 その後、次元金庫や本隊の円盤の操作も基地側に切り替えろ。」


「了解いたしました。」

 ミライの指示に、元気よく返事が返ってくる。


「さあ、これで、お前たちは何もできなくなった。

 本隊の操作ですら、この基地からの遠隔に切り替えられてしまうから、逃げることも出来なくなったぞ。」


 ミライは満足そうだった。

 積年の恨みとも言える、先祖代々の恨みを晴らせそうなのだ。


「わ・・・我々は、この地で生活していければ、文句はありません。

 我々の科学力はご存じでしょう?お役に立ちますよ。

 ただまあ・・・、それにはある程度自由に生活させていただかなければ・・・。」

 ライゼルが、籾手をしながら、にんまりとほほ笑みかけてくる。


「ほう、最早全ての望みが絶たれたというのに、随分と余裕の様子だな。

 もしや、鬼の能力の事を考えているのか?

 鬼に、ウチーデノコヅーチを出させれば、それで用が足りると。


 確かに鬼の能力というのは便利なものだが、その大前提を忘れてはいないか?

 奴らが出現させることができるのは、この世にあるものだけだぞ。

 何でもよければ、想像したものでも出現させられることになってしまうが、それは出来ない。


 あくまでも、この世の中に現物としてあるもののコピーを作り出す能力だ。

 先ほども言った通り、鬼たちもコピーを持ってはいたが、全て供出させてさらに消去させた。

 つまり、地上世界に存在したウチーデノコヅーチは、先ほどのものが最後の一つだったわけだ。


 あれが壊されてしまい、最早この世の中にはウチーデノコヅーチは存在しない。

 だから、鬼たちにも出現させることは出来やしないのだぞ。

 もっとも、創造主であるなんて言っても、鬼たちはお前たちの言う事など聞きはしないだろうしな。」

 ミライは、そう言いながら残酷な笑みを浮かべる。


「そ・・・そんな・・・、だったら、我々はずっとこのサイズのままで・・・。」

 今度こそ、ライゼルにもことの重要性が理解できたようで、がっくりと肩を落とした。


「まあ、そう落ち込むな。

 お前たちは元々そのサイズだったのだろ?

 それがどこからの情報かしらんが、この星に体のサイズを変えることができる神器があることを知って、この星へやって来た訳だ。


 そうして体のサイズを巨大化させたたけではなく、更に魔法力という精神感応も得て、この星の支配者として君臨したという訳だ。

 元々のサイズに戻っただけだ、そのサイズに見合った環境で暮らせ。」



 数日後、本隊の円盤が、ゆっくりと恐竜人大陸の中央部にある平原に降りてくる。

 基地からの遠隔操作による着陸だ・・・、いわゆる捕獲されたのと同等の扱いだ。


 1キロは優に超える巨大な円盤が、着陸した途端に、その周りを囲むようにして金属の装置が土中から出現した。

 そうして円盤を包み込むようにしてビームが発せられる。


「大きな円盤ですね。

 あの周りの光はなんですか?」

 ミライと一緒にやってきていたハルが、その巨大さに目を剥く。


「いくら小さいとはいえ、1億人もいるんだ、このサイズの円盤でも10階建てくらいの居住空間は持っているだろう。

 中には、耕作地も所有しているようだしな。


 他の地へ逃げて行かないように、次元通路奥にあった強電磁波発生装置を再利用して包み込んだ。

 直径2キロもの巨大な範囲だから、威力はだいぶ落ちてはいるが、体の小さな恐竜人たちであれば、たちまち黒焦げにできる。

 いわば、電磁波による檻だな。


 他所の星へ追いやることも出来ない迷惑な奴らだから、少し不便にはなるが、この中で暮らしてもらうさ。

 なあに、円盤の中で数千年既に暮らしていたんだ。

 それよりも4倍は広いし土の上だ、環境的には改善していると言えるだろ?」


 強電磁波に囲まれた巨大な円盤を見上げながら、ミライは何度もうなずいた。

 周囲には監視小屋も建てられ、今度はこの円盤を監視することになりそうだ。


「彼らは、これからここで一生を過ごすことになるのですね。

 閉鎖された空間で、少しかわいそうな気もしますよ。」

 着陸した円盤の様子を見ながら、ハルが気の毒そうに呟く。


「そんなこともないさ、ミライ中隊長殿が言った通り、奴らはあの円盤で数千年は過ごしてきたんだ。

 周囲に土もあるし太陽も降り注ぐ。

 空き地は少なく見えるが、あいつらのサイズにすれば広大な耕作地だ。


 今までに比べれば、遥かにましな環境さ。

 監視部隊の我々は、冷凍睡眠から交代で目覚めさせられ、海底のさらに地下の基地で一生を終えていたんだ、しかも、数千万年間もの長きにわたって・・・。


 それを思えば、遥かに恵まれた環境のはずさ。」

 同行してきた、バーム小隊長も苦々しく唇をかみしめた。


「じゃあ、バーム小隊から、監視を始めてくれ。

 半日交替で、1小隊ずつ順に変わって行こう。

 いずれ、残りの7班も目覚めるから、ノルマはさほど厳しくはないはずだ。」

 ミライ中隊長は、最初の監視役であるバーム小隊長にそう命じると、その場を後にした。


「良かったですよね、ミライさんの中隊も、次元金庫から救い出すことができたんですよね。」

 後を追うように駆けてきたハルが、ミライに声を掛ける。


「ああ、なんとか闇の存在と交わる前に、訓練施設を救い出すことができて良かった。

 闇の存在と出会わないよう、迂回させるのに手間取ったが、半年先には合流できるさ。

 闇の存在には、このまま次元深くへ潜り続けてもらう方針だがな。


 今思えば、闇の存在というのは、突出した力を持った一部の者達が、この星を支配しようとした時にかけられるブレーキだったのかも知れないな。

 あまりにも強大な力を持ってしまい、ごく一部のものだけで多くの生き物を従える・・・、そんなことをさせないために・・・。


 特に、他の星から侵略してきた者達に強く反応したと言う可能性もある。

 だからこそ、本隊の奴らは、闇の存在の誘いを拒否することができなかったのかも知れない。


 君たちの場合は、この星で生まれた生物の進化系だし、更に、他の生物たちを支配しようと言う気持ちなど全くなかった。

 だからこそ、闇の存在も君たちを吸収しようとはせずに、おとなしく封印されたんじゃないかと思うね。


 君達であれば、この星の未来を託すことができると感じ取ったのかも知れない。」

 ミライは、沈みゆく夕日を眺めながら呟くように語った。



「ほう・・・、闇の王子がこの星を恐竜人たちの手から守ったと・・・。

 うんまあ・・・、それは言えるのかも知れないね。

 あの存在がなければ、未だにこの地上は恐竜人たちが闊歩していたのかも知れない。


 我々人類は誕生できていなかったかもしれないし、誕生していたとしても家畜扱いの奴隷だったのかも知れないね。

 そう考えれば、彼のおかげと言えないこともない訳だ。


 だが、彼のせいで、人類の間にも始終争い事が絶えなかったということも言える。

 だから、闇の王子が善なのか悪なのか、未だに分らないね・・・、というより、人類に対してと言うよりも、この地球という星に対して、善であるのかも知れないね。


 我々人類が、余りにも地上に増えすぎてしまい、毎年のように絶滅危惧種といって、他の生物を絶滅寸前にまで追い込んでいたという記録が残っている。

 それに対する制裁として、あの世界戦争というものが発生したのかも知れないし、更に、人類をこの星から消し去ろうという動きを見せたのかも知れない。


 しかし、その戦火を生き延びた我々は、多くの死せる魂の集合体として生まれ変わった魔物とでも共同生活を行おうと活動していた。

 その意を組んで、この星を託してくれたと考えると、闇の王子の最後の行動が納得できる気がするね。


 そう考えると、闇の王子という歯止めが無くなって、我々人類に対するこの星の将来展望に関する責任というものは、非常に大きくなってくるとは言えるね。

 自らを戒めて行動しなければならない。


 なにせ、封印された程度であれば、時を経て封印が解けて表に出るような可能性もあっただろうが、さすがに次元の壁を越えて復活するというようなことは起こりえないだろうからね。」

 所長が、恐竜人基地へ戻ってきたハルの言葉を、感慨深げに頷きながら語った。


 各国を代表してS国では、今回の恐竜人との戦いで散った人々の功績をたたえ、盛大な式典が催されている。

 それは勿論、最初の戦いで捕虜となり、情報を渡すぐらいならと潔く自決した、各国の代表団に扮していた軍人たちも含まれた。


 彼らのおかげで、恐竜人たちは人類に関する情報を得ることに苦慮することになり、また捕獲用円盤で積極的に人類を捕獲しようとはしなかったと言える。

 そのおかげで、敵側に潜入することに成功した人類側が、情報戦で優位に立ったとも言えるのだ。

 まさに、彼らのおかげで戦いを有利に進められたと言っても過言ではないのだ。


 また、最大の功績者といえるトランを筆頭に、慰霊碑に名前が刻まれるはずであったが、すでに母国では死んだことになっていることと、生きていた事実の背景として、人類を絶滅させる計画が行なわれていたことが明るみになり、英雄として奉られるべきではないとの批判が出る恐れがあるとして、最も近しい関係であったナンバーファイブが断ったようだ。


 それでも、式典にはトランの遺影を抱えたナンバーファイブが、参列者の一番後方で、目立たないように参加しているのだった。

 恐竜人たちの技術を使い、世界中の空に映し出される式典の中継映像に向かって、世界中の人々が黙とうをささげた。


 その中継を受信していた、恐竜人基地でも、所長以下ハルたちも一緒に手を合わせていた。


「そんな事より、あのちっちゃい恐竜人たちの楽園でしょ。

 テーマパークとして売り出さない?

 世界中から観光客が集まってくるわよ。


 入場料の収入が、がっぽがっぽよ。

 施設の管理は、ミライさんたちにやってもらえばいいし、こうしちゃいられない・・・。

 ミライさーん。」

 厳かな黙祷もそこそこに、ミリンダが叫びながら、通路を走って行った。


「うん?ミリンダちゃんか・・・、なに、テーマパーク?

 悪いが、今はそれどころではないんだ。」


 本隊の処置をようやく終えたミライは、次元金庫から海水淡水化装置や土地の改良装置などを取出し、更に監視部隊7班を目覚めさせて、一気に大陸全体を豊かな環境へ生まれ変わらせようと、活動中だ。


 次元金庫の操作と冷凍睡眠装置の両方で、分刻みの操作に追われている。

 それを手伝いもせず、タイガ中隊長はというと、のんびりと地上の土を鍬で耕しているのだった。


             完



新シリーズとして連載してきましたが、一旦ここで完結とします。続編が思いつき次第、再開いたします。

とりあえず、来週か再来週末くらいから、「もしも願いがかなうなら」を再開してみます。よろしくお願いします。

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