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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第4章 恐竜人編4
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第57話

                      12

「一体どうしたと言うんだね・・・。」

 円盤を見て固まってしまったミライに対して、所長が心配そうに声を掛ける。


「ああ・・・、本隊だ。

 恐らく、我々恐竜人の本隊の円盤だろう。」

 ミライは、モニターに映る映像を眺めながら話す。


「えっ・・・?本隊は別の次元に移ったんじゃなかったのかね?」

 所長がミライの答えに驚いたように、目を剥いて尋ねる。


「ああ、我々がいる現在と繋がるルートを離れて、次元空間をさまよい始めたはずだった。

 恐らく、現在と通じる接点を見つけ出して、その地点へ移動したのだろう。

 数千光年は離れた場所へ出たのだろうが、そこから3ヶ月かけて亜空間飛行でやって来たという訳だ。


 次元の重なり合いを計算して、そこへ移動できるタイミングが、あの時しかなかったという訳だろう。

 だからこそ、我が中隊の訓練施設をも無視して、すぐに移動へ踏み切ったのだろうな。」

 ミライが悔しそうに、その映像を食い入るように見入る。


「そうか・・・、君たち恐竜人と、共生して行こうとした矢先だったが、申し訳ないが、また君たちを拘束させてもらう事になりそうだ。

 事が済めば、また元通りに自由に行動できるよう取り計らうから、抵抗せずにおとなしくしてくれ。」

 所長が、ミライの言葉を受けて、非情にも通告する。


「いや、その必要はない。

 あれは恐竜人本隊の円盤だが、我々の仲間ではない。

 それどころか、我々の祖先を侵略した奴らだったのだ。」

 ミライの口から、とんでもない言葉が発せられる。


「な・・・なんだって・・・?

 それはいったいどういう事なんだ?」


「ああ、以前次元倉庫脇にある書庫の扉を開けてもらっただろう?

 そこには我々恐竜人部族の遥か過去の歴史がつづられていた。

 一緒に来てくれ。」

 ミライを先頭に、一同次元通路へと向かう。


「ここだ、ここに我ら種族の歴史がつづられている。

 2億数千万年前から地上を闊歩し始めた恐竜から進化した我々だったが、さほど進んだ文明を持っていた訳ではなかったようだ。


 文字や言語は持っていたが、せいぜい火を扱って集団で生活をする程度で、農耕文化すら始まってはいなかった。

 そこへ、小さな小さな存在である、別の種族の恐竜人たちが空から飛来したと記録されている。


 彼らは優れた科学力を持ってはいたが、我々に比べてとても小さく、吹けば飛ぶような存在であり、我々の祖先は宇宙をさまよって定住先を持たないそのかわいそうな存在に、この星での生活を認めたのだ。

 あまりにも大きさに違いがあり過ぎて、その科学力の恩恵も受けられないにもかかわらずにだ。


 歴史書はそこまでで終わっており、その後については記載がなかったため、その小さな種族に関しては消えてなくなったのかと考えていたのだが、どうやらそれが本隊という訳だ。」


 ミライが手にする歴史書には、小さな存在が乗って来た円盤が描かれているが、それは先程モニターに映し出された円盤と、細部にいたるまで酷似していた。


「一体どういう事だね?」

「恐らく、我ら種族の神器が眠ると言われていたこの地で、そのウチーデノコヅーチを見つけ出した小さな恐竜人たちは、それで自らの体を巨大化させ、我ら種族と同等の体格を得たのだろう。


 そうなると、科学力の劣る我らの祖先が叶う相手ではない、瞬く間に制圧されてしまっただろうな。

 征服された先祖たちは、彼らの奴隷として扱われていたのではないのかと思う。

 そうして、闇の存在で自分達の身が危ないと悟るや、すぐに深層次元へ移動し、奴隷である我々を監視役として残したのだ。


 だからこそ、我々の事を信用していなくて、全て本隊が操作できるようになっていたのだろうと考える。

 奴隷であったことを思い出して反乱されてしまっては、自分たちが戻れなくなってしまうからな。


 彼らが深層次元へ移るときに、体を縮小化させたと伝わっていたが、それは長い年月過ごす為、備蓄食料を少しでも減らす目的と考えていたのだが、どうやら違ったようだ。

 彼らが飛来する時に使用していた円盤に搭乗する為には、体を縮小して元のサイズに戻る必要性があったという訳だ。


 元々、宇宙空間をさまよっていた種族なのだからな。

 その時の円盤であるならば、永い永い時を過ごすための備蓄や穀物栽培の手段も備えているのだろう。」


 どうやらミライの考えている通りなのだろう。

 話を聞くとつじつまが合ってくる。


「そうか、だったらあの円盤は太陽系観光とかの目的ではなく、この地球侵略が目的という事になるね。

 更に、君達恐竜人の本隊ではなく、我々人類も含めた共通の敵・・・いわば、地球に住む生物の敵という訳だ。」

 所長の言葉にミライがこっくりと頷く。


「だったら、共同戦線と行こう。

 彼らの弱点などは判るかね?」


「いや・・・、記録には飛来したことしか記載がないし、その後の歴史は恐らく本隊が持っているのだろう。

 我々の祖先の歴史書には一切の記述がない。

 とりあえず、先ほどの望遠鏡を使って外観観察から始めよう。」


 ミライが仲間に加わった。

 恐らく、タイガ以下恐竜人兵士たちも・・・・。



「鬼たちの周りを飛び交っていた、小円盤や小球体というのが、元々彼らのサイズの侵略兵器だったわけだ。

 今は、私の研究室で調査中なのだが、恐ろしく精巧に作られているのだが、余りにもサイズが小さすぎて、いちいち電子顕微鏡でパターンを確認するしかない状態だ。


 我が文明でも超LSIなど微細パターンを作り出していたが、それよりもはるかに微細で、数十万倍にでも拡大しなければパターンの識別ができない程だ。

 おかげで、分析に手を焼いているのだが、どうやら元々小さなサイズの種族が開発したからこそ、なし得た技術という訳だね。


 それらを巨大化した後に作り直したのが、球体や円盤という訳だ。

 球体や円盤は直接本隊から指令を受けて活動していたようなので、危険だから全て破壊してしまった。

 小球体や小円盤は通信装置も小さくて、遠距離通信は出来ないから、球体を介して指示を受けていたようだからね。


 だから、ある程度隔離してしまえば、安全に分析ができるもので、そちらを主体としていたが、惜しい事をした。

 今現在で判明していることは、彼らが使っている通信の周波数と、主要な命令の言語くらいだ。」

 発着場で所長が、持ってきていた小円盤の部品をつまみ上げながら、悔しそうに話す。


「祖先の残した資料によれば、円盤の上部が開閉し、そこから出入りしていたという事だ。

 恐らく、そこが弱点と言えば弱点なのだろう。」

 ミライが、円盤画像上部の1点を指さす。


「所長さん、聞こえますか?こちらスターツです。

 例の木星軌道上の円盤ですが、ものすごいスピードで動き出しました。

 このスピードだと、24時間ほどで地球外周の月軌道にまで達します。


 現在、あらゆる周波数帯で呼びかけていますが、返事の代わりにメッセージが送られてきました。

 どうやら、恐竜人の本隊の様です。」


「そうか、こちらでも過去の資料から、あの円盤が恐竜人の本隊であることが分った。

 しかし、現在地上に居る恐竜人とは異なる種族のようなんだ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 所長が、ミライから聞いた史実を簡単に説明し始めた。


「やはり本隊だったか。

 悪いが俺を地上へ連れて行ってくれ。

 地上の仲間たちに、本隊の事を説明する。


 そうでなければ、奴らは本隊に同調してしまうだろう。

 我らが祖先を制圧して、奴隷代わりに扱った侵略者だとも知らずに・・・。」


「分りました、僕が連れて行きます。」

 すぐにハルがミライを連れて、発着場上方の穴から地上へ飛び出す。


「タイガよ、悪いが全軍・・・いや、恐竜人を家族も含め全員集めてくれ。」

「お・・・おう・・・、いいが、一体どうしたっていうんだ?」

「実は・・・。」

 タイガは驚きを隠せないまま、部隊員の所へ駆けて行った。

 そうして、地上で新たな生活を営もうとしていた恐竜人たちに、祖先が受けたであろう驚愕の事実が知らされる。


「ど・・・道理で・・、我々は氷漬けで冬眠させられ、目覚めれば狭い穴倉暮らしを続けさせられて・・・、父さんたちやじいさんたちは土や河川に太陽という外界を知らずに、基地と家の往復だけで一生を終えたんだ。


 ところが本隊は、安全な次元でのうのうと暮らし、海底へ沈む時の世代がいまだに生き残っているという話じゃないか。

 こんな不公平も、我々の祖先が侵略を受けて、奴隷として働かせられていたからか・・・。


 ちくしょう・・・。」

 悔し涙を流す恐竜人兵士たちも、多く見られた。


「地球人たちよ、無駄な抵抗はよせ。

 今地球上に居る恐竜人たちと、我々では科学力も武器も格段の差がある。

 そいつらに勝ったところで、我らに勝利したとは言えないのだぞ。


 あくまでも、我らが先兵であり、使い捨ての駒でしかないのだ。」

 ザッハやミライ達とは毛色の違う恐竜人がモニターに映し出され、降伏勧告を告げてきた。

 円盤から送られてきたメッセージだ。


「うーむ・・・、どうやら監視部隊は全滅させられたとみているようだね。

 状況的にも、そう思わざるを得ない流れだったしね、使い捨ての駒か・・・、こりゃ、ミライさんたちが怒るだろうな。


 本隊の正体を知る前までは、命を賭して我々と戦っていたのだからね。」

 所長が複雑な表情を見せる。


「いや、大丈夫だ、奴らの本性が分って丁度いい。

 我らの仲間には全部伝え終わった。

 全員が、本隊の事を敵として認識した。」


 地上での説明を終えたミライが、ハルと共に発着場へ降りてきた。

 一緒にタイガの姿もある。


「俺達も本隊との戦いには参加するぜ。

 と言っても、ろくな武器も持たないがね。

 まあでも、円盤の操作なら任せてくれ。


 地上制圧用円盤と捕獲用円盤の2機があるから、そいつらを操って戦いを仕掛けることは出来るさ。」

 タイガは、発着場にある操作パネルを動かして、2機の円盤を発射位置まで動かし始めた。


「悪いが、操作担当の兵士たちも降ろしてくれないか?

 タイガ中隊の第6小隊メンバーと言えば分るはずだ。」


 すぐに、ゴランやネスリー達が飛行能力で地上へ向かう。

 そうして、10人の恐竜人兵士たちを連れて瞬間移動してきた。

 兵士たちは、すぐにタイガの指揮の下、円盤の整備に取り掛かる。


「恐らく、我々が所有しているようなロケットなどは通用しないだろう。

 初めてこの基地と戦った時に、核弾頭兵器を瞬時に無効にしたくらいだからね。


 あの時に、巨大な光線を発する装置があったと思うが、あれは円盤など対空砲としては使えないのかね?

 なにせ、あの竜神様を倒してしまった兵器だ、凄まじい破壊力だったからね。」

 所長が、ミライに問いかける。


「ふうむ・・・、恐らくイオンビームの事だとは思うが・・・。

 あれは、破壊力は大きいが、凄まじくエネルギーを食うからな。


 ましてや、この大陸を浮上させて、エネルギーが枯渇寸前の状態のはずだ。

 恐らく、1発撃てるかどうか・・・、いや、それでも1年近く経ったはずだから2発行けるかも・・・。」

 ミライが首をかしげながら、微妙な計算を始める。


「ふうむ・・・、そうなると、少し作戦が必要だな。

 このペンダントはずいぶんと強靭な様子だが、もっと小さなサイズに作り直すことは可能かな?」

 ミライは、もと自分が首からかけていた魔封じのペンダントを取り出して、所長に尋ねる。


「ああ、細いワイヤーだが、強度は高いよ。

 もっとサイズを小さくするのであれば、材料は既にあるものを使えばいいから、すぐに作り直せるよ。」

 所長は、ミライの質問の真意は分らなかったが、とりあえず答えた。


「それじゃあ、これのサイズを1/10に縮めた物でいいから、大量に作ってくれないか。

 そうだな、1万本位。」


「1万本・・・それはまた、すごい数だねえ。

 まあ、魔封じの紐を合わせれば、君たちに使用したものが300本あって、更に200本作成しておいた。


 サイズが1/10で良いなら、ほどいて細く仕上げればいいから、材料的には何とかなるだろう。

 後は人手だけの問題だね。」


「僕は魔封じのペンダントに興味があるから、作り方を教えてもらえれば、頑張って作りますよ。」

 所長の言葉に、ハルが真っ先に手をあげる。


「僕もお手伝いします。」

「僕も・・・。」

 続いて、ゴランとネスリーも手をあげる。


「あたしだって、ミッテランおばさんを手伝って、魔封じの紐を作るわよ。」

「私もお手伝いさせていただきます。」

 ミリンダとホーリゥにナンバーファイブも加わった。

 かくして、魔封じのペンダントと魔封じの紐の量産化が始まった。



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