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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第4章 恐竜人編4
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第47話

                      2

『シャキーーーン』『カッキィーーーン』甲高い金属同士の衝撃音が通路中に響き渡る。


「さっ、今のうちです。」

 その側面を、壁にへばりつくようにして、ハルとナンバーファイブは蟹歩きで進み、ようやく次元通路の奥へと辿りついた。


「と・・・トラちゃん」

 ナンバーファイブは、ホログラムの壁の奥に透けて見える、トルテ中隊長の元に駆け寄ろうとする。


「あっ危ない。」

 すぐに、警護の恐竜人兵士がナンバーファイブを制止しようとして、その前に立ちふさがる。


「なによ・・・、邪魔する気?容赦しないわよ。」

 ナンバーファイブは殺気立って、鋭い視線を恐竜人兵士に向ける。


「い・・・いや・・・、この先は強烈な電磁波が流れているから、誰も近づけない。

 俺たちには戦うつもりはない、ミライ中隊長殿が一騎打ちを望むのなら、それに従うつもりだ。」


 恐竜人兵士たちは、戦う気はないことを示す為か、腰に吊り下げた軍刀を鞘ごと外して、床に置いた。

 そうして、自分が腰かけていた金属製の椅子をホログラムの壁の向こうに投げつける。


『ジュワジュワッ・・・バチバチバチッ』椅子は眩いばかりに発光しながら、溶けて行く。


「ナンバーファイブさん・・・、駄目ですよ、危ない。」

 ハルは、その光景を見て尚も壁の向こうへ行こうとする、ナンバーファイブを後ろから抱きかかえて押さえつける。


「そ・・・そんなこと言ったって、トラちゃんが・・・。」

 ハルが引き留めようとするのも構わずに、一緒に引きずってでも進もうとする。


「わ・・・分りました・・・、僕に考えがあるから、まずは止まってください。」

「えっ・・・、どうするの・・・」

 ハルの言葉に、ナンバーファイブはようやく立ち止まる。


「前に特訓でオーラの力を強めるために、両手足を縛って義手と義足を動かす特訓をしました。

 オーラの力で動かすのですが、その力でトランさんを動かせるかやってみます。」

 ハルはそう言うと、壁越しに透けて見えるトランの乗り移った恐竜人の体に意識を移した。


『ズルッ、ズルッ、ズルッ』黒焦げで動かなくなった体が、息を吹き返したかのように、少しずつ動き出す。

『ズルッ、ズルッ、・・・』

「ぐっ・・・」

 ところが動き出すたびに、ハルの表情が苦痛にゆがむ。


「あ・・・あと、もう少しだよ・・・、頑張って。」

 ナンバーファイブに急かされ、ハルは尚も恐竜人の体に意識を集中する。


『ズルッ・・、ズルッ』

「も・・・もういいよ。」

 体の一部がホログラムの壁を抜けて出て来たところで、ナンバーファイブが一気に体ごと引き出す。


「ふ・・・ふうっ・・・。」

 ハルが額の汗をぬぐいながら、疲れ果てた様に壁を背に床に腰を下ろす。


「トラちゃん、大丈夫?トラちゃん・・・。」

 ナンバーファイブが、トルテの体に向かって、治癒魔法を施しながら必死に声を掛ける。


「ふぁ・・・ファイブ・・・ですか・・・。わ・・た・・しは・・・もう・・・だめで・・・す。

 で・・・・も・・・、やく・・・め・・・は・・・はたせ・・・ました・・・よ。


 や・・・やみの・・・こ・・・の・・こえは・・・わたしにも・・・みりょ・・くてき・・に・・。

 じ・・・じん・・るい・・・を・・・めつ・・・ぼう・・させる・・と・こ・・ろ・・・で・・・した。

 せ・・め・・て・・・もの・・・つみ・・・ほ・・ろぼ・・・しで・・・」

 トランは、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で告げると、そのまま息を引き取った。


「いや・・・!トラちゃん・・・。」

 ナンバーファイブがその黒焦げになったからだを必死に揺さぶる・・・。

 しかし、その体が動きだすことはなかった。


「そ・・・そうだ・・・・、封印の玉を取り出せば・・・。」

 ふと思いついたナンバーファイブが、恐竜人の体の胸の辺りをまさぐって、水晶の玉を取り出そうとする。

 真っ赤な鮮血を帯びたその玉は、粉々に砕けていて、すぐにいくつもの小さな破片となって、掌から零れ落ちた。



 最初の攻撃先は、基地内の警備を担当している、監視本部室だった。

 とは言っても、現在3名の恐竜人兵士により、昼勤務が行われていることが分っているため、一番手薄な部署と想定できた。


「おとなしく降伏すれば、命まで取ろうとは考えていない。

 それどころか、恐竜人たちを共生の相手として地上の土地を分割し、共に暮らして行こうとも考えている。

 悪い話ではないだろう、無駄な抵抗はやめて、降伏してくれ。」

 本部室のドアを開けると、ネスリーはすぐに兵士たちに降伏を勧告した。


「は・・・はい・・・、我々は争いごとを好みません。

 殺さないでいてくれるのなら、降伏いたします。」

 ゾリ2等兵、ズブ2等兵、ブビ2等兵の3恐竜人兵士は、カードゲームの手を止めて、すぐに降伏した。


「じゃあ、各自これを首に付けてくれ」

 ネスリーは、3本の魔封じのネックレスを手渡して、首に巻き付けるよう促した。


 それから恐竜人兵士を連れて、来た通路を戻って行く。

 監視部屋を抜けて、長い長い通路を抜けた扉を開けると、広い洞窟にはいくつもの強靭な金属製の檻が作られている最中だった。


「早かったね、丁度今、第1号房が出来たところだ。」

 所長が、牢屋の鍵を開けてくれた。


 巨大化したトン吉とレオンが、今度はこちら側に牢獄を建設しているようだ。

 恐竜人たちには、なるべくここが黄泉の国と通じていることを、今のうちだけでも気づかれない様にしようという思惑なのだろう。


「ここは・・・、俺達も何度か来たことがあるけど、鬼たちの報告板から闇の存在が倒されて安全になったっていう玉が流れてくるはずの、レールがある洞窟じゃねえか。


 何千万年もの間、玉が流れてくることはなかったが、千年に一度の引継ぎの際、玉がどこかに引っかかって止まってはいないか、レールの端から端まで確認したから知っている。

 こんなところに人間たちと魔物たちが・・・、一体どうやって入り込んだんだ?」

 牢屋へ入れられたゾリ2等兵が、格子の隙間から周囲を見回しながら問いかける。


「それに関しては、答えるわけにはいかんね。

 まあ、いずれ分ることだ。

 少しの間、不自由だが、ここでおとなしくしていてくれ。」

 所長が、牢獄の鍵を掛けながら答える。


「じゃあ、次の予定場所である居住区へ向かいます。」

 そう言って、ネスリー達の第6班は、また恐竜人基地内へ戻って行った。



 次は、地上との交渉を行う小隊の制圧だ。

 指令室と部屋続きの通信室、両方からミリンダとゴランをそれぞれ先頭に、第2班と第5班が勢いよく入って行く。


「なんだお前たちは・・・、どこから入って来た?」

 地上の代表者との定期会合の準備をしていたのだろう、グレイ小隊長とバーム小隊長が驚いた風で、目を丸くした。


「どこからだっていいでしょ、おとなしく降伏すれば、痛い目を見ないで済むけど、抵抗すれば容赦しないわよ。」

 ミリンダが厳しい目つきで、部屋の中の恐竜人兵士たちを睨みつける。

 なにせ、半年以上前に拘束された、憎っくき相手なのだ。


「ふん・・・、人間ごときが・・・、俺達の相手になると思っているのか?

 竜弾、乱射!!!」

 バームが唱えると、真っ黒いいくつもの球体が、高速で発せられる。


障壁(バリア)!!!」

 すぐにゴランが障壁で防ぐ。


「モンブランタルトミルフィーユ・・・暴風(サンダ)雷撃(ストーム)!!!」

 ミリンダが唱えると、猛烈な雨と雷を伴った暴風が、部屋中に吹き荒れる。

 それは一瞬で、部屋の中に居た恐竜人兵士たちを、壁に叩きつけた。


「障壁!!!」

「障壁!!!」

 バームとグレイの小隊長だけは、すぐに障壁をはり、魔法攻撃を防いだ。

 部屋中、紙切れだけではなく、通信装置やいすや机などが飛び跳ね、惨憺たるありさまとなっている。


「ええい、こうなりゃ部屋の中だからと言って加減をする必要性もないだろう。

 全力で、戦え!」


 バームの号令で、壁に叩きつけられた恐竜人兵士数名が起き上がって軍刀を抜くと、跳躍しながらミリンダ達に襲い掛かってくる。

 すぐに徳井中尉たち自衛隊員と、ミンティア達S国軍兵士が日本刀と軍用ナイフを抜いて応戦する。


『カキィーーン』「シャキーーン」「キィーーン』刀同士が交錯する金属音が、部屋中に鳴り響く。

 3メートルを超す巨体から繰り出すパワー攻撃に、徳井中尉やミンティアは振り下ろされる刃を軽くいなしながら、スピードで対抗しているようだ。


「竜槍!!!」

 グレイが唱えると、何本もの太い漆黒の槍が、ミリンダ達の頭上を襲う。


障壁(バリア)!!!」

 しかし、魔術者の障壁で全て防がれる。


光弾(レイボム)!!!」

 ゴランが唱えると、巨大な光の玉がゆっくりとバームたちの方へ飛んでいく。


「障壁!!!障壁!!!」

「消去!!!消去!!!」

 バームとグレイ2人がかりでようやく消し去る。

 部屋の中では、威力を加減して発する必要性があるため、打ち消すのも可能なようだ。


「切りがないわね・・・、こうなりゃ・・・。

 モンブランタルトミルフィーユ・・・大爆発(エクスプロージョン) 連射!!!」


『ドッドッドッドッドッドッ・・・・』激しい爆風を伴う高温の玉が、ミリンダの両手から一定の間隔を置いて連射される。

「障壁!!!」

 グレイはすかさず障壁を張るが、一発目の玉に接すると、障壁は消し飛んでしまう。


「消去!!!消去!!!消去!!!」

「消去!!!消去!!!ぶっ!」


 バームもグレイも、急いで魔法効果を打ち消そうと唱えるが、次々と襲いかかってくる何発もの玉を消してはいられない。

 ついに、直撃を喰らって二人とも壁に叩きつけられた。


「ふん、あんたたちは結構タフなようだから、こんな攻撃1発だけでお陀仏ってことはないんでしょ。

 どう?降伏するならやめてあげるけど、抵抗するんならこのまま・・・。」

 ミリンダは、床に蹲っている二人に対して、最後通告とも言える言葉を掛け、両手を大きく上げて身構える。


「わ・・・分った・・・、降伏する。

 だから、攻撃はやめてくれ。


 おーい・・・、どうやら俺達では敵わないようだ。

 タイガ中隊が戦って敗れた相手だから当然とも言えるがね。

 全員、戦いはやめて降伏しろ。」

 バーム小隊長の命令で、軍刀を振るっていた恐竜人兵士たちも手を止めて、軍刀を床に置いた。


「じゃあ、全員これを首に巻くのよ。」

 そう言いながらミリンダは、人数分の魔封じの紐を手渡す。

 恐竜人兵士らは、おとなしくそれを首に付けた。


「魔法を使おうとすると、その紐が絞まって行く仕掛けをしてあるからね。

 ワイヤーはカーボ・・・何とかいうもので、頑丈に作られているから、ただの組みひもに見えるけど、馬鹿にしない方がいいわよ。


 いかなあんたたちでも首が飛ぶわよ。

 おとなしくさえしていれば、何ともないから、ついて来なさい。」

 そう言って、ミリンダを先頭に歩き出した。



「はい、連れて来たわよ。」

 ミリンダ達が基地の扉を開けて、恐竜人兵士たちを連れて来た。


「おお、早かったな。これで3小隊分だな。」

 所長は、ミリンダとゴランが連れて来た恐竜人兵士の捕虜を、小隊ごとの牢獄へと入れながら、満足そうに頷いた。


「お前たちは、随分と早々と捉えられた様子だな。」


 バーム小隊長は、牢獄内でもカードゲームに興じているゾリ2等兵たちの様子を横目でにらみつけた。

 なにせ、彼らの座っている席後方の格子には、ゲームの星取表が掲げられているのだが、数十ゲームは既にこなしている様子なのだ。


「へっへい・・・、あっしらは平和主義なもので・・・、戦わずして、降伏したといいますか・・・。」

 ゾリ2等兵が、後頭部を掻きながら、恥ずかしそうに頭を下げる。


「大体、お前たちがしっかりと基地内の監視をしていなかったから、こいつらが内部にまで侵入してきたんだぞ。」

 グレイ小隊長も、半ばあきれ気味にため息をついた。



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