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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第3章 恐竜人編3
34/201

第34話

                     3

「おお、そうですか、恐竜人たちの兵力は、現在100名ほどなのですね?」

 マイキーの国の王宮。所長たちが国王の謁見の間で、トランからの報告を説明している。


「はい、と言いましても、彼らの創造物である鬼たちを加えると、300名ほどにはなりますし、対するこちら側はと言いますと、ミッテランさんたち黄泉の国で修業を終えた魔術者たちの外に、スターツ王子たちのように私が開発したパワード・ボディスーツで同じく黄泉の国で訓練をした兵士たち、更に我々と共に戦ってくれる魔物達を含めましても、20名ほどです。


 今現在でも、圧倒的に兵力が足りません。

 仮に、人間たちに好意的な鬼たちが、戦闘に参加しないと考えたとしても、鬼たちの数倍の強さである恐竜人たち100名に対抗できる勢力ではありえません。


 数を頼りに、世界中の兵力を挙げて総力戦でと言ったやり方は、我々の側の被害が尋常ではないでしょうから、お勧めできません。」

 所長は、報告を聞いて少しは反撃の期待を持った国王に対し、尚も厳しい状況であることを告げる。


「分りました、我が国には、治癒魔法に長けた魔術者たちが現在20名ほど存在します。

 更に、7聖人の1人、ナンバーシックスの力を受け継いだ、ムーリーもおります。

 申し訳ありませんが、彼らを黄泉の国で鍛えては頂けませんでしょうか。


 更に、優秀な兵士たちを選りすぐって派遣しましょう。

 わが国だけでは足りないでしょうから、S国にも派遣を要請いたします。

 スターツクラスとなりますと、すぐに100名は無理でも、数十名ならなんとか集められるでしょう。


 恐竜人たちは、我らの人口増加には気を付けている様子で、地域ごとの日々の食事の総量を制限していますが、人数が減る分には気にしないでしょう。

 余った分は、保存食として置けばいいでしょうからね。」

 国王は玉座から身を乗り出すようにして答えた。


「ありがたいお言葉、感謝いたします。

 日本に対しても、米軍と自衛隊に派兵要請をいたしますので、何とか兵力を確保できそうです。


 そこで、ご相談なのですが・・・、これがカーボンナノチューブを生成する炉の加圧力と加熱温度のレシピです。

 私も制作にあたりますが、いかんせん量産化は難しい技術なのです。

 その為、ほぼ手作りといった形になってしまいますが、少しでも多くの方に参加していただきたいのです。」


 そう言って、所長は分厚い実験ノートを国王に手渡した。

 所長の研究の成果が詰まったノートだ。


「分りました、このカーボンナノチューブ繊維で、パワード・ボディスーツが制作可能となる訳ですね。

 それでしたら、S国だけではなくヨーロッパ中の繊維業界をあげて協力する様、取り計らいましょう。

 戦火を免れた工場はさほど多くはないでしょうが、手作りとなれば問題はないでしょう。


 更に、優秀な科学者たちにも協力を要請いたしましょう。」

 国王は、すぐに快諾した。


「そうですか、ありがとうございます。」

 協力的な国王の態度に、所長もハルも感激ひとしおの様子だ。


「何をおっしゃいます、人類存亡の危機なのですから、我々も協力するのは当たり前の事です。

 我が国からも、スターツやゴランたちを派遣してはいますが、それだけでよいとは言えないのです。

 あなたたちは、いくつもの人類の危機を救ってきてくれました、しかも自分たちの力だけで。


 でも、困った時には我々を頼っていただいていいのですよ。

 というより、我々が出来る事でしたら、遠慮なく命じていただくだけでも良いのです。

 なにせ、それが我々の未来にかかわってくるのですから。」

 国王は笑顔で答えた。


「幸いにも、我が国民は他国への行き来も許されておりますから、すぐに各国へこの技術を伝えて、制作にあたらせましょう。

 それと、兵士の選抜には1週間ほどかかるでしょうから、来週にでもご足労願います。」


「ははー・・・、ありがとうございます。

 では、また来週、お邪魔させていただきます。」


 そう言って、ハルと所長とゴランにネスリー、スターツ王子たちは宮殿を後にした。

 選抜された魔術者たちは、ハルたちが数回に分けて南極へ瞬間移動で連れて行く事にした。

 ムーリーは渋々の参加だったが、マイキーが南極で特訓していることを告げると、いの一番に瞬間移動した。



 チベットの寺院にはホーリゥとミッテランにマルニーが、修業僧たちの協力要請にやってきていた。


「ついに、俺にも作戦に参加するようにと、師匠様からご指示が出てしまったよ。

 俺は、既に黄泉の国での訓練は終えているから、訓練なしで戦闘に参加するって主張して、少しでも参加を遅らせようとしたんだが、俺の魂は辛い特訓を覚えてはいるが、俺の今の体は戦闘に耐える状態ではないと指摘されちまった。


 それはそうだろう、死んでから乗り移った体だからな、この体は、いわば普通の人間の体だ。

 まあ、家族を守るための戦いと考えれば、仕方がないさ。

 俺の外にも、若い修行僧10名が参加するそうだ。」


 ナンバーフォーが乗り移った男は、少し残念そうにうつむき気味で、修業の場奥に鎮座されている、高僧の言葉を伝える。


 瞑想の間では、相変わらず修行僧たちが瞑想を続けている。

 その隣の大広間では、難民の子供たち用の特別授業が開かれる傍ら、小さな子供たちが元気に飛び回っている。


 最終戦争とも言える、世界大戦の戦火から逃れてきた難民たちの末裔が、ささやかに暮らしているのだ。

 彼らの中からも修行の道を選ぶ者たちが出ているようだが、大半は寺院の上にある耕作地を耕したり、農業に従事して細々と生活を続けている人たちだ。


 それが、冒険を通じて日本のハルたちと知り合い、食料の補助を受け、子供たちへの教育を始めようとしていた矢先の、恐竜人たちの出現である。

 この地自体は、恐竜人たちにも存在を知られていない、いわば隠れ里的な地ではあるが、かといって自由で人間らしい暮らしが営めるかというと、そうではない。


 狭い耕作地で汲々とした生活を余儀なくされているのだ。

 なんとしても、明るい未来を取り戻さなければならない。

 ミッテランとナンバーフォーがいたので、1回の瞬間移動で修行僧を南極へ連れて行く事が出来た。



「そうですか・・・、黄泉の国という場所で訓練を積んで、恐竜人たちに対抗しうる軍隊を作り上げる、という事ですね。


 特訓の期間は・・・?ほう・・・、現世への扉を使うと、中で何ヶ月間も特訓していても、入った時とほとんど変わらない時間に戻されると・・・。

 その為、数日間で数十年間分の特訓が可能とおっしゃるのですね?

 それにより、超人的な力を発揮できるようになると。」


 軍服姿の自衛隊の小松原幕僚長は、ジミーの言っている言葉が、どうにもすぐには呑み込めてはいない様子だ。

 大阪の役場ビルには、ジミーはじめ、ミリンダとマイキーが兵力の要請にやってきていた。

 それぞれ、各地へ分散して依頼に回っているようだ。


「はい、新開発されたパワード・ボディスーツと言うのを身に付ければ、このように超人的な力を発揮できるようになれます。

 しかし、誰でもこのボディスーツを着用すれば、すぐに力を発揮できると言う事ではなく、このボディスーツが要求する筋力の土台が無ければ、逆にボディスーツに体を壊されてしまう恐れもあります。


 更に、使いこなせるようになるには、数年分の特訓が必要になるのです。

 それが、黄泉の国であれば、数日間で成し遂げることができるという訳です。」

 百聞は一見にしかずと言う言葉通りに、ジミーは会議室の中を、瞬間的に端から端まで移動して見せた。


『ほっほーぅ!』

 これには、会議に参加したメンバー、誰もが驚嘆の叫び声をあげた。


「そんな力が得られるのであれば、充分に奴らにも対抗できますよ。

 分りました、自衛隊のエリート兵士たちを選りすぐって、20名ほど派遣させていただきます。」

 ジミーのパフォーマンスで納得したのか、小松原幕僚長は、大きく頷いて要請を受け入れたようだ。


「恐竜人たちとのテレビ会議による交渉っていうのも、なんか的を得ないような話ばっかりで、おかしいなと思っておったのですが・・・、あいつら、今起きている人数が少ないものやから、それがばれないように直接は姿を見せずに、やっていた訳ですな?」

 同席していた、大阪市長もようやく事情が呑み込めたとばかりに、頷きながら話す。


「そうでんなあ・・・、地上の管理は鬼たちにばかり任せて、自分たちは地下深くでじっとしているんでしょうなあ・・・。

 そんな奴らに、地上の覇権を渡せまへんなあ。

 あんじょう、協力してやっておくんなさいなあ。」

 京都市長も、自衛隊の派遣には賛成の様子だ。


「米軍からも、海兵隊員を30名ほど選抜いたしまーす。

 爬虫類野郎なんかに、地上を渡すわけには、参りませんですね。」

 駐留米軍であるスマイル大佐も、笑顔で快諾してくれた。


「それでですね、このパワードボディスーツを作り上げるための繊維なのですが、これがカーボンナノチューブという新素材なのだそうです。

 非常に作るのが難しいようで、ほとんど手作りの形になってしまうのだそうです。


 これがレシピなのですが、こちらでも作っていただけないかと・・・。

 いくら黄泉の国で特訓をしたとしても、魔法力が成長しない我々では、ボディスーツが無ければ超人的な力までは発揮できません。


 何とかご協力お願いいたします。」

 ジミーは、所長の研究ノートのコピーを提出して頭を下げた。


「分りました、関西工業会上げて協力させていただきます。」

 こちらの方も、快諾していただいた。 


「では、兵士たちの選抜には数日ほどかかるでしょうから、今週末にでももう一度お越しください。」

 そう言って会議は終了した。



「すごいでんなあ、さすがはハル君や。

 先日、なんか乳ばっかりデカいだけのようなお姉ちゃんと一緒にきて、なんやずいぶん軟派路線に走ったのかと思っていましたけど、そうではおまへんでしたなあ。


 恐竜人たちに捕まっていた皆さんを解放して、更に特訓までしてあいつらに対抗する下準備まで進めたっていうんでっから、ほんまにもう、小さなヒーローっていうところでんなあ。」

 会議が終わった後、いつものようにロビンが自動販売機から紙コップのコーヒーやミルクを振る舞ってくれた。


「本当にそうですよ、おいらたちが全てやられてしまったと思って、一人生き残ったことに責任を感じて、たった一人だけでもあいつらに戦いを挑もうとして、近くの島まで行ったっていうんですから、本当にハル君には頭が下がりますよ。


 運よく、7聖人の1人のナンバーファイブと出会うことができて、更なる特訓の後に恐竜人たちの基地へ忍び込んで、そこで固まっていたおいらたちを見つけて、救い出してくれたんです。


 ハル君がいなかったら、おいらたちは未だに固まったままだったでしょうし、恐竜人たちに対抗する軍備を整えようとすることすら、出来てはいなかったでしょう。」

 ジミーも、ハルの活躍に笑顔で同意する。


「でも、無理をしすぎて倒れてしまって、危うく死にかけたのだから、危なっかしくて、目が話せないわよ。

 それと、その乳ばっかり大きいっていうお姉さんのおかげで、随分と助けられたみたいですよ。

 今も、7聖人のメンバーであるトランさんとトン吉も一緒だけど、恐竜人基地に潜入して、色々と情報を探ってくれているのよ。」


 ミリンダが、出されたホットミルクをおいしそうに飲みながら、笑顔で告げる。

 やはり、ハルの姉であり、保護者であるという気持ちは変わっていない様子だ。


「へえ、ハル君は頑張り屋さんやから・・・、やっぱりいっつも無理しているんでっしゃろうなあ。

 ちっとは休むよう、言ってあげなければあきまへんでぇ。


 それに・・・・、そうでっか・・・、あのお姉さんは乳だけではなかったという事でっかいな。

 なんや、人類の為に危ない思いしてまで、活動してくれているっていうのは、ありがたい事でんなあ。」

 ロビンも、感慨深そうに笑顔で答える。


「そうですね、ナンバーファイブやトランさんなどの7聖人とは敵同士として一時は相対した間柄でしたが、彼らのおかげで、恐竜人攻略の糸口がつかめそうなところまで来ていると言っても、過言ではありません。


 更に、ハル君に至っては、普段は科学好きの普通の中学生男子なのですが、冒険が始まると、いつも戦いの最前線に居ますからね。

 ここに居るミリンダちゃんもそうだけど、大人としていつも申し訳なく感じていました。


 でも、今回は所長が開発してくれた、パワード・ボディスーツがあります。

 これがあれば、おいらでも恐竜人たちと互角に戦えるでしょう。

 少しはハル君たちの戦いの手助けになるんじゃないかと、思っていますよ。(苦ー・・・。)」


 ジミーは出されたコーヒーの味に、口をすぼめながら、それでもおいしくないと気付かれないように、頑張って飲み干した。



「ここでの特訓の仕方について説明します。

 時間的な制限は、ほぼないと言っても過言ではありません。

 その為、手足を縛ったりなどの過激な特訓は致しません。


 それでなくても、黄泉の国の各ダンジョンは厳しい環境ですから、ダンジョンをクリアーしていこうとするだけでも、魔法力の特訓になるでしょう。

 まずは、自力で全ダンジョンをクリアーできるようになるまで、頑張ってください。


 障壁や様々な魔法技術を駆使していただいて構いません。

 何をしてもいいので、7つあるダンジョンを全てクリアーできるように、まずなってください。

 そこまでが特訓の第一段階となります。


 それが達成できたら、次は、障壁や炎や氷などの魔法を少しずつ制限して、クリアーできるようになっていただきます。

 更に・・・・。」

 先行で到着している、魔術者や修行僧たちの特訓は、すぐにミッテランの指導の元、開始された。




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