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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第2章 恐竜人編2
31/201

第31話

                      14

「ハル君たちとは連絡が取れましたよ。

 黄泉の国での特訓も、進んでいるようです。

 更に、パワード・ボディスーツとかいう新兵器まで登場しているようですが、それでもこれから目覚めてくる大量の恐竜人たちの相手をするには、辛そうです。


 まずは、直近で目覚めさせようとしている、監視役の恐竜人たち900名の目覚めを妨害しようと考えています。

 明日にでも、次元通路へ行って対処しようと考えますから、悪いのですが、手伝ってください。」

 自宅へ戻ったトランは、早速ナンバーファイブとトン吉を自室へ呼び寄せて作戦会議だ。


「いよいよ、恐竜人たちとの決戦ね。

 でも、そうなると、チュートロちゃんともお別れか・・・、折角仲良しになれたのに、ちょっと残念ね。」

 トランの言葉に、ナンバーファイブは複雑な気持ちの様子だ。


「そうですね、恐竜人たちも、我々と変わらぬ生活をしているようですし、中には争いを好まないものも多く居る様子です。


 ところが事態は、恐竜人が人類を支配するか、あるいは人類がそれを跳ね除けるか、2つに一つといった形で、決戦へと向かうように進んでいます。

 それは、誰が望んだことというより、全体の意志として流れて行っているようなので、簡単には止められないでしょう。


 平和的解決の道ということを検討しながらも、とりあえずは決戦を想定して、戦いを有利に進められるよう、画策していくしかないのでしょうね。


 戦況が、どちらかに大きく傾くようなことにでもなれば、おのずと戦いの終結に向けた譲歩案というものが、どちらかから提案されるのでしょうが、ある程度は戦えなければ交渉も出来ません。

 そうなるように、頑張らなければなりませんね。」


「わかったわ、でも、どうやって妨害するの?」


「それは、明日次元通路へ行って、直接妨害するのですよ。

 つまり、残りの9班が目覚め無いよう、再設定するのです。」


「そんなことが、可能なのですか?」


「可能も何も・・・、彼らが目覚めてしまえば、地上の人間たちの戦力では対抗措置が難しくなってしまいます。

 そうなら無いよう、何とかして妨害するのです。」


 トランは焦っていた。

 いつもなら調査を重ね、冷静に考えて計画を練ってから行動に移すのだが、今回はその様な時間的余裕はなさそうだ。


 目覚めさせる日時を調べてから、間に合いそうであれば、それなりに計画を練ってもいいのだが、調べ上がる前から目覚め始めてしまっては打つ手がなくなる。

 どうせ切迫しているのなら、そのまま成り行きで行動に移してしまえと考えていた。


 なにせ、この作戦が成功するかしないかで、人類が有利に立てるかどうかが決まると言っても過言ではないのだ。

 この情報を得られたというのも、ここ恐竜人基地に潜入したからであり、千載一遇のチャンスなのだ、これを逃す手はない。

 このことが、彼の判断力を狂わせているのかも知れない。


「まあまあ・・・、また捕虜たちを連れて行ってしまうのですか?

 しかも、今日は人間まで一緒に・・・。

 折角チュートロちゃんが、なついてきたと言うのに、残念だわ。」


 翌日早朝、基地へ向かおうと、ナンバーファイブ達と玄関を出たところで、前回同様、ザッハの妻に呼び止められてしまった。


「大丈夫ですよ、彼らもここでの生活に慣れてきた様子なので、我々の科学力を見せつけることで、抵抗する意欲を削ごうと考えているのです。

 そうして、彼らの生活様式や考え方などの情報を引き出して、支配する事に役立てようとするわけです。


 この2名は、一緒に過ごしてきてお分かりのように従順ですから、期待に応えてくれることでしょう。

 情報さえ引き出せば、後は軍としての利用価値はありませんから、家へ連れ帰ることも許していただけるでしょう。


 ほんの少しの間の辛抱ですよ。」

 トランは、勉めて明るく振る舞った。


 これからの決戦の事を考えると、無事に二人を戻せるかどうかの自信はない。

 それどころか、自分自身が無事であるかどうかすらも、怪しいものなのだ。


 それでも、何とか死中に活を見出すつもりでいた。

 なにせ、ナンバーファイブもトン吉も、鍛え上げられた戦士であるのだ。

 それぞれが、最高の働きをしてくれるだろう。


「まあ、そうですか・・・。だったらチュートロちゃんには、心配しないよう言っておきますよ。

 約束ですからね、きっと連れ帰ってくださいよ。」

 妻は、いつになく真剣に、トランの目を見て話しかけてきた。


「はいはい・・・、分りました、大丈夫ですよ。」

 そういって、トラン達は基地へと向かった。



「おやおや、今度は人間の捕虜と魔物まで連れてきて、一体何をしようというんだ?」

 本部室へ入っていくなり、トルテ小隊長が目を丸くした。


「そろそろ、こいつらも家に慣れてきたようで、妻に聞いたところでは、家事も率先してやってくれているようです。

 我々恐竜人の為に生きると言う事に、慣れてきた様に感じます。


 ここらで一つ、我らの科学力というものを見せつけて、更に従順にさせようと連れて来た次第です。

 そうすれば、どんな情報でも、引き出すことが容易になるでしょうからね。」

 トランは、なるべく得意げに聞こえるよう、声高に話した。


「おう、そうか・・・、懐柔策は成功という事だな。

 それはよかった。じゃあ、後はよろしく。」

 トルテ小隊長は、部下たちと共に引継ぎを終え、部屋を出て行った。


「じゃあ、行きましょうか。」

 トランを先頭に、ナンバーファイブ達は次元通路へやって来た。


「おやおや、今度は捕虜たちまで一緒に・・・・。

 この部隊の責任者である、俺に紹介しようと連れてきてくれたのか?」

 タリル中隊長は、トラン達の姿を見つけると、親しげに近寄ってきた。


「は、それもありますが、意外と従順な彼らに、我らの科学力を見せつけて、圧倒的な差から、とても敵わないと感じさせることにより、絶対服従の気持ちに導こうと考え、連れて来たのです。

 伝え聞きではありますが、彼らの科学力では次元操作など想像も出来ないことでしょうから。


 遅れましたが、この人間の女がファイブ、体の大きな魔物がトン吉という名前です。」

 トランは、そう言いながらナンバーファイブ達を紹介した。


「そうかそうか・・・、この次元通路の事、しっかりと説明してやると良い。」

 意外と簡単に、タリル中隊長はトラン達を通路の中へ引きいれてくれた。


 こちらでも勤務開始から間もないのだろう。

 10名いる配下の兵士のうち、5名は通路の遥か奥の方へ、始業確認チェックにでも出向いているのか、この場には5名しか兵士はいない。


 やるなら今だ、トランはナンバーファイブとトン吉に目配せをした。

『シャキーン!』それは一瞬だった。

 トランは腰から下げた軍刀を引き抜くと、目にもとまらぬ速さで、目の前の3体の恐竜兵士たちを切り捨てた。


魔刃(ダークソード)!!!」

 すかさずナンバーファイブがもう一体の首を狩る。

 トランから教えられたとおり、相手の懐へ踏み込んでの一撃だ。


「ブゥオー!」

 トン吉が白く高温の炎を、恐竜兵士に吐きかける。

「ぎゃー!」

 瞬く間に、恐竜兵士は高温の炎に全身を包まれた。


「ザ・・・ザッハ小隊長、気でも違ったのか・・・、一体どうしたと言うんだ?」

 タリル中隊長は、目の前の惨劇に目を丸くしながらも、軍刀を抜いて油断なく身構える。


「申し訳ありませんねえ、私はザッハという恐竜人ではありません。

 彼はとっくの昔に死んでいて、その体を私が操っていたという訳です。」

 トランはついに、その正体を明かした。


 通路の奥から、5体の恐竜兵士たちと警備の別部隊が急いで駆け寄ってくる。

 しかし、距離的には十分だ、中隊長の息の根を止めるだけの余裕はある。


「ほう・・・そうか、道理で言葉遣いなど、ずいぶんと丁寧になった訳だ。

 ザッハの奴は神経質な割に、ぞんざいな口のきき方をする乱暴な奴だったからな。

 それが、捕虜の身を気づかうやさしい男に急変身しちまって、おまえの妻のアカミから相談を受けていたんだ。


 やさしくなるのは結構だが、どうにも不気味だとよ・・・、さすが長年連れ添っただけはあるな。」

 中隊長を仕留めようと構えた時に、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 振り向くと、そこにはトルテ小隊長が、軍刀を抜いて構えていた。


「ちいっ!」

 一閃!トランはすぐに剣を水平に振るった。

 しかしトルテを気にしてか、踏み込みが甘く、タリル中隊長の首筋に傷をつけただけに終わる。


魔刃(ダークソード)!!!」

「ブゥオー!」

 すぐに、ナンバーファイブとトン吉が、止めを刺そうと攻撃をする。


「中隊長殿!」

 トルテがトン吉たちに向かって駆け出す。


「おっと、あなたの相手は、この私ですよ。」

 その前に、トランが立ちはだかる。


『カキーン!!!』剣と剣が、ぶつかり弾かれあう。

『シャキーン、シュパッ、ガキーン!』2体の恐竜人たちの剣さばきの軌跡は、照らされた照明の反射が残像となって映ることでしか、他の者達には確認することが出来ない位の速さだ。


 ナンバーファイブもトン吉も、トランに加勢しようとしてタイミングを計ろうとするが、二人の動きが早すぎて、魔法攻撃をかけても当たりそうもない。

 それどころか、下手をすると味方であるトランにあたってしまいそうで、怖くて手を出せずにいた。


 それほどの猛スピードで、二人は互いに右から左から振り下ろされる剣先を躱しながら、更に自分も踏み込んで切りつけて行く。

 技量が伯仲した二人ならではの、せめぎあいがしばし続いた。


 魔法能力もあるのだろうが、息継ぎさえもはばかれるしのぎあいで、言葉を発する余裕など到底考えられなかった。

 そのような余裕があるのなら、少しでも息を大目に吸い込んで、その勢いで踏込を深くして相手に切りつけたほうが、遥かに効果的であることが、お互いに分っていたからだ。


 トラン自身は、西洋剣術の覚えもあったが、何よりもこの体が覚えていた。

 ザッハ小隊長の剣技は、わずかではあるがトルテ小隊長より勝っているようだ。


「えいっ!」

 つばぜり合いを数回続けた後、トランがトルテ小隊長の剣ごと両腕を大きく跳ね除けた。

 その瞬間、彼の上半身は無防備な状態となる。


 切りつけるなら今だ!トランはすぐに剣先を水平に構え踏み込もうとする。

 ところが一瞬早く、彼の脳裏にはらわたを飛び散らせてのた打ち回るトルテ小隊長の姿が浮かぶ。

 その瞬間、彼の潜在意識が不快感をあらわにして、自身の足が動くのを止めた。


 それは、ほんのわずかな時間であった、ザッハ小隊長の潔癖症の性格が、返り血を浴びる自分を想像し、踏込を戸惑わせたのだ。


 先ほどの3体の恐竜兵士の時と違い、トランのような達人に対しては、より踏み込んで行かなければ致命傷など与えられるものではない。

 それでは標的との距離が近すぎて、返り血を全身に浴びてしまうのは避けられそうもないからだ。


『ズザッ!』

 途端にトランの右肩に強い衝撃が生じ、そこから生暖かい液体が噴き出すのを感じた。

 一瞬のすきを逃さず、トルテ小隊長がザッハ小隊長の体を袈裟懸けに切りつけたのだ。

 その剣は心臓にまで達しトランの視界は見る見るうちに狭くなって行った。


「と・・・トラちゃーん!!!」

 ナンバーファイブの叫び声が、遠くから聞こえたような気がした。


                続く



良かれと思ってやった強硬策が、裏目に・・・。致命傷を負ったトランの運命やいかに。また、人類はこのまま恐竜人たちに支配されてしまうのか?


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