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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第2章 恐竜人編2
22/201

第22話

                    5

「まずは、7つのダンジョンをクリアすることから始めましょう。

 と言っても、私たちが最初にしたように、蜘蛛の魔物の背中の上に乗って、障壁を張ったりしながら運んでもらうのではなく、自分の力で試練を乗り越えるのよ。


 どの道、蜘蛛の魔物は、まだ来ていないしね。

 ダンジョンをクリアーすることによって、技能を上げて行くのだから、楽して通ろうとするのではなく、試練を試練として受け止めてね。


 途中で落ちたり動けなくなっても、対応する地獄ステージへ移動するだけだから、心配しないように。

 瞬間移動できないものは、最初のうちは、一人で逆戻りするのは難しいだろうから、現世への扉を使って、もう一度入り直すように。

 これを繰り返して行って、経験を積みましょう。


 ある程度経験を積んだら、今度は仲間どうしで対人訓練なども取り入れて行きます。

 と言っても、所長さんの場合は体術を特訓するわけではないから、まず私が一緒に地獄ステージの向こうまで連れて行ってあげます。


 ダロンボさんたちの事務所を使えば、じっくりと勉強も出来るでしょう。」

 最初のつり橋のダンジョンに差し掛かったところで、ミッテランはこれから進める特訓の概要について説明する。


「だったら、私も連れて行って。

 私も体術の特訓をするつもりはないから。」

 すると、マイキーが一歩前へ出て来た。


「そうね、マイキーさんは非戦闘員だものね。

 わかったわ、じゃあ、マルニーさんも一緒ね?」

 ミッテランは、今度はマルニーに視線を移す。


「いえ、私はマイキー姉さまのような変装の特技はありませんから、体術を鍛えようと思っています。

 その為、ダンジョンのクリアを選択します。」


 マイキーべったりのマルニーにしては珍しく、彼女と離れての特訓を選択したようだ。

 それを聞いて、ミッテランが二人を連れて、瞬間移動する。


「じゃあ、私たちは出発だ。」

 迷彩色の軍服に身を包んだ、スターツ王子が大きなリュックを背負いながら、声を掛ける。


 スターツ・ナノミクロン・・・マイキーの兄にして、ドンラェチッイス共和国の第1王子。

 すらりとした長身で、数々のスポーツで優秀な成績を収めた彼は、いくつもの世界記録を保有している。

 中隊長として軍を率いる彼は、不安定なつり橋をものともせずに、渡り始めた。


『はい!』

 ミンティア王女とマイティ親衛隊隊長が続く。


 ミンティア・ナノミクロン・・・マイキーの姉にして、同じくドンラェチッイス共和国の第1王女。

 女性の身でありながら、1小隊を率いる彼女も負けてはいない。

 マイキーの姉であり、その可憐な容姿は、軍隊内に留まらず、国中どころか隣国のS国にまで轟いているのだが、彼女はそんな評判と相まって、日々肉体を鍛え上げる男勝りな性格をしている。


 マイティ・サブミクロン・・・スターツ王子たちのいとこであり、国王の甥でもある。

 スターツ王子に勝るとも劣らないスポーツマンであり、親衛隊長である彼も、不安定に揺れ動く吊り橋を、普通の道のようにすたすたと歩いて行く。


 彼らは魔法を使えないが、その格闘術で、闇の王子と渡り合ったこともある達人だ。

 前作終盤に近い、黄泉の国編から冒険に参加している。

 すぐに3人の姿は、残っている者達の視界から消えて行った。


「やるなあ、さすが自力だけで、ここのダンジョンをクリアーしただけの事はある。

 おいらも負けてはいられない、さあ行こう。」

 ジミーもテントなどが入った大きなリュックを背負ったまま、吊り橋に足を掛ける。


 高地見一・・・通称ジミー。

 元爆弾処理班で、仙台市警察官でもありながら、今は、北海道は釧路にある村の中学の先生を務める。

 ハルたちの、最初の冒険から参加している主役級メンバー。


 魔法を覚えたい気持ちは満々だが、一向に使えるようにはならない。

 それでも、取得している体術は強力で、ハルの剣術の師匠でもある。


「待ってください、私も連れて行ってください。

 さすがに、この後のメンバーと一緒だと、私は置いてけぼりです。」

 マルニーが、弱った表情でジミーの後姿に声を掛ける。


 マルニー・サブミクロン・・・マイティ親衛隊長の妹にして、スターツ王子たちの従妹。

 同じ従妹のマイキーを姉と慕う。

 人が潜在的に持つ能力までも見極める能力者だが、彼女も魔法は使えない。


 その能力で、ドンラェチッイス共和国の国務大臣を務めていたが、王子たちに大恥をかかせた兄を立ち直らせようと、その役割を兄であるムーリーに譲ってマイキーと共に日本へ来た。

 学業だけではなく、スポーツにも並々ならぬ才能を見せる。

 彼女も黄泉の国編から、冒険に参加している。


「いいですよ、その荷物をもってだと大変でしょう。

 おいらが持ちますから、マルニーさんはゆっくりと歩くことだけに集中してください。」


 ジミーはそう言いながら、マルニーの手からスーツケースを預かると、穴だらけの踏板の上で、キャスターを転がしながら、運んだ。

 マルニーは恐る恐る両手で吊縄を掴みながら、ゆっくりと歩き始めた。


「じゃあ、あたしたちも行くとしましょう。

 と言っても、何度もここへは来ているから、瞬間移動で対岸へ行くのは簡単だけど、それじゃあ特訓にはならないのよね。


 飛行能力を身に付けたから、飛んでいくことも出来るんだけど・・・、それもインチキっぽいし・・・。」

 ミリンダが、腕を組んで悩み始める。


 三田鈴・・・通称ミリンダ。中学3年生。言わずとしれた主役で、ハルと一緒に最初の冒険から参加している。

 ハルの幼馴染であり、ハルの事を弟のように感じて守ろうと、いつも協力してくれる。

 くるくるとカールした巻き髪が印象的な美少女。


 フリル付で、裾が大きく広がったスカートのワンピースが彼女の戦闘服であり、どこへ行くにもその格好で出かける。

 天候系魔法の使い手。


「そんなことはないよ、飛行能力は立派な魔法だよ。

 この断崖絶壁は数キロはあるから、その距離を飛ぶことだけでも立派な特訓さ。」

 そういいながら、ゴローは蝙蝠に姿を変える。


「ストーップ、ゴロー、蝙蝠は駄目よ、戻って!」

 ミリンダの叫び声に、ゴローが人間の姿に戻る。


 ゴ・ロー・・・母親譲りの吸血鬼。中部の村で、食べ物に窮していた村人たちを救おうとしていたところを、ハルたちと出会う。

 推定千数百歳だが、当時小学生だったミリンダに一目ぼれ。


 以降一緒に冒険を続けるが、強力な攻撃魔法も防御魔法も持たない彼は、大抵の場合、敵にやられて灰になってしまう。

 その都度ハルが灰を集めて、ツボに入れておいて、数週間たつと復活することの繰り返し。

 それでもダークサイドという、物理法則を逆転させる驚異の魔法を持つ。


「魔法力だけじゃなく、体も鍛えることが目的だから、あたしたちも自分の足でダンジョンをクリアーするわよ。」

 ミリンダが、震える足でつり橋に一歩踏み出す。


「えー・・・、し・・・仕方がないなあ・・・・。」

 ゴローが、納得していないように首をかしげながら、ミリンダの後に続く。


「じゃあ、私も続きます。」

 ホーリゥが、びくびくしながら吊縄に手を掛ける。


 ホーリゥ・・・チベット仏教の修行僧。大学2年生。竜神を天に昇らせた、ホースゥの双子の姉。

 闇の王子の手にかかった、妹ホースゥの魂を抱え、彼女が修行で得た経験をすべて引き継ぐ。

 その為、魔法力は1.5倍と言う触れ込み。


「高いところは、苦手という訳ではないが、ここは例外だ。

 恐怖感を与えるために、作られたようなものだからね。」

 ゴランは、なるべく平静を保とうと、何度も深呼吸してから、吊り橋へ足を踏み入れた。


 ランスロッド・ゴ・スツッツガル・・・通称ゴラン。大学2年生。ドンラェチッイス共和国出身。

 学生でありながら、治癒魔法と障壁魔法の大家。ミッテランの失われた左腕も復活させた。

 彼の母国では、魔法力は天性のもので、努力しても伸びることはないと言われていたが、ミッテランの指導の元、特訓して魔法力を向上させる。


「うーむ・・・、無視の魔法を使って、恐怖心を取り除いてもいいのだが・・・、それでは反則になってしまいそうだな。」

 そう言いながら、ネスリーも恐る恐るつり橋に足を踏み入れる。


 ネスリー・ゴ・アドマイア・・・通称ネスリー。排他魔法使いにして、ドンラェチッイス共和国唯一の攻撃魔法使いだった。

 幼いころから特別扱いで育てられたため、かなり我儘だが、すれてはいない。

 彼も、ミッテランの指導の元、特訓でかつての伝説的な魔法を身に付ける。


「あら、全員出発したようね。

 もう少し入り口で、ためらう人も出るかと思っていたけど、みんなやる気満々というところね。

 いい事だわ。私も負けずに、いきましょう。」


 瞬間移動で戻ってきたミッテランは、誰もいないつり橋の渡り口を見て、満足そうに笑みを浮かべ、自らも吊り橋を渡り始めた。


 三田蘭・・・通称ミッテラン(byミリンダ)。ミリンダの叔母にして、究極の魔道士。

 ハルたちの最初の冒険には参加しなかったが、集団での魔法による戦闘方法などを教えた。

 ミリンダやハルたちの魔法の師匠であり、魔法学校の校長。

 天候系魔法の使い手でありながら、魔封じの紐などのアイテムも製作する。



「ふうむ・・・、雑務に惑わされずに、じっくりと文献を読めるのは、何年振りだろうね。

 と言っても、このまま現世への扉を使って外へ出てしまうと、すっかり忘れてしまうんだものなあ。

 そうなってもいいように、毎回何らかの発明品を作って置く様にしなきゃいかんなあ。」

 所長は、カウンター奥の机に分厚い文献を並べながら、読みふけっている。


 竜ヶ崎学・・・通称 所長。仙台市近代科学研究所所長。

 新型爆弾で、建物だけ残された旧仙台市を、人が住める環境に復活させた。


 魔物の研究第1人者であり、魔封じのネックレスを考案し、仙台市郊外に魔物収容所を設立する。

 ハルたちの最初の冒険をバックアップした、初期からのメンバー。

 ジミーが使う新兵器を開発することもある。主に戦術担当として戦いに参加する。


「・・・しかして、その実態は・・・。」

 マイキーが勢いよく、変装用マスクをはがす。


「駄目だわ、言葉と動作が合致しない・・・、どうしてもコンマ何秒か遅いわね。

 長い間、鋼鉄化の魔法とかで固まっていたせいかしら。

 繰り返し練習して、元のタイミングを掴まなければ・・・。」

 そう言いながら、マイキーはマスクをかぶっては、それを勢いよく外す練習を繰り返す。


 マイキー・ナノミクロン・・・ドンラェチッイス共和国、第2王女にして、仙台市警察の潜入捜査官。

 神隠しにあった国民たちを救える人物を探しに、日本へやって来た。


 変装の名人と言う触れ込みだが、使うマスクは、自分の顔と寸分たがわないマスクのみ。

 つまり、マスクをかぶってもかぶらなくても、外観上の変化はない。

 ハルたちの最初の冒険から関わってはいるが、一緒に冒険に参加するのは、黄泉の国編から。


 彼らの特訓は、始まったばかりだ。


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