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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第1章 恐竜人編
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第2話

                     2

「なんだい、用事って・・・。」

 神田と神尾が、ミリンダに呼び出されて表に出てくる。


「うん・・・、申し訳ないけど、また魔法学校をお願いね。

 前回の指導はずいぶんと好評よ。

 その調子で、続けてちょうだい。」

 ミリンダが、明るい笑顔を振りまく。


「えっ?またかい・・・?

 俺達だって、そうそう暇ってわけじゃ・・・。

 大体、何でも頼めばすぐに聞いてくれると思われても、迷惑なだけだ・・・。」

 ところが、神田達の態度は冷たいものだ。


「何言っているのよ、九州から来た人たちはみんなまじめに働いているようだけど、あんたたちは代表気取りで連絡で忙しいって言いながら、宿舎でのんびりと寝転んでいるだけだって、苦情が来ているのよ。

 そんな態度だと、代表を下ろされるわよ。


 この間だって、みんなが文句を言ってきた時に、魔法学校の指導だってきちんとしているからって、あたしが何とかみんなを説得して押さえつけたんだからね。」

 その態度にカチンと来たのか、ミリンダが捲し立てる。


「そ・・・そりゃ、ありがたい事だが・・・。

 またなんか、こう・・・、ご褒美というか・・・。」

 神田も神尾も、そう言いながら頬を赤く染める。


 どうやら、この間のマイキー達のご褒美に味を占めて、更なるものを要求しようという腹積もりのようだ。

 これには、ミリンダもあきれ顔だ。

 しかし、そんな態度も次の瞬間、がらりと変わる。


 突然空がうす暗くなり、積乱雲でも発生したのかと空を見上げたが違った。

 空をスクリーンにして、巨大な映像が映し出されたのだ。

 それは、爬虫類の顔を持っていた。


「人類諸君、ご苦労だった。

 私は極東地区担当のクレイだ。

 君たちの呼び名で言うところの、闇の王子の存在を消してくれたこと、大変に感謝する。

 これで我々は、安心してこの星で生活して行く事が出来る。」


 グレイと名乗る爬虫類は、メタリックな服を着て、短めの腕には4本の指があり、器用にパネルを操作して闇の王子の姿などを、サブスクリーンに映し出したりしている。


「彼の存在は本当に厄介だった。

 我々は2億年以上もかけて恐竜から進化した知的生命体だが、我々よりも先にこの星には知的生命体が存在していた。


 それは、この星が誕生するのと同じくらいの昔からいたようだが、この星の片隅でただひたすらじっと助けを待っていたようだ。

 その、助けを呼ぶ声は、我々にはとても魅力的に聞こえ、それにあがなう事はとても難しく、次々と奴に呼び寄せられては魂を吸収されて行った。


 そうして力をつけた奴は、この星中の火山という火山を噴火させていき、自分の仲間を星の内部から呼び起こそうとした。」

 突然画面には、噴火するいくつもの火山の映像が映し出される。


「奴1体だけでも脅威なのに、その仲間を増やすことは出来ない。

 我々は、意を決して奴を滅ぼそうとしたが、それは自虐行為でしかなかった。

 なにせ、魅力的な声を聞いてしまっては、とても敵対する意思を保つことは出来ないからだ。


 同時に、我らが強大な力を得た奴と、対抗しうる力を得ようと画策すること自体が、自爆行為となってしまった。

 なぜなら、力をつければつける程、奴の声が魅力的に響き、奴に引き寄せられる誘惑がより強固になって行くからだ。

 更に、吸収したものの力を自分のものにできる奴は、より強くより賢く進化して行った。


 それでも特殊な耳栓をして、奴からの呼びかけを遮った仲間たちが、奴が呼び寄せる場所に向けて強力な爆弾を送りつけたのだ。

 そうして我らが大陸の西方で、大規模な爆発と共に、奴を葬った。

 勿論、奴に引き寄せられていた我らの同胞も、多くの犠牲者となった。


 更に、上空高く、成層圏をも超える爆風に持ち上げられた海水やチリは、その後何年にもわたって太陽光を遮り、地表は瞬く間に凍りついたほどだ。」

 ちょうど、中南米付近の海底に、ぽっかりと大きな穴が開いた映像に切り替わる。


「ところが、それでも尚奴の息の根は止められていないことが分かった。

 奴からの呼びかけは、少しの間を置いただけで、また聞こえて来たからだ。


 しかし、奴も無事ではなかったようだ。

 吸収した我々の同胞の魂はすべて放出され、我らの前へ現れた頃のか弱い生き物でしかなくなっていた。

 しかし、我々が地上での生活を続ける限り、すぐに奴の元へと向かうものが現れ、再び力をつけるのは明らかだった。


 なぜ、これほどまでに奴の声に引き寄せられるのかを研究しても見たが、どうやら我ら種族の根幹ともいうべきレベルの遺伝子が、絡んでいることが分かった。

 つまり、遺伝子操作することも出来なかったのだ、我々が今この姿を保つためにはな。


 仕方がないので、我々はしばしの間この大地を放棄することにした。

 我々が住む大陸を海中深く沈め、眠りに付くことにしたのだ。


 その間の地表の番人として、当時生まれつつあった哺乳類を参考にして、鬼を作り上げた。

 勿論、我らの持つ奴の声に引き寄せられる遺伝子を削除したのだが、土台として我々の遺伝情報を利用したため、ひ弱な存在であるべきだったものが、強靭な肉体をもつ存在となってしまった。


 仕方がないので、その力を弱めるリミッターを取りつけ、地下深くの限られた空間でのみ生息するよう命じた。

 いかに、声に耐性があろうとも、事情が分からなければ引き寄せられてしまう可能性はあるのだからな。

 もう2度と闇の王子に力をつけさせることが無いように手配して、鬼たちには地上の生物たちと闇の王子の監視役を言いつけた。」


 今度は、ダロンボたち鬼の姿と、黄泉の国の映像に切り替わった。

 どうやら、ダロンボたちの創造主のようだ。


「強い力がなければ、闇の王子の声を聞くこともなく、自ら寄って行く事もない。

 そうして餌の無い日々が続けば、闇の王子もあきらめてこの星を去ってくれるのではないかと考えていた訳だ。

 強大な力を持つやつに対抗しようとして、力をつけようと画策して失敗したことを教訓に、いわば逆転の発想だな。


 ところが、どうやら闇の王子は我慢強く、この星に居続けたようだ。

 そうして、数千万年経過して、生物の進化というものは大したものだな、我々が作り上げた鬼にそっくりの人類という存在が、この星の大地に根付いているではないか。


 我々は、お前たちの祖先である原生哺乳類に、鬼と同様に闇の王子に対する耐性と、ある程度以上の力には発達しないよう仕込んでいたのだが、それでも一部では限界以上の存在となり得た者がいたようだ。

 それでも、その者たちのおかげで闇の王子は封じ込められたわけだ。

 改めて礼を言う。」


 映像は、ハルたちが数ヶ月前に闇の王子を封印した時の、南極での映像に切り替わる。

 かなり遠くからの撮影の様で、はっきりと顔までは見えないが、明らかにハルたちの姿だ。


「悪いが、お前たちが住むこの大地を明け渡してもらう。

 もともと、我々が住んでいた星なのだからな。


 勿論、お前たちが住む場所は提供してやる、ちょっと狭くはなるが、我々が食する家畜たちの飼育場の世話係としてならいいだろう。

 もっとも、お前たち自身が、我々が食する家畜でしかないのではあるがな。ハッハッハッハッ!」


 そう言い残して、空は元の青空に戻った。

 だれもが、今見た光景を、すぐには信じることが出来なかった。

 これは夢だ・・・、きっと夢なんだと、うわ言のように繰り返す。


「わ・・・判った・・・、魔法学校はバッチリ面倒を見ていてやる。

 だから、今の奴がいった事・・・、何とかしてくれ。

 俺たちは、あんな恐竜野郎の餌になんかなりたくはない。」

 神田も神尾も、半分泣き顔でミリンダに訴える。


「う・・・うん・・・、だ・・・だいじょう・・・ぶよ・・・。」

 ミリンダも、噴き出す汗を抑えきれずにいた。


 夏場の日差しのせいだけではないようだ。

 すぐに、学校の校庭へ瞬間移動する。

 そこには、既にハルたちもリュックを抱えて集まっていて、口々に不安を募らせていた。


「まずは、仙台へ行きましょう。

 考えるのは、それからよ。」


 ミッテランの呼びかけにより、気を取り直した面々は、彼女を中心にして中空へと掻き消える。

 そうして、仙台市の研究所裏のグラウンドへ瞬間移動した。


「えらいことになったな。

 無線連絡したところによると、世界中で先ほどの内容が、しかも地域ごとの言語で放映されたらしい。

 どうやら、本当に海底深くで復活の時を待ち望んでいたのだろう。


 闇の王子が消え去る時を、今か今かと待っていたという訳だ。

 この星の上で進化した知的生命体は、我々だけではなかったという事だ。

 そうして、遥か昔に根付いていて、ある事情で一時地上から姿を消すことを余儀なくされた者たちが、先住権を主張し始めたという事のようだね。」


 所長が、ハルたちの姿を見つけて、研究所ビルから走ってやってきた。

 グラウンドには、既に食料の缶詰を詰めた段ボール箱が準備されている。

 準備している最中に、先ほどの放映があったので、無線で各地と連絡を取り合っていたのだろう。


「どうするのですか?

 まともに行くのは、危険な感じがしますけど。」

 ジミーが、各人に缶詰を配っている所長に尋ねる。


「いや、何とも言えないが、それでも彼らの文明に掛けようと思う。

 大陸を海底に沈めたり、浮かばせたり、更には天空を使って映像を映し出すなど、凄まじく発達した文明国家だ。

 恐竜から発達したとは言っていたが、それでも高等生物同士、話し合いができるのではないかというのが、各国の意見だ。


 私も、その考えには賛成している。

 もっとも、今の世界に生き残った人類の力では、とても彼らに対抗しうる事は出来そうもないというのが、本音ではあるがね。


 一定レベル以上の文明を持った種族であるならば、脳が発達していて言葉を話し、文化を持っているような高等生物を、餌にしたり奴隷のような扱いをすることは、ないはずだ。

 代表者が行って、話し合えばきっとわかってもらえるに違いない。」

 所長は、そう言って自分のリュックを背負った。


「判りました、じゃあ行きましょう。」

 全員がマイキーの国へ瞬間移動した。



「ようこそいらっしゃいました。

 お疲れでしょうが、すぐに港へ向かいます。

 こちらへどうぞ。」


 王宮前の広場には、スターツ王子たちが待ち構えていて、ハルたちをバスに案内する。

 バスが向かった先は、S国の空港だった。

 そこから軍用ヘリコプターで、一路西へ向かう。

 飛行機嫌いのゴローだが、恐竜人たちの事を考えているのか、上空へ行っても騒ぎ立てることはなかった。


 心なしか、眼下の大地には緑が戻ってきたような感じがする。

 馬吉たちリーダー格の魔物による、近隣の魔物たちを従えて耕作地を広げていく手法が、成功して行っているのだろうか。


 荒れ果てて、瓦礫とクレーターだらけの景色だったものが、少しずつ変わってきている様子だ。

 ヘリコプターには、スターツ王子たちの外にも、スーツ姿の中年男性や、軍服姿のがっしりした体格のいい男たちも数人乗っている。


「どうも、私は日本国仙台市・・・。」

 すぐに所長が、名刺を持ってあいさつ回りをする。


「どうやら、S国の使節団のようだ。

 既に大半は港に到着していて、そこにはさらに各国の代表者もいるという事だ。」

 所長が、あいさつ回りで得た情報を説明してくれる。


 数時間ほど飛行した後、到着した港には、確かにスーツ姿の男女でごった返していた。

 無理もない、またも人類の存続に関わるような場面なのだ。

 しかも、今回はどうやら交渉の余地が残されている感じがする。


 各国とも、有能な交渉人を派遣して来ていることだろう。

 マイキーやマルニーは、各国の代表たちと笑顔で談笑している。

 勿論、スターツ王子やミンティア王女も同様に、笑顔で会話を続けている。


 全員、タラップから船に乗り込む。

 船はただのフェリーで、軍用艦ではない。

 平和使節団であることを、アピールするためだろうか。

 その為、護衛艦もつかずに、単独で向かうという事だった。


「じゃあ、余裕のある今のうちに、授業と行こうか。」

 案内された船室へ入った途端、ジミーが教科書を広げる。


 珍しく、ジミーは丸腰だ。

 と言っても、授業に際しては、マシンガンなど肩から下げることは決してないのだが、それでも有事の際にはいつでも動けるよう、移動教室では教卓に立て掛けているのだ。


 ところが、平和使節団という事で、フェリー搭乗の際に武器は全て没収されてしまったのだ。

 おかげで、お腹の辺りがスースーして、随分と居心地が悪そうだ。


「ちょっと、今は夏休みのはずよ。

 そりゃ、宿題はやらなければいけないけど、学校の授業は無いでしょ。」

 何時になくミリンダは強く反発する。


 それはそうだ、折角の夏休みをつぶされて、こんなところまでやって来ていて、更に授業まで行われては堪ったものではないだろう。


「そ・・・そうか・・・、そりゃ残念だが、仕方がない。

 確かに今は夏休み期間中だからね。

 でも、出された宿題は、毎日きちんと片づけて行くようにね。」

 そう言いながら、ジミーは少しさびしそうに教科書を閉じた。



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