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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第1章 恐竜人編
13/201

第13話

                     13

「これからどこへ行くの?」

 黄泉の穴から出ると、そこは先ほど同様樹海だった。

 ハルと共に、もう一度黄泉の国へ入って、札を使って出て来たのだった。

 状況が分らない、ナンバーファイブが問いかけてきた。


「はい、また日本ですが、別の場所です。

 今度は仙台市という町です。

 昨日、樹海を走って抜けたので、位置関係はつかめました、そのまま瞬間移動できます。」

 そう言ってから、ハルはナンバーファイブを抱きかかえると、そのまま中空へ掻き消えた。


「ここが、仙台市の研究所裏のグラウンドです。」

 そう言いながら、ハルは鬼の能力で、背が高く大きな花を持った植物を出現させ、グラウンドの真ん中に植えた。


「燃えろ!!!」

 そうして、魔法を唱える。

 すると、

「燃えろ!!!」「燃えろ!!!」

 すぐに借りフラワーが、ハルの魔法を借りて、唱え始めた。


「じゃあ、行きましょう。便利な方法を教えてもらったので、助かりますね。」

 そういいながら、早足で研究所ビルへ歩き出す。


「ハルくーん!」

 研究所ビルの手前で、若い女性の声で名前を呼ばれた。

 ハルが振り向くと、グラウンドの土手の上に、二人の若い女性が手を振って呼びかけているのが見える。

 高校の制服姿の瑞葉と桔梗だ。


「やっぱりハル君だったでしょ?

 昨日、釧路の村にハル君が帰って来たって連絡を受けたのを聞いて、今日あたりここへも来るんじゃないかと思って、ずっとグラウンドを見張っていたんだよね。


 そうしたら、炎が上がるのと恐竜人たちの球体が飛んでくるのが見えたから、ハル君が来たんじゃないかと思って、こっそり教室を抜け出してきたの。

 やっぱり間違いなかったでしょ?」


 瑞葉は隣の桔梗に自慢げに話しかける。

 授業などそっちのけで、朝からずっとグラウンドの方を見ていたのだろう。

 勉強は大丈夫だろうかと、ハルは少し心配になった。


 瑞葉に言われて、グラウンド中央に目をやると、既に3機ほどの球体が飛んできていて、借りフラワーの周りを飛び回っていた。

 恐らく、警告を与えて言う事を聞かなければ、攻撃するのだろう。


「学校もやっているんですね、よかった・・・、少し安心しました。」

 なによりも、学校が存在しているという瑞葉の言葉が、ハルにはうれしかった。


「うん、でも、今住んでいる地区からの移動は禁じられているし、結構不自由だよ。

 家族が住んでいる、北の村にも自由にはいけないのよ。


 あたしたちは、両親が住んでいるからって、特別に1ヶ月に1回は帰ることができるって決められたんだけど、その時も行き帰りは円盤と球体がずっと付いて来て、あんまりいい気はしないわね。」

 瑞葉は、研究所へ歩き出しながら、近況を説明し始めた。


「ふうん、恐らく人間たちがまとまって抵抗してこないように、分断する作戦の様ね。

 自由に地区を移動できないように制限するのは、その為でしょうね。」

 瑞葉の後を歩いて行くナンバーファイブが、冷静に分析する。


「それはそうと、この綺麗なお姉さんは何者なの?」

 瑞葉が、今気づいたかのようにハルに尋ねる。


「ああ、元7聖人のメンバーで、今は色々と協力してくれている、ナンバーファイブさん。

 メイドさんなんだって。」

 ハルが簡単に彼女を紹介する。


「初めまして、ナンバーファイブよ。

 あなたたちはすごくかわいらしいけど、メイドの予備軍と言ったところかしら?

 これから、色々とメイドに関するお勉強をして、将来は立派なメイドになるのよね?」

 ナンバーファイブは、ようやくメイドの話が通じそうな相手に巡り合い、嬉しそうだ。


「ええっ?メイド・・・???って何の事?」

 瑞葉は不思議そうに、桔梗に振り返るが、桔梗も黙ったまま首を振る。

 当てが外れてしまったナンバーファイブは、がっくりと肩を落とす。


「戦争前の日本では、若い女の人のほとんどが、メイドさんだったんだって。

 そのメイドさんに憧れていて、日本に来るのを楽しみにしていたみたいだけど、メイドさんが居ないのでがっかりしているみたい。」

 うな垂れるナンバーファイブを見て、ハルが瑞葉たちに説明する。


「うーん、あたしたちはあまり人が住まないようなところでしか暮らしたことがなかったから・・・、仙台市みたいな都会に住むのも、初めての事だし・・・。

 西日本の都市っていう所に行けば、メイドさんも沢山いるんじゃないの?

 あそこは、ここよりももっと文化が進んでいるんでしょ?」


「そ・・・そうなの?」

 ナンバーファイブが突然元気を取り戻す。


「うーん、あまり自信がないけど、この後回る予定だから、すぐに判りますよ。」

 ハルは自信なさそうに答える。


「まずは、ここの様子を聞かなくちゃね。」

 そう言いながら、ハルたちは研究所ビルに入って行こうとする。


『チュドーン!』グラウンドでは、球体の警告にも関わらず、炎の魔法を止めなかった借りフラワーが、レーザー砲の攻撃を受けて、哀れ黒焦げとなってしまっていた。


『チン』エレベーターから降りたハルたちは、所長室がある中央研究室の中へと入って行く。


「ようこそ、ハル君。昨夜、権蔵さんから連絡があり、ハル君たちの来るのを待ち受けていたよ。

 よく無事で帰って来てくれた。


 これで、所長が生きていることへの希望が持てる。

 所員一同、大感激さ。」

 いつも、所長に書類などを持ってきていた、いつもの研究員さんが、出迎えてくれた。


「お久しぶりです。突然押しかけてすいません。

 恐竜人たちの情報を得るのと、皆さんの現状の生活を知りたくて・・・。」

 ハルが、申し訳なさそうに上目づかいで話す。


「ああ、恐竜人たちの人間や魔物に対する態度は、今のところはいたって紳士的だ。

 現状の居住区域から出られないという制限はあるが、そのほかは意外と自由に過ごせている。

 我々は、日夜恐竜人たちの生態や弱点を探ろうと活動しているが、それに対する制限や強制など全くない。


 と言っても、実際の所我々は、直接恐竜人に出会ったことは一度もない。

 鬼の監視員たちが常駐しているのだが、彼らに色々と質問をして、恐竜人たちの事を探ろうとしている程度だ。

 それによると、恐竜人たちの寿命は、我々人類よりもはるかに長く、数千年に及ぶらしい。


 更に、怪力で魔力も強く、鬼たちよりも強い力を持っているという事だ。

 だから、逆らわない方がいいよと、監視役の鬼たちに言い聞かされてしまった。」

 研究員は、笑いながら話してくれた。


「そうですか、移動制限以外は、今の所自由なんですね。

 少し安心しました。

 じゃあ、他の所の状況も心配だから、これから大阪へ行ってみます。」

 ハルは、研究室を出て行こうとした。


「もう昼だから、昼食を摂って行きなよ。

 食堂の場所は、前と同じだよ。」


「そうですか、じゃあ、お言葉に甘えて・・・。」

 ハルたちは、瑞葉たちと一緒にエレベーターに乗り、食堂のある階で降りた。


「本当は、食料の制限があって、都市ごとの人口構成から、成人が必要なカロリー計算から割り出された食物以外の収穫は、全て恐竜人たちに納めなければならないの。

 実質的な産児制限だって、研究所の人たちが言っていた。


 計画では、調達される作物は年々増加するように割り当てられていて、更なる収量増と共に、人口制限もして行かないと、生き延びられないだろうとも言っていたわ。

 だから、あたしたちは決して自由に生きていられるわけではなさそうなのよ。


 みんな、ハル君たちに、重荷を負わせたくはないから、比較的自由だって答えているだけよ。

 ここの食堂だって、本当は定食として人数分の食事に分けて出さなければならないのに、あえて大皿で出して人数の増減を分りにくいようにしているのよ。


 これが出来るのも、蓄えた保存食を隠して申請を逃れたおかげだって言っていた。」

 瑞葉が相変わらずビュッフェ形式で運営している食堂で、皿に食事を盛り付けながら話してくれた。


「そう言う事なら、後で僕が缶詰を大量に出して置いて行きますよ。

 鬼の力を使えるから、そう言うことは任せておいて。」

 ハルはそう言って、明るく笑った。


「へえ、なんか便利そうね。

 研究員さんに言って、備蓄食料の倉庫へ案内してもらうわ。」

 瑞葉が笑顔を見せた。



「鬼の力?」

 いつもの研究員は、ハルの言葉の意味が分からずに、しばし事態が飲み込めずにいた。


「はい、何でも出せますが、まずは当面の備蓄用の食料を出します。

 だから、備蓄倉庫へ案内してください。」

 ハルが笑顔で答える。


「ああ・・・、分った。じゃあ、ここのビルの3階へ・・・。」

 そう言いながらいつもの研究員はエレベーターホールへ向かう。


 その跡をハルたちも追いかけて行く。

 案内されたところは、だだっ広いコンクリートの壁に囲まれた空間だった。


「ここが、備蓄倉庫さ。

 ここだけではないんだけど、鬼たちとの戦いや、闇の王子との戦いに加えて、今回の恐竜人たちによる食料の調達などがあって、備蓄は急激に減少している。


 だけど、心配はいらない、他の場所にもあるのだから、ハル君は心配せずに安心して冒険を・・・。」


「大丈夫ですよ、鬼の能力なら簡単に食料も出せますから。」

 いつもの研究員が、ハルに心配をかけないよう言い繕うのを気にも留めずに、ハルは両手から大量の缶詰を出現させた。


「すいませんが、ナンバーファイブさんも手伝ってください。」

「いいわよ、はい。」


 ハルと、ナンバーファイブの二人は、次々と両手に抱える程の缶詰の山を出現させる。

 研究員たちは、それらを受け取ると、空の段ボール箱に急いで詰めだした。

 そうして、1時間もすると、広い空間だった倉庫の大半が、缶詰を詰めた段ボール箱で埋まった。


「まだ必要なら、ドンドン出せますよ。」

 ハルは笑顔で、缶詰を出し続ける。


「い・・・いや・・・、この辺で十分だよ。

 これだけあれば、当面の人口増分は賄えるだろう。

 ありがとう、助かったよ。」

 いつもの研究員が、笑顔でハルたちをねぎらった。



「じゃあ、これで失礼します。」

 ハルたちは、研究員たちに別れを告げ、研究所ビルを出て来た。


「よう、久しぶりだなあ。」

 そこには、巨大な真っ黒い塊があった。


「蜘蛛の魔物さん、お久しぶりです。

 わざわざ、仙台までやって来てくれたのですか?」

 ハルは、懐かしそうにその巨体に駆け寄って行く。


「いや、わしら都市に属さない魔物は、近場の都市に住処を移された。

 だから、飛び太郎たちアンキモ一家も、北の村で暮らすことになったようだ。

 わしの住処は少し南だったから、最寄りの都市はここ仙台市という事のようだ。


 スパチュラと母さんも一緒に、グラウンドの片隅に巣を張って暮らしている。

 先ほど、炎の魔法が見えたから、ハル君たちじゃないかと思って、研究所ビルを見張っていたんだ。」

 蜘蛛の魔物も懐かしそうに寄ってくる。


「そうですか、いずれ僕たちの戦いに協力してもらう時が来るかもしれません。

 その時はよろしくお願いいたします。」

 ハルはそう言いながら頭を下げる。


「任せてくれよ、今までも何度も一緒に敵と戦ってきた仲じゃないか。

 呼んでくれれば、いつでも協力するさ。

 勿論スパチュラも一緒だ。」


 蜘蛛の魔物は、一緒に戦うことを約束してくれた。

 蜘蛛の魔物と別れを告げ、先ほど、借りフラワーが消失させられた場所に、もう一度借りフラワーを植え直し、魔法を唱える。

 そうしてから、瞬間移動した。



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