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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第8章 ちび恐竜人たちの逆襲編4
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第109話

                   8

「全くどういう事よ・・・、なあに、こいつの態度・・・。」

『ボゴッ』ミリンダは怒りが収まらないのか、倒れたチビ恐竜人兵士の頭を、尚も蹴り上げる。


「父さん、大丈夫?」

 レーナがスタットの元に駆け寄る。


「俺は大丈夫だ、しかし、プラキオが・・・。」

 スタットが倒れた恐竜人の体を、抱きかかえる。


「待ってて、あたしが・・・。」

 ミリンダが、傷口に手を当てて治癒魔法を施してやる。


「前に戦った時に、怪我した恐竜人たちに治癒魔法をしてあげたから、大体の体の構造は把握しているのよ。」

 ミリンダの治癒魔法の効果か、負傷したレジスタンスメンバーの脇腹の出血は治まり、呼吸も安定してきた。


「お・・・おお、すごい・・・。

 君は、神か?」

 これにはスタットも目を丸くした。


「違うわよ、あたしはただの人間って、どこかで言ったようなフレーズね・・・。


 まあでも、結構出血したみたいね。

 けがの治療をして、オーラも分けてあげたけど、流した血までは補充が効かないわ。

 少し休ませてあげる必要があるわね。」


「わ・・・分った・・・。

 ありがとう、貴重な仲間を失ってしまうところだった。

 本当にありがとう。」

 スタットは涙ながらに、ミリンダの手を大きな手で包み込んで、頭を下げる。


「い・・・いいわよ、お礼なんて・・・、あたしだってレーナさんたちにお世話になっているんだし・・・。」

 ミリンダは恥ずかしそうに顔を赤らめて俯く。


「こ・・・こいつは死んだのかい?」

 倒れているチビ恐竜人兵士たちをまとめて縛り上げているセンティアが、ミリンダに倒された兵士の様子をうかがう。


「ううん・・・、雷の電圧で気を失っているだけよ、死ぬほどの力は出していないわ。

 恐らく、気が付いても少しの間は目がくらんで、何も見えないでしょうけどね・・・。」

 ミリンダは、尚も憎しげな眼をチビ恐竜人兵士に向ける。


「そうか、じゃあ、こいつも一緒に縛り上げて・・・と。

 さあて、これからどうしますか?」

 センティアが、スタットに尋ねる。


「ああ・・・、まずは収容者たちの所に行ってみないことにはな。

 2人はここに残って、プラキオを見てやっていてくれ。

 そうして歩けるようになったら、そのまま我々の円盤まで連れ帰ってやってくれ。


 プラキオには、これ以上の任務は無理だろう。

 2人は、トリケラさんを連れて行ったメンバーと合流して、我々の円盤の反対側の世界に接触してくれ。

 頼んだぞ。」


「はい、分りました。」

 スタットは、2人のレジスタンスメンバーに負傷者の看護を頼んだ。


「それだったら、向こうの部屋の転送装置で、私たちの円盤の元老院本部へ転送すればいいわ。

 恐らく、みんな本隊円盤に避難して、警備の兵士すらいないはずよ。

 装置脇のボタンを押せば、30秒後に転送する様セットしておくわ。」

 レーナが、左腕の装置を操作パネルに繋ぎながら、転送装置がある部屋の方向を指示する。


「問題は、こいつが頼んだ応援部隊だな。

 すぐにやってくると言っていた。

 そいつらが、やってこられないように、1時的に転送装置を使えなく出来ないか?」

 スタットが通路の様子を、心配そうに眺める。


「恐らくあたしたちが来る時に倒した、別の詰め所の兵士たちが来るはずだったと思うわ。

 10名とも、ミリンダちゃんの魔法で凍らせて、縛り上げて来たのよ。

 だから、当分は安全なはずよ。」


「おおそうか・・・、だったら早いところ、収容されている仲間を解放しよう。」

 スタットは安心して、部屋を出て行こうとする。


「待って、まずはここの司令室の制御を奪うのが先よ。

 円盤のコントロール自体は、既に巨大円盤側に移っているから無理でしょうけど、中の管理システムなら独立のはずだから、乗っ取れるわ。」

 レーナが、モニターが連なった操作パネルの前で、必死で両手を動かしている。



「よし、これでいいわ。この建物内部のコントロールは、こちらで制御できるわ。」

 10分ほどして、ようやくレーナが作業を終えた。


「恐らく大勢の仲間たちが収容されているはずだ。

 全員の部屋のロックを解除できるか?」

 スタットが、嬉しそうに笑顔で寄ってくる。


「うーん、構造がどうなっているか分らないし、恐竜人だけ収容されているとも限らないから、部屋を回りながら開放して行った方がいいと思うわ。

 行きましょう。」

 レーナを先頭に部屋を出て、収容房と書かれている方向へ通路を進んで行く。


 そこは、薄暗い照明の通路が延々と続いている場所だった。

 通路の左右には無数の扉が等間隔に並び、分厚い鋼鉄製の扉には、小さな格子窓があるだけで、中を見通すとひと一人がようやく寝返りが打てそうな細いベッドと小さな机と洗面台と便器が据え付けられただけの狭い部屋だ。


 ミリンダが収容された、元老院本部の牢獄の方が、まだ広かったと思える位の狭さだ。

 反対側の壁には窓もなく、3方壁に囲まれ、ドアに開いたわずかな格子窓だけが、他の場所とのつながりを持っているだけのようだ。


 こんな場所に、何千年間も収容されていたのか・・・、およそ、気が遠くなるような日々だったであろう。

 スタットもセンティアもレーナも、1部屋1部屋収容されているものがいないかどうか確認していくが、どの部屋も空の状態であった。


「居たわ・・・。」

 ミリンダが覗き込んだ部屋の中には、黒く動く影が見えた。


「スタットと言います。

 2号円盤と称されている円盤から来ました。

 ごく少数ですが、元老院たち皇族の支配に抵抗する、レジスタンス活動をしています。


 あなたは、我々土着の恐竜人の仲間ではありませんか?

 助けに来ました。」

 スタットが格子窓から中を覗いて声を掛ける。


「お・・・おお・・・、外の人間の声を聞くのは・・・、千年ぶりだろうか・・・。

 俺の名はライザー。

 もしや、トリケラ達が逃げ延びて、俺達の事を話してくれたのか?


 あいつらは、何人無事だった?」

 ガリガリに痩せこけて、手の骨が透けて見えそうな恐竜人が、寝ていたベッドから起き上がってゆっくりと扉の所へ歩いてきた。


「と・・・トリケラさんの知り合いでしたか。

 トリケラさんは無事です、すぐに介抱する為に、我々の基地へ連れて行きました。


 ですが、我々が出会えたのはトリケラさんお一人だけです。

 何人かで一緒に脱走されたのですか?」

 スタットも身を乗り出して、格子窓の中を覗きこむ。


「一寸下がって・・・。」

『ガチャン』レーナが左腕に巻かれた装置を右手で操作すると、金属音がして扉のロックが解除された。

 扉を開けると、ボロボロの衣服を身にまとった、痩せこけた恐竜人が一人立っている。


「そうか・・・、12人で脱走したのだが・・・、すぐに4人捕まって・・・、残りの奴らも駄目だったか・・・、

それとも、分散して他の施設を回っているのか・・・、ともかくまあ、たった一人でも目的を果たせたんだ、よかったよかった・・・。


 あいつらを逃がした責任とかで、ここ2週間は食事も与えられておらなんだ・・・。」

 そう言って、ライザーと名乗った男は、そのまま床に座り込んでしまった。


「お腹が空いているの?ちょっと待って。」

 ミリンダが掌の中に、一房のバナナを出現させた。


「お・・・おお・・・・、食いもん・・・か?」

「そうよ、バナナと言って・・・。」

 ミリンダが説明を終える前に、ライザーはバナナを奪い取るようにとって、一房丸ごと口の中に入れた。


「おお・・・う・・うまい・・・。」

 ライザーは、目に涙を浮かべながら、ゆっくりと味わうかのようにバナナを皮ごとかみしめた。


「そ・・・そう・・・お口にあって何よりだわ。

 次からは、皮を剥いて1本ずつ食べると、もっとおいしく感じるわよ。」

 ミリンダは、もう一房バナナを出現させると、半分ほど皮を剥いてライザーに手渡した。


「おおそうか、こうやって食べるのか・・・。」

 そう言いながら、ライザーは剥いた皮ごと、大口を開けて頬張る。


「ま、いいけど・・・、皮に毒がある訳じゃないから・・・。」

 ミリンダが、あきれ気味にその様子を見つめる。


「ここの収容施設には、もうライザーさんだけしかいないのですか?」

 スタットが空き部屋ばかりの状況を、ライザーに尋ねる。


「いや、この階のこのブロックは、トリケラ達脱走したメンバーが収容されていたから、今では俺一人だ。

 なにせ、あいつらを逃がした後で、すぐにばれないように扉の鍵を内側から閉めたり、各部屋のベッドに膨らみを作ったりと、偽装工作が必要だったからな。


 誰かが残らなければならなかったんだ。」

 ライザーは、バナナの最後の1本を頬張りながら答える。


「じゃあ、まだ他の場所には多くの収容者が・・・。」


「ああ、たくさんいるぞ・・・、数えたわけではないが、数百万はいるだろう。」

 ライザーがこっくりと頷く。


「そうなると、やはりどこかへ脱出させるなんてことは不可能よ。

 絶対、途中で捕まってしまうわ。

 やはり、円盤ごと切り離さないと・・・。」

 レーナが、頭を抱える。


「おお、その左腕についているのは、コントローラだな・・・、そいつの設計に関わった奴が収容されているから、そいつに頼めば、コントローラの制限を解除して、本隊の円盤の制御にも関われるようにできるかもしれないぞ。 そうすりゃ、円盤を切り離すっていうことも出来るだろ?」

 ライザーが意外と簡単そうに提案する。


「そ・・・そんなこと・・・。」

 レーナはライザーの言葉がとても信じられないようで、言葉が続かない。


「嘘じゃないさ・・・、ここにはその道のプロフェッショナルが大勢収容されている。

 大半が、核心に近づきすぎて、侵略者の事を知ってしまったか、あるいはあまりに優秀すぎて、危険視されて収容されたような奴らだ。


 だから、接続ハッチのロックを外す鍵なんか、その辺の材料を集めて手作りしちまうし、ここの制御だってお粗末な装置だけで1時的に乗っ取っちまって、脱走させることができたんだからな。


 道具さえいいものがあれば、奴らの円盤を乗っ取ることだって、夢じゃないぜ。」

 ライザーが明るく笑う。


「その人たちの所へ案内してください。

 本隊の円盤から、我々土着の恐竜人たちが居住する円盤を切り離して、自由を得るには今がチャンスなのです。

 実は・・・、」


 スタットが、ミリンダに聞いた地球の状況と、土着恐竜人たちの居住用円盤と、侵略者であるチビ恐竜人たちの円盤が分離可能であることを、簡単に説明する。


「おお、そうか・・・、だったら話は早い。

 下にぶら下がっている3つの円盤を切り離せばいい訳だ。

 そうすりゃ、俺達は晴れて自由の身という訳だ。


 ようし、だったら行こうぜ・・・。

 しかし、このフロアは、比較的最近収容された者達が居住するエリアだから、警備も甘いんだが・・・、下に行くにつれて、どんどん厳しくなっていくぜ。


 なにせ、チビ恐竜人たちの兵士が直接監視しているのは、このフロアだけで、その他は監視ロボットだからな。

 情け容赦のない、非情な奴らだぜ。

 まあまずは、この階の奴らを解放して、戦える奴らを増やすとするか・・・、ついて来てくれ。」


 ライザーに言われるがまま、通路を奥に進んで行く。

 途中のゲートの鍵は、レーナが左腕のコントローラで、順に開けて行く。


「こっちのブロックには、4人収容されている。

 彼らを助けよう。」


 ライザーが、開放すべき部屋番号をレーナに指示し、レーナが指示通りに左腕のコントローラを操作して、施錠を外していく。

 しかし、誰もその扉から出てくることはない様子だ。


「やつらは、厳重だからなあ・・・。」

 そう呟きながら、ライザーは収容室の中に入って行く。

 そこには、壁に大の字に両手両足を繋がれた恐竜人がいた。



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