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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第8章 ちび恐竜人たちの逆襲編4
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第105話

                       4

「うん?どうした、突然ロボット兵士たちを引き上げさせたりして。

 地上の奴らにも疲労の色が見えて来たから、畳みかけるなら今だぞ。

 なにせ、試技ロボットは全て破壊されてしまったからな。


 ロボット兵であれば、無限に繰り出すことが可能だから、こっちに切り替えたのだから、一気にいかんか。」

 頭に包帯を何重にも巻きつけているライゼルが、傍らのチビ恐竜人兵士に向かって命じる。


「は・・・はい・・・、何者かが本隊円盤内に忍び込んだようです。

 2号円盤との接続ハッチが開かれた形跡があります。

 その為、街中を捜索させるために、ロボット兵士を呼び寄せました。

 ロボット兵士の遠隔コントロールは、円盤の内外どちらかしか一度にはできませんので。」


 チビ恐竜人兵士が、手元の操作盤スイッチを忙しく操作しながら答える。

 ガラス越しに見える階下の巨大なホールには、数百台のモニターが並び、1台ごとにチビ恐竜人兵士が、小さなコントローラを手にしているのが見える。


「そうか・・・・、元々は地上攻略用のロボット操縦プログラムを、長い間異世界に滞在していたから、操作者の訓練の為に、円盤内でも遠隔操作できるように切り替えた補助機能だからな。

 内外同時にロボットを使うことまでは、想定していなかっのだから仕方がない。


 まあいいだろう、円盤内の捜索を終え次第、また地上攻略だ。

 今度は昼夜を問わず連続して攻撃を続けるぞ。

 そうすれば、生身の体である、フェスタのやつらや人間たちは疲労がたまって衰退していく事だろう。


 奴らを追い詰め、一気に攻め落とし、降伏させるのだ。

 2号円盤の上層階では、捕獲した人間が逃げ出してしまい、それがレジスタンスの手に渡ってしまった。

 そいつの証言映像が未だに流れておるわ。


 何も知らない平民どもに動揺の色が見える。

 今のところは、一つの円盤内のしかも片側世界だけの事だが、いずれどうなるか分らん。

 重犯罪者収容用の円盤も、手狭になってきていることだしな。


 最早、過去の歴史を隠し通すことは困難となっているのかも知れん。

 ますます地上を攻略して、新たなる奴隷たちの確保が必要となって来た。

 ただでも少ない生き残りの人間達、なるべく無傷で降伏させたいものだ・・・。」

 ライゼルは、心配そうに地上の様子を眺めている。


「大丈夫ですよ、あいつらの体力なんてたかが知れています。

 こちらは、3交代でロボット操作者を切り替えて、休みなく戦い続けられますから、どれだけ魔力や力が勝っていたとしても、次々と襲い掛かってくる兵力には、やがて圧倒されるでしょう。


 なにせ、倒しても倒しても次々とロボット兵が供給され続けるのですから。」

 恐竜人兵士も、ニヤつきながら階下のホールを眺める。


 はるか前方の巨大スクリーンの映像が切り替わり、ビルが立ち並ぶ近代的な都市の風景が映し出され、広い大通りをゆっくりと闊歩する、何台もの巨大なロボットの姿が見える。


「そうだな。

 銀河警察を名乗った、我々の調査団に対して手の内をさらけ出してくれたし、更に、我々から奪った武器は、ほとんど使いこなせてはいない様子だ。


 この大陸に居る本隊さえ打ち負かしてしまえば、後は烏合の衆という事がはっきりしている。

 大量破壊兵器など使わずとも、充分に攻略できるわ。

 地上攻略用の最終兵器も育ってきた頃だろう?


 なにせ、大量の餌をむさぼるため、ぎりぎりまで再生できないでいた。

 十分な培養期間とはいかないかも知れんが、地上は奴らの餌の宝庫だ。

 奴らを食らって、成長していく事だろう・・・。」

 ライゼルは、そう言って高らかに笑った。



 その少し前

「こっちが1番街へ通じるとおりね。

 ここをまっすぐ行けばいいのよね。」

 ミリンダが、通りの案内図を見上げながら指を指して確認する。


「方向が違うし、それぞれの場所まで結構な距離がありそうだ。

 重犯罪者を収容しているという円盤を解放する班と、もう一つの居住用円盤へ向かう班に分かれることにしよう。

 丁度、鍵が2つあるから都合がいい。」


 同じく案内図を見ていたスタットは、2本の鍵のうち一つをセンティアに手渡した。

 そうして、自分は1番街と記された方向を指さす。


「分ったわ、父さんたちは重犯罪者収容の円盤を解放して。

 あたしたちは、もう一つの居住区の円盤へ行って、ミリンダちゃんの映像を流すわ。


 一応、向こうの操作システムを乗っ取るためのキューブを渡しておくけど、重犯罪者用だから、システムが違っているかも知れないわね。

 こちら側の用事が済んだら、すぐに駆けつけるわ。」

 そう言ってレーナは、スタットにも四角い箱を手渡す。


「じゃあ、頑張ってくれ。」

 スタットは5人のレジスタンスメンバーと共に、大通りの人ごみの中を駆けて行った。


「あたしたちも行きましょう。」

 レーナの号令の元、センティアとミリンダ達が3番街を目指す。


 こちらの通りも人通りが多く、かき分けながら進んで行くのだが、どの恐竜人たちも、センティアやレーナ達と体つきが違い、線が細く、また突き出た口が細長く先端がとがっている。

 チビ恐竜人たちの特徴なのであろうか。


 やがて・・・

「ふえー・・・・、3番街ってところ、まだ着かないの?」

 人ごみの中を歩くことに慣れていないミリンダが、途中で早くも音をあげた。


「えーと・・・、3番街の交差点まで、あと40ファーって書いてあるから・・・、うーん・・・普通に歩くと10時時間くらいかかるかな・・・。


 でも、君も含め、結構歩くスピードが速い方だから、7,8時間ってところかもね。」

 センティアが、道路標識を眺めながら答える。


「ええー・・・、あと7時間以上も、こんなに恐竜人が多いところを歩かなくちゃならないの?

 あたしたち、結構目立っているし、捕まっちゃうわよ。」


 ミリンダの言うとおり、通りを歩くチビ恐竜人たちは、珍しいものでも見る様に、ジロジロと彼らの姿を見ながら通り過ぎて行く。

 彼らは一般市民たちであろうか、センティアやレーナ達の姿を見ても、とりわけ騒ぎ立てることはなく、自分たちのペースで通りを通行していく。


「そうね、ちょっと聞いてみましょ。

 すみません、3番街交差点まで行きたいのですが、一番早く着く方法って何かあります?」

 突然レーナが、通行人を呼び止めて話しかける。


「えっ・・・、あ・・ああ、3番街交差点ね。

 だったら、そこの階段を下りてチューブに乗って行けば5駅先だよ。

 それが一番早い・・・、それよりも君たちは平民・・・か?


 いや、平民がこの円盤内に入ってこられるはずはないものなあ・・・、精巧にできた着ぐるみかな?

 それと、変な形をしたペット・・・、ミニチュア恐竜とか原始哺乳動物のペットが1時期流行ったけど・・・、DNA再生だと長く生きなくて、結局食用にしか利用できなかったからね。


 見たところ、それなりに長く生きている様子だけど・・・、どこのペットショップで買ったんだい?」

 呼び止められたチビ恐竜人は、親切に教えてくれた後、ミリンダやレオンの姿を珍しそうにじろじろと眺める。


「え・・・ああ、ちょっとこの先のペットショップで・・。

 ありがとうございました。」

 レーナは急いで礼を言うと、教えられたとおりに地下へと続く階段を降りて行く。


「失礼しちゃうわね・・・、誰がペットだっていうのよ・・・。」

 ミリンダが先ほどのチビ恐竜人の言葉に、腹を立てている様子だ。


「まあまあ・・・、移動方法を教えてくれたんだし、感謝しておこう。

 チューブっていうのは、地下道を高速で走る乗り物の事だと思うよ。

 僕たちの円盤の中でも、元老院と評議会を結ぶ地下チューブがあると言われている。


 もっとも僕は乗ったことがないけどね。」

 階段を下りた先は、大きな円筒形の横穴に通じていて、多くの人がホームに立っている。


 その先では、いくつもの座席が着いた台座が、音もなく高速で移動して来ては止まり、人が乗り降りするとまた移動して行くと言う事を繰り返している。

 いうなれば、車体のない座席部分だけの地下鉄といった様子だ。


「じゃあ、乗りましょ。」

 レーナ達は、人々の列に並ぶと、番を待って目の前に停止した座席に腰かけた。


『ヒュー』風切音と共に、円筒形の横穴の壁に付けられたライトが、繋がって後方へ飛んでいく。

 車体がないせいか、外気の動きは感じるが、息苦しさは感じない。

 レーナ達は言われた通り、5駅先でチューブを下りて、ホームの階段を昇って行った。



 3番街交差点は、騒々しい状況だった。

『侵入者に告ぐ・・・、おまえたちの事は既に把握している。

 隠れても無駄だ、直ちに出てきなさい。


 脱走者、トリケラ。

 反逆者、スタット、レーナ、センティア・・・・

 更には・・・、我らが古巣に巣食う不届きな生き物である人間、ミリンダ及びその仲間たち。』


 遥か上方から、センティア達の名前を呼びかける放送が掛けられる。

 そうして、上空には巨大な映像が・・・。


「な・・・なあに・・・、あ・・・あたしが、この円盤の中へ入って来ようとして、スカートがめくれ上がった時の映像じゃない・・・。

 パンツ丸見え・・・、こんな敵の円盤の中にまで来て、大恥だわ・・・。


 もっと写りのいい映像に変えてくれないかしら・・・。」

 ミリンダが、上空の巨大映像を見上げながら嘆く。


 上空にはミリンダの後から、円盤内へ潜り込んでくるレーナ達の姿が映し出されていく。

 どうやら侵入した時点で、すぐに検知されていた様子だ。

 地上へ攻略のためのロボット兵士を出していて、手が回らなかったのだろう。


「こ・・・こいつらの事じゃないのか?」

「そうよそうよ・・・、ここよ・・・ここに居るわ。」

 先ほどまでまったく気にも留めていなかったミリンダ達の姿が、上空に映し出されるやいなや、周囲の人々の態度が豹変した。


『ズーン!』『ズーン!』重低音の響きを伴いながら、ビルの高さにも負けない巨大なロボットが、大通りを歩いてくる。

 何台ものロボット達は、通りを細かく観察して行っているようだ。


「おーい、ここだ、ここに居るぞ。」

 中には、ロボット兵に向けて、ミリンダ達の位置を示すものまで現れてきた。


「まずいわね、1番街の方にはスタットさんたちが向かったのよね。

 向こうでもロボット達に襲われたら大変だわ。

 ここは、陽動作戦よ。


 レーナさんたちは、このまま3番街のマンホールから居住区の円盤を目指して。

 ロボット達はあたしが引きつけるわ。」

 ミリンダはそう言うと、掌の中に小槌を出現させてレオンに手渡す。


「大きくなあれって願いながら振るのよ。」

「はい、大きくなあれ、大きくなあれ・・・。」


 みるみるミリンダの姿が巨大化していく。

 それにつれて、レオンの体も巨大化し、蝙蝠の姿のゴローも人間の姿に戻る。


「下から見上げられると、スカートの中が丸見えだけど、繰り返し放送される映像で、パンツは見られちゃっているから、もうあきらめたわ。」

 ミリンダはそう呟きながら、ロボット兵士達に対し身構える。


「モンブランタルトミルフィーユ・・・大爆発(エクスプロージョン)!!!」

 ミリンダが唱えると、爆風を伴った真っ赤に焼けた炎の塊が、巨大ロボットに向かって行く。

『ドッガーン!』炎の玉が当たったロボットは、木っ端みじんに吹き飛んだ。


「へえ、意外とやわね・・・、簡単にやっつけられるわ。

 でも、数が多いから・・・。

 モンブランタルトミルフィーユ・・・暴風(サンダ)雷撃(ストーム)!!!」


 今度は、暴風を伴った雷鳴がロボット達に襲い掛かる。

 数台のロボットが巻き込まれ、宙に浮かび上がり後方のビル群に激突する。


「へへーん、どんなものよ。」

 ミリンダは尚も油断なく構える。

『ガガーンッ!』『なんだなんだ・・・』『キャー』『助けてー』

 ミリンダの足元では、チビ恐竜人たちが逃げ惑っている。


「まずいぞ、市街地での戦闘は極力避けねばならん。

 市民たちに被害を及ぼしては・・・、元老院たるわしらに責任が及ぶ。


 至急市民たちを避難させるのだ。」

 ライゼルが、慌ててチビ恐竜人兵士に指示を出す。


「わ・・・分りました・・・、まさか、ここで巨大化するとは・・・。

 確か、ウチーデノコヅーチは、次元金庫にしまったものが最後の一つかと・・・。」

 チビ恐竜人兵士も、ミリンダの反撃に大慌ての様子だ。


「ああ、確かそうだったはずなのだが・・・、ううむ、分らん。

 兎も角、市民たちに被害が及ばぬ場所で、あいつを捉えるのだ、いいな。」

 ライゼルも、自分の目で見たことが信じられないとばかりに、何度も目をごしごしと擦りながら、瞬きをする。


「は・・・はい・・・、市街地ではレーザー砲も使う事は出来ません。

 万一躱された場合、背後のビルを破壊してしまう恐れがありますから。

 かといって、我々の兵士には直接の戦闘能力はありません。


 遠隔操作でロボット兵士を操作して戦う技法しか、身につけておりませんので、これで何とかするしかありません。

 この先に、ロボット兵の訓練施設がありますから、そこへ誘導しましょう。

 広い施設ですし、高い塀で隔絶されていますから、市民には迷惑をかけないで済みます。」


 そう言いながら、チビ恐竜人兵士は、手元のマイクに向かって呼びかける。

 階下のロボット兵士を操作している兵士たちに、指示を出しているのだろう。

 ロボット兵士たちは、ミリンダ達の周囲を取り囲むと、1方向だけ隙間を開けて、一斉に剣を抜き襲い掛かって来た。


「な・・、何よ、突然・・・。

 こんなに一遍じゃ・・・、」

 ミリンダが右往左往しながら、何とかロボット兵士たちの剣を躱していく。


 レオンはすぐに姿を消して、ゴローも戦闘能力はほとんどないので、蝙蝠の姿に戻って上空へ舞い上がる。

 ミリンダは、なんとか魔法攻撃で巨大ロボットを破壊していくが、それでも後から後から補充されていくロボットの数に、息つく暇ものないほどの忙しさだった。


 段々と、攻撃を避ける方向が限られてきて、ビル群から外れた場所へと誘導されていく。

 ふと気が付くと、周りは高い壁に囲まれた、闘技場のようなだだっ広い空間の真ん中にミリンダは立っていた。


「えっ・・・、なあに?

 これから、何が始まると言うの?」

 周囲をぐるりと何重にも巨大ロボットに囲まれて、ミリンダの逃げ場はない状態となってしまっていた。


 巨大ロボット兵が持つレーザー光線銃の先端が光り輝き、ミリンダに向けて光線が発射される。

 上下左右から全く隙間がないほどの間隔で、一斉に発射された光線は、正確にミリンダの周囲360度からその体めがけて真直ぐに襲い掛かってきた。



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