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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第8章 ちび恐竜人たちの逆襲編4
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第104話

                   3

「ちぃっ・・・、竜砲・・・」

雷撃(ライガー)!!!」

『ピカッ』『ダーン!』相手の攻撃よりも早くミリンダが唱えると、衝撃音と共に閃光が飛び散り、恐竜人はそのまま意識を失ってその場に倒れた。


「ふうっ・・・、魔法が使えるってことは、チビ恐竜人じゃないのよね。

 あんたたちの仲間の恐竜人?」

 ミリンダが倒れた恐竜人に対して治癒魔法を施しながら、急いで駆け寄ってくるスタット達に問いかける。


「と・・・トリケラさん・・・。」

 スタットがその姿を見て絶句する。


「知り合い?」

「あ・・・ああ・・・。

 俺と同じく、酪農研究の先駆者だ。


 確か、培養肉の肉質改善の研究をしていて、我々の種族が最も好む味付けにしようと、DNA研究をしていた第1人者だ。

 たしか、研究所の爆発事故で亡くなったはずでは・・・。」


 スタットがトリケラの体を抱き起す。

 皺皺の体に、ボロボロの衣服を身にまとい、露出した手足は骨が透けて見える程細い。


「う・・・うん・・・?

 お・・・お前は・・、す・・・スタットではないか?」

 ミリンダの治癒魔法で意識を取り戻したトリケラが、薄目を開ける。


「や・・・・やっぱり、トリケラさん。

 千年以上ぶりですね・・・、死んだと思っていました。どうしてこんなところに?」

 スタットが信じられないと言った表情で尋ねる。


「お・・・俺は、DNA研究を続けて行くうちに、元老院たち皇族と俺達平民のDNA配列が、余りにも異なっていることに気が付いたんだ。

 同じ星の上で、分化して行った種族としてはありえないくらいに異なっていることに気付いた。


 その為、この星の上で何が起こったのか、古の歴史を調べて行くうちに、皇族たちがこの星土着の我々の祖先を征服したことが分った。

 同時に、自分に精神感応力が備わっていることが分り、精神感応力を強める訓練をしていくうちに、センサーに引っかかり、捕まってしまったという訳だ。


 そうして、政治犯たち重要犯罪者たちの収容施設へと送られた。

 何のことはない、この超巨大円盤の下部についている円盤の一つが、収容施設となっているようだ。

 そこには数百万人もの我々の同胞が捕えられている。


 中には、俺のように皇族たちによる我々の祖先の支配に気付いたものもいるが、多くは生まれつき精神感応力が強いだけの、何も知らない平民たちだ。

 俺は、何とかすきを窺って逃げ出したのだが、頼みの脱出口の先に円盤は繋がっていなかった。


 途方に暮れておったんだが、先ほど脱出口からお前さんたちが出て来たではないか。

 素性が分らないからやり過ごして、その後に脱出口から向こうの円盤に乗り移ろうとしていたんだが、見つかってしまって・・・。」

 トリケラは、しびれた指先をほぐすように、マッサージをしながら答える。


「そうだったの・・・、驚かせて悪かったわね。

 隠れて様子をうかがっていたものだから・・・、ごめんなさい。」

 ミリンダがそう言いながら頭を下げる。


「いや・・・、いいんだ・・・。

 それはそうと、この生き物たちは・・・?」

 トリケラは、ミリンダやレオンや蝙蝠のゴローの姿を、不思議そうに眺める。


「彼らは、今の地球上に存在している生物で、人間のミリンダちゃん、魔物のレオン君、きゅ・・・吸血鬼?のゴローさん。

 ゴローさんは、人間の姿になったりもできるが、今のように小さな翼竜のような姿になったりできるようです。」

 センティアがミリンダ達を簡単に紹介する。


「ち・・・地球・・、とな。

 そうすると、やはり異空間から現世へと戻って来たのだな。

 どうも最近、微妙な揺れが度々起こるものだから、怪しいと感じて、脱走計画を実行したのだ。


 何もない異空間では減速も加速もないし、何かにぶつかって衝撃を感じることなどありえんのだからな。

 異空間に居るのでは、逃げ出したところで、結局は限られた範囲の円盤の中だ、逃げおおせるはずもないと考えて、皆、脱走などとうにあきらめておったところだ。


 おおっと・・・、そうかお前たちに異空間だの現世だの地球だのと言っても、分るはずもないか・・・。

 お前たちは、ここが我々の故郷である地球の中で、汚染された環境から隔絶されたドーム環境と、教わって生きて来たのだろうからな・・・。


 いいか・・・。」

 トリケラは前かがみになって、大事な話を打ち明けようとする。


「だ・・・大丈夫です、トリケラさん。

 我々は、ここが巨大な円盤の中だと言う事は承知しております。


 そうして、皇族を名乗る小さな恐竜人たちと、我々土着の恐竜人たちは、生まれた星も異なる、全く違う種族だと言う事も・・・。」

 すぐにスタットがトリケラに説明する。


「おお、そうか・・・、だったら話は早い。

 俺は、収容施設に入れられて、そこに収監されていた方たちから、色々な事を学んだ。


 中には、侵略戦争当時から生きていて、睡眠学習による洗脳がうまくコントロールされずに、以前の記憶が残ったままの先祖たちと接触した為に収監された、いうなれば歴史の証言者のような者もいた。

 その方たちに、様々なことを教わってきた。


 奴らが、どれだけ非道な事を行ってきたのかをな・・・。

 あいつらは、決して自分達自身では戦わずに・・・。」

 感極まったのか・・・、トリケラが突然黙りこくって涙を流し始めた。


「だ・・・大丈夫ですか?トリケラさん。

 あまり無理をなさらずに・・・、おい、トリケラさんを至急天空ホールへお連れしろ。

 救急セットがあったはずだから、治療して差し上げろ。


 それから、非常食の準備もあったはずだ・・・、わずかだったが、食べていただけ。」

 スタットが、レジスタンスメンバーに矢継ぎ早に指示を出す。


「分りました。」

 すぐに数人のレジスタンスメンバーが、トリケラの体を抱え上げて、来た道を引き返そうとする。


「ま・・待ってくれ・・・、俺の身はどうだっていい。

 まだ多くの仲間たちが、地下深い穴倉の中で収監されているんだ。

 彼らを何とか助けだしてやってくれ。


 俺達を逃がすために、相当な無理をしてくれた・・・、今頃どうなっているか・・・。」

 トリケラが、介助の手を振りほどいて、何とか自力で立ち上がろうとする。


「大丈夫です、我々の目的も、我が種族の解放ですから、必ず助け出します。

 トリケラさんは、無理をなさらずにお体をお安め下さい。

 救出には、我々だけで向かいます。」

 スタットがトリケラの体を気づかう。


「そ・・・そうか・・・、もう体力が残っていない俺など行っても・・・、足手まといなようだな・・・。

 分った・・・、彼らの事は任せる。


 重犯罪者収監用円盤への行き方は・・・、この先の梯子をひたすら登って行くと、下水道に出る。

 そのすぐ脇に、また梯子があるから、そこを登って行くとマンホールがあって、そこから外に出られる。

 外と言っても、超巨大円盤の居住区の一角である、大通りに出るだけだがな。


 大通りは3方向に分岐し居ていて、1番街方向へ進んで行くと、だだっ広い3差路の交差点に到達する。

 そこが1番街だ。


 3差路の頂点部分にもマンホールがあって、そこを下りて行くと下水道になっていて、その脇の扉を開けると更に下へと続く梯子がある。

 構造としてはここと変わらないから、動きやすいはずだ。


 そうして、地下へ降りてから円盤へと続くハッチを探すといい。

 1番街から折り返して別分岐をやや戻ってはるばる行くと、そこが3番街で、その頂点のマンホールを下りて行くと、もう一つの居住用円盤のハッチがあるはずだ。


 この円盤の中央部分の大通りは、丁度正三角形の形をしていて、各頂点の真下に円盤が繋がっているのだ。

 我ら土着の恐竜人たちは、この3つの円盤の中で暮らしておる。

 多くの民は、そこが円盤の中だと言う事も知らずにな。


 そうして、この超巨大円盤は、侵略者である小さな恐竜人ファモスタ達の暮らす世界だ。

 奴隷である我ら土着の平民たちに、日々生産活動を続けさせて、自分たちはのうのうと楽に生活しておるわ。


 この鍵を持っていけ、円盤へと続くハッチを開けるためのカギだ。

 手作りの為、見栄えは悪いが何とか使える。

 但し、それほど丈夫ではないから、何度も使えるかどうかは不明だ、慎重に扱ってくれ。」


 トリケラはそう言いながら、金属製の棒をスタットに手渡した。

 棒の先端は針金のような細い金属が絡まって複雑な形をしている。


「3D構造のカギだ。

 これがなければ、ハッチは開けられない。


 ファモスタの奴らは、元老院本部と評議会にある転送装置で自由に出いりができるが、常時監視されているから、我々には使えない。

 他の円盤に入るには、ハッチを使用する以外の方法はないだろう。


 同じ円盤の別な世界へ入る場合も、円盤中央地下にある同様のハッチを開けて侵入するんだ。

 天空エレベーターの真下にある、マンホールを下りていけば、反対側の世界へ行くことができる・・・。」

 そこまで話して、トリケラは目を閉じた。


「と・・・トリケラさん・・・、だ・・・大丈夫ですか?」

 スタットが焦ってトリケラの体を抱き起す。


「一寸どいて・・・、だいぶ弱っているわね・・・。」

 ミリンダが、トリケラに再度治癒魔法をかけてやる。

 弱々しかった呼吸も、少しずつ回復してきたようだ。


「まあ、安静にしていれば、良くなるでしょう。

 ついでに、ちょっと鍵を貸して・・・、あのハッチはあたしがカギを外したものだと思っていたけど、どうやら既に開いていたようね。


 あたしは単にフックを外して開けただけだったんだわ・・・、浮かれて損した。

 えーと・・・、よし覚えた・・・。」


 そう言ってミリンダは目を閉じて、掌を上にして意識を集中する。

 やがて掌の上には、同じ形をした鍵が現れた。


「鬼の能力というのよ、壊れたら困るっていうのなら、もう一つ予備を出しておきましょう。」

 そう言いながら、ミリンダは更にもう一つ鍵を出して、原本はトリケラの手に戻した。


「す・・・すごいね・・・、これはいい。

 君たちはトリケラさんを天空ホールへ連れて行って、彼に我々の祖先が受けた侵略戦争の事を話していただいて、そのビデオを上空スクリーンに放映してくれ。

 ミリンダちゃんの映像では半信半疑だった街の人たちも、トリケラさんの証言があれば、大半が受け入れるだろう。


 そうして、トリケラさんが言っていたように、天空ホール下のマンホールを伝って、もう一つの世界へ侵入して、そこでもミリンダちゃんとトリケラさんのビデオを放映してくれ。」

 スタットが再度、指示を出し直す。


「そうね、向こうのシステムを乗っ取るには、このキューブを街中にある端末に、差し込んでね。

 中に、強力なウイルスプログラムが仕込んであるわ。

 ウイルス進行を防ぐために、再起動を掛けたら、その時にOSを乗っ取るように仕組んであるのよ。


 乗っ取れたら、こっちのキューブに切り替えると、メモリーしておいたビデオが上空スクリーンに上映されるわ。」

 レーナが、2つの小さな箱をメンバーに手渡す。


『はい、分りました。』

 3名のレジスタンスメンバーが、トリケラの体を抱きかかえながら、通路を引き返して行った。


 スタットを先頭に、トリケラの指示通り長い長い梯子をひたすら登って行く。

 梯子の頂点の脇にある扉を開くと、そこは少し異臭のする下水道の中だった。

 そこからさらに梯子を登って行くと、丸い金属製の蓋があり、そこを押しのけて上へでると、そこは大通りの真ん中だった。


『プップー』『キュインキュイン』遥か高く見上げる程のビルが立ち並ぶ通りには車が行きかい、人々があふれかえっている。

 黄色と赤のライトの点滅に応じて、人や車が一斉に動き出す。

 誰も、地下から這い出してきた、異形の姿を見ても、気にも留めずに、そのまま平然と進んで行っている様子だ。



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