第102話
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「ううむ・・・、向こうの兵力は相当なものだね。
恐竜人兵士の8中隊約800名に加えて、こちらからも精鋭兵士が30名ほどと、魔術者たちまで加わっているというのに、向こうの兵の方が既に多くなってしまっている。
更に、増兵されて行っているようだが、どこまで続くのか・・・。
幸いなのは、試技ロボット程強くはないと言う事だが、それでも複数のロボット兵を相手にするのでは、長くは持ちそうもないね。」
超巨大円盤から次々と投下されてくる人型ロボットの軍隊を見ながら、所長がため息をつく。
どの兵士たちも、複数のロボット兵士を相手に、何とか戦っている。
ミライやタイガたちは、10体以上のロボットに囲まれている様子だ。
「遅くなってすまなかったぁ。
今の今まで、わしら鬼がどうするべきなのか、全員で話し合いをしていて、わしらの役目は、地上の生物たちの精神成長の手伝いという事で、落ち着いたんだぁ。
だから、地上での争い事にはどちらにも手を貸さずに、覇権争いを見守るっていう意見が大半だった。
しかし・・・、どうにもわかっちまったんだなあ・・・、小さな恐竜人様たちが地上に君臨するってぇと、わしら鬼たちにも干渉してきて、色々と命令してくるだろうっていう事がなぁ。
ちょっとでも小さな恐竜人様たちの立場を危うくするような存在が現れたら、真っ先にわしらに命じて、そいつらを排除しようとするだろうと言う事もな・・・。
それでは地上の生き物たちの精神成長を見守るどころか、逆に阻害することになるんじゃねえかってぇ事になって・・・、やっぱり小さな恐竜人様たちには、この星に居座って欲しくねぇんだなぁ。
だから、わしらはわしらの役割を守るために、戦う事にした。
これは、おめえさんたちに加勢するわけではない、わしらの戦いだぁ。」
そう言って、ダロンボたちがやって来た。
黄泉の国の鬼たちが、一緒に戦ってくれることになったのだ。
彼らは、黄泉の国から恐竜人基地経由でやって来たのだろう、100名を超す大きな体をした鬼たちが、人型ロボット兵に向かって行く。
「ああ、そういえば、黄泉の国は以前どおりに半年で全世界の黄泉の穴を切り替わるように戻して見たんだが・・・、やっぱりここ数十年間は特定の黄泉の穴からしか利用者はいないようだなぁ・・・。
仕方がないから、人の住んでいる場所の近くの黄泉の穴だけを限定で、1日ずつ接続することにした。
これからは5ヶ所しか接続がないから、5日で1周することになった。
その中には、おめぇさんたちがよく利用していた2ヶ所も含まれているぜぇ。
使ってくんな。」
そう言い残して、ダロンボも人型ロボット達に向かって行った。
「は・・・ハル君・・・、き・・・聞いたかい?
黄泉の国を・・・、どうやら自由に使っていいみたいだよ・・・。」
「そうですね、僕たちがよく使っていた2ヶ所というのは、恐らく南極の黄泉の穴は裏口から使用していたので、数には含まれていないでしょうから、日本とマイキーさんの国の黄泉の穴の事でしょう。
至急ジミー先生や国王様にも連絡を取りましょう。
うまく行けば、増員が出来そうですね。」
ハルも笑顔で答え、所長が目を輝かせる。
「む・・・無線機を貸してもらえるかね。」
所長が、傍らの恐竜人無線兵に頼んで無線機をセットしてもらう。
「ジミーか、黄泉の国の使用許可が下りたぞ。
しかも、日本の黄泉の穴を含めて、5日サイクルで1日ずつ開くらしい。
どのタイミングかは分らないが、誰か見に行かせて調べて欲しい。
仙台市の警察と大阪の自衛隊から、また精鋭を100名ほど選抜して黄泉の国へ連れてきてくれ。
それから、研究所には既に新しく制作したパワードボディスーツが出来ている。
訓練するタイミングを見計らっていたのだが丁度いい、一緒に持ってきてくれ。
大阪のロビン君にも連絡を取って、ボディスーツの素材のカーボンナノチューブが出来ているはずだから、それも持ってくるように言ってくれ。」
所長がジミーに対し矢継ぎ早に指示を出す。
「ガガガ・・、了解しましたガガ・・。
すぐに、マルニーさんと一緒に向かいまガガ・・・。」
ジミーから、すぐに返事が返ってきた。
「次は・・・、マイキーの国のマイティ親衛隊隊長だね。
ええと・・・。」
所長が無線機の周波数を、無線兵に告げる。
「マイティ親衛隊隊長ですか?こちら、竜ヶ崎です。
どうやら黄泉の国が・・・。」
所長はマイティにお願いして、ヨーロッパで製作しているカーボンナノチューブ素材と、S国軍を含めて精鋭兵士を100名ほど選抜して、黄泉の国へ連れてくるよう依頼した。
すると、魔術者候補生も20名ほど連れてきてくれると言う事だった。
同様に、チベットと米軍に連絡を取り、修行僧と精鋭兵の準備をお願いした。
「これで、数日中に兵力の増強が可能となるだろう。
それまでは、何としても持ちこたえてもらわねばならん。」
所長が、はるか向こうの戦闘の様子をうかがう。
その時、
「おーい、冷たいじゃないか、俺達を残したまま戦うなんて。」
見上げると、大空を真っ黒い塊が移動してくる。
それは、巨大な蜘蛛の様だった。蜘蛛の魔物だ。
両脇を飛び太郎と飛びの助が掴んで、飛んできたようだ。
背中には、スパチュラの姿も見える。
「敵は移動可能な円盤だから、仙台市の警護を頼まれていたんだが、一向に戦場は移動して来ない。
そのうちに、ゴラン君たちまでもがこっちに駆り出されて戦っているようで、瞬間移動できるやつがいないもんだから飛んできたが、結構時間がかかっちまった。
魔物代表として、トン吉ばかりに任せてはおけない、俺達も戦うぜ。」
彼らは、疲れているだろうに、劣勢の状況を見るとそのまま戦列に加わって行った。
「魔槍!!!」
敵のレーザー光線を軽いステップで避けながらナンバーファイブが唱えると、真っ黒な巨大な槍が天から降り注いできて、人型ロボットの頭上を襲い、一気に数台のロボット兵が、粉砕される。
それでも、ロボット兵は矢継ぎ早に上空から降りてきて、追加されていく。
「試技ロボットみたいに頑丈じゃないけど、後から後から補充されて来て、切りがないわね。」
ため息をつきながら、滴る汗を拭う。
流石のナンバーファイブも、くたびれてきた様子だ。
「光弾!!!」
「○△■☆□!!!」
「斬首刀!!!」
ゴランやホーリゥの光の玉で、一気に数台ずつのロボットが粉砕されて行き、ネスリーの魔法で、ロボットが胴体から真っ二つに切り裂かれる。
3人は互いに背中合わせで、3方向に向けて攻撃を仕掛け、次々と襲い掛かってくる人型ロボットを粉砕していっているようだ。
「どりゃー・・・、究極奥義・・・、おおとっとと・・」
タイガが、腕をぐるぐると回して、究極奥義の体勢に入ろうとするところを、構わずにロボット達は斬りつけてくる。
「ちいっ・・・、精神統一のひまも与えないつもりか・・・。
こうなりゃ、究極奥義、回転!!!」
タイガは、剣を水平に構えると、そのままコマのようにぐるぐると回り始めた。
襲い掛かってくる人型ロボットが、その回転力により弾き飛ばされていく。
『ズバッ』『ズゴッ』『ブシュッ』ミライは素早い立ち回りで、レーザー光線銃を構えるロボット達を、叩き切って行く。
ロボット達の厚い装甲も、ミライの剣の前では、紙も同然で胴体を真っ二つにしていっている。
「はぁはぁはぁ・・・、これは消耗戦となりそうだな・・・。」
ミライは肩で息をしながら、目の前に列をなすロボット達を眺めた。
戦い慣れている主要メンバーは、ロボット達に囲まれながらも、何とか優位に戦いを進めることができているが、ぎりぎりの攻防は、少しずつほころび始めていた。
「松茂中尉殿、仙石上等兵及び島根軍曹被弾です。」
超巨大円盤の真下で、人型ロボットが続々と供給されてくる戦場で戦っていた自衛隊員は、パワードボディスーツで強化しているとはいえ、無事ではいられなかった。
「そうか、すぐに後方へ退避させろ。
残った者達で、何とかここを死守するんだ。
奴らを自由にさせてはいかん、被害が拡大するぞ。」
兵士たちは、何とか自力で戦場を離れ、所長たちの元へと引き下がって行く。
そこで、ハルが治癒魔法を当ててくれているようだ。
恐竜人兵士たちにも負傷者が相次ぎ、恐竜人基地へと収容されて行っている。
日が落ち始め、辺りがうす暗くなってきた頃、戦闘を続けていた人型ロボット達が突然、次々と飛び上がり、超巨大円盤に吸い込まれていく。
必死の攻防を続けていたミライ達も、呆気にとられて上を見上げているようだ。
「どうやら、今日の戦闘は終わったようだね。
辺りが暗くなってきたから、ロボットでは遠隔操作が難しいのかな?
眩しい光を放つ魔法攻撃も多いし、新型弾も閃光を放つから、ナイトスコープなどで光を増幅していると、目をやられてしまうのかも知れないね。
敵が明るい昼間にしか戦えないと言うのは、こちらにとって有利と言えるかもしれない。
まあ、こちらの兵力は生身だから、1日中ずっと戦い続ける事なんて出来やしないのだがね。」
所長がそう言いながら、空に映しだされる戦況を確認する。
チビ恐竜人たちファモスタの負傷者は増加していないのに対し、人類側も、恐竜人たちフェスタの負傷者も、増加し続けているのだ。
「ダロンボさんたちの許可を得たので、黄泉の国を使って、マイキーの国の魔術師候補生と、各国の軍隊を訓練しようと考えている。
もちろん、パワードボディスーツも増産する。
恐竜人たちとの戦闘後も、制作を続けて来たから、既に100着は仕上がっている。
残りの200着も材料であるカーボンナノチューブ繊維が出来ているから、後は編み上げて縫製するだけだ。
前回制作に携わってくれたレオン君がいないのは残念だが、何とか至急仕上げるつもりだ。
これにより、300名ほどの兵力増強が見込める。
但し、訓練期間も含めて、3,4日はかかるだろうから、それまでは持ちこたえてくれ。」
恐竜人基地の会議室で所長が、今後の増援計画について報告する。
「ほう・・・パワードボディスーツとな・・・、人間たちがその小さな体で我々と互角に渡り合ったのは、そう言った仕掛けがあったという事か。」
パワードボディスーツの仕様が映されたスクリーンを眺めながら、ミライは感心しきりの様子だ。
「まあ、そういう事だ。
隠すつもりもなかったのだが、君たち恐竜人側が、余りにも人間側の戦闘力を持ち上げるものだから、言い出しにくくなってしまっていた。
まあ、いわゆる上げ底の戦闘力だったという訳だ、お恥ずかしい。」
所長はそう言いながら、顔を赤くして頭を下げた。
「いや、そんなことを言っているのではない。
そのような装備で、超人兵士を増強できるというのは、素晴らしいアイデアだ。
そのスーツを、我々が身に付けたらどうなるかな?
さらに力が増強できるのであれば、特訓の手間が省けるというものだ。
いや、特訓をないがしろにしようという訳ではないが、例え黄泉の国が使えたとしても、我々恐竜人は使用させてはもらえんのだろ?
そうであれば、その代わりとしてそのパワードボディスーツで力を増強して、戦いを有利に展開したいものだ。」
ミライは、新しいおもちゃでも見つめるような、キラキラした瞳で、スーツの仕様を眺めている。
「ああ、そうだね、君たち恐竜人の体の仕組みを一から理解する必要性はあるが、恐竜人用のパワードボディスーツを製作することは可能だろう。
但し、君たちは元々力が強いから、強度的な関係から、せいぜい二倍程度にしか増強できないだろうが、それでも大きな戦力にはなると考える。
よかったら、材料は間に合うはずだから、試作品でも作らせてくれないか?
但し、ただ身に付ければいいというものではない。
装着してから、まともに動かせるまでに、それなりの訓練が必要となる。
まあ、筋力は装着レベル以上には発達しているようだから、半日もあれば動かせるだろうがね。」
所長も、ミライの考えに乗り気の様子だ。
「それはありがたい。
ここには戦闘員ばかりしかいないから、我々の家族を連れて行って、針仕事にでも役立ててくれ。」
ミライが、笑顔で答える。
「あと、ナンバーファイブ君、悪いが小槌を出しておいてくれないか。
小さくなったミリンダちゃんが、元に戻れるよう、鬼の能力で小槌をコピーしたいようだ。」
所長が、ナンバーファイブを呼び止める。
「み・・・ミリンダちゃんが・・・?
よかったあ・・・、無事だったのね。
はい、小槌を渡しておきます。」
ナンバーファイブは、うれしさの余り半泣きしながらスーツケースを出現させると、小槌を取出し所長に手渡した。




