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もう平和とは言えない冒険の書  作者: 飛鳥 友
第7章 ちび恐竜人たちの逆襲編3
100/201

第100部

                    13

「大変です、スフィンクスが突然飛び去って行きました。

 飛んで行った方角から推測すると、恐らくそちらに向かったものと想定されます。」

 すぐにスターツから、無線連絡が入って来た。


「そ・・・そうですか、とりあえず、そちらの被害は治まったという事ですね。」

 所長は、ほっと胸をなでおろす。


「わが国軍も、S国軍も被害甚大です。

 魔術者たちが治癒魔法をある程度施してから、そちらに向かう事になると考えます。」


 そう言ってスターツからの報告は終わった。

 上空の人類欄の負傷者数は、1万を超えてから上昇速度が落ちてきていた。

 そうして、18625名で止まった。


「所長さん、ハルです。

 米軍の無線機を借りて交信しています。

 南米で米軍を襲っていた巨大石像ですが、飛び上がって東へ向かいました。


 そちらの大陸の方向ではないでしょうか・・・。」

 今度はハルからも無線が入って来た。


「そ・・・そうか・・・、実は今、スターツ王子からも同様の無線が入ってきて、地中海を襲っていたスフィンクスが恐竜人大陸を目指して飛び立ったという報告が来たよ。


 ただでも巨大ロボットに手を焼いているのに、更に巨石像とスフィンクスか・・・、灼熱の魔法も持っているようだし、実に厄介だね・・・。」

 無線機の向こうからも、所長の落胆ぶりがうかがえる。


「分りました、米兵の手当てが終わり次第、至急そちらに向かいます。」

「分った、こちらに主力を向けて、そちらを襲われたら大変だから、米軍にはひき続きそちらで警戒する様伝えてくれ。」

 所長が、ハルにそう告げた後、無線機のマイクを置き、ミライを呼び寄せる。


「どうやら、敵は決戦をこの地に選んだようだ。

 各地の巨石像も、こちらに向かっているという事だ。


 ここで迎え撃たなければならないが、今回の場合は軍を編成する前に宣戦布告してしまったから、我々の部隊はうまく編成できていない。

 魔術者と軍隊の混成軍でなければいけないのだが、それぞれが単独の状態で戦う破目に陥っている。


 もう少し時間があれば、瞬間移動で各地を回ってもらい、小隊ごとに編成できるのだが仕方がない。

 とりあえず恐竜人軍の負担が増えるが、ここは何とか死守しよう。

 まあ、なんとかなるだろ?」

 所長が受けたショックを隠すように、少し明るめに話す。


「まあ、巨大ロボットは、我々の魔法攻撃や剣技もほぼ通用しない状況だ。

 巨石像がどうか分らないが、頑張ってみよう。」


 敗色濃厚ではあるが、まだ負けたわけではない。

 ミライがあきらめずに、まだ戦える恐竜人兵士を集め再編成し始める。


「よう・・・、大変そうだな。

 お師匠様に、援軍に行けと言われてしまったよ。

 前回のメンバー10名と一緒に来たぜ。」


 落ち込む所長たちの目の前に、突然11人の修験者たちが出現した。

 先頭に立っているのはナンバーフォーだ、救援に駆けつけてくれたようだ。


「おお、ありがたい、助かるよ。

 最早、部隊の編成がどうこうとは言っていられない。

 敵は一度受けた魔法力を分析して、その力を緩衝する方策を繰り出してきている様子だ。


 ナンバーファイブ君の魔弾や魔砲弾、そのほかにも炎系の魔法や、雷系の魔法など、恐らく向こうには通用しないと思われる。

 申し訳ないが、それ以外の魔法で対抗してくれ。」

 所長が、手短に戦法を伝える。


「分った、光系の魔法とか、後はとっておきのを出してもらうさ。」

 そう言って、ナンバーフォーは巨大ロボット達に向かって行った。


 一緒に修行僧も駆け出したが、彼らの頭の上には、火の鳥や清龍、河童など召喚獣が召喚され始めた。

 やがて、それらは巨大ロボットに向かって勢いよく襲い掛かっていった。


魔槍(ダークスピア)!!!」

 ナンバーフォーが唱えると、巨大な槍がいくつも天から降ってきて、巨大ロボットたちの頭上を襲う。

 ロボットたちは、大きな穴をあけられ、槍もろとも地面に縫い付けられてしまう。


 その状態が回復する間もなく、巨大な召喚獣がそれぞれのロボットに襲い掛かって行く。

 流石の巨大ロボットも、再生して体勢を立て直す間もない連続攻撃に、劣勢に陥り始めた。


『ピュンピュンピュン』何とか戦局を盛り返し始めたころ、再び地面にめり込んだ円盤の中央部分から光の玉がいくつも発射される。

 そうして、またもや数台の巨大ロボットが追加される。


 修験者たちの召喚獣は、巨大ロボットと互角の戦いを繰り広げてはいるが、それでも倒すまでには至っていない。

 ようやく互角近くまで盛り返してきたところに、追加された巨大ロボットは、攻防の均衡が崩れたことを示唆している。

『ズーン』更に、巨石像が到着し、それから間もなくスフィンクスまでもが現れた。


「いよいよもって、これはやばいね。」

 所長も最早お手上げ状態の様子だ。

 ところが、巨石像もスフィンクスも、修行僧や恐竜人兵士には見向きもせずに、まっすぐに新たに追加された巨大ロボットに向かって襲い掛かっていく。


「うん?どういう事かな・・・、仲間割れ・・?

 そ・・・そうか、鬼の家族がチュロンボの死に気が付いたと言う事か。

 ようやく目が覚めてくれたようだね。」


 所長も絶体絶命の危機が、起死回生の逆転に通じることを期待して、嬉しそうに顔がほころぶ。

 巨石像たちは、灼熱の炎の魔法を駆使して、巨大ロボットに襲い掛かる。


 しかし、いくら強力な魔法と言えど、対抗する緩衝力を講じているせいか、さほどの変形は感じられず、すぐに再生してしまい、ほとんどダメージを与えることは出来ていない。

 かといって打撃攻撃を仕掛けても、すぐに修復してしまい、何の効果も感じられない。


 それでも巨石像は、果敢に巨大ロボットに向けて攻撃を仕掛け続け、チビ恐竜人たちに傾きかけた流れを、もう一度戻してくれた。


「上空200キロくらいまで巨大ロボットを連れて上がってから、そのまま地球を周回して、大気圏に再突入させるのよ。


 あいつらは飛行ロボットではないし、慣性制御装置も持っていないから、そのまま地球の重力で加速して燃え尽きてしまうか、大気圏に弾かれて遥か遠くの宇宙まで飛ばされてしまうかどちらかよ。」

 チュロンビが、モニター画面の向こうからチュロンバとチュロンベに指示をする。


「ようし、分った・・・。」

 チュロンバが操る巨石像は、その周りに居た巨大ロボットを3体ほど抱きかかえると、そのまま上空高く舞いあがる。

 すると、上空から行く筋もの光の帯が・・・。


「へえ・・・、昼間だと言うのにずいぶんと明るい流れ星だな。」

 ミライが珍しいものを見るかのように、目を細める。


「そうか、巨大ロボットをいくら攻撃しても再生してしまうので、あきらめて成層圏に置いて来たという訳だな。

 地球の引力で引き寄せられて、大気圏に再突入する際、入射角が悪くて燃え尽きてしまうという訳か・・・。」

 所長は、巨石像を操っている者たちの頭の良さに、感心している様子だ。


 次いでスフィンクスも、巨大ロボットを数体抱きかかえて飛び立った。

 修験者やトン吉たちは、残りの巨大ロボット達を、押さえつけておけばよくなり、戦局はずいぶんと回復してきた。


「円盤の底面にいくつか窪みがあるでしょ。

 そこに向かって休まずに攻撃して。」

 小型円盤の画像を分析していたチュロンビから、更なる指示が出る。


 その指示通り、巨石像は地面にめり込んだ円盤の底部分に対して、鉄拳攻撃を仕掛ける。

 どうやら、長女のチュロンビが一家の司令塔のようだ。


「おお、あれは先程から何度も光の玉が発射された発射口・・・、そこを攻撃して、巨大ロボットを追加させないつもりか。

 障壁に守られているから、おいそれと破壊は難しいかもしれんが、光の玉を発射するには障壁を解かねばならん。


 連続して攻撃している限りは、向こうだってなにも仕掛けられなくなるという訳だな。

 ナンバーフォー君たちも、円盤の底部分の少しくぼみのある4ヶ所を攻撃してくれないか?

 そこから、あの巨大ロボットが供給されているようだ。


 そこを攻撃し続ければ、少し時間が稼げる。」

 所長が、巨大ロボットが片付き始め、手の空いたナンバーフォーたちに叫ぶ。


 すぐに巨大な召喚獣たちが、今度は円盤へと襲い掛かる。

 すると、地面にめり込んだ円盤がビリビリと振動を始めた。

 そうして、何かに吸い寄せられたかのように、拘束していたワイヤーごと周囲の土や石と一緒に、ゆっくりと上空へ浮かび上がる。


 同時に、空が嵐の前触れのように一瞬で暗くなる。

 上空を見上げると、なんとそこには今までの円盤よりも更に巨大な円盤が浮かんでいた。

 その円盤の底部分の窪みにぴったりと墜落していた円盤がはまり込み、更に推進装置から煙を上げて攻撃を仕掛けられなかった円盤が、別の窪みに収まる。


 更にもう一つ丸い突起が出ていて、それらが超巨大円盤の脚部分のように観察される。

 つまり、直径1キロほどの巨大円盤を3つ、底部分に抱えている格好だ。

 超巨大円盤は恐らく直径5キロは優に超えているだろう。


 空を覆い尽くさんばかりの巨大さは、それがどうして空中に浮いているのかという疑問すら消し飛び、ただただその巨大さに圧倒されるだけだった。

 その円盤の底中央部分にある、巨大なパラボラアンテナのような装置が、ゆっくりと下を向いて動き始めた。


「まずい、イオンビーム砲だ!」

 所長が叫ぶ。


「バーム!すぐに隔壁を閉じて、バリアー最大出力だ!」

 ミライが、装着している無線機のマイクに向かって大声で叫ぶ。


『ズドーン』大きな地響きとともに、はるか向こうの海岸沿いに、まばゆいばかりの閃光が発射された。

『ビリビリビリビリ!』小刻みで強い振動が、所長たちの場所にまで伝わってくる。


「バーム!おい、無事か?

 応答せよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


 ミライが必死に無線のマイクに向かって呼びかけるが、返事はない。

 そうして、イオンビーム砲は、すぐ下の所長たちに向きを変える。


「そうはさせるか!」

 すぐにチュロンバが巨石像を操って、円盤に向かう。

『ジュボッ』しかし、巨石像は円盤に近づく前に消滅してしまった。


「ええっ・・・、じゃあ、これならどう?

 母さん、今と逆の方向から攻撃よ。」

「分ったわ。」


 スフィンクスが超巨大円盤の上方から攻撃を仕掛ける。

『ショボッ』『ジュワッ』しかし、やはり円盤表面に近づく前に、消滅してしまう。


「どうやら、敵本隊の円盤のようだが、強力な防御システムを備えているようだね。

 更に、イオンビーム砲か・・・、これは手に余るね・・・。」


 所長ももう、どうしていいか分らない状態だ。

 イオンビーム砲の先端が眩く輝き始め、エネルギーがチャージされて行くのが見て取れる。


「自衛隊と神田さん神尾さんを連れてきました。」

 丁度その時、ゴランとネスリーとホーリゥが、パワードボディスーツで身を固めた自衛隊の精鋭10名と、神田と神尾を連れて瞬間移動してきた。


「遠距離なので、さすがにこれだけの人数を連れて来るだけで手いっぱいでした。

 日本ではジミーさんとマルニーさんが、自衛隊員と魔物たちを編成して引き続き警戒に当たっています。」

 ゴランが、申し訳なさそうに頭を下げる。


「いや、とんでもない・・・、非常に心強い援軍だよ。

 君たちは、鏡面の氷を作ることができたよね。

 それはどんな大きさにでもできるかね?」

 所長が、急いで神田達の所に駆け寄る。


「あ・・・ああ・・・、神尾が降らす雨を一気に凍りつかせるだけだから、そりゃ大きくも出来るさ。

 でも、何の破壊力もない魔法だぜ?」

 神田も神尾も小首を傾げながら、とりあえずは頷く。


「だったら丁度いい、今すぐこの上空に巨大な氷の鏡を作ってくれ。

 そうして、それをミッテランさん・・・、補強の為に極低温でさらに凍らせてほしい。

 ゴラン君とホーリゥさんは念のためにその下に障壁を張ってくれないか。」

 所長が矢継ぎ早に指示を出す。



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