表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HARUKA  作者: zaku
9/28

千佳センパイ

 「もう!なにこれ」

 遥は、部活が予定より早く終わったこともあって、部室の片付けをしていた。

 なんでこんなに汚いんだろう。

 二中のサッカー部の部室だって、こんなに酷くはなかった。

 壁に立て掛けてあったグラウンド整備用のトンボが、ガラガラと倒れる。

 「あーん、最悪!」

 「遥ちゃん、何してんの?」

 千佳が部室を覗いた。

 「あっ、千佳センパイ」

 遥は立ち上がって、ジャージの膝についた砂を軽く掃った。

 「あんまり汚いから、ちょっと部室の掃除を…」

 「あ、ごめんね。私、そういうことできない人だから」

 「いえ、そうじゃなくて…あの、私、掃除とか好きだから…」

 「いいのよ。ありがと」

 「いえ、そんな…すいません…」

 「私も手伝うよ」

 「え?いいんですか?」

 「もちろん」

 「ありがとうございます!」

 「本当汚いわね」

 千佳は部室に入ると、そう言って笑った。


 「遥ちゃん、相川くんと仲いいよね」

 千佳が倒れたトンボを壁に立て掛けながら言った。

 遥はドキッとした。

 「えー?何でですか?」

 「好きなのかなと思って」

 千佳と目が合った。

 「違いますよー。クラスが同じだから…」

 遥は慌てて目を逸らした。

 「そうなんだ」

 「そうですよ。最悪ですよ、あんなの…」

 「本当に?」

 え?

 千佳センパイ?

 「あ、その…とにかく最悪なんです。授業中もいっつも寝てるし…こないだも英語のとき寝てて、斎藤先生に怒られてたし…」

 遥は一気にまくしたてた。

 「部活の顧問の授業で寝るなんて大物ね」

 「しかも斎藤先生、クラスの担任なんですよ!もう、信じられない」

 「ふーん。そっかぁ」

 しばらく二人は黙って片付けを続けた。

 だいぶ片付いたところで千佳が言った。

 「遅くなるからそろそろ帰ろうか?」

 「本当だ。もうこんな時間…」

 千佳が部屋の中を見渡す。

 「見て。だいぶきれいになったよ」

 「はい」

 「明日みんなビックリするぞぉ」

 「はい」

 「さ、着替えて帰ろ」

 「はい」


 遥は腕時計を見ながらバス停へ急いだ。

 「間に合うかなぁ」

 このバスを逃すと、三十分ほど待たなくてはならない。

 昼間のバスの本数自体はそれほど少なくはないのだが、夕方を過ぎると一気に減ってしまう。

 バス停に着くと同時に、ヘッドライトが遥の周辺を照らした。

 よかった。間に合った。

 遥は入口近くの一人用の席に座った。

 カバンを膝の上に抱え、ぼんやりと窓の外を眺めた。

 裕也と千佳が、たまに親しげに話しているのを、遥は気付いていた。

 千佳センパイ、相川くんのこと…

 遥は制服の胸のリボンをギュッと掴んだ。

 バスが自転車を追い抜いた。

 相川くん?

 慌てて振り返る。

 遥は急いで降車ボタンを押して、次のバス停で降りた。

 裕也がいた方をじっと見つめる。

 暗くて何も見えない。

 私、何やってんだろう…

 裕也に会ったところでここにいる理由などないし、裕也がここを通る保障もない。

 バス停のベンチに座って、もう一度同じ方を見る。

 誰か来た。

 相川くん?

 ライトに照らされた影が二つ。

 千佳…センパイ?

 遥は来たバスに飛び乗った。

 行き先は、どこでもよかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ