13番
五月の声を聞くと、いよいよ始まる。
インターハイの予選だ。
この一カ月近くで、最初は死ぬかと思った練習にも、しっかりついていけるようになってきていた。
そして今日は、念願のユニフォームがもらえる日だ。
いつもの朝練もなんだか落ち着かない。
張り切りすぎて息が上がる。
「相川くん大丈夫?」
朝練が終わると遥が近寄ってきた。
「何が?」
「授業中、寝ないでね」
「寝るわけねぇだろ」
「本当に?怪しーい」
遥が笑った。
正直、授業中は睡魔との戦いだ。
都合が悪いことに、英語の授業は特に眠たい。
斎藤先生の授業がどうのというより、中学のときから英語は苦手で、今となってはさっぱりわからない。
英語ほど積み重ねが大切な教科はないと思うのだが、裕也のそれは中二の夏から虫食い状態だ。
真剣に授業を聴いていても、悲しいかな何も入ってこない。
だから余計に眠たくなる。
「今日の一時間目、英語だっけ…」
遥が独り言のように言った。
おぉ、忘れてた。
裕也は顔を洗って、売店に行くと、眠気覚ましに缶コーヒーを買った。
よし。今日は絶対寝ないぞ。
裕也は、缶コーヒーを飲んで心に誓った。
途中、何度か眠りそうになったが、裕也はなんとか眠らずに持ちこたえた。
それにしても今日の授業は長く感じた。
楽しみなことが待っているときは、それまでの時間が長く感じられるものだが、これほど長く感じたことはない。
六時間目が終わり、帰りのホームルームのときでさえ早く終われと思った。
ホームルームが終わると、裕也は足早に部室へ向かった。
「今日、何かあるの?サッカー部」
舞が遥に聞いた。
「一年生にユニフォームが配られる日だからじゃない?」
遥が楽しそうに言った。
「そういうことか」
「うん」
「わかりやすい人だ」
「だよね」
「そういう遥もね」
「えー?何で?」
「鏡見たらわかるよ」
舞が笑った。
練習の冒頭、部室に全部員が集められた。
「一年生、ユニフォーム配るぞ」
斎藤先生の言葉に、裕也は少し緊張した。
「空いてる番号は、13、15、16…」
13、頼む!
裕也は祈った。
「みんな希望があるだろうが、悪いがこっちで勝手に決めさせてもらった。といっても五十音順だ」
五十音順?
いくらなんでもそんな決め方あるか?
「13番。相川」
裕也は一瞬何がおきたかわからなかった。
「相川?」
「あ、はい!」
裕也は13番のユニフォームを手にして、心の中で叫んだ。
しゃっ!
裕也は、初めて自分の名字に感謝した。




