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HARUKA  作者: zaku
22/28

オンボロギター

 やっと松葉杖が取れた。

 普通に歩く分には何の支障もない。

 リハビリは落ちた右足の筋力を戻すため、器具を使ったトレーニングが中心となった。

 もうサッカーをするつもりはない裕也にとっては、どうでもいいことに思えたが、これをきちんとやらないと、体のバランスが悪くなるらしい。

 歩く練習も辛かったが、これはこれで結構きつい。

 九月も下旬だが、まだまだ暑い。

 1セット終わるころには汗だくだ。

 あと2セット。

 さっさと終わらせて家に帰ろう。

 裕也はタオルで汗を拭うと、休む間もなくトレーニングを続けた。


 待合室では母が待っていた。

 「終わった?」

 「うん」

 とりあえずリハビリが終わるまでという約束で、母の送り迎えは続いている。

 「暑ぃ…」

 車に乗ると、すぐにシャツのボタンを外してエアコンの風を浴びた。

 「リハビリはまだ続きそう?」

 「先生は今月いっぱいって言ってた」

 「そう」

 ということは、来月からまた自転車通学に戻るということだ。

 最初は、車での送り迎えが恥ずかしかったものだが、今となってはこんなに快適なものはない。

 裕也は窓の外を眺めて、ため息をついた。


 週末、陵は裕也の部屋にいた。

 オンボロとケチをつけた裕也のギターを楽しそうに弾いている。

 そういえば、裕也の病室でギターを薦めてきたわりにはあれから何も言わない。

 もう新しいメンバーは見つかったのか。

 「なぁ、陵。ギターのメンバーってどうなったんだ?」

 「あ?別にどうもなってねぇよ」

 「マジか…」

 「何だ?もしかして少しはやる気になったか?」

 「そうじゃねぇよ」

 「ほら」

 陵は裕也にギターを渡した。

 「弾いてみろよ」

 「無理だよ…」

 「教えてやるからやってみろって。どうせやることねぇんだろ?暇つぶしくらいにはなるぜ」

 しょうがねぇなぁ…

 あんまり気は進まなかったが、裕也は自分が知っている一番簡単なAmのコードを鳴らした。

 「いいじゃねぇか」

 陵が満足そうに言った。

 裕也は病室に陵が持ってきたスコア譜を、机の引き出しから取り出した。

 「ほう。一応持ってたのか」

 「陵。教えろ」

 「何だ?ずいぶん上からだな」

 陵は一旦ギターを受け取ると、ひととおり弾いてみせた。

 「どうだ?簡単だろ?」

 「ふざけるな」

 陵は弦の押さえ方や指の運びを、丁寧に裕也に教えた。

 裕也の指先はすぐに真っ赤になった。

 「指が痛ぇ…」

 「ま、そこは慣れだな」

 「くっそ…あのとき缶コーヒーなんか飲むんじゃなかった」

 「何の話だ?」

 「何でもねぇよ」

 裕也は赤くヒリヒリする指先を見つめながら言った。



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