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HARUKA  作者: zaku
21/28

ありがとな

 九月に入って二週間あまり。

 今日から学校に復帰だ。

 とはいっても、まだリハビリのための通院はしなくてはならない。

 松葉杖も持たされている。

 自転車に乗れるようになるまでは、母が車で送り迎えをしてくれる。

 校門の前で車を降りるのが、少々恥ずかしい。

 「おう、相川。大丈夫か?」

 教室に入ると、クラスメイトが大げさに出迎えてくれた。

 席に座って窓際の一番後ろの席を見る。

 陵がニヤリと笑った。

 「おはよう。久しぶりね」

 舞が言った。

 陵は家が近所ということもあって、退院してからもしょっちゅう裕也の家に遊びに来ていたが、舞と遥には花火大会以来会っていない。

 そういえば、いつも舞と一緒にいる遥の姿が見えない。

 今日は休みなのか。

 「何?遥?」

 舞がふいに言った。

 「いや、別に…」

 裕也は慌てた。

 「もうすぐ来るんじゃない?朝練だと思うよ」

 「そうか…」

 まだ朝練の時間か…

 裕也は、なんとなく後ろめたいものを感じた。

 

 ホームルームが始まる五分前、遥が教室へ入ってきた。

 「あっ」

 一瞬目が合って、お互い逸らした。

 「舞、おはよう」

 「おはよう」

 「相川くん、おはよう…」

 「あぁ」

 なんとなくぎこちない。

 「あの…もう大丈夫なの?」

 「一応な」

 裕也は壁に立て掛けた松葉杖を指差した。

 「そっか…」

 チャイムが鳴った。

 「あっ…」

 遥は慌てて自分の席へ向かおうとした。

 「西野…」

 「え?何?」

 遥が驚いて振り返る。

 「いろいろ、ありがとな…」

 裕也が照れくさそうに言った。

 「うん」

 遥は嬉しそうに自分の席についた。

 「ふーん」

 舞は頬杖をついて横目で裕也を見た。

 「何だよ」

 顔が熱い。

 「別にぃ」

 舞は下敷きを左手に持って、団扇がわりに扇いだ。

 「あー、暑い、暑い…」

 風は裕也のもとにも届いた。



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