ボルト
しばらくして斎藤先生が病院に到着した。
「西野」
「先生。今レントゲン撮ったところで…」
「結果は?」
「まだ…」
「相川、大丈夫か?」
「先生。すいません…」
裕也は斎藤先生の顔を見て、張りつめていたものが切れたような気がした。
下を向いたら涙がこぼれそうだった。
「ご両親には連絡しておいたから」
「すいません」
「心配するな。大丈夫だ」
斎藤先生は、裕也の頭をクシャクシャッと撫でた。
「相川さん。診察室へどうぞ」
診察の結果は、骨折だった。
これだけ腫れ上がっていて、おまけに今まで味わったことのない痛みだ。
それくらいのことは覚悟していた。
だが、続けて医師の口から発せられた言葉は、裕也のそれを上回っていた。
「ボルトを埋め込む手術をしてはどうかと思うんですが」
「手術?」
「骨折の箇所にちょっと問題が…」
そのあとの言葉は、裕也の耳には入ってこなかった。
ボルトって何だ…
「あの、先生。手術したら、またサッカーできますか?」
遥が聞いた。
「もちろんできますよ。ただし…」
医師はカルテの手を止めて続けた。
「リハビリは辛いものになると思います」
「わかりました。もうすぐご両親が到着されると思いますので…」
斎藤先生が裕也の肩に手を置いて言った。
遥は裕也に目をやった。
裕也は力なくうつむいていた。
裕也の右足首はギプスでしっかりと固定された。
泥だらけのユニフォームを脱いで、汚れた体を濡れたタオルで拭いた。
病院の寝巻に着替え、病室へ入った。
ベッドの上に横になる。
窓に目を向けると、外はすっかり暗くなっていた。
雨はまだ降っている。
斎藤先生は裕也の両親を迎えるため、ロビーに向かった。
「相川くん…」
遥は、裕也に何と声をかけていいかわからなかった。
「手術したら、またサッカーできるって」
「…」
「きっと、すぐによくなるよ」
「うるせぇ」
「ごめん…」
もうサッカーなんて絶対やらねぇ―
裕也の両親と斎藤先生が、病室に入ってきた。
遥は少し下がって丁寧にお辞儀をした。
手術は二日後に行うことが決まった。




