内緒よ
「遥?」
「…」
「ねぇ、遥聞いてる?」
「あ、ごめん。ボーっとしてた」
「もう。大丈夫?」
「うん。ごめん」
舞と遥は、いつものファストフード店にいた。
「どうかしたの?」
「ううん。大丈夫」
遥はオレンジジュースを一口飲んだ。
「そう?とても大丈夫そうには見えないんだけど」
舞は頬杖をついて真っ直ぐ遥を見ている。
遥は目線を膝元に落とした。
「ほら。お金の相談以外ならのるよ」
やっぱり舞はお見通しのようだ。
遥は観念した。
「あのね…」
遥は、こないだ裕也と千佳が一緒にいるところを見た話をした。
「本当に?」
「うん。たぶん…」
「それで?」
「それでって?」
「二人は付き合ってんの?」
「わかんない」
遥は、膝の上のスカートを両手でギュッと握った。
「でも、千佳センパイに、相川くんのこと好き?って聞かれたし…」
「だったらその先輩に聞いてみれば?」
「えっ?」
「遥の勘違いかもしれないでしょ?」
「でも…」
「いつまでもうじうじしてても仕方ないんじゃない?」
「そうだけど…」
「もしダメだったら、思いっきり泣けばいいじゃん。そのときは、私の胸貸してあげるからさ。ね?」
舞はわざとおどけて言った。
あれから、遥は千佳とうまく話せないでいた。
みんながグラウンドで練習している間は、どうしても二人きりになってしまう。
気まずい時間が息苦しい。
「遥ちゃん、最近元気ないね」
千佳がグラウンドを見ながら言った。
「何かあったの?」
遥はドキッとした。
「いえ。別に…」
「そう?だったらいいんだけど」
再び沈黙の時間が流れた。
遥は意を決した。
「あの…」
「何?」
「千佳センパイって相川くんと付き合ってるんですか?」
心臓がはちきれそうだ。
「どうして?」
千佳が驚いた顔で遥を見た。
「あの…二人が一緒に歩いてるとこ見ちゃって…」
「え?ごめん、何の話?」
「こないだ、部室の掃除をした帰りに…」
「あぁ、あれ?」
千佳はニコッと笑って言った。
「もしかして見てたの?」
「すいません…」
「遥ちゃんには言ってなかったけど、相川くんとは幼なじみなの」
「幼なじみ…?」
「うん。それでね、あの日はたまたまコンビニで会ったから、途中まで一緒に帰っただけ」
「でも、あの日部室で相川くんのこといろいろ聞いてたし…」
遥はなぜか少しムキになった。
「私の彼氏が相川くんと遥ちゃんのこと聞けって言うから」
「彼氏?」
「そう。うちのサッカー部の二年。相川くんの三中のときからの先輩ね」
千佳が少し恥ずかしそうに言った。
「えーっ!誰ですか?」
「内緒よ。誰にも言わない?」
「はい!」
千佳は遥の耳元で彼氏の名前を教えてくれた。
「へー、そうなんだ。知らなかったぁ」
「どう?安心した?」
「はい!」
「遥ちゃん、正直者ね」
今度は遥の顔が真っ赤になった。




