一年四組
自己紹介は苦手だ。
何度やっても緊張する。
クラス替えのたびに行われるイベント。
年に一度の恒例行事。
相川裕也―
この名前のおかげで、出席番号は常に一番である。
席は決まって廊下側の一番前。
黒板が光って字が見難い。
最初の授業で一番に指されるのも、たいがいこの席だ。
こんな不公平、あるだろうか。
少なくともあと二年、この苦境に付き合わなければならない。
どうせなら、山田とか、吉田とか、そういう名字になりたかった。
窓際の一番後ろの席に目をやる。
「よっ」と軽く右手を挙げてニヤリと笑うこの男。
毎年、このときほどあいつを羨ましいと思うことはない。
山下陵。
小学校の一年生のときからの腐れ縁だ。
陵は、三つ年上の兄貴がバンドをやっていた影響で、中学のときからギターを弾いている。そういえば、高校に入ったらバンドを組むと言っていた。
どちらかというと人見知りな裕也に対し、陵は初めて会った人とでもコミュニケーションをとるのがうまい。
おそらく、裕也が今抱えている不安や苦しみなど、一ミリも理解してくれないに違いない。
裕也は、中学のときはサッカー部に入っていた。田舎の中学の部活といえば、多少運動神経のいい男子は、野球部とサッカー部にほぼ二分される。
裕也も例外ではなかったが、他の誰よりもサッカーが好きだという自信はあった。
この地域には、プロサッカーチームなどもちろんないし、生でサッカーの試合を観たこともない。
ただ、サッカーが好きだった。
裕也は、高校でもサッカー部に入ると決めていた。




