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俺とあいつの変わった日常2  作者: 龍聖
第一章 新しい日常の始まり
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第7話 湊の過去

 俺は生まれつきから多重人格者だった。

 小さい頃から何かきっかけがあると性格がコロコロと変わっていた。それのせいもあってか、幼稚園では、「なんかおまえ気持ち悪い」などと言われ、友達ができずにいた。

 そんな日々が続き、一人でいるのが当たり前になった頃、俺に話しかけてくれる女の子がいた。それは葵だった。

 その頃の俺はとても嬉しかった。こんな自分に嫌な顔をしないで話しかけてくれる子がいるなんてと。


「なんで俺なんかに話しかけてくれたの?」

「ずっと一人だったからさみしいと思って。だから、私と友達になろ!」


 その言葉に俺は救われた気がした。小さくて何もできない頃からずっと独りで、友達なんかいない自分に初めての友達ができた。それがとても嬉しかった。

 葵と友達になってからは俺の多重人格は出てこなくなっていた。その頃は何も思わなかった。ただ、気持ち悪いのが治ったぐらいにしか思っていなかった。

 それから月日が経ち、俺と葵が小学三年生のある日のこと。事件は起きた。

 その日、たまたま俺は用があるからと葵を置いて帰ってしまった。その帰り道に学校に忘れ物をしたことに気づき、俺は教室に戻ってきて中に入ろうとした時のことだった。

 中では葵がクラスの女子数名と何かもめていたことに気づいた。


「あんたさあ、湊くんのなんなの?」

「何って、ただの友達だよ」

「湊くんってあれでしょ、性格コロコロ変わっちゃうんでしょ?あんなやつのといて楽しい?」

「楽しいに決まってるじゃん!」

「それに湊くんのこと好きでしょ、あんた」

「なっ、ち、違うもん!」

「違わないでしょ。あんなにデレデレしちゃってさあ。あんたむかつく」

「やっちゃおうよ、この子」

「うん、そうしよう」

「や、やめて…」


 俺は葵がやられていくのを黙ってみていた。何度も行こうとはしても足が動かなかった。そんな時だった。


「助けて、湊…」


 葵の助けを呼ぶ声で俺の中の何かが吹っ切れた気がした。とてつもなく怒りが湧き出て、殴りたくて殴りたくて仕方がなかった。そんな気持ちを抑えきれずについに俺は教室の扉を勢い良くあけた。


「な、湊くん」

「なんで、帰ったんじゃなかったの?」

「うるせえ。てめえら、よくも葵泣かしたな。ぶっ殺してやる。泣きわめいても許さねえからな。お前らを殴って、ぐちゃぐちゃにしてやる、何もかも! 」

「ご、ごめんなさい!それだけはやめて!」

「今更おせえんだよ。ぶっ殺してやる!」


 俺が殴ろうとしたその時、葵に抱きしめられていた。


「もうやめて、湊!私、湊が誰かを殴るところなんてみたくない…!」


 葵は泣いていた。そんな葵を見た途端に、俺の中の憎しみや怒りは綺麗さっぱりなくなっていた。自分でもわけがわからなかった。

 いきなり意識が飛んだと思ったらふと帰ってきて、気づいたら目の前のクラスの女子が泣いていて、葵は俺を抱きしめて泣きながら止めていた。

 それまでの間の記憶は自分には綺麗さっぱりなくて、とても怖かった。何が起こったのかすらわからない。


「あ、葵…?どうしたんだ?」

「湊が…みんなを殺す気満々で殴ろうとしてて、怖かった…あんなのいつもの湊じゃないもん、私の知ってる湊はそんなことしないもん…」


 その時になってようやく俺は気づいた。葵がクラスの女子にやられるのをきっかけに多重人格が出てきていたんだってことに。

 それをきっかけに俺は葵を大事にしていこうと誓った。それ以来、俺は用があっても毎回のように葵と帰るようにした。そして、葵なら俺の中の多重人格を抑えてくれるとわかったから。

 そして、別れは突然訪れた。葵が家庭の事情で転校してしまったのだ。とても悲しかった。何も別れを言えずにいたことが。

 そして俺が小学五年になった頃、従姉の美緒と出会った。彼女は突然俺の家の隣に引っ越してきたからだ。

 そして美緒と過ごすようになり、蓮とも出会った。そして高校生になり、俺は葵と再開した。その時、俺は心の底から嬉しさが込み上げてきていた。

 そして、ついさっきのことだ。葵の家からの帰り道に俺は美緒とキスをした。

 もう二度と美緒と葵を悲しませたくはないから。この二人は俺が守る。俺はそう誓ったのだった

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