プロローグ
この作品は、当サイト、エメラルド☆ファンタジアからの転載です。オンライン文化祭2011参加作品
どうか想像してみてほしい。
例えばあなたが、突然、全くもって意味不明な理由で、勤めていた会社を放り出され、貯金は底を突き、頼れる身内もなく、明日限りで六畳一間風呂なしのアパートから出て行かねばならないと宣告されたら……。
次の職は見つからず、ならばもう体を売るしかないと街に立てば、何度も補導されそうになったとしたら……。
ちなみに、私は既に二十歳を一つほど過ぎていたのだが、栄養状態が悪いせいか、ガリガリな容姿は幼く見えるらしい。もっとも体を売る商売など、未成年だろうが還暦を過ぎていようが、良いはずがなかった。
あるいは、十円のうま○棒をたった一本スーパーで購入し、持参した大袋に、誰かが硬くて食べられないからと捨てていったキャベツやレタスの葉っぱの外側を、好奇の目を一身に受けながら詰めるという行為を繰り返さねばならなかったとしたら……。
もし、そんな状況にあなたが陥っていたとしたら……。
あなたは、突然差し出された血色の悪い冷たい手に、すがらずにいられただろうか。