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永愛機甲  作者: 清瑞渓
2/7

壱 穢れた世界


2075年、人類は自らの肉体の一部を機械化することに成功した。

機械化は一部の軍事機関内で兵士の強化を目的に開発された。

当初は機械化した部分がうまく動作しなかったり隣接する生身の肉体が腐敗し、果てはその部分を切断ということも少なくなかった。

この欠陥や術後の事故が多い肉体の機械化、機械パーツは第一世代と呼ばれた。


失敗例の多かった第一世代。問題が山積みの機械化の現状を打破するため、軍事機関は民間企業との協力を思いつく。

協力と言っても、有力な技術者を有する企業に人体機械化の理論を流すだけだった。

それにより、たくさんの発想や新理論が生まれ、多面的に機械化の問題を見直すことができた。



2082年、数々の発想・新理論を得た軍事機関は、これらを取捨選択、開発に着手し、新たな機械化・機械パーツを生み出した。

これが第二世代だ。

このモデルは第一世代の大きな欠点である術後の不安定さを克服し、安全性を備えた物となった。

また、この第二世代は出力を抑え、安価な素材を使用し、量産化を可能にした市販モデルも作られ、世界に機械化が普及する火付け役となった。


2090年。時代の経過と技術開発の結果、各国が持つ固有の領土はこれ以上ないというほど汚染が進み、人や自然、生きとし生けるものの生活を犯しはじめた。

困り果てた末に思いつくのは、新たな大地の開拓、技術が未発達で新鮮な大地の強奪。しかし、その発想はどの国も同じだったようで、穢れを知らない大地を求め争いが勃発。

戦場の危険な状況を生き残るために開発された、とにかく弾丸・爆発に耐えるための強固な機械パーツ。

腕や脚など、体の一部を機械化する第一・第二世代と違い、今回は全身を機械化することを目的に開発され、戦地に赴く軍人の多くは肉体を改造し、戦火に身を投じた。


一方、土地開拓には全身機械化どころか、内臓や脳、全てが機械の「機械人形アンドロイド」が開発・導入された。戦争に人員を回すため、代替品が必要だったのだ。

ならば戦争にアンドロイドを送れば、と思うが、当時はまだ人工知能の開発が進んでおらず、単純な命令しか実行できなかったのだ。

以上のような強度に富んだ機械化・機械パーツ、人形は第三世代と呼ばれた。


2097年、戦争の終結を迎えたこの年は、今までの機械化から数段の改良が進んだ年だった。全身機械化と機械人形で培った技術は人間の限界を越えさせた。

脊髄と、脳の部分的な機械化。

これにより得られたものは、運動の信号伝達高速化による根本的な身体能力の向上。

また、脊髄・脳の機械化の際には剄部に外部端子が備えられ、他の独立した記憶媒体と接続し、情報のやり取りも可能となった。

ちょうど、パソコンと外部記憶装置のような関係だ。

しかし、良いことばかりではなく、機械化した脳へのハッキング・クラッキングによる犯罪が増加してきたのだ。

パソコンと変わらないような脳なら、外部から攻撃されない保証はないのだ。

情報を盗み見るハッカーならまだ良い方で、特に問題なのはクラッカーだ。

人の全てを司る脳の、一部をいじられれば、その人物は広い意味で崩壊してしまう。

記憶の改変は、その最たるもので、無関係の人を実行犯に仕立てて行う犯罪は、操られた本人に自覚がないのも相まって、真犯人の発見が大変難しく、大きな問題として今も対策が講じられている。

この、豊かな美点と致命的な欠点が同居する機械化を、第四世代と呼ぶ。

この世代では全身機械化が一般になっており、部分パーツはあまり出回らなくなっていた。


そして現在。2102年。華やかな近代都市と、その裏で凌辱の限りを尽くされた未発達だった大地。有害物質にまみれた山奥の荒れた村で、ジャンク屋を営む半機械化した男、カイル・ロエンと、少女型アンドロイド、クレイルの歪んだ愛の物語が始まる。

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