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今日から私の学園生活が始まる。
あの後、お父様がいつも以上に話しかけてきたけど、必要最低限しか会話はしなかった。
私が冷たい態度をとるたびに、お父様はあからさまにシュンとして近づき難い状態になってしまうので、城の人達からは早く仲直りしてほしそうな雰囲気を出されたけどそんなの知ーらない。
「ミリアリア様、お早いですね」
声をかけられた方を向くと、アリサ様とカリナ様が近づいてくるのがわかった。
「二人共、お久しぶりね。代表の挨拶を考えると、緊張して早めについてしまいました」
「まぁ、そうだったのですね! 今年の首席入学者はミリアリア様でしたか」
「ええ、案内が来たときは驚きましたわ」
「ミリアリア様なら納得です」
「ありがとう」
当たり障りない話をしているけれど、私は散々恋バナをしてきた二人にめちゃくちゃ愚痴りたくて仕方ない。
それでも周りには沢山の人がいて、なんなら私にみんな挨拶してこようとするから邪魔で仕方ない。
代表の挨拶の準備もあるので~、って二人を連れてその場を離れる。
「【小声】」
人の気配はないけれど、念の為、私達の周りだけに魔法をかける。これなら周りに声は漏れない。
「それにしても、エドワルド様があのリンダ様とご婚約だなんて……ミリアリア様大変でしたね」
「本当にお父様ったらひどいの!」
二人に抱きつく。泣きたいところだけど、このあと代表挨拶があると思うと我慢しなくちゃいけない。
「あんなにミリアリア様が分かりやすく、逆プロポーズみたいなことをしていらしたのに、なぜみなさん気づかないんでしょうね……」
「もうね、いいの。エドワルド様のことは諦めるわ」
「そんな! エドワルド様があの性格の悪いリンダ様とご結婚されるのを納得できるんですか?」
「納得するも何も、お父様が王として、正式に認めてしまったんだもの。覆せないわ」
「ミリアリアさまー」
ぐすぐすと、まるで私以上に泣いているカリナ様。
「もう、カリナ様が泣かなくったって」
そっとハンカチで、涙を拭いてあげる。
「ですが、ですが! あんなに一途に頑張っていらしたのに」
「ふふ、私のために泣いてくれるのね。ありがとう」
本当に私のことを応援していてくれたものね。
「諦めるなんて、ミリアリア様らしくないですよ」
いつもはほんわりしているアリサ様から厳しい声で言われる。
「アリサ様はお兄様と正式にご婚約されたんですもの、余裕があっていいですわよね」
八つ当たりだとは分かっていても、棘のある言葉が出てしまう。
先日の王立学園の卒業パーティーには、王家の私達も出席していた。アリサ様もお兄様のパートナーを務めるために特別に出席をしていたのだが、お兄様がサプライズで公開プロポーズをされたの。
お父様達も寝耳に水だったみたい。本来、婚約を正式に結ぶのは学園を卒業してから。
でも、何事にも特例はあるもので。お兄様達みたいに年齢差があり、片方が学園を卒業し尚且つ双方どんなことがあっても婚約を覆さないと約束できるなら、もう片方が卒業する年齢じゃなくても婚約を結べることになっている。
お兄様はあと三年、自分が側にいることができないのに沢山の殿方も通われる学園にアリサ様が通うのがとても心配だったみたい。それなら、せめて婚約者としての状態で学園に通ってもらうほうが安心だと、このような強行突破にいたったんですって。
突然の公開プロポーズに驚いていたアリサ様でしたが、もちろん返事はYES一択。
そこからは、あれよあれよという間に卒業パーティーは同時に婚約披露の場になった。その場は拍手喝采。特に、女性達からめちゃくちゃお祝いの言葉を貰っている二人だった。
お父様も後で勝手な事を、と怒っていたけど、その場でお祝いムードを壊すわけにもいかず、正式に婚約を認める宣言をされたの。ちなみに宰相には勝手に宣言されるとは、とチクリと小言を言われたらしい。
そんなわけで、アリサ様はすでにお兄様の婚約者となった。
私とアリサ様の間がギスギスしているせいでカリナ様はオロオロしている。
「私、エドワルド様がご婚約され、相手があのリンダ様だと知ってとても許せませんでした。ミリアリア様の今までの努力を、想いを、皆様冗談だと片付けていたことが。それに、私ももっと協力していればと何度も何度も後悔いたしました。それで私考えたのです。リンダ様の瑕疵によって婚約解消、もしくは婚約破棄に出来ないかと」
えっ。なかなか過激なことをいうアリサ様には驚かされる。
「えっと、それって……」
「私はすぐにリンダ様の事を調べました。元々三年前には性格の悪いことは知っていましたもの。でもあの女は在学中エドワルド様の事を悪く言ったりしなくなったそうです。ようやくエドワルド様の事を認め始めたのかと思っていましたのに」
ええ、私もその話しは聞いているわ。
「でも、違いました。あの女ときたら、流石に公爵家に対して今までの発言はまずいと気づいたようです。それに、内輪のものにゆくゆくは自分が公爵夫人になるのだと言いふらしていたみたいですよ。『その時には色々便宜を計ってあげる』なんてことも言っていたって。『でも、すぐには結婚したくないから花嫁修業のために二年は欲しいとかなんとかいって遊ぶつもり。その遊ぶお金も公爵家から支度金として貰う予定』だなんていう女ですよ。絶対にこの女とエドワルド様を結婚させてはいけません! ミリアリア様の恋の応援はもちろんですが、エドワルド様はアガルト様の大事な親友です。アガルト様の大事な方をそんな扱いする女なんて許せません」
な、なるほど。アリサ様はアリサ様でエドワルド様の結婚相手に思うところがあるということね。途中からリンダ様ではなく、あの女呼ばわりでしたもの。
「それなら、リンダ様の様々な発言を公爵夫妻にお伝えすれば……」
「カリナ様、甘いですわ! あの女は外面がとても良いみたいです。公爵夫妻からは、よく出来た娘さんだ、なんて言われているそうよ。まともに受け取ってもらえないわ」
「では、どうすれば……」
「これは地道に証拠を集めるしかないですわ。そして、二年のうちになんとかそれを公にして婚約破棄させるのです!」
解消ではなくて、破棄一択になっていますね。よっぽど、アリサ様にとっても許せないことなのね。
「だから、ミリアリア様。諦めるなんておっしゃらないでください。神様は絶対にミリアリア様の努力を見てくれています」
そうね、きっとこれは散々幼い頃に我儘やひどいことをしていた罰なんだわ。
この試練を乗り越えたら、明るい未来があるはず!
ええ、ええ、たかだか婚約ぐらいで諦めるなんてどうかしていました。まだ結婚したわけではないのだもの、なんとかしてみせる。何年片想いしてきたと思っているの。これぐらいではへこたれないんだから。




