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お兄様からは時々お手紙が届いている。
それもこれもお兄様が学園にいく前に、私がエドワルド様をお慕いしていることを告げて、協力してほしいとお願いしたから。
学園でのエドワルド様の様子なんかを定期的に教えてくれている。
最初にそれを聞いたお兄様は驚いていたけれど、そう言われてみれば……と、色々思い出しているようだった。
「わかった。学園でおかしな女の子が寄り付かないようにすればいいんだね」
「おかしくない女の子も近寄らせないでください」
「エドの気持ちもあるからねぇ」
「お兄様は私の味方ではないのですか……」
ちょっと泣く演技をして見せれば、もちろんミリーの味方だよ! 大丈夫、エドに女の子は近寄らせないから。と約束してくださった。
ふふ、これでエドワルド様には女の子は寄り付かないだろう。常に王族が側にいるんだから、他の人達は距離を取るに決まっている。
それにしても、お兄様も私が本当にエドワルド様の事を好きだなんて全然思っていなかったみたい。あんなに分かりやすくアピールしていたはずなのに。そんなにおかしなことかしら。
そうそう、お手紙の内容は今のところ問題なさそう。相変わらず、女の子たちからは遠巻きにされているって。美の価値観が違うにしても、あんなに素敵なのに、解せない。まぁ、私としては好都合だけど。
今日はアリサ様とカリナ様をお誘いして久々のお茶会という名の、私の恋の作戦会議の日。
「アリサ様、カリナ様、お久しぶりです。さぁさぁ、席にお座りになって」
「ミリアリア様もお久しぶりです」
二人が着席するのを待って、ライザがお茶を出してくれる。
「それで、最近はどうなのですか?」
「まったく、進展なしよ」
「まぁ……どうしてでしょうねぇ」
おっとりと首を傾げるアリサ様。
いいわよね、あなたは。もはや、お兄様との仲は公認なんだから。お父様がお兄様とアリサ様の仲が良いのを知って、逃してなるものかと宰相に内々に話を持っていったら、それはそれは驚いていたそう。あら、私はてっきり噂のでかいくまちゃんのぬいぐるみって、お兄様をイメージしてるのかと思っていたわ。アリサ様に大きい目や体格に偏見を持たせないようにするためだと思ったりもしたけど、勘違いだったのね。
「ミリアリア様は他人の恋のキューピットとしては素晴らしいのに」
カリナ様が本当に不思議そうにしている。
そう、私のお陰で恋が上手く行った人は二人いる。
一人は言わずもがなアリサ様。で、もう一人は私の護衛騎士のリック・ブレット。
もしかしてライザに気があるのかしらと思って、ライザの好きな花や菓子などを教えていたら、いつの間にか二人で出かける仲になっていた。
最初は結婚する気のなかったライザだったけど、リックの押しに負けてとうとう来春結婚することになったの。
私の周りばかり春が来ていて、私には一切そんな気配がない……
ずるい。
「もう、はっきりとエドワルド様にお慕いしておりますと告げるのが一番なのではないかしら?」
「いえ、だって、男性の方からそういう事は伝えていただきたいというか、なんというか……」
「いいのですか? 確か、公爵夫妻の計らいでエドワルド様が女性とお茶をしたって噂ですわよ」
「あ、それなら私も聞いたことがあります。ミリアリア様は、このこと……」
「知っています! えぇ、もちろん知っていますとも。私がエドワルド様に関することで知らないことがあると思って? よりにもよって、なぜ公爵夫妻はリンダ様という方をお選びになったのかしら。彼女『エドワルド様って、本当に醜いのよ。あの顔でよく私とお茶をできると思ったわよね。私の気を引こうと必死過ぎて、気持ち悪かったわ。だから、何を聞かれても首をふるだけにしておいたの。そしたらね、落ち込んでしまったのか何も話さなくなったのよ。あはは。お父様とお母様にどうしてもとお願いされたから、お茶をしてあげたけど本当ならもう二度と行きたくないわ。でも、公爵家に逆らえないでしょ。見初められてしまったばかりに、ほんと私って可哀相』なんて言っていたらしいわ」
「まぁ! 確かに、リンダ様はエドワルド様に対して失礼な事を言っていると、他のご令嬢に聞いたことがありましたが、そんなひどい事をおっしゃっていたの?」
「らしいわ」
「なんですか、それ! 確かに、エドワルド様の外見はすごく良いというわけではありませんが、公平で優しくて、公爵家の人間だからって偉ぶらない素晴らしい方なのに」
うーん、カリナ様もだいぶ変わられましたね。私がエドワルド様の良いところを常にお話ししていたら、すっかりエドワルド様の印象が変わったみたい。
「それ、公爵夫妻はご存知なのですか?」
「リンダ様の発言を聞いた方達が、これは流石にまずいだろうと思ってか、大人やその他の人には言いふらしていないみたいで、エドワルド様の悪口を言っていたことを広めていないみたい」
「ミリアリア様は、その噂をどのようにしてお聞きしたのですか?」
「おほほ。企業秘密ですわ。そんなことより、本当にリンダ様が許せませんわ。私なら、喜び勇んでエドワルド様とお茶をするのに! なーにが『気を引こうと必死で』『見初められてしまったばかりに』よ。エドワルド様がそんな事するはずないじゃない。気を引こうとしたんじゃなくて、気を使ったのよ。見初められたんじゃなく、隣の領地で比較的顔を合わせやすいからよ。そんなに嫌なら私と変わって欲しいわ」
「なるほど。だから最近リンダ様は『公爵家にも認められているすごい私』と勘違いなされているのですね」
「なあに、それ」
「あら、それは知らないのですか? 学園でそのように言って回っているらしく、大分浮いた存在らしいですよ」
あら、そうなの。お兄様の手紙にはそんなこと書かれていなかったような……
「私の従兄弟も今年から学園に通っているのですが、従兄弟がリンダ様と同じクラスなのです。アガルト様達とは、クラスが違うのでそこまで噂になっていないのではないでしょうか」
あれ、私、疑問を口に出していたかしら。
「ふふふ。ミリアリア様は表情ですぐ分かります」
もう、こういうところがアリサ様の油断ならないところ。昔は大人しいだけだと思っていたけど、今ではすっかり抜け目ない性格に。カリナ様はただのイエスマンだと思っていたのに、今は素直で可愛い私限定のイエスマンに。
カリナ様に対しては、私が間違っていたりひどい事をした時にはきちんと言ってくださいねと言ったら、『ミリアリア様のすることに間違いはありません。私は一生、ミリアリア様についていきます』と、目をキラキラさせながら言われてしまいちょっと心配になる成長をしている。
二人とますます仲良くなれて嬉しいんだけど、嬉しいんだけど、なんか……ね。
結局、今回の作戦会議も決定的な打開策は見つからなかった。




