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第三話

 就業時間前の中庭には、人の気配がなかった。低い位置から差し込む朝日が、ベンチや植え込みをやわらかく照らしている。風もほとんどなく、空気はひんやりとしていながらも、どこかぽかぽかとした温もりを含んでいた。

 中庭のベンチに腰を下ろすと、望はレジ袋の口をそっと開いた。

 アルミホイルを剥がしたら、ごま油の匂いがふわりと立ち上る。 朝の澄んだ空気に溶け込みながら、鼻先をくすぐるその匂いは、否応なく食欲を呼び起こす。

 思わず、喉が小さく鳴った。こんな感覚は久しぶりだった。

 キンパを一口かじる。米の温度はすでに冷めているのに、味だけはきちんと残っていた。塩気と油分が、空っぽだった胃にゆっくりと落ちていく。

 ちゃんとしたものを食べるのは、いつぶりだろう。そんなことを考えた瞬間、ポケットの中で社用携帯が震えた。

 就業時間前だ。見ないという選択肢も、理屈の上ではあるのかもしれない。けれど、望は管理職で、営業の人間だ。顧客からの連絡が、時間を選んでくれるとは限らない。

 もしも機器の不具合や緊急対応を要するトラブルなら、今この瞬間から動かなければならない。

 望は静かに息を整え、ポケットから社用携帯を取り出し、画面に視線を落とす。

 一通のメールを受信していた。そのメールの送り主は営業部長だった。

 短い通知に、望は小さく息を吐いた。嫌な予感がした。

そして、そんな嫌な予感はたいてい当たるものだ。

【至急】朝九時から面談を実施します。

 それだけで、穏やかな内容ではないことは十分に伝わってきた。

 望は、しばらく画面を見つめたまま動かなかった。頭の中で昨夜から今朝までをなぞってみるが、思い当たることは何ひとつ浮かばない。

 望は、短く了承の返信を送った。それで会議の招集は確定だ。

 手の中の社用携帯をポケットに戻し、もう一度だけキンパに視線を落とす。

 さっきまで確かに美味しいと感じていたはずなのに、不思議と、もう箸を伸ばす気になれなかった。

 食欲が、すっと引いていく。

(……残りは、昼にしよう)

 もし、そのときにまだ食べたいと思えたら。

 もし、気持ちが戻ってきていたら。

 望はそう考え、アルミホイルを元に戻して、キンパをそっとレジ袋に収めた。

 ベンチから立ち上がる。朝の光は相変わらず穏やかで、何もなかったかのように中庭を照らしている。

 それが、かえって望の胸を重くした。

 足取りは軽くならない。背中の奥に、湿った布でも貼りついたような感覚が残っている。深呼吸をしても、空気は肺の手前で止まってしまう。

 さっきまで確かに感じていた温もりは、もう、どこか遠くへ行ってしまった。

 理由はわかっている。けれど、言葉にするほどのことでもない。こういう感覚には、もう慣れてしまっていた。

 望は中庭を振り返らず、そのまま建物の中へ足を向けた。光の中に残してきたものを、わざわざ拾い上げる気にはなれなかった。


 会議室は、空調が効きすぎて冷えていた。

 中庭のやわらかな光とは対照的に、ブラインド越しの蛍光灯が均一な白さで机と床を照らしている。

 すでに、二人の男が席についていた。

 営業部長と、人事部長だ。並んで座る二人の正面に、望は腰を下ろした。

 こちらは一人。向こうは二人。

 望は背筋を伸ばす。管理職として、こうした場に臨む姿勢は、もう身体に染みついていた。表情も、呼吸も、意識的に整える。

 営業部長は資料に視線を落としたままだった。まだ口を開かない。人事部長も同様に、腕を組んで静かに望を見ている。

 この二人とはこれまでにも何度か顔を合わせ、言葉を交わしてきた。どちらも、声を荒らげることのない、比較的温厚な人物だという認識がある。

 その彼らが、揃ってこんな表情をしている。必要以上に言葉を削ぎ落とし、感情を表に出さないまま、ただ沈黙に徹している。

(……これは、ただごとではなさそうだな)

 結論づけるまでに、時間はかからなかった。何を告げられるのかはまだわからない。けれど、ここに呼ばれた理由が、単なる確認や雑談ではないことだけは、はっきりと伝わってきていた。

「春田くん。朝からいきなり呼び出してしまって申し訳ないね」

 沈黙を破ったのは、営業部長だった。穏やかな声色はいつもと変わらなかったが、その調子がかえって距離を感じさせた。

「急ぎの要件だったものだから……どうしても、この時間になってしまった。そこは、許してくれ」

 言いながら、部長は望の顔をまっすぐには見なかった。

 視線は資料へ落ち、それから人事部長のほうへと流れる。

「……いえ、構いません」

 望は短く答える。

 その反応に営業部長は小さく頷き、言葉を続けた。

「単刀直入に言うよ。昨日、ラウンジでの出来事について……社内外からいくつか意見が入ってきてるんだ」

(昨日?)

 望は一瞬、言葉の意味を取り違えたかと思った。咄嗟に頭の中で、前日の出来事を思い返す。

 会議があった。会議のために入念に資料の確認をした。四半期決算の報告を終えて、ラウンジでコーヒーを淹れた。

 そのどれもが、この場に呼び出されるほどの出来事とは結びつかない。

(……何の話だ?)

 ぽかんとした感覚のまま、視線を営業部長から人事部長へ移す。

 そこで、人事部長が補足するように口を開いた。

「昨日、新人の社員を窘めたでしょう。ラウンジで……清掃員をかばった、と聞いています」

 その言葉を聞いた瞬間、ようやく一本の線が繋がった。

「ああ、そのことですか」

 脳裏に浮かぶのは、ラウンジの隅で立ち尽くしていた、背の高い青年ジュンホの姿。差別的な言葉を、あまりに無遠慮に口にしていた若手社員たち。それを制した、あの一言。

「すみません。それがなにか?」

 望は、すぐに次の疑問に突き当たる。

(それが……どうして、営業部長と人事部長に呼び出される事態になる?)

 職場で人を出自や職業で貶める言葉が飛び交っていた。聞こえる場所で、当事者がそこにいる状況で。それを見過ごす理由が、どこにあるだろう。

 上司として、年長者として。それ以前に、一人の人間として、望は、それを許せなかっただけだ。

 だから注意した。声を荒らげることもなく、威圧することもなく、 「それはふさわしくない」と伝えただけだ。

 それ以上でも、それ以下でもない。

(……それが、どうして)

 営業部長と人事部長を前に、こうして説明を求められる事態になるのか。

 望は、胸の奥に小さな違和感を覚えながらも、視線を逸らさず、続く言葉を待った。

 人事部長が、わずかに居住まいを正す。

 申し訳なさそうに眉を寄せ、そのままゆっくりと口を開いた。

「その……春田くんが注意した社員なんだがね……うちの、社外執行役員の息子さんでね」

 その一言で、望はすべてを察した。腑に落ちなかった点が、音を立てて繋がっていく。

 この面談の早さ。営業部長の歯切れの悪さ。人事部長の言葉選び。

 ああ、そういうことか。望は表情を変えなかった。驚きも、憤りも、顔には出さない。胸の奥で、何かが静かに沈んでいくのを感じていた。

(だから、ここまでの話になるんだ)

 注意した内容が問題なのではない。言い方でも、態度でもない。相手が悪かったのだ。

 望はゆっくりと息を吐いた。その呼吸だけが、今の自分を現実に繋ぎ止めている。

 営業部長が、居心地悪そうに視線を伏せる。

「……もちろん、君の対応が間違っていたと言いたいわけじゃない」

 その前置きが、これから続く言葉を、何より雄弁に物語っていた。

 望は、何も言わなかった。言うべき言葉が見当たらないからだ。

 ここは、正しさが評価される場所ではないとわかっている。

「……本来なら、春田くんにも共有しておくべきだった」

 先に口を開いたのは、営業部長だった。どこか悔いるような口調で、眉間に皺を寄せる。

「相手は総務部の所属でね。営業の現場に出ることもないし、君とは直接の関わりもない。正直……問題になるとは思っていなかったんだ」

 言葉を区切りながら、続ける。

「まさか、こんな形で話が大きくなるとは……」

 悔やむようなその声音は、本心なのだろう。けれど、それが今の望を救うわけでもない。

 会議室に、短い沈黙が落ちた。望はその沈黙に耐えきれず自ら口を開く。

「……降格ですか」

 自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。いても立ってもいられず、先に最悪を確認しただけ。

 その瞬間、人事部長が小さく咳払いをした。

 わずかな仕草。けれど、それだけで空気が変わる。

「いえ。現時点で、処分を決める話ではありません」

 人事部長は、そう前置きしてから、言葉を選ぶように続けた。

「ただ……今後の影響を考えると、いくつか選択肢を検討する必要がある、という段階です」

 選択肢。その言葉が、妙に重く響く。

 望は何も言わなかった。

 営業部長が、視線を伏せたまま言う。

「君を守りたい気持ちはある……しかし立場上、会社としての判断も無視はできない」

 望は、背筋を伸ばしたまま、静かに聞いていた。

 これは、まだ結論ではない。

 だが、もう元の場所には戻れないだろうことは確信していた。

 人事部長は一度周囲を確かめるように視線を巡らせてから声を落とした。

「……これは、あくまでオフレコの話ですが」

 その前置きだけで、続く内容が穏やかでないことは明らかだった。

「社外執行役員から、要望が出ています。春田くんを総務部へ異動させ、その代わりに──……」

 一瞬、言葉を選ぶ間があった。

「ご子息を、営業部へ配置したいと」

 望は、瞬きひとつしなかった。人事部長は続ける。

「執行役員の言い分としては……元看護士がマネージャーとしてここまで売り上げを築けたのなら、有名私大を出た自分の息子にもそのくらいのことはできるはずだ、と」

 言葉が、空気の中で冷たく固まる。

 営業部長が、堪えきれないように顔を歪めた。

「春田くんを、うちの部から手放すなんて。正直、会社としても大きな損失だ」

 悔しさを押し殺した声だった。

 本心なのだろう。だが、それもまた、今となっては意味を持たない。

 望は二人の言葉を聞きながら、不思議なほど何も感じていなかった。

(……どうでもいい、正直)

 胸の奥でそんな言葉が静かに浮かぶ。

 離婚して、綾乃が自分のもとを離れてからというもの、誰かのために必死に成果を積み上げる理由はどこにもなかった。

 守るべき家庭も、胸を張って帰る場所も、すでに失っている。

 ならば、これ以上しがみつく意味があるのだろうか。

 望はゆっくりと息を吐いた。

「……そうですか」

 営業部長が、思わず顔を上げた。

「春田くん……?」

 望は視線を逸らさない。

「会社の判断なら従います」

 それは、投げやりな言葉ではなかった。戦う気力が残っていなかっただけだ。

 会議室の空気がさらに重く沈む。

 人事部長は何か言いかけて口を閉じた。営業部長も、それ以上は言葉を継がなかった。

 望は、背筋を伸ばしたまま静かに座っていた。

 ここで何を言っても、戻るものは何ひとつないのだ。


 オフィスに戻ると、望は何事もなかったかのように席に着いた。

 未読のメールを処理し、午前中のタスクを順に片づけていく。

 先ほどの面談の内容は、口外厳禁。まだ正式に決まった話ではない以上、軽々しく外に漏らすわけにはいかない。

 それに、誰かに話したところでどうなるものでもない。

 指先だけを動かしながら、望は画面を追う。数字も、文章も、頭の中にはきちんと入ってくる。仕事をする分には、何の支障もなかった。

 昼が近づいた頃、社内チャットの通知が弾いた。

【昼、一緒に食べに行かないか?】

 差出人は佐伯だった。

 画面を見つめたまま、望は少し考える。外に出る気分ではない。正直なところ、食欲もまだ戻っていなかった。

(そういえば……ジュンホくんからもらったキンパがまだ残ってたな)

 朝、中庭でほとんど手をつけられなかったあれ。捨てる気にはなれない。誰かが用意してくれたものを、無駄にしたくなかった。

 近くの公園で、静かに食べればいい。人と話す元気はなくても、それくらいならできそうだった。

 望は短く返事を打つ。

【今日は食べるものがあるから、外食はしない】

 送信。それ以上、理由を添えることはしなかった。

 これで引いてくれるだろうと思っていた。佐伯は、そういう距離感をわきまえている男だ。

 そう思っていたのに、間を置かずに再び通知が鳴る。

【じゃあ、俺もコンビニで何か買う。一緒に外で食べよう。天気もいいし、たまにはそういうのも悪くないだろ】

 画面を見つめたまま、望は小さく息を吐いた。

(……珍しいな)

 食事の誘いに、ここまで食い下がってくることは滅多にない。ましてや、望が断ったあとだ。

 何が何でも一緒に昼を過ごしたいらしい。その必死さが、言葉の端々から滲んでいる。

 話したいことがあるのか。それとも、聞き出したいことがあるか。

 佐伯は社内の空気に敏い。人の変化にも、噂にも、案外早く気づく。

 あの面談のことは誰も口外していないはず。望はあれ以降、業務上最低限の会話しか交わしていない。営業部長や人事部長が漏らすとは思えない。

 望は、キーボードから一度指を離し、椅子の背にもたれた。

 答えは、決まっている。誰かと話したい気持ちはない。けれど、完全に避けきれるほどの元気もない。

 望は短く返事を打った。

【じゃあ、少しだけ】

 送信。

 それ以上は書かない。期待も、条件も、付け足さない。

 チャット画面を閉じると、望はデスクの引き出しからレジ袋をそっと取り出した。

 アルミホイル越しに、かすかに残るごま油の匂い。

(せっかくいただいたものを、無駄にはしたくない)

 それが、今の自分にできるせめてもの選択だった。


 昼休みの公園は、思ったよりも人が少なかった。

 平日のこの時間帯は、近くのオフィスで働く人間がまばらに腰を下ろしているだけだ。

 ベンチに並んで座り、佐伯はコンビニで買ってきた弁当を、望は朝の残りのキンパを、それぞれ広げた。

「なにそれ……おいしそうだな」

 佐伯が箸を止めて覗き込む。

「キンパ。もらったんだ」

「へえ」

 興味深そうに頷いてから、佐伯は自分の弁当を一口運ぶ。

「どう?」

「おいしいよ」

 それだけ答えると、望もキンパを口に入れた。ごま油の香りが、ゆっくりと広がる。

 しばらく、二人とも何も話さなかった。遠くで鳴く鳥の声だけが間を埋めている。

 佐伯は何度か言葉を探すように視線を泳がせ、それからようやく口を開いた。

「異動するって話、マジ?」

 箸を持つ手が、一瞬だけ止まる。

(……やっぱりか)

 望はゆっくりと咀嚼を終え、飲み込んでから空を見上げた。青空はのどかだ。

「どこで聞いた」

「噂。まだ確定じゃないってのも、聞いてる」

 佐伯は、慎重に言葉を選んでいる。望は視線を戻し、キンパの残りを見下ろした。

「……正式には、何も決まってない」

 それだけ答える。

 佐伯は、安堵したように息を吐き、けれどすぐに首を振った。

「……っていうことは、マジってこと?」

 佐伯は諦めきれないように言った。冗談めかす余地はなさそうだ。

 望は、キンパを包んでいたアルミホイルを指先で軽く押さえながら答える。

「知らない。正式な人事異動の内示はまだ出ていないから」

 事実だけを並べる。感情をむやみに混ぜたりはしない。

 佐伯は一瞬黙り込み、それから小さく舌打ちした。

「でもさ、その言い方……ほぼ確実ってことじゃん」

 望は否定しなかった。

「しかも総務部だっけ?きついって。お前が営業からいなくなったら、売り上げ下がるじゃん」

 抑えた声だが、焦りが滲んでいるようにも見えた。

 同僚として。あるいは、もっと個人的な感情として。どういう気持ちで佐伯が焦っているのかはわかるわけがない。

 望は、少しだけ間を置いてから口を開いた。

「俺ひとりが営業から外れたくらいで傾くような会社じゃないだろ」

 あっさりとした口調だった。

 佐伯は、思わず眉を寄せる。

「そういう問題じゃないだろ」

「いや、そういう問題だ」

 望は静かに言い切った。

「会社は、人が入れ替わっても回るようにできてる。俺がいなくなって困るなら、それは組織の問題だ」

 佐伯は返す言葉を探すように口を開きかけたが、しばらくして閉じた。

 望は残りのキンパを見つめながら続ける。

「……それに」

 一瞬、言葉を選ぶ。

「俺がどこにいようが、売り上げは数字でしかない。個人の場所なんて、簡単に代替される」

 佐伯ははっきりと不満そうな顔をした。

「お前、ほんと……」

 言葉を濁し、最後まで言わない。

「心配してくれてるのは、わかるよ」

 その声は少しだけ柔らいでいた。

「でも、今はまだ何も決まってない。だから、これ以上考えても仕方ないと思ってる。それに、会社の方針に反発できる立場でもない」

 それ以上話すつもりはない、という線を引く言い方だった。

 佐伯はしばらく黙っていたが、やがて弁当の箸を置いた。

「お前の、そういう性格」

 佐伯は少し間を置いてから、言った。

「俺は好きだけどさ。でも、なんか……損してる気もするんだよな」

 責める響きではなかった。どちらかといえば、歯がゆさに近い。

「まあ……」

 短く息を吐く。

「俺の人生なんて、そんなものだから」

 冗談めかした調子でもなければ、自嘲とも言い切れない。

 佐伯が、じっと望を見る。

 望は視線を外し、公園の芝生に落ちる影を眺めながら続けた。

「昔はさ、もう少し先のことを考えてた気もするけど……

今は、何かはっきりした目標があるわけでもないし」

 言葉を探すように一拍置く。

「流れに逆らわずに、今日を終えられたらそれでいい、みたいな」

 それは投げやりではない。これまでの人生で身につけた、自分の存在に意味を見出そうとしない生き方だった。

 佐伯は眉を寄せる。

「それでいいのかよ」

「いいかどうかは……わからないけど」

 望は正直に答えた。

「でも、必死にしがみつく理由も、今の俺にはあんまりない。この気持ち、わかるだろ?」

 離婚して、娘と離れて。守るべき形が変わったあと、自分がどこに立っているのかを、望はまだ測りきれていなかった。

 佐伯は何か言いかけて、結局、言葉を飲み込む。

「諦めてるっていうより……期待しなくなった、だけかもしれない」

 なぜなら、そのほうがずっと楽だから。

 昼休みの終わりを告げる時間が、静かに近づいていた。公園の空気は穏やかで、何かを急かすこともない。

 けれど、望の胸の奥には、言葉にならない重さが、確かに残っていた。



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