電化製品
風呂に浸かって息を吐き出すと私は入浴剤に変わって行った。
四肢の全てから指の一本一本に至るまで、全身の穴という穴から溜め込んで濾された悪意と羞恥が湯船に溶けて蒸気となった。
人を押し除けて電車の席に座り足を休めた。
妊婦に席を譲り自らの善意に酔いしれた。
席に着き発光する板になけなしの覚書を綴った。
冷えた布団にくるまって取り返しにつかないことを数えた。
煙草に火をつけて浅く煙を吐き出すと私はゴミ袋に変わって行った。
深く、アバラが広がるまで煙を吸い込むと喉のつかえと飲み込んだ溜め息が重い雲と混ざって雨となった。
湿って重くなった布団を捲って息を吸った。
朝食を食べると唾液に混ざった苦味に顔をしかめた。
寒々しい部屋を見渡し憂鬱に浸った。
時計に目を凝らして思考を弛ませると私は物干し竿になって行った。
電光版の遅延情報と手元の簡略化された悲劇を見比べると痺れるような安堵が珈琲に染み込んで氷となった。
そうなっていったし、そうなっていくべきだと思った。
実際にそうなったし、事実そうなっていった。
そうなってしまった。
今日もそうなったし明日もそうなるだろう。
でも、明後日はどうだろうか。
その次は、その次は、その次は。
そんな期待感が視界を曇らせていった。
そんな期待は溶けて、沸騰して、消えて行った。
冷えたのだ。気過熱で、華氏32度で、絶対零度で。
そして氷だけが残った。
手のひらの中でその氷はゆっくりと溶けていく。
明日には、明後日には、今日にも。
次の氷ができる頃までには、冷蔵庫でも用意しておこうと思う。
自分でも何が書きたかったのかよくわかりません




