9話 ディアボロ
隠れの村襲撃事件。
主犯チェイサーの奇襲により事件当時、隠れの村に滞在していた裏方約80人が死亡。
及び裏方の最大術所持者のレッドフットと新人キラーのルーク・ボードウィンが殉職した。
チェイサーは新人キラーのアダム・ナイトとイギリス支部のキラーであるルシウス・ボードウィンの攻撃で瀕死まで持ち込むも、謎の泥に吸い込まれ逃亡。討伐には失敗する。
この事件はキラーにとって甚大な被害を及ぼした。
そして事件から1ヶ月後──
「ルシウスさん。おはようございます」
「おお、おはようアダム君」
アダム・ナイトは現在、ルシウス・ボードウィンの隠れ家のキラーとして職務をこなしていた。
「アダム君って案外根性あるんだね。目の前で仲間死んじゃったわけでしょ。俺だったら無理だな」
「全然そういうんじゃないですよ。ルシウスさん。ただ、俺はルークの死が無駄にならないように強くなってあいつ殺さなきゃっていつも思うんすよ。そう思うと自然と頑張れるんすよね」
「君は立派だね!」
「それにルシウスさんの方が絶対責任感じてるでしょ。あんま無理しないで下さいね」
「ああ、安心してくれ。息子といえどキラーとしては立派な仲間だ。仲間が死ぬのにはもう慣れてる。まあ今回は、」
「少しは悲しいよ…」
「ルシウスさん…」
ルシウスは息子のルークを亡くしてもほとんど悲しみを公にしなかったという。
ルシウスが人生で泣いたのは1回だけだ。
そしてこの日、2人はゲイリーが主催する会議に参加することになっていた。
「失礼するよ!」
ルシウスが会議室の戸を開けた。
「ルシウス君! そろそろ礼儀というものを覚えたらどうだ! アダム君もう来てたぞ!」
「んなこと言わないでくださいよ会長! トイレが長引いたんですって!」
無論嘘である。
「てかセバスいないの?」
「今日は留守だよ。ほら一応裏方だから」
「あぁ…なるほどね」
何のことなん?
「でだ、ルシウス君とアダム君。傷心している時にすまないね。今日の会議で話したい事はずばり…隠れの村襲撃事件の主犯であるチェイサーは何者なのか? ということだ。我々もキラー名簿を調べてはみているがまだ情報は得られていない」
「トレイターなのに名簿に名前がないとかないよな?」
「流石にないはずだが何か知っていることでもあるのかルシウス君?」
「いやアダム君が言ってたんだがチェイサーとか言うやつが自分の事を…」
「どうしたルシウス君?」
「あ、忘れた!」
「はぁ! じゃあアダム君に喋らせりゃいいだろが!」
ルシウスの特徴。強いがバカが確定した。
「会議ラフなもんにすんなや!」
ゲイリーは意外と短気である。
「じゃあルシウスさんが忘れたらしいので僕から説明します。隠れの村襲撃事件の主犯チェイサーは自分の事をトレイターの10の番、称号チェイサーと名乗りました」
「トレイターの10の番? つまり更に上の存在がいるということか?」
「可能性はあります。それに何より…」
「奴らが組織化している!」
「今までのトレイターは大体単体または少数のグループがほとんどだった。それが10人以上もいるとはこれは驚きだよ」
「ゲイリーさん。そういう事できる奴がいるんすよ。俺聞いたんすから」
「まさか…ディアボロか?」
「その通り。ディアボロならキラーに入ってない奴ら勧誘して組織作る事もまあありえない話じゃない」
「あの、ルシウスさん?」
「どうした? アダム君?」
「その…ディアボロって誰ですか?」
「あれ? アダム君には言ってなかったっけ?」
「はい言われてないです」
「じゃあ一旦ディアボロについて説明するか」
ディアボロ。
400年前に初代ダークナイトの死亡と共に現れた謎の男にして世界最初のトレイター。
複数の殺人術を所持しており昔から危険人物としてマークされている存在。彼は不老不死のようで老いず弱らず死なない。その原理は今も不明のままだ。
「400年前ってそれからずっと老いなかったって事ですか?」
「そういう事。現状監視するのが精一杯だったんだがここ最近監視を掻い潜って行方をくらました。最後に目撃されたのが10年ぐらい前何だよね」
「その10年で組織を拡大していたとしたらどれだけのトレイターが集まっているのか?」
「しかも会長。今回の襲撃事件主犯のチェイサーでおそらく10番目の強さだ。あれより強い輩がディアボロ含めて最低でも10人はいることになる」
「そんな輩が一丸となってキラーを攻めてきたら…」
「イギリス支部のみだと確実に詰みだ!」
「会長。こんな反乱が起きたらただじゃ済まない。キラー側に多数の死者が出てお先真っ暗になる!」
「ルシウス君。これから君達のやるべき事はイギリス支部以外の支部から応援をもらうことだ。そして一番応援として欲しいのはやはり…」
「日本支部の封印寺涼介とウクライナ支部のドン・アネモネの2人…ですね?」
「あぁ。その通りだ。今キラーで最も強い男である君とナンバー2とナンバー3の2人で最低条件の戦いになるはずだ」
「ディアボロに対抗できるキラーが現状多くないのは決定的な事実」
「我々はこれからキラー全体の能力の向上をすることが最優先だ」
「できればアダム君、日本支部のアカリ・ケンザキ君。ウクライナ支部の御三家ライトニング家の長男ランド・ライトニング君を最優先で強化したい」
「これからするべき事はこの2つかな?」
「ええ、これが全て終わってようやく戦いのスタートラインに立てるはずです」
「アダム・ナイト君。現状君はディアボロには到底敵わない。ただし、君のそのポテンシャルでこれから強化されていけばおそらくルシウス君を超えるキラーになると私は見ている。これからキツイ時間が続くが付いてきてくれるかい?」
「会長。俺はまだまだ知らない事が多いですし、未熟者です。でも俺は絶対に…」
「ルークの死が無駄じゃなかったって思える自分でありたい! 俺はいつかディアボロと戦う運命が必ずくる。その時は今より強くなって今度こそライトナイトになって見せます!」
「本当に君はポジティブだね」
こうして会議は終わった。
「アダム君!」
「はい、どうしました? ルシウスさん?」
「ちょっと先に帰ってくれないかい? 俺はまだ用事があるからさ」
「分かりました! 気をつけて!」
「アダム君も気をつけてね!」
アダムはルシウスよりも先にキラー協会本部を後にした。
一方 会議室では…
「ルシウス君。今日は悪かったね。まだ心の傷が癒えてないだろうに」
「大丈夫ですよ会長。心配なさらずに」
(こういう時はまともなんだよな〜)
「会長。まさかもうディアボロが現れるなんて…」
「ルシウス君はまだ覚えているのかい? 10年前のあの日の事を」
「ええ、忘れるわけがないあの…」
「人生で始めて泣いた日を」
「もしルシウス君がいいのであれば話してくれないかい? あの日の事を…」
物語は10年前に遡る…




