8話 絶望の最中
キラー協会本部。
「嘘だろ! 何で応援がいないんだ!」
ルシウス・ボードウィンの悲痛な叫び声が会長室に響き渡る。
「まさか、他にも刺客がいるとは思っていなかった」
「会長。報告がございます」
「セバス! 何か進展が!」
「ルーク・ボードウィン及び裏方の最大術所持者であるレッドフットの死亡が確認されました」
「は? 嘘だよな!」
「紛れもない事実ですルシウスさん!」
「セバス…俺も隠れの村に向う」
「待て! ルシウス君! あちらへの道には刺客がいるんだぞ!」
「忘れましたかゲイリー会長。俺は…」
「最強のキラーですよ」
ルシウス・ボードウィン。アダム・ナイトの到着と同時に協会を出発。
「本当に大丈夫何ですか? 会長」
「ああ。彼ならきっと大丈夫だ。なぜなら彼は今…」
「負に満ちてる!」
ルシウス・ボードウィンの殺人術は負の魔法。自身の負の感情を力に変えて操る術。
彼は常に一定の負の感情を蓄えており常時パワーを維持している。
そして今、ルシウスは息子の死という最大の負の感情を力に変え更に最強に成り上がる。
ルシウス・ボードウィン。刺客と遭遇。
「おや、誰が来たかと思ったらまた雑魚ですか? あまり近づかない方が…」
「邪魔だ!」
刺客であるトレイターの19の番が僅か2秒で殺害される。
ルシウス・ボードウィンの向う先は隠れの村たった一つ。邪魔をするものは必ず殺す。
同時刻。隠れの村。
「あのさあ! そろそろ攻撃しろよみっともない! 殺すとか言ってなかったか!」
アダム・ナイトは大きな瓦礫の下に退避する。ただし、その行動には目的があった。
「お前、名前なんて言うの」
「そういや自己紹介してなかったな! 俺はトレイターの10の番。称号チェイサー。以後お見知りおきを」
「そうか。覚えてなくていいや。お前に言っとくよ! ルークは死んだけど大きな事をしてくれた。あいつのおかげで武器庫の武器は丸々無事だ」
「それに何の問題があるんだよ!」
「だって全部…作れんだよ!俺の術でよ!」
アダム・ナイトは右手と左手にガトリングを装備する。
「な! まさかお前!」
「一応言っとくけど、俺ダークナイトの子孫だから。あんまなめないほうが身のためだぞ!」
「ガトリング最大放射!」
アダムの血液によって生成された銃弾は全てチェイサーに向かって撃ち放たれた。
「まずい! 追尾弾! 大量発射!」
(追尾弾! 銃弾フルスルーで来やがった!)
「グハッ!」
アダムの身体に1つの追尾弾が炸裂する。
「やっぱお前も雑魚同然! ん? 何だ? あの煙は!」
「やっぱ男のロマンなら…」
「大砲に限るよな!」
アダム・ナイトの血液で一度に作ることのできる物体の数はおよそ5つ。
つまり、両手にガトリングを装備した状態でも大砲の生成が可能。アダムの大砲の弾はチェイサーに向かって発射。
それと同時に別方向からアダムが接近する。いわば現代版キツツキ戦法!
「まじかよ! 逃げ場がない!」
「ガトリングは弟のオマージュだ! 後で感謝だな!」
「お前、何でそんなにエイムが!」
「ゲームの名残とルークの特訓のおかげだ! 言っただろ。落ちこぼれじゃないって!」
「クソが! ふざけるな!」
ドッカン!
煙の臭いと共にアダム・ナイトが姿を現す。
しかし、チェイサーはまだ切り札を持っていた。
「危ねえなー!」
「生きてやがる。どんだけタフネスなんだよ!」
「お前に見せてやろう。これが俺の最終必殺! 殺人奥義。車の雨!」
殺人奥義。車の雨。
チェイサーの所持している追尾弾化したトラックを一気に放出し、豪雨のように相手に振り注がせる。防御の方法は現状存在しない完全殺戮兵器。
「嘘…だろ。殺人奥義を…使えるのか?」
「一応俺は20人中の10人目まで上り詰めた男だぜ! このぐらい使えんだよ餓鬼が! ここで大人しく死にやがれ!」
(どうする! ジェットパックだと間に合わない! ドリルで穴を空けるか? いや駄目だその前に死ぬ! 絶体絶命かよ!)
アダム・ナイトに死の危機感が襲いかかる。
しかし、キラー側にはまだあの男がいた。
「殺人奥義! 負の連鎖!」
「何! トラックが全て掴まれただと! お前! 何者だ!」
「ルシウスさん!」
「遅れてごめんよ。アダム君! 今のうちに逃げるんだ!」
「でもルシウスさんは!」
「安心して任せときな! 一応俺は…」
「キラーで最強の男だからさ!」
ルシウス・ボードウィン。
現状存在するキラー2000人の中で最強まで上り詰めた男。そして彼の殺人奥義である負の連鎖はルシウスの負の感情を鎖状にすることで相手の動きを封じると共に、鎖に発生する無制限の棘により相手を徐々に殺していく奥義。そして棘のダメージは重傷を負っているほど大きくなる。
「お前にピッタリの殺人奥義だろ? トレイターさんよ!」
「ふざけるなよ! ゲロカスが! ボフッ!」
「お前もうすぐ死ぬと思うから聞くけどルークを殺したの…お前?」
「ルークとやらは知らねえけどルシウス家の落ちこぼれなら殺したぜ!」
「そうか。じゃあ尚更ここで死んでもらわないといけないな。次、お前は何の目的で隠れの村を襲撃した?」
「単なる仕事だよ! し・ご・と! 隠れの村を襲撃しろって上に言われたの! 分かった?」
「分かったよ。逆ギレすんなって! キモいぞ! 元々キモいけど」
(てかこいつかなりの重傷のはずだよな? 何で負の連鎖を受けてもこんな話せてんだ?)
「はい次! お前が言ってる上って誰のことだ?」
「誰って、知らないのかよw あんた新人?」
「黙れ! 口に気をつけないと殺すぞ! 黙っても殺すけど」
「俺が言ってる上はトレイターの大玉で俺らトレイター連合のリーダー。300年以上生きる男。名前をディアボロと言う」
「何? お前今ディアボロと言ったか!」
「あぁ! 言ったぜ! どうしたー? お前、何か嫌な思い出でもあんのかー?」
「はぁ。ディアボロも遂にこんな無能な部下をこっちに仕向けてくるようになったか。世も末だね〜!」
「お前! ディアボロ様に何という口の利き方! 無礼だぞ!」
「俺が言っても無礼じゃねえだろ! 赤の他人だぞ! てかもう聞くことねえし殺すぞー」
「ワープゲート。ON!」
謎の声と共にチェイサーの身体が泥のような物に吸い込まれていった。
(殺人奥義に干渉された!)
「待て!」
「じゃあな最強! 次は…地獄ででも会おう!」
チェイサーは消えた。何の痕跡も残さずただ潰れた瓦礫と崩壊した隠れの村を残して…
こうして隠れの村襲撃事件は犯人の確保ができぬまま終結した。悲しみを残して…
隠れの村襲撃事件編 -完-
物語は次のフェーズへ。




