3話 2次審査1
2次審査が始まった。しかも実技。
なんとなくやるのは分かってたけどこんな本格的だとは思っていなかった。
一方会議室では各箇所に設置されたカメラの映像を観ている会長とセバスの姿があった。
ドンドンドン!
「会長! どういうことですか! ただでさえ人材不足で困っているのに9000人も減らすんですか?」
ルシウスさんがとんでもない勢いで会議室に入ってきた。
「ルシウスくん。人材不足でも数を増やせばいいというわけではない。10000人を全員合格させたとしてトレイターが増える問題は解決しない! 私が求めているのは量ではなく質! つまり実技で闘う覚悟を持たずにこの試験に来たものは、ここで全員落とす!」
「でもそんな都合よくいい人材が1000人もいるとは到底思えないんだけど?」
「それが集まってしまったんですよ! 今年は過去一の大豊作です!」
セバスが自信満々に言う
「じゃあ例えば誰が有能なんですか?」
ルシウスさんがありえないと思いつつも聞いた。
「そうですね。私が特に期待している人材は8人います」
「まず1人目、ランド・ライトニング。殺人術は電気。体から電気を放出する術です」
カメラには手から電気を飛ばすライトニングの姿がいた。
「かかってこい! 俺の電気に焼かれたいやつは!」
俺の殺人術は13歳で覚醒した。
俺のじいちゃんがキラーをしていてそれが覚醒したらしい。
親父はキラーにはならなかったけどじいちゃんが色々教えてくれた。
俺の術は電気に体が慣れていて操れるのが大前提!
俺は5年間休む暇もない特訓でここまでの電気を操る力を手に入れた! だから…
「俺はぜってい負けねえぞ! 殺人奥義! 電気狙撃手!」
ブブー!
会場中にブサーが鳴り響く。
「ランド・ライトニング! 10人を殺害! 繰り返す! ランド・ライトニング! 10人を殺害!」
アダムにとってこの実技の厳しさを見せつける最初の出来事だった。
(10人! この短時間で10人を殺めたのか! そんな奴がこの実技試験にゴロゴロいるとかマジで言ってんの!)
「これが彼の実力です。一族の行動として恥じぬ能力を身に秘めている。期待値は大きいです。2人目はアカリ・ケンザキ。殺人術は亡霊。彼は日本からの留学生で私の教室の生徒です。そして私の生徒で最強の男」
実技会場にて…
「あぁ眠いな。そしてだるい。だろシーカー」
「ケンザキ。ねてて大丈夫か? 一応実技試験だろ」
「大丈夫だよ。たとえ攻めてきても…」
「とった!」
「亡霊がやってくれるからさ」
「嘘…だろ」
(何だこいつ! 知らぬ間に胴を切りやがった!)
「お前は安らかに逝けよ。俺の亡霊の糧として」
「お前、凄えな」
「まぁ雑魚には負けないよ! 僕は最強の剣士だから!」
「そして3人目がさっきも画面に映ったシーカー・ミシャード。殺人術は朧隠。身を朧のように消す術です。彼も私の教室の生徒です」
「なあなあ! ケンザキにばっかり目をつけちゃ駄目だよ! だってさ…」
「君もう死んだよ」
小刀で必ず仕留める。
俺はケンザキと違って攻撃能力はない。だから特殊な不意打ち戦法で生き抜く!
「シーカーナイス! これで100人は片付いたかな?」
「ああ、100は殺っただろうな。」
「気ぃ引き締めて行こうぜ!」
「ああ! だってここからが」
「宴の時間だ!」
会議室では…
「2人でバディを組む。中々考えた動きですね。さあそろそろ4人目も画面に映るはずです。4人目ロック・ガードナー。殺人術は盾。名前の通り守り特化の術です。ただ彼はきっと応用を使ってくるはず! 面白くなってきましたね!」
「くそ! こいつ守りだけだと思ってたのに何で…」
「何で攻撃になってんだ!」
「おいおい。さっきまでの威勢はどうした? もう降参か? 俺はいつでもお前を殺れるぞ」
俺は守り特化の術しか持ってなかった。
だけどセバス教官の教えで学んだんだ!
「ガードを壊して攻撃として応用する! 殺人奥義! 飛び盾!」
「嘘だろ! こんな守り特化の奴に! 俺が負けるなんて…」
「1人殺ったか」
「げ! ケンザキかよ」
「何でちょっと嫌そうなんだよ!」
「まあまあ落ち着けよ! 俺をバディに入れてくれよ!」
「いいけど」
「え、マジで?」
「何でちょっと意外そうな顔してんだ!」
「だっていつも問いただしてくるじゃん! 組む目的やら意義やら…」
「だってガードナーがいれば、攻撃特化と守り特化、あと不意打ち男の最強の組み合わせができるだろ! これは殺し合い! 使えるものはガンガン使おうぜ!」
「それもそうだな! おし! やんぞ!」
(俺の異名、不意打ち男って酷くない?)
「さて5人目はドロー・シュガレット。殺人術は絵具現化。絵に描いたものを実現させる使い方によっては最強の術。しかし…」
「今回はあまり出てきませんね」
「この術は見えないところから使った方が安全性も上がります。それを狙っての事でしょう」
「6人目はマシュリー・スピード。殺人術は脚力上昇! スピードを自由に変える術です!」
「遅いぞ? もっと早く走らないと…」
「俺からは逃げれないよ!」
「誰か! 助けてくれ…」
グシャ!
「あーあ。頭簡単に潰れちゃった! まあ雑魚だからしょうがないよね! あはは!」
「セバスさん? ちょっと倫理観グロくないすか?」
「まあキラーに倫理観グロくない人はあまりいないので大丈夫でしょう」
(いや結構いるだろ!)
「7人目はルシウスのお気に入りのアダム・ナイト。殺人術は血液創造。自分の血から生命以外の物を作り出す術です。私も察していますが、アダムはダークナイトの子孫ですね?」
「ええ、その通りです」
「ようやく自分の意思で動ける血族が現れましたか。これは期待値高いですね」
「あー思ったより大した事ないですね」
「お前、まさかダークナイトか?」
「違います! 僕はライトナイトです!」
「どうでもいい! これは何…」
「できるだけ面倒は掛けたくないので早めに死んで下さい」
「あぁ8人目ですがビリー・ナイト。同じくダークナイトの血筋でアダムの弟です」
「は? ビリーって事故で死んだはずしゃ…」
「あれは事故ではなく故意に引き起こされたトレイターの計画です。ギリギリで会長に保護されて、今回の試験に参加しましたが1つ大きな欠点があります」
「何ですか? 欠点って?」
「それは…」
「術を使うと自我が保てず暴走状態になります」
「じゃあ何でこの試験に?」
「それは実力を試す為とビリーに術を使う事を慣れさせる為です。まぁもし1000人まで減った後も暴走を止めなかったらルシウスが止めに入って下さい」
「本当に人使い荒いですね。セバスさん」
一方実技試験会場にて…
「なぁお前! 強そうだな!」
「お前誰だ?」
「俺はランド・ライトニング! 闘おうぜ! ライトナイトさん!」
「いいよ! 相手してやる!」
会場でライトニングとアダムが出会ってしまった。
「飛べ! 電気!」
(何だ? 電気の球が飛んできた! 避けられない! 追尾性能ついてんのかよ!)
「こんなもんじゃねえそ!」
「俺もだよ!」
(こいつ! 血でジェットパック作りやがった)
「あと小刀はダークナイトにもライトナイトにも必須だよな!」
グサ!
小刀はライトニングのみぞおちに突き刺さった。
「あぁ、やっぱり一筋縄にはいかないよな! お互いに!」
(は? こいつの体が電気を纏って…)
「電気を飛ばすだけとは言ってない!」
「チッ! グワァァァ!」
(耐えろ! 耐えて次に繋げろ! こんなとこじゃ…)
「終われねえんだ! でてこい!」
「は? 何出したんだお前!」
「分かるだろ! アクション映画でお馴染みの火炎放射器! 全ブッパでいくぞー!」
(体が燃える! まずい!)
「これで終わりだー!」
ドッカーン!
会場中に大きな爆発音が鳴り響いた。
「か、勝った…」
「んなわけねえだろ!」
(え、生きてる。どうやって?)
「いや普通に避けたよ途中で」
「え、マジで?」
「うん。マジで」
(火炎放射器避けられてたのか。てかこれ結構マズくね)
「あのさ、俺らでバディ組もうぜ!」
「バディ?」
「この試験で敵はおそらく何人かのチームを組んで攻撃してくる。その時に1人だけだと生き残る確率低くなると思うんよ」
「まあ、確かに。人数多いほうが勝率は上がるか」
「だから俺ら2人で協力してこの試験勝とうぜ!」
「うし! 勝つぞー!」
「オー!」
これが俺の一生の相棒との出会いだった。
一方その頃、ケンザキ達は…
「かなり人数も減ってきたなケンザキ」
「そうだなシーカー。最後まで油断するなよ!」
「分かってるって! てかさっきから変な音鳴ってね?」
その時に俺はシーカーとガードナーを連れて逃げればよかった。なぜならこれが…
シーカーを最後に見る日になったからだ。
「おい! 何だありゃ!」
俺らの目の前に現れたのは黒い液体に包まれた1人の…いや一匹の怪物の姿だった。
「お前らも、試験者か? なら、殺す!」
「何だこいつ!」
「遅いぞ!」
「俺の守りが押されてるだと!」
「あぁ。守りに特化しているようだが、守りが浅いな!」
「ガードナーが、ふっ飛ばされた!」
「お前も弱いな。ガトリング!」
「しまっ…」
俺はシーカーが頭をガトリング銃で撃たれて血まみれで倒れる様子を目撃してしまった。
「シーカー!」
「こいつは、死んだぞ。」
「このクソ野郎! ぜってえぶっ殺してやる!」
「だが、背後を取られちゃ意味ないな!」
「グハッ!」
(こいつガトリング銃を出すスピードが尋常じゃない。そしてこのフィジカル! 機動力! そして強さ! 全部が俺より上の存在だ! どうする? ガードナーは気絶状態! シーカーは殺された! 後は俺だけ!)
「亡霊! こいつを斬れ!」
「チッ! くらったか!」
「よし…」
「だけど、ガトリングが増えるだけだ。意味ないよ」
血がガトリングの形に変わっていくのが見えた。俺もここで死ぬと思っていた。
「終わりだな! 死ね!」
「く、そ、が!」
「悪あがきしても無駄だぞ?」
(ん? 背後から何かが猛スピードで近づいてくる!)
「お前、ビリーか?」
そこに現れたのはアダムと言う青年だった。
「あれ、兄ちゃんじゃん! よく来たね! 僕に殺されに!」
「殺されには、来てねえよ!」
これがビリーとの再会だった。
原稿のデータ吹っ飛んだのでしばらく投稿できません