15話 青春悲劇(6)
「逃げるって…どうなってんだよ封印寺!」
「いいか! 絶対騒ぐなよ! ヘレン・ワトソンさんの…死刑が確定した」
「は?」
「おい、どうなってる! ヘレンは被害者だぞ!」
「キラー元老院の仕業だよ! あいつらヘレンさんの殺人術を利用する気だ!」
「あのクソ共! 遂に被害者にまで手を出す気か!」
「でも逃げるったってどこに逃げる。下手なとこに逃げてもバレるだけだぞ!」
「学長が地下室を開けてくれた。そこに逃げる」
「キラー教育学部の地下室は知っている奴は少ないし閉門すれば学長以外誰も入ってはこれない!」
「1番の安全地帯ってわけか」
学長室の地下室。
その昔、死刑囚を閉じ込める独房のような使い方をされていた19世紀の秘匿の場所。
この場所ではキラー元老院でも学長の許可がないと入ることができない仕組みを昔のキラー元老院反対派のキラーが作り出した。まさに無敵の根城。
ルシウス一行はヘレンさんを連れてキラー教育学部まで逃亡を開始する。
「ルーク君。私が帰ってくるまで絶対に外に出ちゃ駄目よ」
「分かったよ。姉さん」
キラー教育学部まで行くには路地裏に設置された転送扉に入ることのみ。
ルシウス達は路地裏まで急いだ。
「着いたぞ!」
「ヘレン。目を瞑って! 行くぞ!」
彼らが転送扉に入り見た物。それは…何もない暗闇の空間。
「どうなってる! 確かに転送扉に入って…まさか!」
「悪い悪い。転送扉には細工をした。お前達の負けだ」
死刑執行人。テラス・スピードの嘲笑う姿だった。
「てめえ!」
「そんなキレんなよ。お前らに用はない。用があるのはそこの嬢ちゃんだ。捕獲要員何でな。連れてかせてもらうよ」
「何いってんだ糞虫が! どっちにしろ殺す気だろ!」
「バレたか。まあいい。ガキ3匹殺すくらい容易いんだよ! 俺には!」
「チッ! ルシウス! ヘレンさん守ってひたすら逃げろ! これは恐らくこいつの殺人術で造った結界みたいなもんだ! そう長く持つもんじゃないはずだ! それまで俺とアネモネで時間を稼ぐ! ともかく逃げろ!」
(守備を固めるか! 見たところ守る側を1人にした時点でこちらは2人じゃないと勝てない言ってるもんだ! なら足止めパパっと殺して奴らを追うか!)
パン!
封印寺はテラスの隙を見逃さなかった。
「封!」
「何をして…ん? 身体が動かない」
「俺の殺人術は触れた物の動きを止める封! そして手拍子をして相手を爆散させる印!」
封印寺涼介がルシウスやアネモネと言う強者を差し置いてキラー試験に一足早く合格した理由。
それは彼の殺人術の殺傷能力の高さ。そして、殺人術複数所持を可能とした現在の天才だからだ。
封印寺の持つ殺人術は3つ。封、印と最後にもう一つの殺人術は秘匿とされている。
「なるほど。確かに殺傷能力は高い。結界内で戦っていて良かった」
「この印の威力の低さ。恐らくこの結界のカラクリが原因だな」
「御名答。この結界は俺以外の殺人術の威力を低下させる効果を付与してある。いわば主人公補正って奴だ」
「お前が主人公な訳ねえだろ。無実の奴の死刑に加担してる時点でお前悪役だわ」
「ちょっとお喋りが過ぎるな小僧」
「悪かったねおじさん」
バシュ!
封印寺の腹部にテラスの剣が斬り掛かった。
「チッ!」
「植物化! 根の檻!」
アネモネは両腕を根の形にしてテラスを閉じこめた。
(やられたな。だが見た感じそこまで強度がある訳ではない。俺の力なら簡単に壊せる)
「お疲れさ…」
「印!」
「何!」
「おじさん。防御はしなきゃ」
(印の発動! まさか俺が斬り掛かる為に接近したタイミングで密かに身体の何処かに触れていた。だがおかしい。封が発動していない)
「封の発動が触れた時だと思っていただろ。俺は触れた物の動きを止めるとは言ったが触れたタイミングでとはひと言もいってないぜ」
「時間差でも発動可能か畜生」
「檻で戸惑った瞬間の1秒間のみ封を発動した。ぶっつけ本番だが上手くいったぜ!」
「てめえ!」
(流石封印寺。俺らよりも場数を踏んでるだけある。ここで置いてかれたら命はないと思え! 俺! 全力で封印寺をサポートしろ! アネモネファミリーの名にかけて!)
「植物化。ウツボカズラ」
アネモネの現在の殺人術の極意。ウツボカズラ。
身体全体をウツボカズラという食虫植物に変え相手を溶かす。
「アネモネ大丈夫そうか?」
「あぁ問題ない。このまま溶けてしまいだよ」
「なら俺らはルシウス達と合流…」
「待て封印寺! 何か近くにいる!」
この時アネモネとテラスは感じていた。自分達以上の力! 圧倒的な力の差! 野生的恐怖!
(これは何だ! 明らかにおかしい異質な気配!)
アネモネは自分の腕を地に生やしていたことにより外の生命に敏感。
テラス・スピードが気付いたのは自分の結界の一部が…
「破壊されたな。仕方なしか」
少し前、ルシウスとヘレン。
「ヘレン! ともかく今は逃げるぞ!」
「でもどこに!?」
「恐らくこの結界はあいつの殺人術が関連している。封印寺達があいつ上手く倒してくれた瞬間に転送扉使って逃げる」
「耐えろってこと!」
「そういう事! 肺壊れても走れ!」
「んな無茶な!」
「今脱出した所であいつが気付くor出れないの二択。これにかけるしかない!」
「じゃあルシウス君も封印寺君達の応援に行ったほうが…」
「封印寺達が俺をヘレンと一緒に逃げさせたのは外部からの侵入を懸念しての事だ!」
「外部からの侵入?」
「キラー殺しの介入だ!」
「ハッ! 確かに私達は元々キラー殺しを倒す為に行動していた」
「キラー殺しは既に大量のキラーを殺害している。結界壊すくらいできてもおかしい話じゃない!」
「じゃあもしキラー殺しに私が捕まったら!」
「それは俺があんたを助け…」
「助からなかったらルーク君はどうなるの!」
「ルーク?」
「居たでしょ! 私と一緒に医務室に居た小さい男の子!」
「あぁそういや居たな」
「その子は両親2人とも死んで私が死んだら身寄りがないの! 私がもしここで死んだらルーク君は…」
「それは俺がどうにかする!」
「えっ?」
「ルークとやらは知らねえが依頼人の保護が目的に入っている以上、その子供の保護も仕事だよ! それにお前は助かる前提で話を進めろ! ネガティブになるな!」
(何でこの人はこんなにポジティブにいられるの? この人はきっと私の気持ちなんかきっと分からないし感じた事もないんだ!)
「貴方に私の気持ちなんか分かるわけ…」
「分かるわけねえだろ!」
「えっ」
「俺は馬鹿何だよ! さっきっからグダグダネガティブに話してるけどさ…!」
「お前は死にたくないんだろ! だったらもう少し希望持って会話してくれねえかな!」
「だから助かる保証なんてな…」
「保証なら俺がつくってやる!」
「えっ! でもどうやって!」
「俺はお前を助ける為に依頼受けてんだよ! 助かる保証ないならやらねえの! だ・か・ら! ポジティブに行こうぜ! ルークに平和に会いに戻ろう! ヘレン!」
「うん。分かった」
(この人は…信用できるかもしれない)
ドゴーン!
「何だ!」
「あのさ、君達」
(速い! いつの間に背後に! てか外壁が崩された!)
「全く警戒していなさすぎるよ。こんなに簡単に壊せるとは」
「ルシウス! 逃げろ!」
(アネモネ! まさかこいつ! キラー殺しか!)
「殺人奥義! 吸収!」
「ハッ! 待て!」
彼らの目の前に映った光景。
予想通りのキラー殺しの介入。ヘレン・ワトソンがキラー殺しの手の中に生きたまま吸い込まれていく姿。
「ヘレン!」
「ルシウス…君。ルーク君を…お願い。貴方は馬鹿だけど優しいから…あの子を…助けて…」
「さて、お喋りは終わりか」
ヘレンはキラー殺しの手の中に完全に吸い込まれた。
「てめえ! 誰だ!」
「キラー殺しだがまぁそろそろ教えるか。まあそうだな…」
「ディアボロとでも呼んでくれ」




