14話 青春悲劇(5)
夢を見た。俺の家族皆が平和そうにテーブルに並んでいる夢。
あの日に帰れることならきっと俺は今すぐにでも帰るかも知れない。でも帰れない。家族は死んだから。
「ねえ君、迷子?」
1人の男が俺の前に現れたんだ。
「家族は死んだ。これから死ぬんだよ。俺は…」
「死ぬのは嫌じゃないのかい?」
「生きてもどうせ直ぐに死ぬよ。衣食住全て失ったうえに仕事もない。所持品も全部もぬけの殻だよ」
「君は生きる資格があるだろ。僕は君の生きる理由を全て肯定するよ」
「生きるっつっても生きれないから言ってんだろ!」
「あるよ。君の居場所が」
「は? んなわけないだろ」
「本当さ。生きたいのなら僕と一緒においで」
「お前、名前は?」
「そうか。まだ名乗ってなかったね。僕の名前はドン・マルコス。キラー協会に協力しているマフィアだよ」
「アネモネ〜アネモネ〜!」
「ハッ! なんだ夢か」
アネモネは封印寺に起こされた。
「どうした? 何か悪夢でも見た?」
「いやいい夢だよ。それより封印寺? ルシウスは?」
「あいつなら…あそこ」
(え? 何でそんな適当…)
「ハ!」
「おいこら! 何やってんだお前! 俺の大事な大事な携帯ぶっ壊しやがって!」
(ヤ、ヤンキーか! てか朝っぱらから喧嘩かよ!)
「は! 知らねえよ! お前が手滑らして落としたんじゃねえのか!」
「だとこら!」
「あ! 何か文句でもあんのか!」
「ちょっと封印寺! ルシウス止めに行かないと!」
「あぁ多分大丈夫だよ。ラムダが止めてくれるだろうし。てかあの2人本当に仲悪いよな」
今ルシウスと言い争っているのがルシウス達の一つ下の後輩のガラス・リンドバーグ。
入学式の日にルシウスにぶつかってルシウスの食べていたチキンを泥の上に落としてから仲が悪い。
「あの〜2人ともそろそろ喧嘩辞めてもらえません。エスワー先生呼びますよ」
「うわ、ラムダかよ。チッ! 仕方ねえ今回はガラス様が見逃してやるよ!」
「見逃してやるよって、携帯壊したのお前だろうが!」
「うるせえ! お前やってやろう…」
「は〜い撤収」
「おいちょっと! ラムダ! おい待てって! おい!」
ガラスはラムダに連れて行かれた。
ラムダ・エルミダ。ガラスの同級生でいつも喧嘩っぱやいガラスを毎度のようにクラスへ持ち帰っている。殺人術の影響でいつも感情、力、全ての要素がマイナス状態になっている…らしい。
「ルシウス! お前朝っぱらから何やってんだよ! 昨日の覚悟の演説どこいった?」
「封印寺! アネモネ! 見てた?」
「ぜ〜んぶ見てたわ! 逆に気づいてなかった!」
「お前何でまたガラスと喧嘩してんだ? 前回停学なりかけただろ?」
「あいつが朝、グラウンド走ってた俺に襲いかかってきて携帯ぶっ壊しやがった」
(いやガラスが完全に悪いんかい!)
「てか2人とも早く準備しろ。ヘレンさんとこ行くぞ」
「おう!」
一方同時刻の学長室にて…
「ええ、彼女は願い星の女神を目撃したそうです」
「なるほど。では、死刑は確実だなww」
「何を言っているんだ! お前らは!」
「良いのか? 私達キラー元老院に歯向かってもwwお前も死刑になるぞww」
「チッ! お前ら元老院の目的は知らんがキラー法書にも願い星の女神を目撃した物が死刑になるなど書いていない。ましてや彼女は依頼者だ! 依頼された側が依頼もせず人を殺すとは!」
「決まり事など元老院ならいつでも改正追加できる。何故かだと…彼女の殺人術は私達にとっても利用価値がある! お前ら下のカス共と違って私達は常に己の利益だけを考えているんだ! 依頼者だと? 知るか! 私達には関係ない! いつでも殺しに行くからな! ハハハハハww!」
キラー元老院。キラーの中で会長よりも位の高い最高権力者10人の集団。
だが、10人全てが自己の慾望の塊で気に入らなければ人なら消し、記録なら捨て去る。
そんな彼らがヘレン・ワトソンの死刑を決定した理由には裏がある。
それは…
「彼女の殺人術で願い星の女神を呼び出し我々の願いを叶えさせる。用が済んだら口封じで殺す。その理由付けが今回の死刑だ。ハハハハハ! これで世界は我々キラー元老院の物だ!」
そんな野望が存在している事を知らない3人は…
「コンココンココン!」
「口じゃなくて手を使えやアホ!」
この3人のツッコミ担当はアネモネである。
「失礼しゃーす!」
医務室の扉をルシウスが開けた。
「失礼します。すいませんうちのアホが」
「アホってどういう事だよおい!」
「あ〜すまんすまん、ヘレン・ワトソンさんっていますか?」
「ワトソン様ですね。お部屋でお待ちです」
ルシウス達3人は奥の待合室に向かった。
「こんちゃーす!ヘレンさんいる〜?」
「何でお前は仕事中にそんなテンションで行けんだよ!」
「え、何かおかしい?」
「おかしさ100%だよバカ! 封印寺が先にキラー試験合格する訳だ」
「あの〜私がヘレン・ワトソンです」
「あなたが…はじめまして。私は封印寺涼介。今回の依頼を承る事になったキラーです」
「どうも同じく今回の依頼の担当のトーマス・アネモネです。で、こっちが…」
「ども〜ルシウス・ボードウィンです。一応依頼の担当者です」
「ルシウスの事は居ないものと思って下さい。こいつ面倒臭いんで…」
「は? 何だよそれ!」
「あの〜もしかして皆まだ子供?」
「まあ一応19歳です」
「え、同い年だ」
「お〜じゃあタメ口でいい?」
「ルシウス、流石にタメ口なんて無理だr…」
「いいですよ」
「いいのかよ!」
「アネモネ、流石にタメ口が良いとしても限度があるぞ」
「まあまあそんな気にしないで」
「ヘレンさん。こいつら甘やかすとろくな事になりませんよ。特にルシウス」
「だから何で! 俺の扱い酷くない!」
「じゃなくて! ヘレンさん、今回の依頼内容はキラー殺しの討伐とあなたの殺人術の解剖となっています。なので情報の提供をお願いできますか?」
「はい。大丈夫です」
プルルルルルル! プルルルルルル!
封印寺の携帯が鳴り出した。
「おっと! 誰からの電話だ? あ、学長からだ。アネモネ! ちょっと先に色々聞いといて」
「おいよ」
「サンキュ!」
封印寺は医務室から出ていった。
「で、まず最初にキラー殺しの外見を覚えている限り教えて下さい。」
「えっと結構小柄で黒髪で、見た目は子供みたいでした。声だけ大人…みたいな?」
「ワーオ、そりゃ珍しい」
「後、黒いパーカーにフードを被っていました」
「なるほど、ルシウス? メモってできる?」
「できるできる!」
「ほーい、じゃあメモよろしく」
「ふーい」
その後、アネモネとルシウスによる質問が続いた。
その頃──
「ゲイリー学長。こんな時に一体何の用ですか?」
「封印寺君。緊急事態だ!」
「緊急事態って何ですか?」
「ヘレン・ワトソンの死刑が確定した!」
「は? 何でいきなり死刑何かが!」
「キラー元老院の指示だよ」
「キラー元老院! あいつらまさか狙いは!」
「恐らく彼女の殺人術。記憶の欠片による願い星の女神の召喚だ!」
「まじかよ! 学長! この後俺らはどうしたら?」
「恐らく封印寺達のところに死刑執行人が来る! それまでにヘレン・ワトソンさんを安全な場所まで連れて行く。場所は学長室の地下室が使えるようにしておく! ともかくこの事をルシウス達にも伝えてくれ!」
「分かりました!」
その頃──イギリス。キラー元老院本部にて。
「死刑執行人をテラス・スピード、君に任命する」
「分かりました。その任務承ります。ご安心下さい元老院様。今まで私が何人を死刑にしてきたか知っているでしょう? 今回も確実に殺します」
「いや、今回は殺す前に捕獲して元老院の元まで連れてきてくれ」
「分かりました。利用価値がある訳だ」
「そういう事だ」
ヘレン・ワトソンの死刑執行人。テラス・スピード。キラー協会へ移動を開始。
同時刻──ある廃墟にて。
「キラー元老院がヘレン・ワトソンの死刑を決定したか。こちらとしてもヘレン・ワトソンが公の場に逃げ延びてきたら好都合。私も行くとするかね」
キラー殺し(本名不明)。ヘレン・ワトソン死刑と共にヘレン・ワトソンの殺害計画を始める。
「ルシウス! アネモネ! ヘレンさん! 緊急事態だ! すぐに逃げる準備をしろ!」
かれらの逃避行の行方は?




